【文徒】2018年(平成30)5月2日(第6巻80号・通巻1254号)

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1)【記事】「NAVERまとめ」無断掲載削除で報道7社と合意発表。ネットユーザーたちの反応は?
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】「NAVERまとめ」無断掲載削除で報道7社と合意発表。ネットユーザーたちの反応は?(岩本太郎)

LINE子会社のネクストライブラリが運営する投稿サイト「NAVERまとめ」と大手新聞・通信7社(朝日・読売・毎日・日経・産経・共同・時事)が先週26日、各社およびその関係会社による写真や画像のうち「NAVERまとめ」上に無断掲載されている約34万点を削除することで合意したと共同で発表。
https://www.mainichi.co.jp/info/20180426.html?_ga=2.112136199.2096102682.1525156412-1490718513.1484870820
同日には上記プレスリリースにほぼ則した形で各社が一斉に報道した。
https://www.asahi.com/articles/ASL4T722TL4TULFA04D.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/20180426-OYT1T50082.html
https://mainichi.jp/articles/20180426/k00/00m/040/194000d
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29868580W8A420C1SH3000/
https://www.sankei.com/entertainments/news/180426/ent1804260012-n1.html
https://this.kiji.is/362129297928324193
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018042600835&g=soc
上記7社は昨年8月、「NAVERまとめ」に少なくとも3000件以上の写真や画像が転載されていたことを発見。7社からの申し入れに応じLINEが調査を行った結果「NAVERまとめ」上の画像・写真約2700万件(調査当時)のうち、7社とそのグループ会社分で約34万件の無断転載を発見。これを「著作権等を侵害する深刻な問題」と捉えた7社とLINE側との間で協議が進められてきたそうだ。その結果、無断転載が分かった写真や画像をLINE側が削除する一方、上記7社は無断転載を防止するための投稿制限措置(ドメインブロック)を行うなどの権利保護策を行うことなどで双方が合意したという。
7社の報道にはいずれも概ね「円満解決」といったトーンが漂うが、記事中に出てくるLINE側からの反応にはやや苦渋が滲んでいる部分もある。例えば先の時事通信の記事は以下のように報じている。
《LINE側は、NAVER利用規約で「第三者の権利(著作権など)を侵害する行為を禁止している」として、無断転載により著作権を侵害しているのは「投稿者(まとめサービス利用者)」と主張した。
その一方で、LINE側は7社との協議の結果、無断転載と分かった写真・画像の削除に応じたほか、7社が指定するサイトからの無断転載を防止する措置を取るなど、権利保護策を実施。7社も必要な情報を提供することになった》
《島村武志ネクストライブラリ社長の話 「NAVERまとめ」にて無断転載が行われている実情につき、プラットフォーム責任者として誠に遺憾に存じます。権利侵害については対策を積極的に進めておりますが、実効性のあるものにしていくには権利者とプラットフォームが連携していくことが不可欠。今回の合意により、報道7社と権利保護対策について最初の一歩を踏み出せたことは大変意味の深いことだと考えております》
シリコンバレー生まれのネットメディア『TechCrunch』の日本版は記事の末尾でLINE側の《著作権等の知的財産権の保護の一環として、2017年11月に著作権管理システム「Lisah」やまとめ作成者の経歴等を公開する「オーサー確認機能」のテスト導入を開始するなどしていた》といった取り組みがあったことも紹介している。
https://jp.techcrunch.com/2018/04/26/navermatome-contents-delete/
他方で、やはりネットユーザーからは、こうした動きへの違和感を表明する書き込みも多々挙がっている。「NAVERまとめ」と同じ投稿サービスの「togetter」にはさっそく「『NAVERまとめ』無断転載34万件削除へ…さまざまな意見が集まる」というサイトが立ち上がり、こんな声が並んでいた。
《本にして出版したわけでもなく無料でみられるものなんでしょ?
それに引用なら認められるものでは?
規制緩和しないと時代に置いてかれるよ?》
《写真は兎も角、ニュースって著作物だったんだな・・・なるほどw》
《この場合ユーザーの利便性が損なわれる削除・ブロックではなく20億ビューで得た広告費から適正使用料を新聞各社に支払うのがプラットフォーマーとしての正しい対応だと思うけど》
まとめサイトの無断転載を削除させるのは正しい行いと思うけれども、一方で報道各社には、ニュースのパーマネントリンクを維持する努力をしてほしい。ニュースは速報性だけが価値じゃない、アーカイブに価値がある》
ブロッキングの件と言い、今年は悪質な情報が良くも悪くも駆逐される一年になりそうね》
https://togetter.com/li/1221768
末尾にあるように、現在進行中の別件「ブロッキングの件」をここで併せて想起したネットユーザーは少なからずいたことだろう。元『MACLIFE』編集長で『出版人・広告人』連載筆者でもある高木利弘もFacebookで上記の報道をシェアしつつ、こんな疑問の声を上げていた。
《これって、マスメディアの自殺行為なんじゃないでしょうか?
著作権の本来の意味はCopy Rights。「コピーを増やしてなんぼ」の権利なので、「コピーを減らしてどうすんねん?」って思います。
FacebookTwitterはどうなんでしょうか? そちらも取り締まるつもりなんでしょうか?
もっとコピーさせて、レベニューシェアするような仕組みを作れなかったものなのでしょうか?》
https://www.facebook.com/toshihiro.takagi/posts/10216501211103198

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

電通WPPとの国内における合弁会社だった電通ヤング・アンド・ルビカム(DY&R)と電通ワンダーマンの2社について、それぞれのWPPグループ持分(49%)を取得のうえ完全子会社化することを決定。これに伴い5月1日付で前者を「電通イースリー」、後者を「電通ダイレクトソリューションズ」にそれぞれ社名変更した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2018/0501-009531.html

◎『ダイヤモンド・オンライン』でフリーライター竹熊健太郎が連載しているインタビューシリーズ「フリーランス、40歳の壁」の第3・第4回目に登場したのは、神保町で古書店「マニタ書房」を営みつつライターとして活動するとみさわ昭仁。もともと漫画家志望だったのを諦めてデザイナーになるべく、蒲田にある工学院大学に入学。そこで当時あったミニコミ誌『よい子の歌謡曲』に出会ったことがフリーライターになるきっかけだったそうだ。
http://diamond.jp/articles/-/167684
http://diamond.jp/articles/-/167689

◎その竹熊健太郎が、このほど上梓した『フリーランス、40歳の壁??自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?』(ダイヤモンド社)についての、とみさわ昭仁による書評を引用しつつFacebookで記事を書いていた。都築響一が『POPEYE』『BRUTUS』で活躍した80年代のマガジンハウス、自らが頻繁に出入りしていた90年代の小学館についての思い出話を添えつつ、こんなふうに綴っている。
都築響一さんは出版社が死ぬ条件として(1)新社屋のビルを建てたとき。(2)そのビルの入り口にガードマンが立つようになったとき。(3)首から入館証と社員証をぶら下げるようになったとき。の三つをあげています。成功する前の出版社の条件で、それまでがその出版社は面白いんですね》
《1980年に創刊の「BRUTUS」は、月刊誌なのに一つの特集に3ヶ月の取材期間をかけ、編集費がページ単価50万円とか。アフリカ特集のときは「アフリカ象一頭一千万円」の領収証を会社に提出した編集Oさんの伝説もあります。実際は250万だったそうですが、噂が業界を駆け巡り、私が聞いた時には一千万に》
《私も90年代に入って小学館の玄関で入館証を書かされるようになるまでは、小学館に「住んでいる」のではないか、と自分で疑うほど、小学館に入り浸っていました。金がなかったので、夕飯時に小学館に遊びに行けば、社員に飯をおごって貰えたからです》
https://www.facebook.com/kentaro.takekuma/posts/2113298315354067
「編集Oさん」とは小黒一三(現・木楽舎社長)のことだろう。「象一頭一千万円」説は各所で聞かれるが、正しくはその4分の1の値段だったわけだ。

毎日新聞ではジャーナリストの森健によるインタビュー連載「森健の現代を見る」がスタート。1回目のゲストはノンフィクション作家の梯久美子。大卒後に出版社勤務を経て編集プロダクションを立ち上げた後、39歳でフリーライターに。当時取材していた作家の丸山健二に「40歳過ぎて著書がないと厳しい。栗林忠道という人がいるけど、知っていますか?」と紹介されたことが後の大宅壮一ノンフィクション賞受賞作『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』につながった。
https://mainichi.jp/articles/20180428/ddm/014/040/006000c

小田光雄「出版状況クロニクル120(2018年4月1日?4月30日)」。楽天による大阪屋栗田への追加出資の件のほか、日販から出版社への取引条件変更要請、海賊版サイトへのブロッキング問題についても言及されている。
http://odamitsuo.hatenablog.com/entry/2018/05/01/000000

◎東所沢への本社機能の一部移転を進めているKADOKAWAは、飯田橋の現本社ビルにレストラン「INUA」を6月29日にオープン。遂に外食産業にも進出することになった。デンマークの世界的な人気レストラン「noma」のヘッドシェフとパートナーシップを結んだ事業で、角川歴彦が2015年に「noma」を訪れ気に入ったのがきっかけらしい。メニューはコース料理が2万9000円からだとか。
https://inua.jp/
https://info.kadokawadwango.co.jp/files/2018/0426.pdf
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1804/26/news131.html
http://kai-you.net/article/52891

◎一方でカドカワは2018年3月期通期の連結業績予想を下方修正。営業利益は従来予想から27億円減の31億円と、前期実績(84億円)から6割超の大幅減益。「ニコニコ動画」有料会員数の減少が響いているらしい。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1575680
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1804/26/news112.html

◎『PRESIDENT Online』ではジャーナリストの出井康博が、世田谷区内にある朝日新聞販売所「ASA赤堤」で働くベトナム人留学生たちが置かれた過酷な実態をレポートしている。睡眠時間は1日平均3時間で、ロクに勉学も出来ず日本語もあまり身につかず、配達作業では日本人が原付バイクが使えるのにベトナム人留学生には自転車での配達を強いるなどの差別待遇がまかり通っているという。
http://president.jp/articles/-/24999
http://president.jp/articles/-/25000

鴨川つばめマカロニほうれん荘』の原画展が19日から6月3日まで都内の中野ブロードウェイ「Animanga Zingaro」にて開催される。『週刊少年チャンピオン』での連載(1977?79年)はもう40年も前になるが、原画展は今回が初めてだそうだ。
https://www.atpress.ne.jp/news/155150
https://natalie.mu/comic/news/279804

インプレスR&Dは一人出版社ができる「出版ブランド開設サービス」 に従来からのAmazon.co.jp のほか、新たに 三省堂書店のオンデマンドサービスを利用した販売オプションを追加。これによりリアル書店での販売も可能となった。
http://www.impressrd.jp/news/180425/NP

◎『メディア・リテラシー』(鈴木みどり)や1993年のNHKムスタンやらせ事件の舞台裏を描いた『ムスタンの真実』などメディア関連を中心に様々な書籍を出してきたリベルタ出版千代田区神田猿楽町)が去る4月末で出版活動を終了。代表の田悟恒雄の労をねぎらう「リベルタ出版卒業式」が5月30日の18時より小石川後楽園「涵徳亭」で開催されることになった。
高須次郎(緑風出版代表取締役・元出版協会長)、鈴木力(元集英社新書編集長)、津田正夫(元NHK・元立命館大学教授)、原真(共同通信編集委員論説委員。元社長の故・原寿雄の息子)などが発起人を務めている。
http://www.liberta-s.com/
私(岩本)も2001年に同社より共著『町にオウムがやって来た』を出させてもらった縁がある。刊行から数か月後に鈴木書店の倒産で流通ストップを食らい、田悟と共に苦汁を味わった体験は忘れがたい。