【文徒】2015年(平成27)3月18日(第3巻51号・通巻496号)

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1)【記事】「GINZA」4月号を読んでいたら、こんなことを書きたくなった
2)【記事】筒井哲也「有害都市」を知っていますか?
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.3.18 Shuppanjin

1)【記事】「GINZA」4月号を読んでいたら、こんなことを書きたくなった

「おとなのオリーブ」が付録で話題を呼んだ「GINZA」4月号。「名作映画とファッションの時代」を担当した編集者はセンスが抜群に良い。だって、「リトルロマンス」を除けば、ぜ〜んぶオレの好きな映画ばかり。ジョン・カサヴェテスジーナ・ローランズの「こわれゆく女」やルイス・ブニュエルの「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」、エリック・ロメールの「クレールの膝」を選ぶセンスはただ者ではあるまい。ファッションという観点からすればアントニオーニの「さすらいの二人」やヴィム・ヴェンダースの「アメリカの友人」「都会のアリス」、マーチン・スコセッシの「アリスの恋」なんていう選択もあるだろうな。ゴダールの「男性・女性」もあるよね。
おっと忘れてならないのは片岡義男がインタビューに登場していることだ。実は「ポパイ」創刊に際して、木滑良久編集長は片岡に声をかけている。ところが、片岡は断る。その代わりと言って片岡が紹介したのは、べ平連の室謙二だった。「ポパイ」の最初のというか、伝説のハワイ特集は、室がロケのために用意された車両ではなく、ハワイの人々と同じように普通のバスに乗ることを選択して生まれたのである。こういう人材が左翼の(というか理屈好きな)甘糟章ではなく、その手の思想とは全く無縁で、(どちらかと言えば)カンが頼りの木滑良久の回りに集まってくるところが、マガジンハウスの「凄み」であったと私は理解している。
ちなみに編集者であれば室の「旅行のしかた 内側からタマゴを割る」(晶文社)は読んでおくべきだと思う。
http://magazineworld.jp/ginza/ginza-214/
ちなみに私はウンガロ・エマニュエルの最も似合う女優はジーナ・ローランズだと思っている。クリスチャン・ディオールであればローレン・ハットンで決まりなんてね。この意味がわからなければ、ファッション誌の編集者なんて今日からやめたほうが良いかも…これは冗談。
最後に次のような木滑良久の発言を紹介しておこう。かつて私が木滑に「編集者とは?」と問うたときに返ってきた発言である。
「編集者にとって何をやりたいのかが大切なはずだけれど、今どうなっているのかというと、企画はコストというところから取り敢えず始まるんです。その規制の枠内で、さあ、やれと。編集はね、その規制を一所懸命に守ることで精一杯になり、いつの間にか、何がやりたいのかと問われても、これをどうしてもやりたいんだというものがなくなってしまう。そりゃあ、ある程度のコスト意識がなければ商品として成立しないけれど、こういう本を作りたいという情熱がなくなってしまっていることは問題ではないでしょうか。編集者として何をしたいのかということをもっと大切にすべきだと僕は思う。
大胆なことを言ってしまうと、それこそ編集部って必要なの?というところから考え直したほうが良い。いくつもデスクが並んでいる大組織で、その管理を一所懸命にやっている編集長っていますよね。クリエイティブなことに一切、触らないでさ。そうなると物凄くつまらない雑誌になってしまうと考えないのでしょうか。
出版社は、もっと先祖がえりをして、本来の姿に戻り、もう少しシコシコやる会社に戻ったほうが良いかもしれません。
だいたい今、生えている草で何とかまとめようとしても無理なんですよ。種から植えないと雑誌はできないんです。女性誌の数が増えたけれど、種を植えるところから始めていないから、編集者もグラフィックデザイナーも全く進化していない。正確に言うのであれば進化のないグラフィックデザイナーに進化のない編集者が依存してしまっている。だから勤続疲労であっという間に賞味期限が切れてしまう。編集部も大所帯は時代遅れだと思う。少人数が良いよね。そのほうが意思の疎通を図れるし、却って外部からいろいろな奴が集まって来る。
僕から言わせれば編集者になろうと思って編集者になることが間違いなんです。今は編集者だけれど、いずれオレは作家になるんだとか、編集者ではない何かになろうと思っている編集者のほうが良いんだよ。というよりも、編集者という職業があると誤認している奴が間違っている。
そういう奴って勉強はできたんだろうけれど、見ていると、間違ったカタチで権力志向を抱きがちだよ。本当はさ、編集者なんて恥ずかしくて表に出られないような稼業なんです、編集者は。裏でシコシコと仕事をしているのが本来の編集者だと思う。でも、思い込んだら命がけだから、これをやりたいとなったら、誰が何と言おうと、みんなはこう言うけれど、こういうもんじゃないだろうとやっちゃう。
その時に武器になるのが、いい加減さなんですよ。いい加減さって鍛えようと思っても鍛えられないからね。いい加減さって、実は天性の才能なんです。要するに編集者に問われるべきは真面目さを欠いた人生に真面目であるかどうかだと思う」

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2)【記事】筒井哲也「有害都市」を知っていますか?

ウェブコミック誌「となりのヤングジャンプ」から生まれた筒井哲也の「有害都市」の単行本はフランスで3月12日に先行発売された!
http://www.ki-oon.com/news/200-poison-city-le-coup-de-poing-tsutsui.html
日本では上巻(全2巻)が4月17日に集英社から発売される。「有害都市」のテーマは「表現の自由」。主人公は「人の屍肉を食べたいという抗し難い欲求にかられる“食屍病”の蔓延を描く作品を発表する一人の漫画家」だ。
http://getnews.jp/archives/865064
フランスでの筒井に対する評価は、もともと高い。
http://matome.naver.jp/odai/2135769807730723801
まあ読んでみて下さい。
http://tonarinoyj.jp/manga/yugaitoshi/
こういう刺激的な作品は売れてほしいなあ。筒井哲也はウエブから生まれた才能である。紙の雑誌では商売として敬遠されるにしても、表現において突出したマンガ作品は、今後、ネットから誕生することになるだろう。小説でも同じような現象が起きれば面白いのだけれど。私は「純文学」を念頭に置いて言っている。
そうそう筒井の「予告犯-THE COPYCAT-」は「ジャンプ改」から「週刊ヤングジャンプ」に移籍した。
http://www.pn221.com/index.html

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3)【本日の一行情報】

◎「週刊少年サンデー」(小学館)連載の「名探偵コナン」が25日発売の2015年17号から不定期掲載になるという。「オリコンスタイル」は、次のように書いている。
小学館によると、青山氏はすでに入院中。病名などは『プライベートに関わることなので答えられない』としているが、昨年から入退院を繰り返していたという」
http://www.oricon.co.jp/news/2050026/full/
ウチの娘が小学生の頃、コナンの大ファンだった。コミックスの台詞を暗記していたくらいだった。その娘も今や20代半ば。
ちなみに「週刊少年サンデー」16号の表紙は「名探偵コナン」で、タイトルロゴがない状態で発売される。怪盗キッドに盗まれたという設定だ。

◎「第40回小学館集英社杯小学生将棋名人戦」の決勝大会が4月19日に東京「チサンホテル浜松町」で開催される。小学館集英社のイベントは結構、出席しているけれど、これは出席したことが一度もない。こういうこともやっているんだよねぇ。予選は全国規模で開催しているんだよ。
http://ganchansyougi.blog72.fc2.com/blog-entry-2609.html
http://www.shogi.or.jp/taikai/shougakusei/index.html

集英社はデジタルコミックキャンペーン「春マン!!2015」を各電子書店で開催中。目玉は100作品124冊が無料で配信されることだ。
http://haruman.jp/

◎戸塚啓の光文社新書「低予算でもなぜ強い?湘南ベルマーレと日本サッカーの現在地」は読んでみようと思う。オレ、者貴裁(チョウ貴裁)監督の90分間を走り抜くサッカーが好きなのよ。
http://www.bellmare.co.jp/119497

文藝春秋又吉直樹「火花」の4刷10万部を決定。累計35万部だってさ!他人事ながら嬉しいんだよね。こうなりゃ芥川賞ゲットで100万部突破だ。
http://www.oricon.co.jp/news/2050066/full/
「第2図書係補佐」(幻冬舎)を遅ればせながら読んだんだけれど、これも良いよ。又吉は遅れてきた太宰治である。

毎日新聞が福岡市中央区の芸能事務所「エレガント」から発行されている地元密着型の季刊ファッション誌「LIRY」を紹介している。上野圭助編集長はスタイリスト出身だ。「天神女子」とか「修猷館女子」って良いよなあ。
http://mainichi.jp/select/news/20150316k0000e040202000c.html
http://liry.org/

◎「赤塚不二夫80年ぴあ」(ぴあ)が、5月22日に刊行される。今年は赤塚の生誕80年に当たる。
http://akatsuka80.piabook.com/
その昔、ゴジラがシェーをしたんだよなあ。「週刊少年サンデー」の表紙を飾ったんだぜ。「カムイ外伝」という文字も見えるでしょ。
http://sasshi-lf.c.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_814/sasshi-lf/sye.JPG?c=a0
カムイ外伝」は私の歴史観に少なからぬ影響を与えた作品のひとつである。

◎LINEで「俺通信」が急増しているらしい。
http://www.excite.co.jp/News/woman_clm/20150315/Hanakuro_19284.html
この「文徒」も「俺通信」だったりして!
フェイスブックでは「元カレ発掘」が流行っている。
http://news.mynavi.jp/news/2015/03/16/331/

水原希子が、韓国のファッション誌「VOGUE girl」4月号の表紙を飾った。
http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2016196

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4)【深夜の誌人語録】

もっとバカになれば良い。小利口には絶対になるな。何故なら小利口は最低の才能なのだから。

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