【文徒】2018年(平成30)4月5日(第6巻62号・通巻1236号)

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1)【記事】私は放送法4条撤廃に賛成である
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】私は放送法4条撤廃に賛成である

どうしたんだ?産経!安倍政権擁護ではなかったのか。安倍政権が打ち出した放送局に政治的公平などを義務付けた放送法4条の撤廃について、3月30日付産経は次のように書いている。
「しかし、こうした規制が撤廃されると、ネット上で現在横行しているフェイク(偽)ニュースやヘイトスピーチ(憎悪表現)が放送されたり、選挙報道の中立性が損なわれたりする可能性がある。また、『目を背けたくなる過激な暴力、性表現が子供に直接降りかかる』(テレビ朝日早河洋会長兼CEO)恐れもある」
https://www.sankei.com/politics/news/180330/plt1803300040-n1.html
産経も所詮はオールドメディアの一角を占める存在にしか過ぎないようである。そうフジテレビには頭が上がらないのだろう。フジテレビにせよ、テレビ朝日にせよ、どこにせよ、民放はクロスオーナーシップのもとで電波既得権を手放したくないのである。だから放送法4条撤廃には反対なのである。しかも4条撤廃とセットになっている電波オークションについては言及しない。新聞社とテレビ局は資本的に繋がっているがゆえの悪しき弊害とでも言おうか。そもそも政府が放送局の許認可権を持つのはOECD諸国において日本だけなのである。独裁国家でもない限り、無線局の免許も放送免許もオークションで公正に競争するのが世界からすれば常識とさえ言えるだろう。
特に情けないのはリベラル勢(一昔前であれば進歩派と言ったよね)である。例えば「反安倍」の急先鋒たる東京新聞
「一五年四月には自民党が、官邸批判をしたテレビ朝日関係者らを党会合に呼び、『政権からの圧力』と批判を受けた。このとき根拠にしたのが『報道は事実をまげない』などとした放送法四条。これを含めて、四条は、政治家が放送業界に圧力をかける際に乱用されることがあった」
4月4日付の紙面で、こう書くから、放送法4条撤廃には賛成なのかと思いきや「しかし」とつづける!
「しかし、放送法に詳しい上智大の音好宏教授(メディア論)は『四条を撤廃して自由にすることで多様な言論を担保できるかと言えば、『悪貨が良貨を駆逐する』危険性がある』と警鐘を鳴らす。テレビ放送などに政治的な公正・中立を求める『フェアネス・ドクトリン(公平原則)』が一九八七年に廃止された米国に関して『右派のニュースが非常に増え(社会の)分断が進んだ』とも分析する」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201804/CK2018040402000137.html
そもそも国連人権理事会で「表現の自由」に関する特別報告者のデービッド・ケイが日本政府によるメディアへの圧力を懸念すると演説した際にリベラル勢は快哉を叫んだのではなかったのか。例えば朝日新聞にしても昨年の段階では放送法4条を問題視するデービッド・ケイの側に立っていたように思う。
「ケイ氏はこの日の記者会見でメディアの独立性をめぐり、『放送メディアの規制は(政府から)独立した規制当局がやるべきだ』と指摘。政府が放送局を規制すれば、同系列の活字メディアにも圧力がかかる恐れがある、と分析した」
https://www.asahi.com/articles/ASK624VGWK62UTFK00P.html?iref=pc_extlink
次のように書く上智大教授にして元日本テレビの水島宏明などはデービッド・ケイの鋭い指摘を思い出すべきである。
「私たち国民にとっても、見ているテレビ局が「安倍さん寄りチャンネル」「枝野さん寄りチャンネル」「志位さん寄りチャンネル」などになってしまうかもしれないという局面です。少なくとも私は、そんなふうにしてテレビは見たくありません。テレビはもっと取材者が自由に取材して報道していくもの。これが大事だと思う問題意識を深めた報道をしてほしいものです。政治色を意識してチャンネルを変えるなんて、自分はやりたくはありません。もっとテレビの報道者たちを信頼して視聴したいと思います」
https://www.huffingtonpost.jp/hiroaki-mizushima/tv-change_a_23393117/
デービッド・ケイは放送法4条を撤廃すべきだと言い切っているのである。「テレビはもっと取材者が自由に取材して報道していくもの」であればこそ放送法4条は撤廃すべきだということだ。
「放送の置かれた立場から言うと、権力者からの独立性が法律的にあいまいです。特に放送法4条に『政治的に公平であること』と書かれています。これは法律上の義務と解釈できます。
174条を見ると、4条違反があれば、業務停止を命じることができます。停波の可能性も含め、大きな懸念です。放送法そのものが政府の規制を許容しているからです。
ジャーナリストからも『過去にこの条項が実施されなかったとしても、罰が下された事実がなかったとしてもやはり脅威だ。強くメディアの報道の自由を行使することができなくなる』との意見でした。
放送法は改正し、4条を削除する必要があります。政治的公平性を判断することは非常に大きな議論が必要ですが、政府がコントロールすることであってはなりません。独立性のある第3者機関が管理すべきです。政府が直接、規制を放送に及ぼしてはなりません」
https://www.huffingtonpost.jp/2017/06/12/story_n_17065866.html
福島瑞穂のツイート。自らがタブルスタンダードに絡めとられていることがわからないのだろうか。
「東京労働局長の発言に端的に見られるようにメディアに対して圧力や恫喝を加えている安倍政権。放送法改悪して、政治的中立性をなくせば、安倍内閣を礼賛するテレビ局が増殖するだろう。それが狙い」
https://twitter.com/mizuhofukushima/status/981316082643292162
こんなことだからリベラルは上念司あたりにからかわれるのである。
「マスコミのダブスタぶりには呆れますな。国連の方から来た人が放送法4条撤廃って言ってた時は大賛成だったのに。ひょっとしたらダブスタじゃなくてガチでアホなの?」
https://twitter.com/smith796000/status/981331923967463424
池田信夫は次のように指摘している。
「電波法では、放送局が放送法に違反したときは政府は無線局の免許を停止できるので、2016年に高市早苗総務相は、国会で『放送法4条に違反した場合は電波を止めることがありうる』と答弁した。
このときテレビや新聞は『言論の自由の侵害だ』と反発した。だから言論の自由を守るためには、第4条を撤廃することが望ましい。ところが今回、彼らはその撤廃に反対しているのだ」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52720
池田信夫は「言論統制で民放の既得権を守ろうとする読売新聞」で次のように書いている。異議な〜し!
「放送改革が『番組の劣化と信頼失墜を招く』とは笑止千万だ。今の民放が、これ以上劣化することはできない。民放のワイドショーが偏向していないと思う人もいないだろう。それでいいのだ。私は民放なんかまったく見ないが、困ったことはない。何が公平で何が偏向しているかは、多くのメディアの自由な競争の中で、視聴者が判断すればいいのである」
http://agora-web.jp/archives/2031792.html

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2)【本日の一行情報】

◎「赤旗」によれば道徳の教科書を手がける「日本教科書」の代表取締役と「マンガ嫌韓流」を出版した「晋遊舎」の会長は同一人物だそうだ。武田義輝がそうだ。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-03/2018040315_01_1.html
在特会桜井誠元会長の「嫌韓流 実践ハンドブック 反日妄言撃退マニュアル」「嫌韓流 実践ハンドブック2  反日妄言半島炎上編」「反日韓国人撃退マニュアル」「日本侵蝕─日本人の『敵』が企む亡国のシナリオ─」の版元は晋遊舎だそうである。「リテラ」によれば「晋遊舎は2000年代までアダルト雑誌や成人向けマンガ(いわゆるエロ本)を展開」していたそうだ。
「本サイトも国会図書館で調べてみたが、たとえば単行本『りとらば』(あかざわRED/2005年)は、体型からして明らかに小・中学生ぐらいとしか思えない女児のキャラクターが、男性主人公を『おにーちゃん』などと呼びながら性行為をするというような短編がまとめられている。あまりに露骨すぎるので性行為場面の引用は控えるが、同単行本の裏表紙には、ふたりの男性の『やはりちっちゃいコはツルツルがいいですな』『はずかしさプラスおもらしもいいっスよ』などという会話が掲載されていた」
http://lite-ra.com/2018/02/post-3816.html
朝日新聞の「安倍首相ブレーン助言の道徳教科書も合格」(峯俊一平)は次のように書いている。
「中学道徳の教科書が合格した「日本教科書」は初めての検定申請だった。同社は安倍晋三首相の政策ブレーンとして知られる八木秀次・麗沢大教授らが2016年4月に設立した『道徳専門の教科書会社』だ」
https://www.asahi.com/articles/ASL3R3FLYL3RUTIL00K.html

◎ヘアアレンジブック「TOSHI’S 5 min. HAIR MAGIC」が宝島社から発売される。「TOSHI」とはヘアサロン「TWiGGY」のトップスタイリスト・水野年朗のことだが、Instagramフォロワーが23万人を超えているんだって!宝島社はソーシャルメディアからネタを拾ってくるのが上手である。ちなみに、「TOSHI’S 5 min. HAIR MAGIC」で紹介された全ヘアアレンジにはC CHANNELに連動したQRコードがついていて、動画視聴できるそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000659.000005069.html
「TWiGGY」って愛媛県松山市にあるんだね。ソーシャルメディアの時代なればこそ、だ。

◎「週刊少年マガジン」(講談社)に連載中の鈴木央の「七つの大罪」が舞台化されるがヒロイン役を乃木坂46の梅澤美波がつとめることになった。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201804020000838.html

◎月間600万PVを誇る「mi-mollet」(ミモレ)の大草直子編集長が5年ぶりのスタイルブック「大草直子のSTYLING&IDEA」を講談社から刊行した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001650.000001719.html
大草編集長って格好良いよね。オレ、インタビューしたことあるんだ。

◎NHKの公式アカウント「NHK生活・防災」は4月2日午前9時前に「地震 震度4 福島中通り 茨城北部」などと誤った情報をツイート。約4分後に削除し、次のようにツイートした。
「先ほど午前9時前に投稿した地震についてのツイートは、実際には地震は起きていないので削除しました。申し訳ありませんでした」
https://twitter.com/nhk_seikatsu/status/980598186065608704

こうの史代の「夕凪の街 桜の国」(双葉社)が、NHK広島放送局の開局90年ドラマとして映像化される。放送は8月6日(後7:30〜8:43)。
https://www.oricon.co.jp/news/2108832/full/

◎実写映画が4月7日に公開となる押切蓮介のマンガ「ミスミソウ」の描き下ろしの前日譚が、3日発売の「漫画アクション」(双葉社)8号に掲載された。
http://mainichi.jp/articles/20180402/dyo/00m/200/026000c

◎「紙とWebの狭間で〜紙&Web編集者のブログ」が「楽天の出版取次買収で期待すること」を掲載している。
http://cosmicpress.jp/blog-entry-9.html

◎「マジンガーZ大百科図録」がKADOKAWAから発売された。ギレルモ・デル・トロが喜びそうだ。
http://anime.eiga.com/news/106091/

◎テレビアニメ「蒼天の拳 REGENESIS」がTOKYO MXサンテレビKBS京都、BSフジで4月9日より放送開始される。「蒼天の拳 リジェネシス」は「月刊コミックゼノン」(徳間書店)で連載中である。
https://natalie.mu/comic/news/276233

◎「アニソンぴあ」が発売された。表紙を飾るのは「マクロスΔ」から生まれた戦術音楽ユニットの「ワルキューレ」だ。
https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1522729422

◎ぴあは9月29日(土)・30日(日)の両日、新木場・若洲公園で「PIA MUSIC COMPLEX2018」を開催する。
http://ticket-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201804030001
「ぴあ Movie Special 2018 Spring」は買った。
http://getnews.jp/archives/2032246

◎フジテレビの編成局編成センターの重岡由美子ゼネラルプロデューサーがジャニーズ事務所に出向する。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201804020000833.html

電通は、新事業や新産業の創発を支援する共創プロジェクト「DENTSU JAM!」(電通ジャム!)を始めた。これは、世界最大のイノベーションプラットフォーム「Plug and Play」や、IoTプロダクトなどの新技術開発支援を行うクロステック・マネジメント、イノベーションコンサルティングサービスを提供するフューチャーセッションズなど外部パートナーと連携し、スタートアップや異業種、競合関係にある企業など、複数の企業・団体を巻き込む「NtoN(多対多)モデル」での共創を推進する。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018040-0403.pdf
雑誌社も競合するばかりではなく多対多モデルを模索したほうが良いと思う。

電通は、公衆Wi-Fi自動接続アプリを提供する「タウンWiFi」と資本業務提携した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018042-0404.pdf

J-WAVE(81.3FM)と東北放送で2013年から放送している震災復興支援ラジオ番組「Hitachi Systems HEART TO HEART」は番組ナビゲーターが東日本大震災をはじめとした被災地へと赴き、取材や対談を通じて、未来へ繋ぐバトンについてリスナーとともに考える、月1回のスペシャルプログラムだが、4月からのSEASON6では、作家の重松清がナビゲーターを務める。また、このSEASON6は幻冬舎の月刊文芸誌「小説幻冬」と連動して、「希望の地図2018 HEART TO HEART」と題されたルポ企画がオンエアの翌月27日に発売される「小説幻冬」に連載される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000228.000025404.html

◎マガジンハウスの女性週刊誌「anan」の4月4日(水)発売2097号の表紙を飾ったのは「anan」初登場のNEWSの4人だ。加藤シゲアキの小説の新連載もスタートした。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000030125.html

東京ニュース通信社は2001年8月から100期連続(16年8ヶ月間)で、個人聴取率のトップに君臨し続けたTBSラジオを特集する「別冊TV Bros. TBSラジオ全力特集」を9日に発売する。
https://www.oricon.co.jp/news/2108897/full/

◎「マギ」の大高忍が「週刊少年サンデー」(小学館)から「週刊少年マガジン」(講談社)に移籍することになった。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1804/04/news030.html

◎「週刊少年マガジン」の編集部を舞台にした瀬尾公治のマンガの連載が「週刊少年マガジン」で始まるそうだ。
https://mainichi.jp/articles/20180403/dyo/00m/200/030000c

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3)【深夜の誌人語録】

嘘つきは作家の始まりである。