【文徒】2019年(令和元)10月25日(第7巻193号・通巻1613号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】講談社ラノベ庫」編集者のツイッター炎上、謝罪、撤回
2)【本日の一行情報】
3)【人事】集英社 10月23日付
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1)【記事】講談社ラノベ庫」編集者のツイッター炎上、謝罪、撤回(岩本太郎)

講談社ラノベ庫編集者の「シゲタ」がTwitterの書き込みが原因で炎上にさらされる騒ぎが発生した。発端は21日、ラノベ庫から8月に刊行された伊藤ヒロの『異世界誕生2006』についてシゲタが書き込んだ以下のツイート(原は既に削除)からだった。
《『異世界誕生2006』の記事をやらおん様にまとめて頂けました!
もうすぐ『異世界誕生2007』も刊行されますので、『2006』を是非多くの方に読んで頂けますと幸いです。
よろしくお願いします!》
https://twitter.com/_fukae/status/1186213298401710080
「やらおん」(正しくは「やらおん!」)とはアニメやマンガ、ゲームやアイドルなどのサブカルチャー系の情報を扱う「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」系のまとめサイトであり、以前にまとめサイトが問題視された際に槍玉に上がった「はちま起稿」「ハム速」などと共に「2ちゃんねる」管理人だった「ひろゆきこと西村博之から、悪質な書き込み転載を行っているサイトのひとつとして書き込み転載禁止の処置を受けたこともある。
https://times.abema.tv/posts/7009943
https://gigazine.net/news/20120604-2ch-reproduction-banned/
「シゲタ」はそうした「やらおん!」がTwitterの公式アカウントに書いた紹介をRTしてしまったらしい。即座にこんな悪影響を危ぶむツイートが。
《おっ、シゲタさんがやらおんをRTしている…これはイメージ悪化の危機…!》
https://twitter.com/mizunotori/status/1186178115954868225
《ビックリしたわ。やらおんやはちま起稿に取り上げられて喜ぶバカが、まだいるとはな~》
https://twitter.com/maeQ/status/1186184241329008641
《いくらPV数多くても、編集者がわざわざ取り上げていい媒体ではないよね、やらおんって。たとえ、内心感謝しても表向きはガン無視だよなあと個人的には思うんですけどね》
https://twitter.com/kow_yoshi/status/1186194174493655040
《なんだってといっても限度があるのは明らか(例えば漫画村に広告が載っても嬉しいといえるだろうか)だし、実際には「なんだってうれしい」というよりも「やらおんに問題があるとは思っていないし、思っていないから取り上げられてうれしい」という判定が発生しているんじゃないですか、という話ですね》
https://twitter.com/kuroda_osafune/status/1186196976242573312
ところが「シゲタ」はここからさらに失敗を重ねてしまう。上記のツイ主に対して食って掛かるかのように、こう書いてしまったのだ
《担当作の拡散に結びつくのならなんだってありがたいですよ。
それより、見ず知らずの他人にバカと言われるとさすがに不快です
https://twitter.com/shigetayuu/status/1186189859108450305
《数多ある有名なまとめサイトの一つという認識しか持っておらず、問題があるとは思っていないし(問題になりそうなことを知らない)、嬉しいです。
思い入れのある方が多いことは理解しましたが、個別のまとめサイトに対して何の思い入れも知識もない人もいるという前提でお話して頂きたく存じます》
https://twitter.com/shigetayuu/status/1186198638583664640
《見ず知らずの赤の他人にバカと仰られるリテラシーに対して僕は恥を知って頂きたいです》
https://twitter.com/shigetayuu/status/1186196448993349632
見かねたかマーケティング関係者と思しきツイートが諫めに掛かる
《逐一追いかけなくても検索すればその手の情報は既に指摘、糾弾している客観的な記事がいくらもあるということです。
編集者のことだって、有名無名問わず評判が記事にでもなれば、その担当される書籍の出版時に影響することは多々あります。道義的な問題があればなおのことです。
そういうお話かと》
https://twitter.com/Besucher/status/1186203761196163072
上記の「漫画村」関連のエントリを引用しつつたしなめるツイ主も
《作家の命を預かる立場の編集者発言だったので、意図的なバズ(炎上)戦術と思っておりましたが、まさか本当にご存知ない?こちらにも載せますがあの #漫画村 と #やらおん は同じ血筋で、出版社としては倫理的にも距離を置くべきサイトだと思いますが》
https://twitter.com/hogehoge_maru/status/1186216585104519168
そうした次々に押し寄せてくる指摘に遂に「シゲタ」も白旗を揚げざるを得なくなる。最初のツイートから約3時間後の21日18時過ぎになって、ようやく「お詫び」と当該ツイート削除を表明。
《15時39分のツイートにつきまして。
有名なまとめサイトに載せていただけたとURLをRTしたのですが、好意的に取り上げることが望ましくない所であることを知りました。大変お恥ずかしながら存じ上げなかったのですが、無知をお詫びいたしまして、ツイートは削除いたします。申し訳ございませんでした》
https://twitter.com/shigetayuu/status/1186210308357902336
《そこまで悪質なものであるのならば淘汰されているはずだくらいに思っておりました。大変認識が甘かったです。反省しております》
https://twitter.com/shigetayuu/status/1186216002859585536
仮にも講談社の、それもラノベの編集者であれば自分の所属する会社がここ数年「漫画村」など海賊版サイト対策に力を入れてきたことぐらい知っていたであろう。そのうえで、そうしたグレーゾーンまとめサイトを勤務時間中から閲覧していたのか? よしんば「シゲタ」自身が言う通り本当に「存じ上げなかった」のだとしても、そこは編集者としてツイートする前にせめて「まてよ?」と確認することぐらいできなかったのか? 講談社はネットリテラシーに関する社員教育に取り組んでいるのだろうか。更にいえば、講談社の広報室は、ネット上の異変に関して、もっと敏感であるべきではないのか。
余談ながら、この3日後の24日には講談社は都内・池袋に《世界に発信する「LIVEエンターテインメントビル」を開設》するとのリリースを公表している。旧シネマサンシャイン池袋を活用した施設で来年春には開業するとのことだが、そこには施設のコンセプトがこんなふうに歌い上げられているのだ。
《様々なジャンルのLIVEエンターテインメントコンテンツを展開します。
漫画・小説・アニメ・ゲームなどファンタジー世界を超至近距離でリアルに体験できるほか、アーティスト、役者、声優、ユーチューバーなど新たな才能をここから発信するLIVEエンターテインメント空間となります》
https://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2019/20191024_ikebukuro-project.pdf
こうした「シゲタ」のような編集者が、今度はこうした会社が運営するリアルの場で妙な騒ぎを引き起こしたりしないよう祈りたいものだ。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

日本経済新聞社は23日、子会社の日経BP日本経済新聞出版社を来年4月1日付で経営統合すると発表した。存続会社は日経BPで、統合に際して同社内に「日本経済新聞出版本部」を新設。日本経済新聞出版社の書籍や電子書籍、映像ソフトなどの編集や制作業務を引き継ぐ。統合を機に新ブランドを立ち上げる方針という。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51292180T21C19A0TJ1000/
https://media-innovation.jp/2019/10/23/nikkei-bp-business-integration-with-nihon-keizai-publishing/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000152.000011115.html
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1214284.html
日経BPはもともと米マグロウヒルとの合弁会社「日経マグロウヒル」として1969年に設立された(1988年に日経全額出資に移行のうえ現社名に改称)。同時に創刊された『日経ビジネスは経済専門の月刊誌(1991年から週刊化)として一般にも広く知られるメディアとなったが、もともと米国流のビジネスジャーナリズム手法を導入した同社の雑誌のほとんどは「業界誌」。直接購読を原則として読者も特定分野に絞り込んだうえで部数も全てABCに加入のうえ公開。編集部はもちろん広告部も各雑誌ごとに分かれて存在するという徹底ぶりだった。
そうした縦割り構造が同社において広告部門の最終的な責任の所在がどこにあるかを見えにくくし、なおかつ官僚制の温床となっているのではないか――といった批判的レポートを、本誌の前身である東京アドエージの『広告人連邦・日本の編集長』では80年代末から90年代半ばにかけて何度となく掲載したものだった(現在でも国会図書館などで一部が読めるはずだ)。
それが変わり始めたのはバブル崩壊後の90年代初頭に初めて業績不振による休刊誌を出す一方、直接購読のノウハウも活かす形で『ナショナルジオグラフィック』日本版を1995年に創刊(合弁会社の日経ナショナルジオグラフィック社より刊行)したあたりからではなかったか。同誌の創刊は朝日新聞フジサンケイグループ小学館などが手を上げたものの広告環境の悪化に伴い撤退していたところに、日本での版元を求めていた本国版が同社に白羽の矢を立てたことによると言われる。ちなみに日経BP保有していた日経ナショナルジオグラフィック社の株式は2015年に日経新聞本体に移動している。バブル前後に雨後の筍の如く生まれては後に消えて行った海外提携誌の中で生き残った数少ない存在だ。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/topics/17/092900010/092900001/
2008年に日経のショッピング部門に源流を持ち『日経トレンディ』などを発行していた日経ホーム出版社と合併したことによってすっかり一般書の版元としてのイメージに変わっていた。
日本経済新聞出版社日本経済新聞社の出版局を分離・独立のうえ2007年に設立された日経本社の完全子会社である。かつて日経出版局が発行していた「日経庫」や、2017年に休刊した「日経会社情報」(現在はデジタル版に移行)などの出版物を引き継いだが、雑誌に関しては日経BPが担当する形で、グループ内では旧出版局時代から守備範囲が分けられていた
なお、斎藤禎(元藝春秋常務取締役。『ナンバー』『クレア』『マルコポーロ』の編集長などを務めた)は同社が日経本体から分離・独立される前年、当時日経本社社長だった杉田亮毅らから直々に誘いを受け、藝春秋を退社のうえ2007年1月から2011年3月まで同社の代表取締役会長を務めた(そのあたりは斎藤自身が『出版人・広告人』2014年11月号掲載の元木昌彦との対談(および同連載を単行本化した『知られざる出版「裏面」史』)の中で自ら語っている。そうした本体の流れを汲む書籍部門と雑誌部門とが遂に今回統合されることになったわけだ。

◎ジャーナリストの鈴木智彦が『週刊ポスト』11月1日号(『NEWSポストセブン』10月23日付)に「山口組分裂抗争『68ヒットマン』出動の衝撃」を寄稿。高齢の組員、あるいは若くして病に侵され未来を失った組員がヒットマンになることが増えているという。表題の68歳のヒットマンも持病を抱えていたそうだが、その犯行時にとった行動も凄まじい。彼は現場にいた『週刊実話』『アサヒ芸能』のベテラン取材者に対しても完璧に素性を隠したほか、警察からの質問にも「双葉社です」「朝日新聞のカメラマン」などと偽ったうえで犯行に及んだというのだ。
山口組記事を毎週欠かさず掲載する実話系週刊誌は3誌あるが、その中でこの日、現場にいなかったのは双葉社発行の『週刊大衆』だけだった。捜査関係者は丸山容疑者が実話誌の内部事情を知っており、相応のリサーチをしていたと推測している》
https://www.news-postseven.com/archives/20191023_1471994.html

◎ノンフィクションライターでアジアルポのほか山谷や釜ヶ崎などの取材でも知られる水谷竹秀が、先の台風で被害を受けた荒川河川敷在住の野宿生活者の様子を『春オンライン』でレポート。
https://bunshun.jp/articles/-/14807
この記事を読んで山谷まで路上生活者の取材にやって来たというNHK記者の一言に水谷が激怒。自身のTwitterアカウントで報告していた。
《「はっきり言って、台東区を叩いて政府を動かせるのはNHKらいですから」
あんた何様や?》
https://twitter.com/takehide1975/status/1186106651251625984

◎同じく『春オンライン』でジャーナリスト・横田増生が「アマゾン潜入ルポ」の続報。アマゾンの小田原物流センターで2013年の開設から亡くなったアルバイト5人のうち、詳細のわからなかった1人を知る人物が、横田の記事を読んで名乗り出てきて取材に応じた。
https://bunshun.jp/articles/-/14883

◎『FRIDAY』掲載の記事で名誉を傷つけられたとして、茨城守谷市の松丸修久市長が講談社に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は23日、名誉毀損を認めて165万円の支払いを命じた一審東京地裁判決を変更。賠償額を220万円に増額した判決を言い渡した。同誌2017年4月28日号の記事では松丸市長に関する官製談合の疑いを報じたが、同判決はこれを否定。一審の賠償額が低すぎるとした市長側の訴えも認めた。
https://www.sankei.com/affairs/news/191023/afr1910230042-n1.html

◎今日25日発売の『WiLL』12月号でミスが発生。同号では阿比留瑠比と籠池佳茂との対談記事を掲載しているが、その表紙と目次に掲載した見出しで籠池佳茂の名前を父親の「籠池泰典と誤記。同紙は公式Twitterアカウントにてお詫び・訂正のうえ修正した表紙を掲載した。
https://twitter.com/WiLL_edit/status/1186846018618327042

◎「NHKから国民を守る党(N国)」幹事長兼選対委員長に就任していた上杉隆は結局辞任の意向を固めたそうだ。24日にFacebookで《現在行われている参院埼玉補選での立花孝志候補の戦い方をみて決意しました》と報告。今日25日に行われるN国の定例会見で正式発表するとのこと。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10220067138339903
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201910240000368.html

◎「LINEマンガ」は9月から新人漫画家発掘を目的とした「フロンティアデビュープログラム」を開始。この記念イベント「Manga Meetup ~明日マンガ家になれる方法~」を19日に都内・新宿のLINE本社で開催した。従来のような出版社への作品持ち込みから雑誌掲載までに数年を要したプロセスを「最短即日デビュー」にまで短縮できるというのが売り。この日のイベントでは同プログラムについての解説のほか、「こぐまのケーキ屋さん」で知られる漫画家のカメントツを招いての講演やトークセッションが行われた。
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1910/23/news128.html

紀伊國屋書店は10月からドイツの学術出版社De Gruyter社の電子書籍に関する日本販売総代理店として、法人向け取り扱いを開始。日本の書店が海外の大手学術出版社の電子書籍の総代理店となるのは初めてだという。
https://kyodonewsprwire.jp/release/201910212383

◎『東洋経済オンライン』に筆家の鈴木伸子(元『東京人』副編集長)が「カドカワ武蔵野線『東所沢』に拠点を置く背景 『ところざわサクラタウン』とはいったい何か」を23日付で寄稿。市中心部の西武線所沢駅から遠く離れた郊外地帯(最寄り駅はJR武蔵野線東所沢駅)にKADOKAWAが建設しようとしている「ところざわサクラタウン」の概要について、KADOKAWA担当者の森好正(プロダクトマーケティング本部レクリエーション事業局渉外部部長)への取材もとにまとめている。
https://toyokeizai.net/articles/-/309211

◎『GQ』最新号の表紙が山本太郎という話は昨日も紹介したが、かつての雑誌が元気な時代であったら山本は各誌から引く手あまただったかもしれない。私が関わる『週刊金曜日』も、山本太郎独占インタビューを掲載した8月23日号が書店で売れ行き好調(通常の同誌は定期購読者が主体)で、やや品薄気味になったほど。山本太郎インタビューは翌月にはキンドル本として発売された。
https://www.gqjapan.jp/magazine/backnumber/20191023/gq-vol195?fbclid
https://twitter.com/syukan_kinyobi/status/1166202348407943168
https://www.facebook.com/kinyobi.co.jp/posts/2903178993027013
いかんせん、山本が登場しそうな雑誌の数自体が今やだいぶ減ってしまったわけでもあるが。

◎チャンネル登録者数が340万人を超えるというユーチューバー「ヒカル」のマネージャーを務める高橋将一が、西村博之らと共に、クリエイターの新たなサポート事業を手掛ける新会社「Guild」を設立した。
https://kai-you.net/article/68610

◎在英ジャーナリストで欧州のメディア動向に詳しい小林恭子が『BLOGOS』10周年企画に「24時間ニュース・番組同時配信が現実の英メディア どうやってデジタル化にまい進したのか」を寄稿。新聞の動向については、サブスクリプション制を採用して約50万人の有料購読総数(うち国外在住者が半数)を獲得した『タイムズ』『サンデー・タイムズ』に対し、ネット版記事を全て無料閲読可能としつつ、イベント参加特典などサポーター方式の会員制を採り入れて黒字化に成功した『ガーディアン』という対照的な双方の事例にも言及しながら論じている。
https://blogos.com/article/410519/

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3)【人事】集英社 10月23日付

佐野 明夫
新:取締役[雑誌販売部、コミック販売部、書籍販売部、AIラボ担当](兼)雑誌販売部部長(兼)書籍販売部部長(兼)コミック販売部部長
旧:取締役[雑誌販売部、コミック販売部、書籍販売部、AIラボ担当](兼)雑誌販売部部長(兼)書籍販売部部長

大内 重昭
新:ライツ事業部部長代理
旧:ライツ事業部部次長

福田 則昭
新:書籍販売部部長代理
旧:書籍販売部部次長

志波 辰憲
新:雑誌販売部雑誌販売課副課長
旧:雑誌販売部雑誌販売課係長

野中 久幸
新:集英社サービス出向(部長待遇)
旧:コミック販売部部長

宇居 直美
新:一ツ橋芸教育振興会出向(部長代理待遇)
旧:女性誌企画編集部部長代理

戸上 郁子
新:ライツ事業部業務管理課副課長
旧:デジタル事業部デジタル事業第2課副課長

黒沢 奈津子
新:広告部メディアプランニング課副課長
旧:第10編集部エクラプレミアム担当副編集長

山田 耕大
新:コンテンツ事業部コンテンツ事業課係長
旧:広告部メディアプロモーション第2課係長