【文徒】2018年(平成30)4月18日(第6巻71号・通巻1245号)

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1)【記事】財務省事務次官のセクハラ疑惑について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2018.4.18 Shuppanjin

1)【記事】財務省事務次官のセクハラ疑惑について

週刊新潮」4月19日号が暴露した財務省福田淳一事務次官による女性記者に対するセクハラ疑惑だが、福田次官は事実関係を否定している。要するに福田次官は財務省の聴取で「報道」を全否定し、その内容が公表された。その日、産経新聞が「福田財務次官 更迭へ」と一面で大々的に報じたにもかかわらずにである。
財務省の聴取で福田は女性記者に対するセクハラは全面的に否定している。
「真面目に質問をする『財務省担当の女性記者』に対して私が悪ふざけの回答をするやりとりが詳細に記載されているが、私は女性記者との間でこのようなやりとりをしたことはない」
「業務時間終了後、男性・女性を問わず記者と会食に行くことはあるが、そもそも私は、女性記者との間で、週刊誌報道で詳細に記載されているようなやりとりや、音声データ及び女性記者の発言として画面に表示されたテロップで構成されるやりとりをしたことはなく、心当たりを問われても答えようがない」
「お恥ずかしい話だが、業務時間終了後、時には女性が接客をしているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある。また、仲間内の会話で、相手から話題を振られたりすれば、そのような反応をするかもしれない。しかしながら、女性記者に対して、その相手が不快に感じるようなセクシャル・ハラスメントに該当する発言をしたという認識はない」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180416/k10011405611000.html
かくして財務省は、記者クラブの加盟各社に対して、「週刊新潮」が報じたような記者がいれば、調査に協力してほしいと呼びかけている。
しかし、こうした財務省の呼びかけ自体に私などは違和感を抱いてしまう。こうした「呼びかけ」自体がセクハラと指弾されても仕方ないのではないか。香山リカのような反発が生まれるとは思っていないところが財務省の凄いところだ。
「わたし大学でハラスメント対策センターの委員なんだけど、匿名希望の申し立てあったら、もちろん慎重に事実認定は行うけど、申し立て人の保護は大前提。さすがに加害者とされる側から『こっちも話聞きたいから申し立てた人を引き渡して』なんて言われたこともない。いやすごいわ財務省の傲慢体質」
https://twitter.com/rkayama/status/985819215511732224
この女性記者が財務省の呼びかけに応じて、名乗り出たとして情報源の秘匿が守られる保証はなく、それこそ名乗り出ることは記者生命と引き換えになる恐れもあるはずだ。そのくらい報道業界の体質は古いのではないか。
こんな意見もツイッターでは述べられている。
「ああそうか、裁判になったらお前も身元がバレるぞ、そしておそらく、もっと具体的に言えば、『詩織と同じネットリンチに遭うぞ』という脅迫でもあるのかこれは。福田次官も自浄できない財務省も麻生財務相も、心底腐ってるな」
https://twitter.com/mipoko611/status/985742269444571137
こんな勘繰りをする弁護士もいる。落合洋司だ。
「言ってくる記者がいれば、その会社は財務次官の首をはねたと、今後、様々に取材に支障を来すことになる。だから言って来ないだろうという狡猾な打算があるのでは」
https://twitter.com/yjochi/status/985860648734048256
寺町東子も弁護士だ。
「マスコミ各社は、女性記者を売って『霞ヶ関とのパイプ』を維持するのか、女性記者を守るのか、を突き付けられている、という自覚をもって対処すべし。『女性活躍』が聞いてあきれる」
https://twitter.com/teramachi_toko/status/985755279064154112
フジテレビジョンからBuzzFeed Japanに転職した福原伸治もツイートしている。
「被害を受けたとされる女性記者に名乗り出て調査に協力してほしいということだけど、そんなセクハラ受けて出てくるひといないよね。わかっててやってるとしたら相当筋が悪い」
https://twitter.com/shinjifukuhara/status/985751585920708608
福田次官は新潮社を提訴すべく準備を進めていると意気込んでいるようだから、相当の自信があってのことだろう。しかし、もし仮に福田が言うように女性記者に対するセクハラがなかったとしても、「妙齢の女性」に対するセクハラがなかったのかといえば、福田次官の発言はそこまでは否定していないのである。当然、ここでも「官僚話法」が駆使されているに違いあるまい。
福田次官の「真面目に質問をする『財務省担当の女性記者』に対して私が悪ふざけの回答をするやりとりが詳細に記載されているが、私は女性記者との間でこのようなやりとりをしたことはない」という発言は、「女性記者」以外の女性と、セクハラに当たるようなやりとりがあったことは否定していないのである。
セクハラをしていないと断言しているのは、あくまでも「女性記者」に限ってのことなのである。では、録音された音声のようなセクハラ発言は誰になされたのかといえば、「女性が接客をしているお店」においてなのである。しかし、「女性が接客をしているお店」であっても、セクハラが許されるのかと言えば、そんなことはあるまい。「お店の女性と言葉遊び」を興じるに際して問われるのは品位だろう。ちなみに女性記者が銀座でアルバイトしているなどという話は、さして珍しくもあるまい。
経産省官僚の宇佐美典也がこうツイートしている。
「いずれにしろ福田次官はやめるしかないわな。仮に件の会話がスナックやキャバクラでも身元バラして飲んであの会話して録音された時点で立場上軽率すぎ。俺ですら役人時代は結構気をつけてた」
https://twitter.com/usaminoriya/status/985829243731886080
「デイリー新潮」は「セクハラ『福田財務次官』の迷走 財務省安倍総理に、なぜ楯突くのか」を掲載している。
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/04170600/?all=1&page=1
ちなみに森友問題で名前を全国に知らしめた佐川宣寿も、今回の福田淳一も、加計問題で国会に呼ばれようとしている柳瀬唯夫も、みんな「ポパイ」世代なのである。福田にしても官僚になってからも休日にはサーフィンに出かけていたという。最近、戦後民主主義を支えている地盤そのものをガタガタにするようなスキャンダルが多発しているが、主役は「政治の季節」が大学から去った後にキャンパスライフを謳歌した「ポパイ」世代だったのである。
I'll never care what wickedness I do, If this man come to good.
「こんな男に栄誉が来るならおれはどんな悪事を働いてもいいことになるな」とは「リア王」の台詞である。
http://james.3zoku.com/shakespeare/lear/lear3.7.html

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2)【本日の一行情報】

◎15日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ)で、モーリー・ロバートソンが至極真っ当な発言を繰り広げたようだ。「リアルライブ」に掲載された「フジテレビと登坂アナを猛批判 “ホラッチョ”被害者のモーリー氏『身体検査をやるべき』」でモーリー・ロバートソンは次のように語ったという。
リスク管理をやっているのかっていう部分はある。今、経歴詐称している人、今、ほかの問題を抱えている人っていうふうに、まずはそこらへんの身体検査を先にやるべきなんじゃないの?」
「一般論として、今の日本って放送業界、女性の扱いが男性と違っているような気がする。女性に対してはやたらと厳しい。若くないとか、もっとセクシーであれとか、見えないルールや付加を課している。それをそもそも男性が感じていない」
https://npn.co.jp/article/detail/02279915/
女性の扱いが男性と違っているのは、何も放送業界に限っての話ではない。

◎光文社は博報堂及び博報堂DYメディアパートナーズの女性メンバーによって立ちあがった社内プロジェクト「博報堂キャリジョ研」による「働く女性の腹の底 多様化する生き方・考え方」を刊行した。「キャリジョ」とは20〜30代の働く女性のこと。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000033145.html

◎7月14日(土曜日)に第9回芦屋文学サロン「文藝春秋社・前社長平尾隆弘氏を招いてー講演会・芥川賞直木賞のすべて〜藤本義一村上龍から朝井まかて姫野カオルコまで〜」が開催される。
http://www.city.ashiya.lg.jp/kouminkan/salon_300714.html

集英社は「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.3 ‐2000年代〜、進化する最強雑誌の現在(いま)‐」を7月17日から9月30日まで森アーツセンターギャラリーにおいて開催する。
https://mantan-web.jp/article/20180415dog00m200011000c.html
https://shonenjump-ten.com/vol3/

コカ・コーラシステムは、創刊50周年を迎える「週刊少年ジャンプ」とコラボし、同誌の名作19作品に登場する人気キャラクターを「ジョージア」のパッケージにデザインしたコラボ缶全50種を4月23日から発売する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000187.000001735.html

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載の「銀魂」(空知英秋)は福田雄一監督のもと小栗旬を主演に映画化されたが、その続編が8月17日に公開される。
http://www.musicvoice.jp/news/20180416092084/

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載された古味直志ニセコイ」が実写映画化される。
https://natalie.mu/comic/news/278170

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン大阪市)は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載されている「ONE PIECE」を題材とするイベント「ワンピース・プレミア・サマー」を7月6日から開催する。
https://animeanime.jp/article/2018/04/16/37414.html

◎光文社は、女性誌「Mart」を母胎にして、特別編集ムック「自分に似合うイヤリング・ピアスができる MartイヤアクセサリーBOOK」を刊行した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000101.000021468.html

◎「漫画タウン=漫画村」のツイート。どこまでも挑発的である。
「批判する人は、漫画村だけじゃなくて、まとめサイトも無料エロ動画も、無料音楽サイトも、YouTubeのテレビ動画も見ないでね。絶対に見ないように気をつけながら生活してね。僕はモラルある人間を応援してるよ。
見てくれる人はこれからも一緒に楽しもう!どれくらいの人が戻ってくれるか楽しみだ」
https://twitter.com/mangataun/status/985915411639091200

◎「BUSINESS INSIDER JAPAN」が掲載した「『漫画村』問題:MANGA議連が考える『サイトブロッキングの意味』を古屋圭司議員に聞く」でMANGA議連会長の古屋圭司衆議院議員は「出版社は甘いと思う。本来であれば(自助努力の中で)違法サイトに打ち勝つような良いビジネスモデルを生み出すべき。その点、動画はうまくやっている」と発言している。
https://www.businessinsider.jp/post-165717
古屋は安倍総理同様に成蹊大OBである。小学館の相賀昌宏社長、集英社の堀内丸恵社長、日本文芸社中村誠社長、紀伊國屋書店の高井昌史会長兼社長も成蹊大出身である。

◎4月16日付信濃毎日新聞が社説「海賊版サイト 疑義を残した緊急対策」を掲載した。
著作権を保護する取り組みは必要だ。とはいえ、今回の対策は丁寧な議論を欠いている。政府の拙速な進め方は問題が大きい」
憲法に照らして妥当か、実効性はどこまであるのか、他に方法はないか、実施がやむを得ないとすれば運用監視の仕組みや対象拡大の歯止め策をどう整えるか…。検討すべき課題は多い。国会はもちろん、社会全体で議論を深めなくてはならない」
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180416/KT180413ETI090003000.php

世界文化社は、「Begin」の新しいウェブサイト「レアニッポン Powered by Begin」(https://rarenippon.jp)を4月16日(月)に立ち上げた。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000448.000009728.html

◎「めちゃコミック」を運営するアムタス、「eBookJapan」のイーブックイニシアティブジャパン、「コミックシーモア」のエヌ・ティ・ティ・ソルマーレ、「Renta!」のパピレス、「まんが王国」のビーグリーの5社が日本電子書店連合を設立した。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1804/16/news132.html
http://www.nttsolmare.com/press/2018/0416.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000022475.html
http://www.dreamnews.jp/press/0000172129/

トーハン電子書籍サイト「Digital e-hon」は、4月27日(金)をもってサービスを終了する。
http://www.tohan.jp/topics/20180416_1189.html
医学文献を除いた本・雑誌コンテンツについては、購入時の税込価格累計額相当の「Digital e-honポイント」が進呈され、「Digital e-honポイント」は「全国書店ネットワークe-hon」のポイントおよび電子書籍サイト「BOOK☆WALKER」のコインに交換が可能というから、一般ユーザーからすれば事実上、全額返金されるも同然である。
http://www.de-hon.ne.jp/digital/information.asp

◎「週刊文春」が新潟県米山隆一知事を撃沈。女性問題を掲載する見通しなんだって。4月15日をもってツイッターで呟かなくなっていた。
https://jp.reuters.com/article/idJP2018041601002264
https://twitter.com/RyuichiYoneyama

◎「檸檬香茅火鍋専売店」のレモングラス鍋は食べてみたい。
https://spur.hpplus.jp/fashion/whydidyu/201804/10/JEEYgJk/

三浦大輔の映画「娼年」が大ヒット!嬉しいニュースだ。原作は石田衣良の恋愛小説「娼年」(集英社文庫)。
http://timewarp.jp/movie/2018/04/16/96804/

◎日本低国!ここに極まれり。タイトルに「エロ」とつくだけで自治体の有害図書指定を受けているとは…。北海道が「エロマンガ表現史」(太田出版)を有害指定し、滋賀県が「全国版あの日のエロ本自販機探訪記」(双葉社)を有害指定した。
https://www.asahi.com/articles/ASL4J51JGL4JUCVL01H.html
中山太郎の「売笑三千年史 」(ちくま学芸文庫)や赤松啓介の「夜這いの民俗学・夜這いの性愛論」(ちくま文庫)が有害指定されたようなものである。

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3)【深夜の誌人語録】

どんな偉業であっても最初の一歩を踏み出さなければ達成できなかったはずである。