【文徒】2018年(平成30)5月1日(第6巻79号・通巻1253号)

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1)【記事】なおも燻る「海賊版サイト」問題。講談社が「漫画村」を刑事告訴
2)【本日の一行情報】

                                                                                • 2018.5.1 Shuppanjin

1)【記事】なおも燻る「海賊版サイト」問題。講談社が「漫画村」を刑事告訴へ(岩本太郎)

先の『メディアクリティーク』4月30日号の拙稿でも報じたが、NPO日本独立作家同盟主催のトークイベント「海賊サイトによりマンガ文化が壊される!作家が生き残る方法とは?」が4月25日の夜に都内・杉並区「阿佐ヶ谷ロフトA」で開催された。『ITMediaNEWS』でも村上万純が「『出版社頼れない』『子供は漫画無料でいい』海賊版サイト問題と漫画家たちの苦悩」とのタイトルでさっそくレポート。文中では登壇したパネリストたちによる以下のようなコメントも紹介している。
《自分たちが子供のときは、友達が買った漫画を回し読みしていた。今の子供はそもそも漫画を読む習慣がないので、20歳未満は全部無料でいいのでは。無料で読めることで悪い習慣がついてしまう可能性はあるが、大人になって還元してもらえればいい》(漫画家の鈴木みそ
《出版社はいろいろな対策を講じてきたが、それを広報してこなかったまずさがある。出版社の人に会うたびに早く声明を出そうと言ってきたが、ブロッキングの話題が盛り上がった結果、初めて発表するのはお粗末。(中略)政府がブロッキング要請を発表したら、初めてそれを支持する声明を出すというのは一体どういうスタンスなのか》(元出版デジタル機構会長で専修大学教授の植村八潮)
《出版社は良くも悪くもピュア。彼らはビジネスではなく文化的行為をしているという意識で、普通の企業と違うロジックで動いている。ピュアだからロジカルな手法も分かっていない》(写真家で日本写真著作権協会常務理事の瀬尾太一)
《(集英社が4月19日に出した声明「出版社の海賊版サイトへの対応に関する誤情報流布について」に関して)何をやったかではなく、どこで手が止まっているかが分からないと、問題の原因が分からない。単に出版社の根気が足りないのか、それとも他に原因があるのか》(国際大学GLOCOM客員研究員の楠正憲)
《出版産業は、戦後は上り坂で出版社と作家の利害が一致していたが、下り坂にある今は両者の利益は相反せざるを得ない。編集者は作家のために動くのか、会社のために動くのか。そんな中、作品流通など含めて出版社と作家の間に立ち、作家をエージェント的に支援する人が求められる》(フリーランス編集者の仲俣暁生
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1804/27/news021.html#utm_term=share_sp
同記事を通じてトークの内容に接したネットユーザーたちからも様々な声があがり、Togetterでも以下のような声が「まとめ」で紹介されている。
刑事告訴している出版社がなかったというのは、頼れないという意識を加速させるよねえ》
《いや、おかしいでしょう?明らかに著作権という概念侵害してますよね?盗まれる側と盗む側どっちが悪いんですか?ブロッキングの前ステップとかそんなの泥棒とかにいいます?》
《一部議論されているが、例えば未成年に限り出版社側が最早漫画をすべて無料にしてしまうのも良い。集英社がワンピースを無料公開すれば、誰も広告まみれの海賊版サイトで読まないでしょう》
《子供は漫画無料でいい?私はこの意見に反対
本文にあるように友達と回し読みしたけど、友達と違うの買って交換で読んでた
子供だって「漫画読むならお金を払う」の知ってたよ
何でもタダっておかしいでしょ》
https://togetter.com/li/1222056
ちなみに上記の「刑事告訴している出版社がなかった」という指摘について言うと、講談社は「漫画村」に対する刑事告訴の手続きを既に完了しているそうだ。同じく『ITMediaNEWS』の取材に広報室長の乾智之が応じ、これまで削除要請などの様々な対応を図ってきたことと併せて以下のように説明している。
《すべてのサイトを刑事告訴するのは難しいが、目立つものについては常に、都道府県警と連携し、刑事告訴を含む捜査協力を行っている。海外でも、海賊版サイトの刑事告訴を含む捜査協力を行ってきた。漫画村については十分な材料がなかったため、海外での刑事告訴は行えていないが》
《(広告主への出稿停止依頼については)雑談レベルで内々に配信停止を要請するぐらいしかできておらず、実質何もできていなかったと反省している》
《(被害額として言われている「約3000億円」という数字が過大ではないかとの指摘については)3000億円をそのまま売り上げと認識しているわけではない。電子書籍が“盗まれた”時、被害額をどう判断するか。海賊版サイトによる被害額を算定する基準や判例がまだなく、難しい》
《(コミックスの売上減は本当に「漫画村」の影響か? との指摘については)そういう見方があるのは承知している。漫画村の影響は社内では試算しているが、今後、民事訴訟で賠償を求めていくので、詳細の数字は出せない。ただ、漫画村が利用できた期間中、紙・電子とも、コミックスの売り上げが落ちた。漫画村が利用できなくなった後の売り上げ回復の状況を今、調べているところだ》
《当社としては、ブロッキングが唯一絶対の方策とは考えていない。海賊版サイトに対するテイクダウン要請や訴訟、収入源となっている広告への対策、読者の啓蒙なども対策の一つだ》
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1804/27/news117.html\
一方でNTTグループブロッキング実施表明については既報の通り「通信の秘密」の侵害にあたるなどとして民事訴訟も起こされているが、内閣府知的財産戦略本部で省庁間の調整役を担ってきた住田孝之(知的財産戦略推進事務局長)は『BUSINESS INSIDER』の取材に応え、どのプロバイダーが「自主的な取組」に出るかについて「事務局側はまったく予想できていなかった」、民事訴訟についても「発表後に反対の声や議論が広がることは、初めから分かっていたことだ」などと回答。
https://www.businessinsider.jp/post-166534
蛇足ながらtogetterではその知財本部「検証・評価・企画委員会」でコンテンツ分野の座長を務めた中村伊知哉(慶應義塾大学教授)の発言をまとめた「中村伊知哉先生サイトブロッキング関連tweet」が立ち上がっている。
https://togetter.com/li/1222489
なお、上記4月25日のイベントを主催した日本独立作家同盟は同27日付で「海賊版サイト対策としての緊急ブロッキング決定に対する声明」を発表した。
https://www.aiajp.org/2018/04/blocking.html

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

防衛省が当初「存在しない」としたものの後に公表した自衛隊イラク派遣時の活動報告書(日報)がKindleストアで電子書籍として販売されていることが発覚(といっても価格は0円だが)。朝日新聞デジタルが4月16日に公開した「陸自イラク『日報』 防衛省が公表した全文書」のデータを「akiyan」を名乗る人物が抽出・作成のうえ同22日から公開した。『ねとらぼ』の取材に対し防衛省は「問題ありません」、朝日新聞社広報部は「弊社サイトからの無断転載・複製品の販売であり、こうした事例には今後も適切に対処いたします」と回答。
https://twitter.com/akiyan/status/988042298091958272
https://www.akiyan.com/blog/archives/2018/04/kindle-jgsdf-iraq-baghdad-basrah-diary.html
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1804/26/news141.html
他にも海賊版サイトからデータを取得したと思しきマンガや写真集がkindleで海賊出版されるケースが頻発するなど、アマゾンのチェック体制に対しては「漫画村プロと変わらない」といった批判の声も上がっているようだ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1804/24/news097.html

◎4月の政府による海賊版サイトへのブロッキング要請方針が表面化した際と同様に、上記のNTTグループブロッキング方針発表に際してもメディアドゥホールディングスなど電子書籍関連の銘柄には買いが入ったらしい。
https://minkabu.jp/news/2086736

小学館女性誌WEBサイトのアクセス数が昨年夏のリニューアル以降急増している理由について、ITジャーナリストの神田敏晶が同社の女性メディア局チーフプロデューサーの嶋野智紀、デジタル事業局WEBプロデュース室主任の山野明登への取材もまじえつつレポートしている。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20180427-00084068/

Kindleストアでは「GWフェア 小学館 50%ポイント還元」セールを実施中 。
https://corriente.top/kindle-sale-gw/

◎2009年に死去した忌野清志郎が『キンダーブック』2002年11月号で作画を担当(文章は寿金之輔が担当)しながらこれまで単行本化されてこなかった作品『しゅりけんとうちゃん いがぐりしょうぶのまき』が岩崎書店より4月30日に絵本として刊行された。忌野の命日にあたる明日2日から11日まで、神田神保町のブックハウスカフェにて発売記念の原画展が開催される。
http://www.iwasakishoten.co.jp/news/n23920.html
http://otakei.otakuma.net/archives/2018042802.html

ちばてつやが1981年から『週刊少年マガジン』で約10年に渡って連載したゴルフ漫画あした天気になあれ」の続編「新あした天気になあれ」が、ゴルフ雑誌『ALBA』で5月24日発売号から連載されることになった。主人公のプロゴルファー・向井太陽の26年後を描くという。原案はちばが手掛け、シナリオは信田朋嗣、作画は政岡としやが担当。
http://www.hochi.co.jp/golf/20180425-OHT1T50121.html

◎警察小説を中心に多数のヒット作を生み出してきた今野敏がこの5月で作家デビュー40周年を迎えたことを記念し、講談社・光文社・集英社など14社の共同キャンペーンが進行中。3月に八重洲ブックセンター本店で今野が一日店長を務めたのに続き、各社発行の14小説誌の4〜5月発売号では「小説誌ジャック」と銘打った特集企画が掲載される。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2018042902000193.html

高野秀行『ワセダ三畳青春記』をベストセラーに押し上げた有志書店員団体による"酒飲み書店員"の集まりが、今度は太田靖之の医療小説『産声が消えていく』(祥伝社文庫)の販促展開に乗り出したそうだ。同作は在庫210冊で品切れ(重版未定間近)となっており、今回は祥伝社の協力のもとほとんどの在庫を投入。くまざわ書店浅草店、ときわ書房船橋本店など首都圏の8店舗で現在展開中だ。
https://news.nifty.com/article/item/neta/12116-20180427_023601/

◎「comico」を運営するNHN comicoとマルチデバイス対応電子書籍レンタルサイト「Renta!」を運営するパピレスが、縦スクロールコミックの普及拡大を目的とした業務提携を発表。第一弾として両社が制作したオリジナル縦スクロールコミックの相互販売を4月27日より開始した。
https://www.oricon.co.jp/news/2110354/full/
https://s.animeanime.jp/article/2018/04/28/37583.html

ライトノベルやゲーム・アニメ関連の書籍を発行する一二三書房が、ライトノベルの新レーベル「ブレイブ文庫」を4月28日に創刊した。
http://bravenovel.com/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000032360.html

誠文堂新光社『アイデア』編集部が、同誌および書籍の編集スタッフ(契約社員)を募集中。
http://www.idea-mag.com/news/idea_recruit_201803/

青空文庫の作品を毎月1作品、1ヶ月で読み切れるように小分けにして毎日メールで配信してくれるサービス「ブンゴウメール」を、ウェブサービス制作者「ほげにし」がリリースした。今日1日から登録者への配信を始めるという。
https://twitter.com/kame_f_no7
https://bungomail.launchaco.com/
http://blog.notsobad.jp/entry/2018/04/25/160259

幕張メッセで4月28・29日に開催された「ニコニコ超会議2018」は、リアル来場者数が2012年の初開催以来初めて減少した前年から一転、再び増加に転じて過去最高の16万人強を記録。ネット来場者数も盛り返したそうだ。私(岩本)も初日に見てきたが、確かにイベントホールで行われた「超歌舞伎」などは客席が“超満員”で立ち見が出る盛況だった。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1804/29/news026.html#utm_term=share_pc
https://japan.cnet.com/article/35118532/
http://getnews.jp/archives/2040446
ドワンゴからは来年も4月27・28日に開催することが早くも発表されている。こちらも次の開催がなかなか告知されなかった前回とは様変わりだ。もっとも、6年前の第1回以降イベント自体はずっと赤字続きだが、これも「問題なし」とのこと。
https://www.oricon.co.jp/news/2110543/full/