【文徒】2015年(平成27)3月17日(第3巻50号・通巻495号)

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1)【記事】「境界のないセカイ」が「マンガボックス」連載中止、単行本化中止
2)【記事】CCCが狙うは「金太郎飴書店」からの脱却
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.3.17 Shuppanjin

1)【記事】「境界のないセカイ」が「マンガボックス」連載中止、単行本化中止

DeNAが運営する「マンガボックス」で連載されていた幾夜大黒堂の「境界のないセカイ」が第15話をもって終了することになった。幾夜大黒堂は自らのブログで次のように書いている。
「連載中止の理由ですが、講談社さんからの表現上の問題から単行本発売中止決定し、これによりマンガボックスさんが本作で収益をあげられる見込みがなくなったことです」
「表現上の問題」とは?このブログによれば、こういうことだという。
講談社さんが危惧した部分は作中で"男女の性にもとづく役割を強調している"部分で、『男は男らしく女は女らしくするべき』というメッセージが断定的に読み取れることだと伺っています。
(私への窓口はマンガボックスさんの担当編集氏なので、伝聞になっています)
これに対して起こるかもしれない性的マイノリティの個人・団体からのクレームを回避したい、とのことでした」
しかし、幾夜大黒堂は次のように書いている。
「物語が進む中で主人公はヒロインをはじめとして性の越境を行った人に触れる中で、こうした無関心から来る考え方にすこしずつ疑問を抱いていき、最終的には多様な生き方に寛容な考えを持たせていくつもりでおりました」
http://ikuya.sblo.jp/article/115089330.html#more
幾夜大黒堂自身も書いているが、作者、「マンガボックス」の編集担当者、講談社の出版担当者という三者のコミュニケーション不足が惜しまれる。

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2)【記事】CCCが狙うは「金太郎飴書店」からの脱却

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とBookLiveは、Airbookに続くサービス第2弾として「TSUTAYAデジタル特典」を提供している。例えば、3月19日に発売される「OVERTURE No.002」(徳間書店)をTSUTAYA店頭でTカードを提示して購入し、利用登録をすると、同誌未収録写真の電子版=デジタル特典がもれなくBookLive!で閲覧できるという。
http://www.ccc.co.jp/news/2014/20140313_004717.html
クリエイティブディレクターはニコラ・フォルミケッティ、編集長は山崎潤祐、ファッション・ディレクターは渡辺俊輔という2012年9月に休刊した「VOGUE HOMMES JAPAN」のメンバーが揃って年に2回刊行する「FREE MAGAZINE」は、TSUTAYAの約260店舗限定で配布される。4月上旬より、公式HPで雑誌のコンテンツが随時公開されるという。また4月10日(金)にはラフォーレ原宿1Fに「FREE MAGAZINE」プロデュースで「FREE GALLERY」がオープンするという。
http://top.tsite.jp/news/i/22777254/
http://freemagazine.jp/
他の書店との「差異」化をCCCは積極的に図るつもりなのだろう。CCCならずとも金太郎飴書店からいかに脱却するかが、書店が生き残るにあたっての「鍵」である。家電と出版物を組み合わせるのも、「差異」化戦略の一環なのである。

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3)【本日の一行情報】

◎マイボイスコムと読売広告社による「タレントイメージ調査2015」。好きな男性タレントの第1位は「マツコデラックス」、第2位「阿部寛」、第3位「福山雅治」、第4位「錦織圭」、第5位「嵐」、第6位「明石家さんま」、第7位「堺雅人」、第8位「西島秀俊」、第9位「大泉洋」、第10位「池上彰」。好きな女性タレントの第1位は「綾瀬はるか」、第2位「新垣結衣」、第3位「天海祐希」、第4位「石原さとみ」、第5位「深田恭子」、第6位「堀北真希」、第7位「柴咲コウ」、第8 位「杏」、第9位「北川景子」、第10位「仲間由紀恵」。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/enterprises/release/detail/00118276.html

◎森本あんりの「反知性主義アメリカが生んだ『熱病』の正体―」(新潮選書)が3刷累計10,500部と好調。内田樹編著の「日本の反知性主義」が晶文社から刊行されるというし、「反知性主義」という言葉は覚えておこう。
http://www.shinchosha.co.jp/news/blog/2015/03/11.html

◎学研は高齢者住宅の業界では大手である。トーハンとも組んでいる。
http://holdings.cocofump.co.jp/
学研ココファンホールディングスは、サービス付き高齢者向け住宅を主な運用資産とするファンドを設立する。運用を手がけるのは玄海キャピタルマネジメント(福岡市中央区)。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20150311/408683/?ST=ndh
http://www.genkaicapital.com/index.php/company/mission

◎遂に書店でブラジャーまでも売る時代となった!主婦の友社は、夜用に開発したブラジャーを付録にした「寝ながら美乳 つけナイトブラ」を1,900円+税で発売開始。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/enterprises/release/detail/00118234.html

◎キッズファッション誌「ミルクジャポン」(アマナ)は、表参道ヒルズに1年間限定のセレクトショップ「アニバーサリーミルク」をオープン。
http://www.wwdjapan.com/fashion/2015/03/12/00015724.html

◎ファッション誌「andGIRL」(エムオン・エンタテインメント)4月号の付録は、モデルの中村アンの“かきあげヘア”の作り方を解説したDVD。
http://kirei.mainichi.jp/kireinews/news/20150312dog00m100027000c.html

トルーマン・カポーティの「真夏の航海」が講談社文庫になった。翻訳は安西水丸だ。カポーティの死後21年目にして刊行された作品だ。カポーティが住んでいたブルックリンのアパートの管理人がゴミ箱から原稿を回収し、その管理人の死後に甥にあたる人物が原稿を発見したという逸話を持つ。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062930512

世界報道写真財団が主催する報道コンテストで日本の「ネットカフェ難民」を取り上げた作品がマルチメディア部門で3位に。ニューヨークに拠点を置くスタジオ「MediaStorm」の制作。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/03/12/netcafe-movie_n_6853040.html

EU司法裁判所は、電子書籍を「書籍」ではなく「電子サービス」として扱うという判決を下した。フランスでは紙の本が5%に対して電子書籍は20%の税率がかかるようになる。
http://www.gizmodo.jp/2015/03/eu_1.html

トーハンは、「書店店頭とWebサイトの連動」をコンセプトに書店店頭活性化施策の一環として、KADOKAWAと連携した「春らんまん 2つのおまけつきコミックエッセイフェア」を、3月中旬より全国520書店で開催する。e-honおよびWeb広告やSNS等オンライン上でのキャンペーン告知により書店店頭への誘導を図り、対象書籍購入者を「e-hon・Digital e-hon」に誘導し、新たなユーザー創出を図る。
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/ehon_kadokawa/

主婦の友社はアイドルレシピ本に力を入れている。相沢梨紗の「RISAGOHAN RECIPE」と夢眠ねむの「夢眠軒の料理」がそうだ。二人ともでんぱ組.incである。特別付録つきの初回限定版(各4630円+税)は大人気だとか。通常版は1400円+税なんだけど、初回限定版はアマゾンで1万円以上の値がついている。
http://natalie.mu/music/news/140943
乃木坂46が女性ファッション誌のモデルならば、でんぱ組.incはレシピ本で勝負する。ともに女性ファンを獲得するための戦略なのだろう。

◎「熊本県水俣市から水俣病の『語り部』や支援者らが1月、東日本大震災による原発事故で避難生活を続ける福島県の被災地を訪問した。仮設住宅に避難した人々との交流や住民が避難し無人となった町を目の当たりにし、豊かさを追い求めた結果もたらされた水俣や福島の悲劇を繰り返してはならないと強く訴えた」
こう書き出された「被災地を歩く 水俣病の「語り部」教訓伝える 福島」は、東京でも、毎日でもなく、朝日でもなく、産経の3月2日付の記事である。もっと話題になると思っていたのだが、あまり話題にならなかったので紹介しておこう。記事を書いたのは大渡美咲。大渡は1983年、福島県飯舘村生まれ。村立草野小、飯舘中、県立原町高校を卒業。関西大学を卒業し、2006年に産経新聞社入社している。
http://www.sankei.com/region/news/150302/rgn1503020014-n1.html
これは産経の書評。服部英雄の「蒙古襲来」(山川出版社)を上級専門委員の気仙英郎が評している。
「こうした史料の読み間違いを見直してみえてきたものは何か。神風を政治的に利用した人々の存在である。神風の政治的利用は近代にいたるまで続き、太平洋戦争の『神風特攻隊』という悲劇につながった」
http://www.sankei.com/life/news/150315/lif1503150027-n2.html
気仙は経済畑を歩んできたが、何と大瀧詠一の追悼文を紀貫之なんぞを引用して書いている。
http://www.sankeibiz.jp/express/news/140115/exf14011511360001-n1.htm

サントリーが2月に出した新聞広告「休肝日の華麗なる断り技」が未だに話題になっている。技ありの広告だよね、これ。
http://entermeus.com/139152/

◎文春新書の発売は毎月20日と決まっているが、橋下徹とのバトルが話題になっている藤井聡の「大阪都構想が日本を破壊する」は、繰り上げて4月6日に発売となる!統一地方選前の刊行を実現した。内容のみならず、販売においてもジャーナリスティックな施策である。

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4)【深夜の誌人語録】

深く考え、行動は軽やかに、が鉄則である。