【文徒】2018年(平成30)11月21日(第6巻219号・通巻1393号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】芝田暁は芝田進午の倅だった!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2018.11.21 Shuppanjin

1)【記事】芝田暁は芝田進午の倅だった!

ベトナムと思想の問題」(青木書店)、「ベトナム日記 アメリカの戦争犯罪を追って」(新日本出版社)や「現代の精神的労働」(三一書房)の芝田進午は十代の私にとって四天王のひとりであった。他の三人は「思想とはなにか」(岩波新書)の古在由重であり、ユーロコミュニズムの言わば紹介者であった「マルクス主義政治理論の基本問題」(青木書店)の田口富久治であり、岡倉天心の孫である「アジア・アフリカ問題」(岩波新書)や「植民地主義と民族解放運動」の岡倉古志郎であった。
田口は1994年に党による丸山真男批判を批判し離党することになる。また古在は原水禁運動をめぐって党と対立し、反党分子として除名されてしまうのである。そうしたなか芝田進午は党に留まりつづけたのだろう。党から批判されることなく生涯を全うする。いずれにしても、20歳を超えると私はミンシュ陣営から脱落し、四天王の書物の頁を再びめくることはなくなっていた。
前置きが長くなってしまったが、駒草出版から刊行された「共犯者 編集者のたくらみ」の芝田暁の父親は何と芝田進午なのである。芝田暁は編集者としての第一歩を大月書店で踏み出すことになる。私が四天王に夢中だった頃の評価からすれば、大月書店は商業出版とは一線を画した良心的かつ民主的な出版社の最高峰にほかならなかった。
「日本の思想」(岩波書店)一冊しか読んでいないにもかかわらず丸山真男ブルジョワ近代主義者だと一刀両断にしていたものなあ。
そんな民主的若者からすれば高嶺の花の大月書店に芝田暁は「父と親しいジャーナリストの橋本進に紹介状を書いてもらった」ことも功を奏して新卒で入社する。
「今から思い返すと私のような出来の悪い人間を採用してくれたのも、大月書店でも著作を出していた父に対する多少の配慮もあったのではないかと想像する」
そりゃあそうだろう、私が驚いたのは芝田暁が党員でも東大でもないのに大月書店に入社していたことである。芝田も書いているが、編集部は十人でその半分は東大出なのである。
ある意味、その筋のエリートとしての道を歩み始めた芝田であったが、一年半で退職することになる。党員でない芝田にとって居心地の悪さは克服できなかったのだろう。芝田は辞めたくなった理由のひとつをこう書いている。
「二つ目の理由は、当時、私以外の社員はみな共産党員だったので、金曜日の昼休みになると赤旗の日曜版の仕分けをしていたことがある。正直、違和感があった。
一応、共産党とは多少の距離を置いていると思っていたのに、私以外の社員が何の疑いも持たずに昼休みに赤旗の仕分けをしているのである」
大月書店を辞めた芝田はリクルートの情報誌を見て徳間書店に応募し、採用される。芸編集者として歩み始めることになるのだが、以降、梁石日との共犯者ぶりがこれでもかこれでもかと語られる。
http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=136998089
J-CAST BOOKウォッチ」が「あのベストセラー手がけた敏腕編集者はなぜ2年で自分の出版社をつぶしたのか?」を掲載している。
https://www.j-cast.com/bookwatch/2018/11/17008252.html

------------------------------------------------------

2)【本日の一行情報】

◎NHKが発表した2018年度の中間決算によれば受信料収入は3553億円で、中間期としては5年連続して過去最高となったことがわかった。信濃毎日新聞は11月19日付社説で「NHK受信料 『過去最高』に伴う責任」を掲げている。
「上田良一会長は先日、受信料を値下げする考えを明らかにした。内部留保に当たる繰越残高は1千億円を超えている。収入が伸びて経営に余裕が出ているようなら、視聴者に還元するのは当然だ。低所得者や学生の支払い免除を拡大するなど、負担軽減策を幅広く検討してもらいたい。
番組について、民放と見まごうような演出が目立つといった声がこのごろ聞かれる。受信料で支えられるNHKには、視聴率より質を重視した番組、社会的少数者が切実に必要とする番組を送り出す責任がある」
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20181119/KT181117ETI090005000.php

京都市左京区の書店「ホホホ座浄土寺店」店主の山下賢二が自分の幼少時代を描いた絵本「やましたくんはしゃべらない」岩崎書店から出版した。京都新聞が「『小学校卒業まで9年間しゃべらなかった』 書店主が自伝的絵本」を掲載している。
https://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20181117000107
山下による「ガケ書房の頃」(夏葉社)のひとつのエピソードから生まれた企画だそうだ。
http://yan.lolipop.jp/pdf/1811-yamashita_gake.pdf

◎「WWD JAPAN.com」によれば小学館は、55歳以上の高所得者をターゲットにしたフリーマガジン「アドバンスド タイム」(ADVANCED TIME)を2019年3月に創刊する。2019年は3月、9月、12月という年3回、各25万部を発行し、東京、名古屋、神戸の3エリアで配布する予定だそうだ。発行月最終週の週末に朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞に同梱して配布する。東京エリアは麹町、麻布、恵比寿、名古屋エリアは覚王山自由ヶ丘、神戸エリアは芦屋、甲南などで配布する。
https://www.wwdjapan.com/741319

◎「シリア拘束 安田純平の40か月」が扶桑社より11月24日に発売される。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%8B%98%E6%9D%9F-%E5%AE%89%E7%94%B0%E7%B4%94%E5%B9%B3%E3%81%AE40%E3%81%8B%E6%9C%88-%E5%AE%89%E7%94%B0-%E7%B4%94%E5%B9%B3/dp/4594081339/ref=as_sl_pc_as_ss_li_til?tag=gogotsu-22&linkCode=w00&linkId=4562976700eaf78c377bd11f691054bd&creativeASIN=4594081339

◎「<東京人>本屋は挑戦する まちに根差す駅前の実力」(東京新聞)で、今野書店、かもめブックス、BOOKSルーエ、恭堂書店が紹介されている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201811/CK2018111802000107.html

◎11月20日朝日新聞デジタルは「出版取次2社、物流協業検討 日販とトーハン」を掲載した。
「出版取次大手の日本出版販売とトーハンは19日、倉庫の共同利用など物流面の協業について検討を始めたと発表した。これまでも配送などで一部連携してきたが、出版不況や電子書籍普及で「紙」の出版物の流通が減る中、計8割のシェアを持つ大手2社が物流網の維持に向け、より抜本的な事業効率化に取り組む」
https://www.asahi.com/articles/DA3S13776348.html
トーハン、日販ともにプレスリリースを発表した。背景及び目的について、こう書いている。
「出版物の売上は1996年をピークに低減が続いております。
2017年度ではピーク時の52%程度の規模に縮小し昨今の輸送コストの上昇と相まって流通効率の悪化が顕著となり、全国津々浦々にわたる出版物流網をいかに維持するかが業界全体の喫緊の課題となっております。
今回の両社による取り組みは、かかる課題の解決を導き出すために行われるものであり、同時にプロダクトアウトからマーケットインを目指した抜本的な流通改革への新たな一歩となることを目指すものです」
https://www.nippan.co.jp/news/2018_1119/
http://www.tohan.jp/news/20181119_1308.html
財経新聞」は「出版取次の日販とトーハンが物流協業に向けた検討を開始 流通の抜本改革なるか」を掲載している。
「日本の出版流通は、事実上は取次が主導する体制にあると言われている。それというのも取引の仲介、配本・返品の管理、代金回収などを取次は一手に引き受け、また信用保証の役割も担うため、再販価格維持(新品の本がどこでも同じ価格で売られているのはこれによるものである)、委託販売制度などの日本独自の業界制度を維持・管理している立場にあるからだ」
https://www.zaikei.co.jp/article/20181119/478918.html
独禁法に抵触するのかしないのかを公正取引委員会に確認したうえでのことであろうが、「昨今の輸送コストの上昇と相まって流通効率の悪化が顕著となり、全国津々浦々にわたる出版物流網をいかに維持するかが業界全体の喫緊の課題」とウラゲツも指摘しているように、出版業界は「つまりいつ崩壊してもおかしくない待ったなしの状況」にあるということである。
https://twitter.com/uragetsu/status/1064398511922266112

KADOKAWA「電撃庫」の「青春ブタ野郎」シリーズが、累計発行部数100万部を突破した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005207.000007006.html

主婦の友社の女性ファッション誌「Ray」の専属モデルを女優高橋ひかるが務めることになった。彼女、売れるよ。
https://mantan-web.jp/article/20181118dog00m200030000c.html

◎「日刊スポーツ」は1月19日付で「『イッテQ』お詫びナレーションも出演者は触れず」を掲載した。
「一部の『祭り』企画にやらせ疑惑が報じられた日本テレビ系バラティー番組『世界の果てまでイッテQ!』(日曜午後7時58分)が18日、番組内で騒動についてテロップで謝罪した。同企画の当面休止も正式発表した。冒頭、白い画面に『『祭り』企画をめぐり視聴者のみなさまに疑念を抱かせご心配をおかけする事態になったことについて深くおわび申し上げます』との章が映され女性の声が読み上げた」
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201811190000058.html

◎アマゾンから10月下旬に「雑誌取り扱いに関するお知らせ」と題された章が出版社に送られて来たという。「ダイヤモンド・オンライン」が「アマゾンの雑誌販売、『あわせ買い』拡大で出版社にさらなる打撃」を掲載している。
「『販売減につながりかねない』。知らせを受けたある出版社の営業担当者は直感したという。あわせ買いは1回の注が合計2000円(税込み)以上にならないと購入できない仕組みだ。あわせ買い自体は数年前からあり、単価の低い日用品や食品が主な対象だった。しかし複数を“買いだめ”することもある日用品や食品と違い、その都度『1冊買い』されることが多い雑誌の特性上、アマゾンという巨大チャネルを通じてタイムリーに販売する機会が減ることの影響は計り知れない」
https://diamond.jp/articles/-/185876

------------------------------------------------------

3)【深夜の誌人語録】

贅沢とはお金で買えない経験である。