【文徒】2018年(平成30)11月2日(第6巻206号・通巻1380号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】常岡浩介が語る、安田純平解放までの舞台裏(岩本太郎)
2)【本日の一行情報】
3)【人事】光社 11月1日付
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1)【記事】常岡浩介が語る、安田純平解放までの舞台裏(岩本太郎)

シリアで取材中に身柄拘束され、先日3年4か月ぶりに解放された安田純平の件について、安田と旧知の戦場ジャーナリスト常岡浩介が『日刊SPA!』の取材に応えて解説。意表をつくようなエピソード満載のインタビューだ。
《シリアのヌスラ戦線やISの支配地域に入って取材ができる日本人ジャーナリストは、僕を含む3人しかいなかったが(略)僕も7月に門前払いを食ったこともあり、当初、救出活動は頓挫していたのです。その後、中央大学講師の水谷尚子さんがヌスラ戦線内部のウイグル人協力者を確保したため、“身代金なし”で救出できるよう努力する約束を取り付けました》
《もともとカタール親日的な国ですが、外務省に日本のオタク化が大好きな外交官がいて、パリのジャパンエキスポからオタク化のみを厳選したようなイベントも開催しており、声優でタレント上坂すみれさんを招聘しているほどです。(略)こうしたソフトパワー外交的な下地もあり、カタールは日本を好意的に見てくれている。大げさではなく、今回の救出への強力に寄与したのは確かでしょうね》
https://nikkan-spa.jp/1521432
このうち前者の中央大学・水谷の件については共同通信社カメラマンの原田浩司が、上記を受けて《そう、今だから言えるが、こういう動きもあった》とTwitterで証言していた。
https://twitter.com/KOJIHARADA/status/1057402960815116288
常岡は2010年にアフガニスタン取材中、武装勢力により拘束された経験も持つ紛争地取材のプロ。かつて拘束されて人質になった際の経験については、都内のシェアハウスで共同生活していた同居人がコミックエッセイとして描いた『常岡さん、人質になる。』(エンターブレイン刊)に詳しい。
https://www.enterbrain.co.jp/pickup/2011/hitojiti/index.html
原田浩司も1996年から97年にかけて起きたペルー大使公邸人質事件の際に、ゲリラが人質を取って籠城中の大使公邸に単身で潜入取材した経験を持つ。イラク戦争ルワンダ内戦なども取材し、海外にも独自の広い人脈や取材ノウハウを持っている。
http://www.iic.tuis.ac.jp/edoc/journal/ron/r1-1-2/r1-1-2b.html
https://fukushima-drone.com/archives/504
こうした戦場や紛争地取材のプロから見ると、安田の解放以降に日本で俄かに沸き起こった「自己責任」論にはやはり違和感というか、ほとんど嫌悪感すら覚えるようだ。北朝鮮取材の第一人者として知られる石丸次郎(アジアプレス)もマスメディアに対してこんな怒りをぶつけている。
《民放各局で危険地取材「やめとけ」「自己責任」ネタをたくさんやっているようだが、大阪と東京の局でフリージャーナリストが撮影したシリア・イラク北朝鮮現場映像使わなかった局は一つもない。お前らの了見、責任性はなんやとプロデューサーに問いたい。腹が立って仕方がない》
https://twitter.com/ishimarujiro/status/1057919429411930113
原田も前述のツイートに続ける形でこう呟いていた。
《戦場取材するなら、「戦争保険」や「誘拐保険」に入っとけみたいな意見もあるようだけど、あれは1日10万円ほどの掛け捨てで10日で百万円だ。海外旅行保険とは別物なんだ。
さて、フリージャーナリストのギャラはと考えると、保険代だけでギャラが吹っ飛ぶケースがほとんどだろうね》
https://twitter.com/KOJIHARADA/status/1057170950691549184
フリーランス戦場ジャーナリストのほとんどはギャラも生命のリスクも全て「自己負担」。そこで苦心惨憺取材してきた素材がメディアの海外報道を支える一方、何かあった時には「自己責任」とバッシングされるわけだ。
もっとも、常岡は上記の『日刊SPA!』インタビューの最後では、2004年のイラク人質事件でバッシングを浴びた高遠菜穂子ボランティア活動家)の例も引き合いにしながら、こうも言い放っている。
《高遠さんも大変なバッシングに遭ったが、(中略)今や、世界中人道支援団体が彼女を頼って活動しており、人道支援のハブのような存在になったのも、あのバッシングによって世界的に名を知られたからです。「悪名は無名に勝る」ではないが、あれだけ誹謗中傷されれば、それに対して憤り、立ち上がる人たちは確実に存在する。(中略)だから現在、絶賛バッシング中の安田くんも、これで将来は安泰!って、僕は思っています(笑)。彼、メンタルが異常に強いので屁とも思っていないんじゃないかな》

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

主婦の友社は1日、女性向けファッション月刊誌『mina』の発行を12月19日発売の2月号をもって終了し、来年1月20日発売の3月号より「株式会社夕星社(ゆうづつしゃ)」に変更することを報道関係者向けに公式発表した。
夕星社の代表取締役主婦の友社前社長の荻野善之。今後は雑誌および関連する書籍・ムックなどの編集、広告営業など『mina関連事業は夕星社が行うが、販売(電子版を含む)については夕星社より委託を受ける形で主婦の友社が引き続き担当する。
https://xn--zcklx7evic7044c1qeqrozh7c.com/companies/9011001123111

主婦の友社はグループ内の事業分野の再編に伴い、ライトノベル出版事業を1日付で主婦の友インフォスに移管することを発表した。「ヒーロー庫」と「プライムノベルス」は11月発売分より発行・主婦の友インフォス、発売・主婦の友社という体制に移行。以後は『声優グランプリ』など主婦の友インフォスが手掛けてきた声優関連事業などとのシナジーを生むべく事業を推進していくという。
https://herobunko.com/news/8976/

◎先月29日に行われた化庁の化審議会・著作権分科会の小委員会では、海賊版の漫画や写真のダウンロードを違法化すべきかが初めて議題に上がったと朝日新聞が報じている。同記事によると「日本雑誌協会の担当者」が《ネット上には漫画以外にも経済誌や写真週刊誌を無料でダウンロードできるサイトがあふれている》《(違法化すれば)ダウンロードしてはいけないと知らせることができ抑止効果がある》と主張。「コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の担当者」も《五つの海賊版サイトの9月までの半年間のダウンロード数などから推計すると被害額は計1085億円になると主張した》という。
https://www.asahi.com/articles/ASLBY5PWWLBYUCLV01B.html
Change.org』では「静止画ダウンロード」の違法化を行わないよう求める署名活動が立ち上がっている。
https://www.change.org/p/%E9%9D%99%E6%AD%A2%E7%94%BB%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%81%AE%E9%81%95%E6%B3%95%E5%8C%96%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%82%8F%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A7%E4%B8%8B%E3%81%95%E3%81%84
上記の署名を発信したNPO法人「うぐいすリボン」の理事も務める荻野幸太郎(国際日本化研究センター共同研究員など)は、署名を始めた趣旨をFacebookで以下のように述べていた。
《ネット上の画像をうっかりダウンロードできないようなことになると、映画や音楽の違法化・処罰化の時以上の厄介な事態になりそうで心配です。
こんなの犯罪にしたら、警察はネットユーザーなら、誰でも逮捕できちゃいますよね》
https://www.facebook.com/ogino.kotaro/posts/2013465812030276

Twitterに投稿したイラストを「まとめサイト」に無断で転載されたとしてイラストレーターの女性がサイト側に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁著作権侵害を認め、イラストの原稿料相当額の支払いを命じる判決を出したと産経新聞が報じた。
https://www.sankei.com/affairs/news/181029/afr1810290035-n1.html
女性は「ナカシマ723」で活躍。4年前にTwitterで「どの壁ドンがお好き?」などの投稿とともに3枚のイラストを公開したところ、14のまとめサイトの記事でイラストが転載されているのを発見したという。『ねとらぼ』は7月末の段階でこの件を報道。損害賠償金などの支払いは既に済んでいるそうだ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1807/27/news114.html
「ナカシマ723」自身も回収総額や内訳をTwitter上で公表している。
https://twitter.com/nakashima723/status/1023858983772217344

◎『週刊現代』が記者(業務委託契約)を募集中。1日付で『現代ビジネス』に《現代ビジネスにも多くの記事が転載されている「週刊現代」で、記者の募集を行います》と告知していた。記者経験の有無は問わないそうだ。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58251

集英社は2020年度定期採用のエントリー受付を専用ホームページで開始。
https://www.shueisha.co.jp/saiyo/

小学館集英社プロダクションは幼児・小学生向け通信教育ブランド『ドラゼミ』『ぷちドラゼミ』を刷新。2020年の教育改革に対応した新教材『「まなびwith』として来年4月号(3月25日発売予定)よりスタートすることを10月31日に発表。翌1日より受講申し込みの受付を開始した。
https://manabi-with.shopro.co.jp/
https://www.oricon.co.jp/news/2122501/full/
https://resemom.jp/article/2018/10/31/47480.html

ハースト婦人画報社東京メトロとのタイアップ企画として限定デザインの「東京メトロ24時間券」がついた『25ans』1月号特別版を28日に発売。ファッションブランド「ルシアン・ぺラフィネ」とのコラボレーションによるオリジナルデザインを採用。同号には24時間券でめぐる名店やスポットの特集を4ページに渡り掲載する予定。
https://www.tokyometro.jp/news/2018/194476.html
https://raillab.jp/news/article/10358

竹書房の4コマ漫画雑誌『まんがライフMOMO』が今月28日発売の2019年1月号限りで休刊することを、先月29日発売の12月号にて発表。
https://natalie.mu/comic/news/305666

◎『保守速報』『アノニマスポスト』『netgeek』『Share News Japan』などの保守系サイトが10月25日頃から閲覧しづらくなっているようだ。各メディアは公式Twitterで《当サイトに不特定多数のアクセス元からのDDoS攻撃を確認致しました》(Share News Japan)《サーバーが攻撃を受けていると考えられます》(netgeek)など状況を報告している。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/10/27/matome-site_a_23573721/
https://twitter.com/sharenewsjapan/status/1055365238139187200
https://twitter.com/netgeek_0915/status/1056111563877171200
『保守速報』では今年6月頃からスポンサーが続々広告を引き上げていた中でも「なくそう、残紙」キャンペーンのバナー(広告ではない)がずっと掲載されてきたが、新聞の「押し紙」問題を追及し続けてきたジャーナリスト・黒藪哲哉の『メディア黒書』も31日にアクセス不能が生じたと黒藪自身が同サイトにて報告していた(現在は普通にアクセスできる模様)。
https://twitter.com/kuroyabu/status/1057775950631325696
http://www.kokusyo.jp/genron/13491/

◎その『保守速報』を支援する姿勢を自身のブログなどで公言している福岡県行橋市の市議会議員・小坪慎也に『BuzzFeed NEWS』がインタビュー。
https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/hosyusokuhou-shinya-kotsubo
このインタビューは小坪側からの「取材の模様をビデオで撮影し、記事よりも前に公開する」などの条件を『BuzzFeed NEWS』が呑む形で行われ、実際小坪は後日に取材時の模様を動画とブログ記事で公開した。
https://www.youtube.com/watch?v=kHp4IX5iccY&feature=youtu.be
https://samurai20.jp/2018/10/buzzfeed/

村上春樹が米国で人気を博するまでに至った背景には「翻訳者の熱意と戦略」があったと産経新聞の海老沢類が解説。米国デビュー作(1989年刊行)となった『羊をめぐる冒険』で英訳を務めたルフレッド・バーンバウムら初期の翻訳スタッフたちは原作をベースに《数ページ単位で章を刈り込んで物語のテンポを上げたり、村上作品の特徴でもある奇抜な比喩表現をばっさり削ったり》といった大掛かりな再編集を行っていたそうだ。
https://www.sankei.com/life/news/181031/lif1810310039-n1.html

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3)【人事】光社 11月1日付

<機構>
・新事業戦略室(担当役員直轄)を新たに設ける
・Webニュース事業室(担当役員直轄)を新たに設ける
・第二編集局出版企画編集部を廃止する
・コンテンツビジネス局ライツ管理部をライツ事業部と改める
・部長代理(部長待遇)、編集長代理(編集長待遇)、室長代理(部長待遇、編集長待遇)の役職を廃止し 担当部長と統合する

<委嘱>
大給 近憲(取締役第一編集局長)
現担当に加え、新事業戦略室、Webニュース事業室担当及び第二編集局長を委嘱する

<人事>
進藤 俊哉
新:編集管理局長兼編集総務部長(広報室長兼務を解く)
旧:編集管理局長兼編集総務部長兼総務局広報室長

米澤 仁次
新:新事業戦略室長(局長待遇)
旧:第二編集局長兼出版企画編集長 

本多 悟
新:総務局広報室長兼編集管理局編集総務部担当部長兼写真室長
旧:総務局広報室部長代理兼編集管理局編集総務部部長代理兼写真室長(部長代理)

久保田 安子(桐野 安子)
新:第四編集局美ST編集長
旧:第四編集局美ST副編集長 

井上 智明
新:第四編集局VERY編集部担当部長
旧:第四編集局美ST編集長

藤石 索道
新:経理経理部担当部長
旧:業務局業務部部長代理(部長待遇)

浅沼 隆之
新:総務局総務部部長代理、光社サービス株式会社出向
旧:メディアビジネス局広告部部長代理

工藤 勝俊
新:総務局厚生部副部長
旧:編集管理局校閲部部長代理

鈴木 浩
新:新事業戦略室副部長
旧:第二編集局出版企画編集部副編集長

小島 良章 
新:第二編集局FLASH編集部副編集長兼Webニュース事業室副部長
旧:第二編集局FLASH編集部副編集長 

明渡 真理
新:業務局業務部副部長
旧:経理経理部副部長

北川 編子
新:出版局ノンフィクション副編集長
旧:出版局ノンフィクション編集部デスク

森本 隆二
新:第一編集局女性自身副編集長兼Webニュース事業室長(副部長)
旧:第一編集局女性自身編集部デスク 

小川 学
新:第一編集局Mart副編集長
旧:第一編集局Mart編集部デスク

伊藤 賢二郎 
新:第二編集局エンタテインメント副編集長
旧:第二編集局エンタテインメント編集部デスク 

横田 啓城 
新:マーケティング局雑誌販売部副部長
旧:マーケティング局雑誌販売部主任

惠良 能夫
新:メディアビジネス局広告部副部長
旧:メディアビジネス局広告部主任

三宅 新太郎
新:編集管理局校閲部主任
旧:総務局厚生部主任