【文徒】2019年(令和元)12月25日(第7巻235号・通巻1655号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】ウォルト・ディズニー・ジャパンステマ広告について
2)【記事】元TBS記者 山口敬之の評判
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.12.25 Shuppanjin

1)【記事】ウォルト・ディズニー・ジャパンステマ広告について

「YAHOO!ニュース」が山本一郎の「『アナと雪の女王2』でディズニーがTwitterを使い盛大なステマで大失態の件」を公開したのは12月6日のことであった。
Twitterアカウントをバンされたままですのであくまで後追いで知った話なんですが、どうやらディズニーから依託されていた広告代理店がTwitter上で盛大なステマを仕込んだのがバレて、結果的にディズニー自身がかなりみっともない状況に陥ってしまったようです。》
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20191206-00153907/
山本のネタ元となったのは、この「まとめサイト」である。ステマが疑われたのはツイッターに発表された「アナと雪の女王2」を題材にしたマンガであった、
https://togetter.com/li/1438632
ウォルト・ディズニー・ジャパンは12月5日付で《「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」に関するお詫び》を発表した。
《この度は、「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」につきまして、ご参加いただきましたクリエイターのみなさま、ファンのみなさまに多大なご心配、ご迷惑をお掛けし、深くお詫び申し上げます。
本企画は、クリエイター7名のみなさまに映画『アナと雪の女王2』をご覧いただき、ご感想を自由に表現いただいた漫画をTwitterに投稿いただく企画として実施したものです。
本企画に伴う投稿は、「PR」であることを明記していただくことを予定しておりましたが、関係者間でのコミュニケーションに行き届かない部分があり、当初の投稿において明記が抜け落ちる結果となってしまいました。
今後このような事がないよう、関係者一同、深く反省するとともに、コミュニケーション体制を見直し、再発防止策を講じてまいります。》
https://www.disney.co.jp/corporate/news/2019/20191205.html
ウォルト・ディズニー・ジャパンは更に12月11日付で《「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」にご参加いただいたクリエイターのみなさま、そしてファンのみなさまへ》を発表する。
《私たちは、「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」に関し、ご参加いただいたクリエイターのみなさまにご迷惑をお掛けしている事実を大変厳粛に受け止めています。また、この事により、ファンのみなさまを失望させてしまったことを真摯に受け止めています。
ディズニーでは、マーケティング活動における社内指針を設けています。本件を含む類似の案件は、当該指針に関する周知および遵守の不徹底が招いた結果であり、ご参加いただいたクリエイターのみなさまに責任はございません。
改めまして、本件につきまして、深くお詫び申し上げます。今後は、このような事がないよう、社内指針の周知徹底を図り、再発防止に努めてまいります。これまでみなさまにいただいたディズニーに対する思いを心に留め、社員一同努力し続けてまいります。》
https://www.disney.co.jp/corporate/news/2019/20191211.html
ディズニーが二度も文章を発表したことの意味を軽く考えてはなるまい。朝日新聞デジタルは12月12日付で「ステマ?のPR投稿、アナ雪2以外でも ディズニー発表」を掲載している。
《同社は作品名を示していないが、インターネット上では、いずれも今年公開された同社の配給作品「アラジン」「アベンジャーズ/エンドゲーム」「キャプテン・マーベル」で同じような投稿があったと指摘されていた。》
https://www.asahi.com/articles/ASMDD62GFMDDUCVL01Q.html?ref=tw_asahi
山本は自らの「オフィシャルブログ」に12月12日付で「電通グループ、『アナと雪の女王2』のステマ騒ぎで緘口令でも敷かれる騒ぎに?」をエントリする。
https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13242031.html
山本一郎は更に12月17日付で「ステマ騒動のディズニー『アナと雪の女王2』で電通は10億円単位のペナルティを払うかもしれない」をエントリしている。
https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13242422.html
12月17日には「東洋経済オンライン」がITジャーナリストの本田雅一による「なぜ『アナ雪2のステマ騒動』は起きたのか 求められるキャスティング業者の『モラル』」を公開している。
《この騒動による波紋が広がり続けているのは、マーケティング施策であることを示す表記がなかったことに加え、広告代理店として関与していた電通の担当者が表記不要と説明していたことがある。また漫画家をキャスティングしたPR表記なしのマーケティング施策が他コンテンツでも行われた形跡があることなど、少しずつ情報が明らかになってきていることの不信感(当初発表との不整合)もある。》
https://toyokeizai.net/articles/-/320158
この問題はアメリカにも飛び火する。「ウォールストリートジャーナル」は12月18日付で「『アナ雪2』ステマ騒動、ディズニーが一部広告を凍結」を発表している。
《関係者によると、今回のマーケティング活動には電通が関与。その一環で、クリエーターらがツイッター上で広告と明示せずに「アナと雪の女王2」を称賛する漫画を投稿し、報酬を得ていた。ディズニーはこの問題で謝罪した。同社は当初、意図して起きたものではないとしていたが、その後クリエーターらが意図的だったと明らかにした。
関係者の1人によると、ディズニーと電通はこの問題の責任割合について協議している。関係者のうち2人は、クリエーターに対しツイートに広告と明示しないよう指示したのは電通で、マーケティング計画を承認したのはディズニーだったと述べている。》
https://jp.wsj.com/articles/SB11067715808383193813704586085122507699208
ディズニーが凍結した広告は「アナと雪の女王2」にとどまらず、「スターウォーズ」の広告の凍結もあったようである。
https://www.wsj.com/articles/disney-puts-some-frozen-2-promotions-on-ice-after-twitter-flap-11576574378
「広告」と明示するかどうか日本の広告の現状からすると、それほど厳格に運用されているとは言い難い。しかし、それはあくまでも日本というムラの習慣にしか過ぎず、世界的には、それでは許されないということなのだろう。口コミに見せかけることはアメリカではNGなのである。編集と広告の線引きを必ずしも厳密にして来なかった雑誌ビジネスがデジタルシフトするにあたって十分に留意しなければならない点でもある。

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2)【記事】元TBS記者 山口敬之の評判

12月24日付東京新聞は社説「詩織さん勝訴 『黒箱』の中が見えない」を掲載している。
《海外メディアの主張はどれも正当なものだ。例えば日本では性暴力に遭っても警察に相談するケースは少ないとか、刑事罰を科す困難さを挙げて、日本の性犯罪に対する後進性を説いたりした。何より首相と親しい山口敬之元TBS記者を訴えた裁判だったことに焦点を当てたりした。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019122402000160.html
元TBS記者の山口敬之がいかに横柄で居丈高な対応をしているかが非常によくわかる記事である。「YAHOO!ニュース」が12月23日付で「女性記者にだけ態度が違った? 山口さん会見での主張『矛盾があるとは思ってない』とは」を公開している。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20191223-00156004/
ハフポスト日本版ニュースエディターの中村かさねが連続ツイートを発表している。
《「山口さんが考える性的合意とは、どういったものか?」との質問には「明確に性行為に合意はありました」と答え、「(伊藤さん)ご本人から、そういう(合意の)言葉はあったか」との質問にも「はい」と答えた。
この部分を質問したのは私なのですが、》
《山口氏は「性的同意を一言で答えられる人はいない」というようなことを、私のフルネームを何度も口にしながら答えました。
昨日の会見でも東京新聞北海道新聞の女性記者の名前を何度も口にしていました。
私が知る限り、男性記者にはそのようなことをしていません。》
《女性に対するものすごい支配欲を感じましたし、何より不必要に名前を連呼するのは一種の侮辱行為であり、晒しだと感じました。
私に対しては毎日新聞にいた中村かさねさんですね、と念押しまでされましたが、意味が分かりません。》
《私はたしかに、山口氏に毎日新聞時代に取材を申し込んでいます。
その時も「性的合意をどう考えるのか、なぜ性的合意を得たと思ったのか」と質問しました。
今は供述が変わったようですが、「あなたのような素敵な女性が半裸でベッドに入ってきたので、そういうことになった」とされていたからです。》
《性的同意については、誰でもすぐに分かる動画があるので、ぜひご覧ください。》
https://twitter.com/Vie0530/status/1207669507638120449
https://twitter.com/Vie0530/status/1207670433178423296
https://twitter.com/Vie0530/status/1207671069181698050
https://twitter.com/Vie0530/status/1207672346833760256
https://twitter.com/Vie0530/status/1207674727059378177
朝日新聞サンフランシスコ支局長の尾形聡彦がツイッターで次のように指摘している。
《会見で山口氏は女性記者への攻撃的な姿勢が目立ち、フルネームで呼ぶのは威嚇のように見えました。現場には大勢の男性記者がいたのですから、山口氏の態度を質すべきだったと思います。女性への性暴力が問われている会見で、女性記者への威圧的態度とそれを放置する空気が目立ち、後味の悪い会見でした》
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1209183071108358144
古谷経衡がツイートしている。
《伊藤さんをセカンドレイプする連中と、95年の沖縄少女暴行事件で被害少女を「深夜に街を歩いていたのは普通ではない」と中傷する連中は、不思議なほど、全く重複している。吐き気がする。もはや保守云々ではなくただのゲス。》
《「安倍総理に最も近い男ぉ!」とかいって毎週番組に山口敬之を起用していたのに、疑惑が報道されると手のひら返して起用しなくなった某番組首脳。出演者はおろか視聴者にも全く説明なしで、山口某を起用し続け、政権と一緒にヨイショし続けた過去に対し、心の痛痒を感じないのだろうか?お前の事だぞ!》
https://twitter.com/aniotahosyu/status/1209062830319603712
https://twitter.com/aniotahosyu/status/1209064536919048193

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3)【本日の一行情報】

主婦の友社は、12月23日に「大人の動物占いBook 2020年の運勢」を発売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001054.000002372.html

◎花伝社のツイート。
《残念ながら回収されてしまった『このマンガがすごい!2020』(宝島社)にて、『わたしが「軽さ」を取り戻すまで』(http://kadensha.net/books/2019/201901karusa.html)が「唯一無二のノンフィクション」として書影付きで紹介されていました!》
https://twitter.com/kadensha/status/1208919036295204867
「わたしが『軽さ』を取り戻すまで」はバンド・デシネ(フランス語圏の漫画)である。「週刊ポスト」6月7日号で鴻巣友季子が書評を書いていた。
《彼女は二〇一五年一月七日のイスラム過激派による「シャルリ・エブド襲撃」の難を辛くも逃れていた。覆面の男ふたりが同新聞社に押し入り、編集者、風刺漫画家、コラムニストら12名の命を奪った事件だ。カトリーヌが命拾いをしたのは、妻子ある恋人にふられたせいで、朝、遅刻をしたため。》
https://www.news-postseven.com/archives/20190602_1379119.html
私は「わたしが『軽さ』を取り戻すまで」を買いそびれてしまった。今年中には読まねば!

◎わが国の出版文化は乃木坂46によって支えられている、と言っても過言ではないのだろう。今度は次世代エースの呼び声も高い山下美月が「忘れられない人」で小学館から写真集デビューを遂げる。
https://www.asagei.com/excerpt/139831

◎光文社は佐々木俊尚の「時間とテクノロジー 『因果の物語』から『共時の物語』へ」の刊行を記念して、1月6日(月)に光文社 本社ビル 9階 プレゼンテーションルームでトークイベントを開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000245.000021468.html
ソシュール言語学の大衆版というところか。共時態を通時態に優先させるといった類の話であれば、今から40年近く前に、そう丸山圭三郎が「ソシュールの思想」(岩波書店)を出した頃に議論したような記憶がある。

◎宝島社は年末年始も附録で攻勢をかける。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000970.000005069.html

徳間書店大藪春彦賞の候補作を発表した。赤松利市『犬』(徳間書店)、川越宗一『熱源』(文藝春秋)、遠田潤子『ドライブインまほろば』(祥伝社)、前川ほまれ『シークレット・ペイン 夜去医療刑務所・南病舎』(ポプラ社)。
https://tv.prtimes.jp/main/html/rd/p/000000226.000016935.html

実業之日本社は、今年7月、経済産業省が所管する平成30年度補正予算「コンテンツグローバル需要創出等促進事業費補助金(J-LOD)」のうち、ブロックチェーン技術を活用したコンテンツの流通に関するシステムの開発・実証に関する補助事業に採択され、「出版コンテンツの総合的な権利処理基盤の構築に向けた実証実験」を行うためのシステム開発を続けて来た。
このシステムの第1フェーズが完成したことを受けて、12月20日から約2ヵ月間の予定で海賊版防止を目的とした実証実験を行う。この実証実験は、電子書店「マンガ図書館Z」を運営するJコミックテラスの協力を得て実施するもので(12/23付文徒参照)、岩波書店河出書房新社祥伝社ポプラ社も参加する。
https://www.j-n.co.jp/news/?article_id=561

◎「ブラック企業大賞2019」に三菱電機が二年連続で選ばれた。ウェブ投票賞は楽天。特別賞は電通セブン-イレブン・ジャパン。#MeToo賞は長崎市
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/black-kigyo-2019-2

共同通信が12月23日付で「20代以上半数が本1冊も読まず 紙の書籍離れ進む、全国調査」を発表した。
《全年代を合わせ、1カ月に本を全く読まないとした人は49.8%に上った。2013年にまとめた同様の調査の28.1%から、大幅に増えた。
全く読まないとした人が特に増えたのは20代で、13年調査に比べ25.1ポイント増の52.3%と倍増した。30代は54.4%と半数を超えた。23.3%だった60代も、44.1%まで増えた。》
https://this.kiji.is/581760298109764705

◎「JEPA電子出版アワード2019」の大賞は「note ノート」(ピースオブケイク)に決まった。
https://www.jepa.or.jp/pressrelease/20191223/
ピースオブケイク加藤貞顕が喜びのコメントをツイッターに発表している。
《2019年の電子出版アワードの大賞をnoteがいただきました。事前投票でも会場の投票でもたくさん票をいただき、本当にありがとうございました。チーム一同、今年はがんばりました!!!》
https://twitter.com/sadaaki/status/1209124610156818435

共同通信によればグーグルとフェイスブックは、日本の広告事業の売上高を日本法人に直接計上する方針を固めたという。
https://this.kiji.is/581815869684548705
電通総研フェローでNewsPicksのピッカーでもある氏家夏彦のツイート。
《これで良かった良かったと単純には言えそうもありません。昨日のAmazonだって2年間でわずか300億円。詳細がわかってNPの賢人たちの評価を見ないとうかつには喜ばない方がいいと思います。》
https://twitter.com/natsu30/status/1209127686255169536

ハースト婦人画報社は、12月21日発行のブライダル情報誌「ELLE Mariage」(エル・マリアージュ)」をもって、定期刊行全13雑誌の環境対応型インキ「植物油インキ」への切り替えを完了した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000120.000008128.html
紙もインクも地球に優しい選択をしなければならないはずだ。ドメスティックの出版社から、こうした情報発信がないのが淋しい。

◎じゃんぽ~る西のコミックエッセイ「私はカレン、日本に恋したフランス人」(祥伝社)が重版出来。
https://twitter.com/FEELYOUNG_ed/status/1209299240763019265
https://twitter.com/JP_NISHI/status/1209301989105946624

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4)【深夜の誌人語録】

凡人にとって武器となるのが書物である。