【文徒】2018年(平成30)8月1日(第6巻142号・通巻1316号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】「週刊現代」にクビを取られた菅野完
2)【記事】外資系出版社とブルジョワ文化
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「週刊現代」にクビを取られた菅野完

菅野完は「日本会議の研究」で石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞奨励賞、大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞を受賞しているし、森友学園問題ではテレビにも顔を出すなど、ツイッターで「noiehoie」を名乗っていた頃から比べれば大出世である。しかし、「週刊現代」8月11日号のスクープで坂道を転げ落ちる可能性も出て来た。「週刊現代」の掲げたタイトルは「森友追及の気鋭のジャーナリスト衝撃の過去 菅野完氏 米警察が女性暴行で逮捕状 いまも『国外逃亡中』の身だった!」である。記事の一部は「現代ビジネス」で読むことができる。
「菅野氏には、米国で2度にわたる『女性暴行』での逮捕歴があり、刑事事件となっている。そして逮捕状が出ているにもかかわらず、いまも『国外逃亡中』の身だ―。
2度目の逮捕では、裁判所に出頭しないまま国外逃亡を果たしたため、この逮捕状は現在も有効である」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56734
菅野完は「週刊現代」が報じた事実関係は大筋で認めている。「週刊現代」が7月30日に発売されるのと同時に菅野は自らのブログに「7月30日(月)発売『週刊現代』に掲載された菅野完に関する記事につきまして」を発表し、謝罪しているのである。
「まずなによりも、雑誌取材起因ではありますが、被害者女性に心底からの謝罪を申し述べます。申し訳ありませんでした。
この20年、出頭要請や被害者側からのコンタクトが一切なかったために、司法手続きが収束したものと勝手に合点していたことも、当方の過誤でしかなく反省するところです。今回、週刊現代の取材をうけて気づきを得たため、この点に関しては、週刊現代編集部に感謝するところです。週刊現代が指摘するところの未完了となっている司法手続きに関しては、改めて向き合いなおし、清算に取り組んでまいります」
http://www.sugano.ne.jp/2018/07/30/ongendai/
天木直人がブログで次のように書いた。
「私でなくても、菅野氏の活躍ぶりを知っている者は皆衝撃を受けるに違いない。これで菅野氏は安倍政権批判をできなくなる。またひとつ、負け比べがあらわれたということだ。残念でならない」
https://go2senkyo.com/seijika/68237/posts/20973
しばき隊で菅野完と一緒であった木野寿紀は「note」に「菅野完さんをめぐる未解決の疑惑リスト」を発表した。
「『週刊現代』によると、アメリカの当局が発行した菅野さんへの逮捕状は現在も有効のようです。せっかく司法の裁きを受けて罪を償うチャンスが目の前にあるのですから、ぜひアメリカの警察に自首し、アメリカの監獄にぶちこまれて罪を償ってほしいです。ファンの皆さん向けには月刊『創』あたりで反省の獄中手記を連載すればいいのではないでしょうか」
https://note.mu/kinotoshiki/n/n1167d01f5ca0
世に倦む日日」の田中宏和のツイート。
「菅野完の属性と傾向は、しばき隊の最高幹部たちに共通したものだ。皆、同じ『闇』を持っている。類似した前科を持ち、コンプレックスとウソを抱えている。社会への憎悪と他者への異常な攻撃性と暴力性を持っている。こういう連中を左翼業界(政党・マスコミ・アカデミー)は飼い、制御不能になった」
https://twitter.com/yoniumuhibi/status/1023910030523809792
この呟きの主である喜久山大貴は弁護士である。
「菅野完氏に森友問題の取材で功績があったのは認める。しかし、週刊金曜日の記事を見て、彼が表舞台で持ち上げられることが性的暴行の被害者への二次加害になりうると知り、肯定的な言及は避けるよう努めてきた。そこに新たに本人も認める過去のDV事件のスクープ。もうありがたがるのは終わりにしよう」
https://twitter.com/kikuyamahiroki/status/1023914484799160320
TABLO編集長というよりも「実話ナックルズ」元編集長と言ったほうが通りの良い久田将義も次のようにツイートしている。
「菅野完さんの週刊現代記事が本当なら、人として最低。男の風上にも置けない。弱者をいじめるな、これを徹底的に小学生の時に教えないと。女子、子供、高齢者に暴力をふるう人間がメディアに出て、あーだこーだ言ってはいけない。言う資格がない」
https://twitter.com/masayoshih/status/1023962287374094336
山口敬之は叩いておいて、何故に菅野完は叩かないという類のツイートが多いようである。
「いや〜、逮捕状すら出ていない山口敬之のことは散々叩いていたのに、アメリカで逮捕状が出ているとされる菅野完のことはスルーって、日本の『リベラル』側の見識には恐れ入りますわ。ニュースというのは自分の立ち位置等で都合良く取り上げるべきなんですねぇ。実に参考になります」
https://twitter.com/keizaigakuto/status/1024132731012169730
「差別とか、ストーカー、レイプについて延々とSNSに投稿している人が菅野完の女性暴力、女性への性的暴力についてだんまりを決め込んでいるのは本音を申せば私は気にくわない。犯罪にえこひいきがあるのは、本当に私は気にくわないわけだよ」
https://twitter.com/yutaro_tamura/status/1023138082634121218
最後に古谷経衡のツイートを紹介しておこう。
三橋貴明氏DV逮捕の時にさんざDisった私ですから、菅野完氏DV逮捕についても同様の態度を取らないとフェアじゃないでしょう。少なくともミソジニー(女性蔑視)とは二度と言わないで欲しい。強きのみに牙を向くと思っていただけに残念だ」
https://twitter.com/aniotahosyu/status/1024203930069229569

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2)【記事】外資系出版社とブルジョワ文化

ハースト婦人画報社は、2011年より苫小牧ノーザンホースパーク(北海道)で開催される競走馬オークション「セレクトセール」のプロデュースに携わってきたという。8年目を迎えた今回の「セレクトセール2018」では、「リシェス」と「エスクァイア・ザ・ビッグ・ブラック・ブック」が連携し、媒体横断的なプログラムを展開。富裕者層とブランドを結び付ける、質と規模を兼ね備えたマーケティングソリューションをクライアント企業に提供したそうだ。上手だなあ、ハースト婦人画報社
https://www.hearst.co.jp/whatsnew/Corp-180726-Japan-s-Largest-Racehorse-Auction-Select-Sale-2018
ハースト婦人画報社のような外資系の出版社は、ガイジン社長が経営トップということもあり、ブルジョワジーということを骨の髄から理解しているのだ。日本人は結局、ブルジョワ文化を理解できていないのかもしれない。
例えば今年は1968年5月革命から50年を数え、現在、ゴダールを主人公に据えたミシェル・アザナヴィシウス監督の映画「グッバイ・ゴダール!」が公開されているけれど、日本ではゴダール映画のブルジョワ文化批判が皮膚感覚ではなかなか理解できないんだよね。
グッバイ・ゴダール!」には「エル」を創刊したエレーヌ・ラザレフの娘であるミシェル・ロジェがゴダールの友人として登場している。女性誌の編集者にとっては周知のことだろうが、ミシェル・ロジェはスキーファッションの革命的ブランド「VdeV」のデザイナーとしても知られている。オレなんか「エル」という雑誌を知ったのは「アンアン」と提携していたからではなく、ゴダールの「勝手にしやがれ」を見て知ったクチだ。
ミシェル・ロジェのパートナーがポスト構造主義の哲学者であるジル・ドゥルーズの友人であり、「リベラシオン」を創刊し、アニエス・ベーとも仕事をするジャン=ピエール・バンベルジェで、彼も「グッバイ・ゴダール!」に登場する。
http://gaga.ne.jp/goodby-g/
この映画の評価はさておくにしても、こうしたオシャレな(そうミシェル・アザナヴィシウスは描いている)人間関係にフランスのブルジョワ文化の厚みを見ることができるのである。
グッバイ・ゴダール!」は作品的に言うと「中国女」から「東風」に至るまでのゴダールを描いているのだが、先日、偶然にもDVDで「東風」を再見する機会があった。このゴダール映画は、監督にゴダールとクレジットされずにジガ・ヴェルトフ集団とクレジットされていることで知られている。ゴダールは映画に対する叛旗を映画で翻してしまったのである。その無謀さは今に至るも美しいほど孤独だ。
https://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B1%E9%A2%A8-DVD-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%86/dp/B00005RUTM
「東風」の字幕は去る6月6日に亡くなった寺尾次郎か。「グッバイ・ゴダール!」の字幕も寺尾次郎である。元シュガー・ベイブ寺尾次郎である。

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3)【本日の一行情報】

漫才協会名誉会長でもある内海桂子ツイッターのフォロワーは現在47万人超!この「文春オンライン」の記事は「文藝春秋」7月号に掲載されたものだ。
http://bunshun.jp/articles/-/8248

◎廃品のなかでひときはたくましく空を見上げてゐる扇風機
雨といふごくやはらかき弾丸がわが心象を貫きにけり
26歳で夭折した歌人・笹井宏之のムック本「ねむらない樹」が今日、創刊される。佐賀新聞が「夭逝の歌人、笹井宏之さんの短歌 ムック本創刊」を掲載している。
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/252027

講談社の幼児誌「おともだち」9月号の付録は「HUGっと!プリキュア」のオリジナル音声で、おままごと遊びができる「おしゃべりフライパン」!これで820円(税込)は安い。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001799.000001719.html

◎光文社の女性月刊誌「Mart」から、特別編集ムック「バッグと小物をいっしょにつくって楽しめる! 親子でズパゲッティBOOK」が発売された。君、君、君っ!レシピ本じゃないよ。あれはスパゲッティ。こちらは「ズ」パゲッティ。オランダ生まれの編み糸のことである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000126.000021468.html

武田徹は「『美しい顔』再論」をエントリ、そこで次のように書いている。
「そうした固有名詞を徹底的に避けて一般名詞レベルの記号しか用いない手法には、東日本大震災の現実を超えて普遍的な被災の姿を小説化しようとした著者の思いが込められていたのではないか。
そう考えると、なぜ参考文献名を記載しなかったかの理由も推測できるようになる。参考文献名は小説が現実の東日本大震災を舞台にしていることを示す指標として機能してしまうからその存在が隠されたのではなかったか。
しかし、そうであればなおさらオリジナルの文脈から切り離して事実を記号(パースの概念を用いれば象徴記号=シンボル)として扱う姿勢を徹底させるべきだった。そうすれば記号は小説という象徴体系の中で意味を持つようになり、外部を指し示す回路から解き放たれる。
そうした解体作業が不十分で出典がノンフィクション系作品と明らかに分かる箇所が残っていたことは大きな失策だった」
http://journalism.jp/takedatoru/2018/07/30/429
もっと推敲が必要だったし、もっと編集力が関与すべきだったのである。

◎学研プラスは、学研ムック「キャプテン&プレイボール パーフェクトBOOK」を発売した。「キャプテン」「プレイボール」は、ちばあきおが「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載され、テレビアニメ化されたマンガである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001764.000002535.html

◎私はこの手の業界本には目がない。徳間書店から「極姐2.0 ダンナの真珠は痛いだけ」を上梓した待田芳子は死んだ夫が広域三次団体組長だったという元極道の妻だ。
http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198646615
待田が「サイゾーウーマン」に「元極妻が考える『カジノ解禁』――マジメな日本人はギャンブルにハマると怖い」を発表している。待田曰く・・・
「日本の公営ギャンブルの場合、控除率つまりテラセンは、オートレースが30%で、そのほかは原則25%、宝くじなんか55%ですから、ぼったくりもいいところです。かつてのヤクザの賭場はほぼ10%ですから、いかにひどいかということがおわかりいただけると思います」
http://www.cyzowoman.com/2018/07/post_194820_1.html

◎7月30日、「サントリー ドリームマッチ 2018」が開催された。石原さとみが始球式に登場し、下柳がグラブを叩きつけたり打たれまくりと大忙しだったし、桑田がショートで登場し、バースも健在で、川藤も代打で沸かせ、「喝!」の張本がヒットを打つというお祭りは昭和世代にとっては、胸キュンの夏の風物詩。今では誰でもLINEで視聴できる。
https://www.hochi.co.jp/baseball/etc/20180730-OHT1T50189.html
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201807300000682.html
https://www.daily.co.jp/baseball/2018/07/30/0011496297.shtml
https://www.sanspo.com/geino/news/20180731/geo18073105020006-n1.html
https://m0r1n.hatenadiary.jp/entry/suntory-dreammatch-how-to-watch

◎学研プラスとイオンモールは、“夏休みの自由研究”をテーマにした「自由研究おまかせワークショップ」を全国17箇所で開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001766.000002535.html

佐賀県がアニメ「銀魂」とのコラボ企画「佐賀春プロジェクト」を8月10日(金)から9月17日(祝・月)まで実施する。
http://sagaprise.jp/sagaharu/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000101.000018574.html

夕刊フジが「READING LIFEの提供」というコンセプトを掲げ、5年間で池袋に3店舗、京都市、福岡市にも出店を果たした「天狼院書店」を取り上げている。
「コンセプトについて、三浦崇典代表(40)はこう説明する。
『本屋にはこだわるが、『紙の本』に固執するのではなく、本や電子書籍セミナー、演劇、旅などコンテンツを楽しむ媒体を選ぶのはお客さまです』」
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180730/soc1807300007-n1.html

主婦の友社は、銀のパワーと、超極細繊維の最新技術を組み合わせた画期的なハンドサイズのタオル「魔法のタオル 超ふわふわAg♂(メンズ) 抗菌×防臭 汗も脂もひとふきするだけ」「魔法のタオル 超ふわふわAg♀(ガールズ) 抗菌×防臭 汗も脂もひとふきするだけ」の2種類を発売した。価格は本体1680円+税。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000821.000002372.html
何でも売るいう出版社の姿勢、オレ嫌いじゃない。

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4)【深夜の誌人語録】

怖がらないのは勇気ではなく無謀だからだ。