【文徒】2015年(平成27)9月14日(第3巻174号・通巻619号)

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1)【記事】CCCに図書館運営を任せられるのか
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】CCCに図書館運営を任せられるのか

CCCが「武雄市図書館の蔵書について」を発表。「選書」の内容については反省しているが、当時、資本関係にあった「新古書店」から購入したことについては反省していない。
「ご指摘の蔵書は、2013年4月のリニューアル開館前に武雄市から業務委託を受け、初期蔵書の強化として追加納入した蔵書になります。追加納入蔵書数10,132冊(当時、CCCが出資するネットオフ等より商品リストを事前に確認の上で購入。※現在は資本関係はございません)、納入金額760万円(装備費、物流費含む)で追加納入した蔵書について、より精度の高い選書を行うべき点があった事を反省しております。
追加納入蔵書について調査した結果、リニューアル開館から2015年9月9日までの約2年半で一度も借りられていない蔵書が1,630冊ある事が判明致しました。つきましては、弊社にてこれらの蔵書と同等の冊数を新たに選書し寄贈することと致します。(1,630冊寄贈予定)これらの対応を、市当局と相談の上、可及的速やかに実施します。
官民一体となった取り組みとなる武雄市図書館については、これまでと変わらず市当局と連携をし、細心の注意をもって今後の運営に注力して参ります」
http://www.ccc.co.jp/news/2015/20150910_004827.html
寄贈予定の1,630冊を再び「新古書店」から購入するのだろうか。図書館が新古書店から蔵書を購入するのが常態化すれば、書店にとっても、版元にとっても大打撃である。取次の再建には取り組めても、CCCに物申せない出版業界にどんな明日が待ち受けているか想像しただけでゾッとする。
愛知県小牧市は新図書館建設に際して、CCCと組もうとしたが、小牧市議会で賛否を問う住民投票条例が可決され、住民投票が実施されることになった。こうした動きにCCCは慌てて「武雄市図書館の蔵書について」を発表したのかもしれない。こちらはTRCも噛んでいるので蔵書を新古書店から仕入れることはないだろうが、この住民投票の結果に注目したい。
http://www.city.komaki.aichi.jp/mayor/014797.html
http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/10/takeoshi-ccc_n_8117678.html
http://mainichi.jp/select/news/20150911k0000m040030000c.html

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2)【本日の一行情報】

◎LINE公式キャラクターグッズショップ「LINE FRIENDS STORE 仙台」が9月19日にオープン。「LINE FRIENDS STORE 原宿」につぐ二店舗目だ。LINEのOtoO戦略が加速していくのかもしれない。
http://sendai.keizai.biz/headline/1954/

◎「ピープル」が「2015年の女性ベストドレッサー」を発表。今年はアカデミー賞受賞女優のリース・ウィザースプーンである。アレクサンダー・ペインの快作「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」の主演女優である。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/10/witherspoon-best-dresser-idJPKCN0RA06N20150910
アメリカ独立宣言の署名者のひとり、ジョン・ウィザースプーンの子孫なんだよね。

ダレノガレ明美ツイッターでの証言。
「DSの帰りにanan買いました このボディーにするには…言えないくらい大変でした!でも、とりあえずお尻と胸は落ちないように一週間で作り上げました!運動と食事制限!ちなみに撮影2日前から休みをもらい追い込みかけました!」
https://twitter.com/The_Darenogare/status/641531448650956800

幻冬舎が「YOUNG GOETHE」(ヤングゲーテ)に挑戦。
http://news.mynavi.jp/news/2015/09/10/163/

◎「憲法表現の自由を考える出版人懇談会」は安保法制の強行採決に反対する550名の署名を集めたそうだ。呼びかけ人となったのは淺野純次(元東洋経済新報社社長) 今村正樹(偕成社社長) 岩崎弘明(岩崎書店社長) 内田剛弘(弁護士) 大谷充(出版労連中央執行委員長) 岡本厚(岩波書店社長) 菊地泰博(現代書館社長) 北村肇(『週刊金曜日』発行人) 清田義昭(出版ニュース社代表) 篠田博之(月刊『創』編集長)嶋田晋吾(EIC代表)白井勝也(小学館最高顧問)田島泰彦(上智大学教授)中川進(大月書店社長)元木昌彦(元講談社)山了吉(出版倫理問題研究会)吉田仁(講談社)の各氏。
http://ideanews.jp/archives/9284

朝日新聞によれば「裁判など法律実務で多く使われる『判例百選』シリーズの『著作権判例百選』を巡り、編者の一人だった大渕哲也・東京大教授が、改訂版で編者から外されたのは著作権の侵害に当たるとして、出版社の有斐閣を相手に出版差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てたことが分かった」そうだ。
http://www.asahi.com/articles/ASH987RD3H98UCVL019.html

◎ドラマ「深夜食堂」が韓国で開催された「ソウルドラマアウォード2015」で、年間最高人気外国ドラマ賞を受賞した。もちろん、原作は小学館ビッグコミックオリジナル」連載の同名マンガだ。
http://www.oricon.co.jp/news/2058926/full/

◎KADOKAWAは、創刊20周年号となる競馬情報誌「サラブレ」の電子配信を9月15日よりスタートする。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001745.000007006.html

ビートたけし責任編集のネットマガジンが徳間書店から誕生するそうだ。「THE PAGE」は次のように書いている。
「たけしが昨年から漫画雑誌の創刊に興味を示したことで、その北郷(注/「アサヒ芸能」に連載を持つたけしの弟子・ アル北郷)が同誌を発行する徳間書店の担当編集者に話を持ちかけたところ、1年にわたる協議の結果、紙媒体ではなく、たけしの原作漫画も含め内容的には何でもありとなる、ビートたけしが責任編集長を務めるネット・マガジンの創刊が決定したという」
http://thepage.jp/detail/20150910-00000004-wordleaf

◎「OZmagazine」が、都道府県別の旅ムック「OZmagazine meet JAPAN47」を創刊した。
http://top.tsite.jp/news/magazine/i/25382458/

◎米ナショナル・ジオグラフィック協会は雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」やケーブルテレビチャンネルを含むメディア部門を FOXに売却する。
http://www.afpbb.com/articles/-/3059890

朝日新聞から退社することを決めた稲垣えみ子・編集委員は良いところに気がついた。垂直軸のコミュニケーションは「権力化」してしまうのである。
「もしかして、私はマスコミにいながらコミュニケーションをしてこなかったのかもしれない。新聞とは正しいことをキチンと書いて伝えるものだと思ってきました。でもそうしてがんばって書いた記事の反響は驚くほど少なかったのです。わずかな反響は苦情と訂正要求。『正しいこと』には別の『正しいこと』が返ってくる。それは果たしてコミュニケーションだったのか」
http://www.asahi.com/articles/ASH975CJLH97ULZU00B.html

◎私も朝日新聞に掲載された小熊英二の「(思想の地層)国会前を埋めるもの 日常が崩れゆく危機感」に強烈な違和感を覚えた。小熊の論考は「歴史修正主義」に毒されているのではないかと。
http://www.asahi.com/articles/DA3S11954845.html
北田暁大の小熊批判の連続ツイートは、読み応えがある。
「本来であれば歴史学(過去の出来事の記述の真偽)で勝負すべき立場をとりながら、『歴史社会学』というマジックワードにより、歴史学的方法も言説分析・知識社会学的方法も避けている。そこから得られるのは、著者の枠組みに適ったデータの選択である。データが心理に近似するかは著者が決める」
http://matome.naver.jp/odai/2144198094087434601?&page=1
千坂恭二も次のように指摘している。
小熊英二は、基本的に、何も調べない、トンチンカンな人間のようだ。最近のデモと、1968年のそれを比較して、最近のデモは老若男女が参加しているところが1968年とは違うとか言ってるが、1968年においても老若男女は参加しており、小熊の論理は、いつも為にするものでしかない」
https://twitter.com/Chisaka_Kyoji/status/642075008647299072

◎9月11日付毎日新聞夕刊で金平茂紀は安全保障関連法案をめぐるテレビ局の報道ぶりを称して「絶望的なメディア状況」と呼んでいる。
「実際、安保関連法案をめぐる各紙および各テレビ局の報道ぶりには著しい差異がみられる。それは立ち位置の違いとか、そのようなレベルを通り越えて、あったことをなかったかのように無視する、報道しない、ベタ記事扱いにする。政権の意向を極度に忖度して批判的視点からの報道を自主規制する。国会会期中、まさに国会で審議が続いているその同時間帯に、ワイドショーに首相の出演を許す自発的隷従者=『腰巾着』のような立場に甘んじるテレビ局があった。番組には『たいこ持ち』らが出ていた」
http://mainichi.jp/shimen/news/20150911dde018070030000c.html
「著しい差異」とは、どのようなものであったか。つまり、どの局はどうで、どの局はどうであったかの具体的な記述のない主張を私は信用しないことにしている。このような具体を欠いた言説が醸成するのは、山本七平が言うところの「空気」にほかなるまい。これもまた「絶望的なメディア状況」ならではの風景ということか。

中川淳一郎も指摘していたと思うが佐野研二郎の著作「7日でできる思考のダイエット」(マガジンハウス)のアマゾンレビューに書き込まれた5435字に及ぶ佐野批判が話題になっている。
http://goo.gl/DIl41U

◎クーロンの佐藤由太社長が紹介されている。クーロンは「ウェブメディアに『炎上しないコメント欄』を提供するインターネットテクノロジーカンパニー」である。
http://biz.bcnranking.jp/article/interview/face/1509/150910_140241.html
「NEWSポストセブン」や「東洋経済オンライン」が「炎上しないコメント欄」を実現するクーロンのシステム「QuACS」を導入している。

文化出版局のファッション誌「装苑」と資生堂の「マキアージュ」の2号続けてのコラボが話題になっている。
https://www.wwdjapan.com/beauty/2015/09/10/00017970.html

晋遊舎の子会社でアダルト系のマンガ誌「COMICポプリクラブ」、ゲーム雑誌「PUSH!!」を手がけるマックスが事業停止。「おたぽる」は栗田出版販売会社更生法申請が原因だとしている。
http://otapol.jp/2015/09/post-3918.html

◎「ダイヤモンド・オンライン」の「雑誌のプロたちが仕掛ける、訪日客爆買いの舞台裏」が興味深い。KADOKAWAが台湾で刊行している「Japan Walker」は「東京ウォーカー」の発行部数を超えているそうだ。講談社も「VOCE」でインバウンド戦略に取り組んでいる。
「『VOCE』のキラーコンテンツの1つは、美容界のプロたちが選ぶ『ベストコスメ』。これを簡体字繁体字(いずれも中国語の文字)に翻訳したものを、今年夏から公式サイトで提供している。また中国で2つ、単発のフリーペーパーも発行。『VOCE』や、同じく講談社女性誌『with』から美容記事を抜き出して掲載した」
凄いのは昭文社。同社は無料アプリ「DIGJAPAN!」を運営しているが、社員約400人の1割強がインバウンド事業に従事していて、台湾人やタイ人も社員として採用しているそうだ。
http://diamond.jp/articles/-/78226

◎ぴあは、全国のレジャー施設の飲食店や外食チェーン店の、食物アレルギー対応の情報などをまとめた MOOK「食物アレルギーでも楽しくお出かけできる本」を刊行する。
http://corporate.pia.jp/news/%E3%80%90%E3%81%B4%E3%81%82%E3%80%91%E9%A3%9F%E7%89%A9%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E3%81%A7%E3%82%82%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%8A%E5%87%BA%E3%81%8B%E3%81%91%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E6%9C%AC_%E7%99%BA%E5%A3%B2_201509.pdf
スーパーマリオブラザーズ」30周年記念のメモリアルブック「スーパーマリオぴあ」も刊行している。
http://www.4gamer.net/games/260/G026097/20150910040/
スーパーマリオ世代は40代ということだ。

◎元全国紙社会部記者で販売局の経験も持つ幸田泉の「小説 新聞社販売局」(講談社)が刊行された。全国紙のビジネス規模が大き過ぎて変わろうにも変われない現実にメスを入れている。出版社にとっても笑いごとではない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44980

◎「テレビにはない『自由と選択』を提供できる」がネットフリックスであるという。ネットフリックスにおいて編成権は視聴者が手にするということだ。
http://japan.cnet.com/interview/35070271/

講談社女性誌FRaU」が主催する第3回フラウマンガ大賞は、ヨネダコウ「囀る鳥は羽ばたかない」に決定。「ihr HertZ」(大洋図書)に連載されているBLマンガだ。ヤクザと元警官が主人公!批評センスが光るグッドチョイスだと思う。
http://natalie.mu/comic/news/159709
http://www.bs-garden.com/feature/saezurutoriha/

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3)【深夜の誌人語録】

癒着と友情は全く違うということを理解しておくべきだ。