【文徒】2017年(平成29)年4月14日(第5巻70号・通巻999号)

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1)【記事】曲がり角を迎えた!?「本屋大賞
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】曲がり角を迎えた!?「本屋大賞

本屋大賞に対する「批判」が出始めている。山本直人が自らのブログに「最近の『本屋大賞』は、なんか違うんじゃないか。」をエントリしている。そこで山本は次のように書く。
「もともとは、『プロの目で面白い本を紹介する』ということが趣旨だったんだろう。ところが、近年になって単なる販促キャンペーンにしか見えない」
本屋大賞は「賞」というよりも、単なる「ビジネス」になってしまったというわけである。私もこうした指摘には同感である。そして本屋大賞が単なる「ビジネス」になってしまったことが書店にとって、どういう意味を持つのかを考えると暗澹たる気分にならざるを得ない。山本が次のように書いていることにこそ書店は危機感を持つべきなのではあるまいか。
「このまんまだと、本屋大賞は書店をますますつまらなくしていくように感じる。
書店、とりわけ実店舗は厳しいという。でも理由はわかる。僕が本を買うのに実店舗まで行く機会が減った理由は単純だ。
特定の本だけを、やたらと推すからだ。つまり多様性がないから発見がない。探し方が悪いのかもしれないが、レイアウトが単調で結局は端末で検索する。
だったら、ネットの方が便利で発見も多い」
http://blogos.com/article/217899/
毎日新聞も「本屋大賞 権威化? 恩田陸さん『蜜蜂と遠雷』受賞 直木賞と同作品、薄まる独自色」を掲載し、直木賞と同じ作品が本屋大賞に選ばれたことで本屋大賞の独自性を疑問視する声があることを紹介している。
https://mainichi.jp/articles/20170412/ddm/041/040/104000c
本屋大賞は「一部の書店では(残念ながらこれまで私が所属した店舗の中にも)『自分たち』で推したいのではなく『誰か』に与えられるイベントになってしまっているのは事実です」と「積読書店員ふぃぶりお」に指摘されるような傾向がより強まって来たのではないだろうか。
http://fiblio.hatenablog.com/entry/2015/09/20/125827

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2)【本日の一行情報】

アメリカ人はラジオが大好きだ。「NewSphere」が掲載している「ラジオ大好きアメリカ人、テレビ、スマホより高い利用率 ネット配信は1億7,000万人利用」は次のように書いている。
「エディソン・リサーチ社は2000年から12歳以上のアメリカ人のオンラインラジオのリスナー率を調査しているが、それによると2017年調査の月間ラジオリスナーは61%、聴取者推計値は1億7,000万人に達したとされる。年齢別では12〜24歳の利用率が87%、20〜55歳が70%だが、55歳以上になると32%と下がる。インターネットやスマートフォンの利用が前提だからだ。1週間の聴取平均時間は14時間39分(1日約2時間)となり、2017年は過去最長を記録した。またスマートフォンなどの利用者が車のオーディオシステムと連動させている率は2017年で40%となり、スマートフォンを片手にアウトドアでもラジオを楽しんでいる様子がうかがえる」
http://newsphere.jp/culture/20170412-1/
アメリカに限らず、ラジオというメディアにとってスマホシフトは追い風になるはずだ。

◎技術革新がコンテンツのあり方を変えるのは間違いあるまい。「進め!電波少年」のプロデューサーであった土屋敏男が「日経エンタテインメント!」で次のように語っている。
「思えば『電波少年』の時は、ビデオカメラが進化していた時代だったから、ディレクターにハンディカムのHi8を持たせて番組をディレクションさせたんですよね。“下手なカメラマンが撮るよりディレクターが撮ったほうがいい”“大人数で移動しなくて済む”という、それまであったステップを2つくらい飛び越えられたことでヒッチハイク企画にたどり着いたこともあって」
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO14055910U7A310C1000000
土屋は「VR」に可能性を感じているようだが、その前にiPhone(=スマホ)を使い切ることが問われているのではないだろうか。

◎「幻冬舎plus」の「新聞が弱体化したから“文春砲”が目立つようになった!?」でプチ鹿島と石戸諭が対談をしている。毎日新聞から「BuzzFeed Japan」に移った石戸が次のように発言している。
「取材記者を千人単位で揃えていて、かつ取材のノウハウをきちんと体系的に体得できる組織は、まだ新聞社以外にはあり得ない」
「…自分がネットメディアに移った今、あらためて思うのは、記者を育成するためのオン・ザ・ジョブ・トレーニング(実地経験を通じた人材育成)のノウハウやシステムは、やはりまだ圧倒的に新聞社が優れているということ」
「“新聞が何を書かないか”を大事にしろという教えは、新聞社を離れてネットメディアで働くようになってますます役立ってます」
http://www.gentosha.jp/articles/-/7680

◎NHKを1月に退任した籾井勝人前会長の退職金は約2126万円。3年で、これだけもらえるのか!羨ましいかぎりである。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO15194910R10C17A4TJC000/

◎「デュオポリー」という言葉を覚えておきたい。二社独占という意味だが、要するにグーグルとフェイスブックの二社による市場独占を意味する言葉である。
http://digiday.jp/publishers/the-platform-effect-bloomberg-media-ceo-justin-smiths-publisher-survival-guide-in-the-duopoly-era/

◎「LINEマンガ最新利用実績」が公開された。これによれば「LINEマンガ」アプリの日本国内における累計ダウンロード数は3月時点で1,600万件を突破し、スマホマンガアプリダウンロード数ランキングにて1位、月間利用者数(MAU)ランキングにおいても1位だそうだ。またスマホマンガアプリ1人あたりの利用時間ランキングでは「LINEマンガ」が3時間17分(1ヶ月あたり)で1位となっているという。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2017/1715
2016年に「LINEマンガ」で販売された売り上げ上位の作品は「BLACK BIRD」「ピアノの森」「アイシールド21」というように既にマンガ誌での連載が終了し、「LINEマンガ」の無料連載で掲載されていた旧作が上位を占めていることも特徴である。
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1704/12/news149.html
日本ではLINEがあるからグーグルとフェイスブックの二社による「デュオポリー」という事態はあり得まい。

◎国内最大動画CMポータルサイトのCMerTVは、電通が提供する、テレビの実視聴ログに基づくデジタル広告配信・効果検証の統合マーケティングプラットフォームである「STADIA」(スタジア)の機能と配信連携することになった。
https://www.cmertv.co.jp/wp-content/uploads/2017/04/eefd81bbdce4cbb521b8bdfb3273deef.pdf
CMerTVの五十嵐彰社長は博報堂DYメディアパートナーズの出身。もともとはニッポン放送で編成局スポーツ部ディレクターとして中継番組を担当していたが、2006年に博報堂DYメディアパートナーズに入社し、スポーツ事業局やアイメディアソリューション局、統合コミュニケーションセンターにおいてプロデューサーを務め、プロ野球のデジタルコンテンツ作りなどに従事したのち、2011年7月に株式会社CMerTVを設立している。

電通過労自殺した女子社員の母親が電通本社で管理職向けに開かれた研修会に出席した。
「研修会への出席は、電通との間で1月20日に合意した再発防止策の一環。幸美さんは『命を亡くしたり、追い詰められて病気になったりする人が多い電通の評判を払拭できるよう改善してください。軍隊のような社風をなくしてください』と話した」
http://www.nikkansports.com/general/news/1806671.html

小学館の「コロコロコミック」が、4月15日発売の5月号で創刊40周年を迎える。
http://www.oricon.co.jp/news/2089122/full/

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3)【深夜の誌人語録】

何かを実現しようとするならば欲望をエンジンにしなければ決して実現しないものだ。