【文徒】2019年(令和元)12月26日(第7巻236号・通巻1656号)
Index------------------------------------------------------
1)【記事】「報道ステーション」派遣切りの衝撃
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.12.26 Shuppanjin
1)【記事】「報道ステーション」派遣切りの衝撃
「日刊ゲンダイDIGITAL」は12月24日付で「テレ朝『報ステ』で大量派遣切り…年の瀬に非情な通告が」を掲載している。
《テレビ朝日系の看板番組「報道ステーション」で働く派遣スタッフが、大量に“解雇”通告されたことが日刊ゲンダイの調べで分かった。対象は10年以上の長きにわたって番組を支えてきた中核メンバーがほとんどで、10人以上が一斉に契約終了という異常事態。報ステに一体、何が起きているのか。》
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/266708
「日刊ゲンダイDIGITAL」の記事によるとテレビ朝日の幹部は「卒業」という言葉を使ったようだが、江川紹子がツイッターで指摘しているように「『クビ切り』『切り捨て』を『卒業』と言い換える欺瞞」にほかなるまい。
https://twitter.com/amneris84/status/1209644673431556096
「文春オンライン」が12月24日付で「報道ステーション 2020年4月『全面リニューアル』へ」を公開している。
《番組スタッフは、現在の報ステの現場の雰囲気をこう明かす。
「前CPのセクハラは十分な調査が行われなかった。正社員は問題を起こしても異動になるだけで高給も変わらないのに、社外スタッフが『人心一新』のために“派遣切り”されるなど、到底納得できないという雰囲気です」》
https://bunshun.jp/articles/-/22133
新聞労連委員長をつとめている朝日新聞の南彰がツイートしている。
《報道機関としてあるまじき大量派遣切り。
対象者には「桜を見る会」問題やセクハラ撲滅で頑張ってきたスタッフも含まれている。報ステの支柱だ。
テレ朝幹部は看板番組の「報ステ」からジャーナリズム精神を奪おうとしているのではないか。》
《大量派遣切りについてテレ朝が取材に回答。
「オリンピックを目前に控えた来年4月のタイミングで、番組全般についてリニューアルすることとしました」
五輪が近づくと、日本のテレビ局では番組からジャーナリズムの支柱を一掃するのか?》
https://twitter.com/MINAMIAKIRA55/status/1209450131897995264
https://twitter.com/MINAMIAKIRA55/status/1209453118993264640
オリンピックを放送するのに、そういう骨のあるスタッフは必要としないのだろう。こんな意見もツイッターに投稿されていた。
《テレ朝は自らが築いた「報道のテレ朝」をドブに捨てる?
とても正気とは思えない。》
https://twitter.com/piyopikopichi/status/1209362587432800257
いずれにしても、テレビ朝日に働く正社員の高給与体系は低賃金長時間労働で、いつでもクビにできる派遣スタッフによって支えられている。大手出版社も同じような二重構造によって支えられている。こうした二重構造は日本経済の特徴なのかもしれない。
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2)【本日の一行情報】
◎『週刊ダイヤモンド』12月23日発売号の第二特集「経済学者・経営学者・エコノミスト107人が選んだ 2019年『ベスト経済書』」で、山口慎太郎の『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)が第1位に選ばれた。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000248.000021468.html
サントリー学芸賞を獲得しているから、別に驚きはない。経済に強い光文社新書なのである。2017年にサントリー学芸賞を獲得した「データ分析の力 因果関係に迫る思考法」も光文社新書である。
◎共同通信は12月24日付で「イスラム書店、東京に開業」を発表した。
《東京都渋谷区にある国内最大級のイスラム教のモスク(礼拝所)、「東京ジャーミイ・トルコ文化センター」に書店がオープンした。扱うのは宗教本だけでなく、イスラム圏の歴史や料理、科学などジャンルはさまざまだ。》
https://this.kiji.is/581950010083509345?c=39546741839462401
◎「BUZZAP!」は12月22日付で「はちま起稿が『伊藤詩織さんが事件のことをウッキウキで話す様子が話題に』と題して中傷→記事削除して逃亡」を公開している。
《タイトルには「本当にこの人は被害者?」「違和感と不快感しかない」なども含まれ、どういう意図で書かれたのかあまりにも明白でした。》
https://buzzap.jp/news/20191222-htmk73-itoshiori/
「保守」が最も大切にすべきは品格であるとするならば、「はちま起稿」は「保守」でないことは明白である。
◎産経新聞は12月24日付で「身内を批判、他社を賞賛 600号迎えた新潮社PR誌『波』の軌跡」を掲載している。
《実際、「波」では書評欄で他社本を紹介し、楠瀬さんが担当する「あとがき」では、問い合わせを受けた国書刊行会の編集者の取り組みと彼が手がけた本の裏話などがつづられ、これまた本好きを刺激する内容となっている。
かつて、作家の野坂昭如さんが「波」に書いたコラムで、新潮社発刊のベストセラー「かもめのジョナサン」を「つまらない小説」と批判したことがあるなど、ときにPR誌の型から逸脱した過去もあるが、それも魅力の一つだろう。荒木経惟さんの「センチメンタルな旅・冬の旅」が出た際の篠山紀信さんとの対談は、本音のぶつけ合いで今や語りぐさにもなっている。自画自賛や予定調和の内容だけで、半世紀の長寿を保つことなどできるはずもないのだ。》
https://www.sankei.com/life/news/191224/lif1912240003-n1.html
カネを払っているのだから、提灯記事を書けと手紙を寄こした大手出版社の常務殿には理解できないだろうが、こうした「波」の姿勢が新潮社という出版社のイメージを形成するにあたってプラスに機能しているのであり、PR誌としての役割を十二分に果たしているということでもある。
◎ディップは、「その経験が夢につながる」をコンセプトとした「ドリームバイト」の新企画として、ぴあとタイアップし、雑誌「初夏ぴあ」の撮影モデルになれるアルバイトの募集を開始した。日給3.3万円!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000982.000002302.html
◎ソフトバンク、NAVER、ソフトバンクの連結子会社であるZホールディングス、 NAVER の連結子会社であるLINEは、4社間で、最終契約である経営統合契約書や、経営統合後の会社ZHDのガバナンス・運営などについて定めた資本提携契約書の締結を決議した。
NAVERとソフトバンクは、LINEの非公開化を目的として対象株式のすべての取得に向けて共同公開買付を実施し、NAVERとソフトバンクがLINEの議決権割合を50:50とする取引を行ない、LINEはソフトバンクの連結子会社となる。
https://www.softbank.jp/corp/set/data/news/press/sbkk/2019/20191223_03/pdf/20191223_03.pdf
◎産経新聞は12月24日付で「文春オンラインが月間3億PV突破」を掲載している。
《新聞や雑誌などの紙媒体がデジタルへの対応を迫られるなか、文藝春秋(東京都千代田区)が運営するネットメディア「文春オンライン」が好調だ。タイムリーで読み応えある記事で、11月のページビュー(PV)は過去最高の3億PV超え。これまで独走していた、同じ出版社系の「東洋経済オンライン」を凌駕する勢いをみせている。》
https://www.sankei.com/entertainments/news/191224/ent1912240010-n1.html
◎楽天は、傘下の楽天USAが完全子会社のオーバードライブ・ホールディングスの全株式を、Aragorn Parentに譲渡すると発表した。オーバードライブは図書館や教育機関へ電子書籍やオーディオブックなどの配信サービスを提供しており、順調に業績を拡大していたが、経営資源配分の最適化を図るため、株式譲渡を決定したと楽天は説明している。
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120191225441246.pdf?fbclid=IwAR3JI3YJFfDMRt47o12IReJvhbchbLaWGfoMM7w-rOfjYGfg8ac0qwr1qcQ
https://jp.reuters.com/article/rakuten-idJPKBN1YS1H9
◎「BUSINESS INSIDER JAPAN」は12月24日付で「事業規模は10年で10倍に…アマゾンの進化と拡大の歴史を振り返る」を公開している。
《過去10年間、議論が繰り返されてきたにもかかわらず、アマゾンは人々から好かれている。これは、売上拡大のために顧客の利便性向上に注力していることも一因だ。これまでのところ、この戦略は功を奏している。》
https://www.businessinsider.jp/post-204360
◎京都府私立学校図書館協議会の「学校司書が選ぶイチオシ本」の第1位にブレイディみかこの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社)が選ばれた。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000047877.html
◎「弁護士ドットコムニュース」は12月25日付で「『電通はまつられた』社内ジョークに絶望、広告代理店社員が見た変われない業界」を公開している。「最近まである代理店で働いていた社員」によるレポートだ。
《高橋まつりさんの事件を「まつられた」と表現する社員が少なからずいました。あまり思い出したくないですが、「電通が『まつられて』から、こっちに来る案件が増えたんだよね~」といった、モラルのない使い方をする先輩を見かけたこともありました。》
https://www.bengo4.com/c_5/n_10582/
25日は彼女の過労自殺からまる4年だった。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191225/k10012227251000.html
◎2019年啓文堂書店文庫大賞を受賞した伊岡瞬「悪寒」(集英社文庫)が、2020年1月10日出来の重版で累計20万部を突破する。発売から半年での20万部突破は、伊岡作品のなかでも最速だそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000011454.html
◎12月28日発売の「婦人画報」2020年2月号(ハースト婦人画報社)の表紙を飾るのは滝川クリステル。
https://toretame.jp/tc_fg115.html
◎「ほんのひきだし」が12月25日付で公開した「物量減、ドライバー不足、休暇取得……物流危機の現状を説明『2020年の大きなテーマ』」は「新聞之新聞」12月18日号から転載したものである。
《出版輸送特有の課題もある。輸送量全体の7割を占める雑誌の物量が毎年約10%ずつ減っている現状だ。毎年10%ずつ減少すると、7年で半減してしまう計算になる。それにもかかわらず、コンビニエンスストア(CVS)や書店への配送軒数は微増している。輸送会社は業量が減って収入も減る中、輸送にかかるコストが変わらないため収支は悪化。輸送会社としては、「多くのものを運ぶ」「配送ルートを合理化して採算性を上げる」の2つしか選択肢がない状況だ。》
https://hon-hikidashi.jp/more/100021/
◎集英社はデジタルシフトを着実に進めつつある。
《今日、賞を貰いました!
これで僕らがいただいた電子出版アワードのトロフィーは、少年ジャンプ+、ジャンプPAINTに続いて、3つ目!
もっと沢山貰えるように今後も頑張ります!》
https://twitter.com/momiyama2019/status/1209034435040989184
◎「ハーバー・ビジネス・オンライン」は12月24日付で「山口敬之氏はニューヨークタイムズ記者の質問にどう答えたか?<信号無視話法分析>」を公開している。
《「リッチ素子さんの記事や他の報道についても私の名誉を毀損していると思ったものについては、今後、どのような措置を取るかは検討して発表いたします」とのことだが、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、タイムズ、CNN、BBCなどの海外メディアがこの事件の詳細を日本メディアよりも率直に報じている中、山口敬之氏が一体どのような措置を取るのか(もしくは取らないのか)興味深い。》
https://hbol.jp/209308
「Yahoo!ニュース」は12月25日付で「米国はセクハラ問題にどう対峙したのか?『日本の#MeToo事件、安倍氏の伝記作家が同僚をレイプ』英紙」を発表している。
《伊藤詩織氏が勝訴した日本の#MeToo裁判は、海外でも大きく報道された。
中でも、英紙タイムズは「日本の#MeToo事件、安倍氏の伝記作家が年下の同僚をレイプ」という衝撃的なタイトルで、「安倍晋三首相に近いジャーナリストは刑事事件では不起訴となったものの、日本の裁判所は彼が若い女性の同僚をレイプしたという判決を下した」、「伊藤氏は裁判を放棄しないことで、女性被害者が無視や差別をされて不満を訴えているシステムに対し、稀に見る挑戦をした。彼女の挑戦は、セクハラや性的暴行に対する世界的な#MeTooムーヴメントが日本で最も顕著に表れたものといえる」と評価している。》
https://news.yahoo.co.jp/byline/iizukamakiko/20191225-00156244/
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3)【深夜の誌人語録】
理解してもらうのではなく、理解することが先決である。