【文徒】2018年(平成30)10月26日(第6巻201号・通巻1375号)

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1)【記事】たかのてるこ自費出版エッセーが3万5000部を突破(岩本太郎)
2)【本日の一行情報】
----------------------------------------2018.10.26 Shuppanjin

1)【記事】たかのてるこ自費出版エッセーが3万5000部を突破(岩本太郎)

ドラマ化されたデビュー作『ガンジス河でバタフライ』などの著作を持つエッセイスト・たかのてるこが、今年5月に自費出版した写真エッセー『生きるって、なに?』が累計3万5000部を突破したらしい。
価格は「誰かにあげたくなるワンコイン本」ということで500円(税別)で初版部数は4000部。たかのの都内の自宅と大阪の実家に段ボールを分け、母親にも配送を手伝ってもらいながら販売。旅先の沖縄でジュンク堂那覇店の店長に頼んで置いてもらったところ8週連続で同店の売り上げ1位を記録し、トーハンの目にも止まって全国販売へと広がっていったという。
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2018/10/22/kiji/20181021s00042000438000c.html
たかのはこの本の出版に際して「terubooks」という版元を立ち上げている。一人出版社というより本のウェブショップで、たかのはこのプロジェクトを「シェア・プロジェクト」と称している。
以下の公式サイトにその概要が紹介されている。たかのの人脈を生かした著名人からの推薦のほか、販売方法についても説明されていて興味深い。取扱店はジュンク堂丸善を中心に現在90店舗。《計6500冊のご注をいただきました!》とのこと。
http://ikinani.takanoteruko.com/
販売方法では、まとまった部数で扱ってくれる場所(美容院や病院売店など)向けに、扱いの冊数に応じて割り引いている。例えば通常価格540円の本を10冊の場合は400円、40冊の場合は390円で販売しているそうだ。
《5冊からのシェアを予定していたのですが、全カラー68P・500円の本をさらにお安く【全国一律・送料無料】でお届けするのがきびしく、人手もないものですから(著者てるこのおかんが手作業で、心を込めて配送します!)》
https://terubook.thebase.in/
実際にいろいろなところからまとまった注が入っているらしい。先月には刑務所から10冊注があったことを、たかの自身がTwitterで報告していた。
https://twitter.com/takanoteruko/status/1043386842366656512
岡山市の「スロウな本屋」では、たかの本人から電話が掛かってきて、注した冊数を間違えていたことが判明したことなどをツイートしていた。
https://twitter.com/slowbooks/status/1030388891906273281
元テレビプロデューサーの著者だけあってイベント展開もソツはない。東京でも8月に新宿のロフトプラスワントークライブを開いて盛り上げていた。
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/date/2018/08/10
https://twitter.com/niko_niko_2kumi/status/1028038833340698624
書店以外の売り場でも好評を迎えられている模様だ。新潟県南魚沼市の「雑貨と洋服やさん ハイネ」では本の内容を動画で紹介していた。
https://www.facebook.com/heine2010/videos/1199172836891169/
無論タレントとしての著者の知名度や人脈も有効活用されているのだろう。流通対応などについてもう少し詳しく知りたいところだが、ともあれ自費出版本でここまで展開しえたというケースには学べる部分も多そうだ。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎『新刊JP』がアスコムの取締役編集部長・柿内尚の「仕事術」について前後編2回に分けた長尺インタビューを掲載していた。
ぶんか社を経てアスキー、そしてアスコムで編集者として『「のび太」という生きかた』(横山泰行・2004年)、『松岡修造の人生を強く生きる83の言葉』(2011年)などのベストセラーを手掛けてきたが、慶応を卒業後に入社した読売広告社を辞めてぶんか社に転職したのは、同社が『ペントハウス日本版』創刊に際して人を集めていたことがきっかけだったとか。
アスコムでも2008年に同社が民事再生した際に役員の1人として立て直しにあたるなど苦労続きだったようだ。
https://www.sinkan.jp/news/8883 
http://www.sinkan.jp/news/8895
https://www.bbook.jp/author/seminar_for_author.html
名前からすぐに推察されるように、あの柿内芳(光社、星海社、コルクを経て現在はSTOKE代表)は彼の弟。出身地である東京・町田の書店では以前に「町田出身の名編集者」ということで兄弟揃ってのブックセレクションを開催していた。
https://ddnavi.com/news/40951/a/

◎「小説家になろう」に投稿されて話題になった「府中三億円事件を計画・実行したのは私です。」が12月にポプラ社から単行本として発売される。ネット上ではさっそく「それにしても早くね?」「これ、ポプラの仕込みじゃね?」などといった声が上がっている。
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/asin/4591161269/httpgaoudiarb-22/
https://www.cobalog.com/entry/3okuen_syosekika
http://blog.livedoor.jp/editors_brain/archives/1973187.html

講談社の漫画投稿サイト「DAYS NEO」に11月1日から一迅社のコミック編集者も参加することになった。
https://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2018/20181024_DAYS%20Neo.pdf

集英社SPUR.JP」は人気コンテンツ「SPUR・フランチェスカ先生の12星座占い」の音声配信をスタート。「Amazon Alexa」に対応したスキルの提供で、ユーザーがアレクサに話しかけると自分の星座の運勢が音声で戻ってくる。音声コンテンツへの取り組みは集英社初。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000011454.html 
https://spur.hpplus.jp/

◎光社『Mart』の「POP UP SHOP」が、JR目黒駅近くに9月にオープンした「as green as possible」にて23日から11月4日まで開催中。2階のギャラリー(1階はレストラン)で、通販サイト「Mart SELECT SHOP」でしか買えない商品が期間限定で購入できる。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000144.000021468.html 

◎2015年のリニューアル時に全国2例目の「ツタヤ図書館」として注目を集めた海老名市立中央図書館は引き続きCCCによる運営が継続される。さる7~8月に行われた次期指定管理者の公募に応募したのはCCCやTRC(図書館流通センターなど4社による「えびな学びコンソーシアム」のみ。学識経験者や市幹部による選定委員会での検討などを経て候補に決まり、11月の同市議会での議決を経て正式決定の見通し。
http://www.kanaloco.jp/article/367541 

電通はスタートアップ企業の成長をクリエーティブ面から支援するプログラム「GRASSHOPPER」を開発し、24日から参加企業の募集を開始した。メンターには深津貴之(THE GUILD代表)や家入一真(CAMPFIRE代表)らが参加。新たに開設の専門ウェブメディアの編集長には西村真里子(HEART CATCH代表)が就任する。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2018/1024-009629.html
https://grasshopper.tokyo/
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1810/24/news077.html 

家入一真の「CAMPFIRE」が金融サービスに参入した。「CAMPFIRE Bank」の名称で23日からサービス提供を開始。「CAMPFIRE」でクラウドファンディングのプロジェクトを実施した者、およびその支援者を対象に上限200万円で融資を行う。
http://bank.campfire.co.jp/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000143.000019299.html

◎2015年に日本経済新聞社により買収された英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の3年後の現状について、英国在住のジャーナリスト・小林恭子がレポート。
買収直前の印刷版の発行部数は約21万部、印刷版と電子版を合わせた有料購読者数は約73万だったのが、昨年時点ではこれが約91万にまで増加し、目標としてきた100万部に迫る状況。特に電子版は同じく昨年時点で約71万4000で前年比10%増。現在では有料購読者の4分の3が電子版だという。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kobayashiginko/20181021-00100649/

◎写真家・立木義浩が1965年に発表したデビュー作「舌出し天使」が、アートプロデューサーの一花義広(元松下電工汐留ミュージアム学芸員など)が代表を務める都内・世田谷区の出版社リブロアルテより11月21日に写真集として刊行。その出版記念写真展が11月17日から25日まで原宿の「BOOKMARC」にて開催されることになった。
http://www.libroarte.jp/tatsukinomal.html
https://imaonline.jp/news/exhibition/20181022/#img1

◎1993年に太田出版から発行され、120万部以上の売り上げを記録するベストセラーとなった『完全自殺マニュアル』著者の鶴見済は現在は東京の郊外で農耕生活中。昨年新潮社から上梓した『0円で生きる 小さくても豊かな経済の作り方』でも綴った「お金をかけない生き方」を実践している様子を『AbemaTIMES』のインタビューに応じて語っている。
https://abematimes.com/posts/5056843

静岡市葵区の公衆浴場「おふろcafe bijinyu」ではこのほど耐水性のある紙を使い「湯舟にも持ち込める雑誌」を制作し、17日から大浴場に常備したそうだ。地元のインターネットメディアとの連携で市内の情報などを掲載。11月末までの期間限定で、大浴場では無料で読めるが持ち帰りはできないという。
https://mainichi.jp/articles/20181022/k00/00e/040/193000c

安田純平の「解放」を喜ぶツイートについては昨日の『』でも紹介されていたが、「Wikipedia」での安田についてのページでは解放のニュースが流れて以来、さっそく「危険な土地にみすみす行って危険な目に遭うバカな日本のジャーナリスト」などの書き換えをする側と、それを正そうとする側との「編集合戦」が展開された模様。
https://www.buzzfeed.com/jp/kensukeseya/yasuda-1
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E7%94%B0%E7%B4%94%E5%B9%B3