【文徒】2020年(令和2)1月28日(第8巻16号・通巻1673号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】関テレ「胸いっぱいサミット!」岩井志麻子「差別発言」問題
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.1.28 Shuppanjin

1)【記事】関テレ「胸いっぱいサミット!」岩井志麻子「差別発言」問題

朝日新聞デジタルは1月24日付で「韓国人への差別的発言は『放送倫理違反』 BPOが意見」を掲載している。問題となったのは関西テレビ(大阪市)のバラエティー番組「胸いっぱいサミット!」である。
《審議対象は昨年4月6日と5月18日の放送回。番組は生放送ではなく収録だった。2回とも、同じ趣旨の発言があり、5月の放送では、慰安婦問題の議論の中で、韓国人を夫にもつ作家の女性が「(韓国人は)とにかく手首切るブスみたいなもんなんですよ。手首切るブスというふうに考えておけば、だいたい片付くんですよ」などと、リストカットする女性に例えて発言。スタジオで笑いも起きた。また番組冒頭で作家の女性は「今日はなんでも言っていい日なんですよね。収録だから。切ってくれるんですね」と発言していた。》
https://www.asahi.com/articles/ASN1S4Q4DN1SUCVL00F.html
この作家というのは岩井志麻子。何故、朝日新聞は岩井であることを報じないのか。共同通信は岩井の名前を出している。1月24日付で「岩井さん発言は韓国人など侮辱 関西テレビに放送倫理違反」を発表している。
放送倫理・番組向上機構BPO)の放送倫理検証委員会は24日、関西テレビ大阪市)のバラエティー番組「胸いっぱいサミット!」が、韓国を「手首切るブスみたいなもん」とした作家岩井志麻子さんの発言を放送したことが、人種や国籍への差別に当たるとして「放送倫理に違反」とする意見を公表した。
https://this.kiji.is/593357049914786913?c=39546741839462401
毎日新聞岩井志麻子の名前を報じている。1月24日付で「カンテレの岩井志麻子氏ヘイト発言は放送倫理違反 BPOが意見書」を掲載し、こう書いている。
放送倫理・番組向上機構BPO)の放送倫理検証委員会(委員長・神田安積弁護士)は24日、関西テレビ大阪市)が2019年のバラエティー番組「胸いっぱいサミット!」で作家の岩井志麻子氏による「韓国って、『手首切るブス』みたいなもん」とのヘイト発言と受け取られかねないコメントを編集せずに放送した問題について、「放送倫理に違反するものだった」とする意見書を発表した。》
https://mainichi.jp/articles/20200124/k00/00m/040/165000c
蛇足ながら讀賣新聞岩井志麻子とハッキリ書いている。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190622-OYT1T50242/
放送倫理・番組向上機構は「PR TIMES」に「BPO放送倫理検証委員会関西テレビ『胸いっぱいサミット』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見を公表、放送倫理違反があったと判断」を発表。「コメンテーターとして出演した作家」となっており、岩井の名前は伏せられている。朝日新聞は「PR TIMES」に準じたのだろうか。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000004559.html
放送倫理・番組向上機構のホームページでも名前は伏せられている朝日新聞はこれに倣ったのだろうが、結局、大本営発表の記事を書いたということではないのだろうか。
https://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2019/32/dec/0.pdf#page=6
金明秀がツイートしている。
《まっとうな結論を歓迎したい。と同時に、ここまでわかりやすくはなくとも、「韓国人」の気質について否定的に論断した番組は他にも山ほどあった(つまり構造的な問題だ)と指摘しておきたい。
https://twitter.com/han_org/status/1220595090202062849
梁英聖のツイート。
《違反と判断下されても頭下げればそれで終わり。
そんな日本型謝罪を終わらせましょう。
差別禁止ルールを実例を使ってガイドライン化することです。ブログで書いてきたとおり。》
https://twitter.com/rysyrys/status/1220601086848815104
佐藤章は五月書房新社の編集委員会委員長にして、元朝日新聞記者だが、佐藤は岩井の名前をあげて次のようにツイッターに投稿している。
《あまりに酷い発言。岩井志麻子は本当に作家なのか。国際関係を簡単に擬人化する頭の単純構造も問題だが「手首切るブス」という訳のわからない表現に驚く。自裁する人間の問題は途轍もなく深い。「ブス」という言葉も作家のものとは思えない。一行たりとも岩井は読みたくない。》
https://twitter.com/bSM2TC2coIKWrlM/status/1220966403307520000

-----------------------------------------------------

2)【本日の一行情報】

◎新刊ビジネス書情報誌「TOPPOINT」は、1万名以上の定期購読者を対象とした読者アンケートを行い、2019年下半期「トップポイント大賞」(第31回)を山口周の「ニュータイプの時代」(ダイヤモンド社)に決定した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000031087.html
山口は電通の出身。「光社×宣伝会議コラボ『ほんとうの欲求は、ほとんど無自覚』全書き起こし」を「note」が公開している。
https://note.com/jyaga0716/n/nab4e9298674b

ディスカヴァー・トゥエンティワンは木村泰司の「世界のビジネスエリートは知っている ルーヴルに学ぶ美術の教養」を刊行した。
https://tv.prtimes.jp/main/html/rd/p/000000341.000018193.html
木村の「印象派という革命」(筑摩書房)は面白く読んだ。
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480435477/

◎マガジンハウスの「アンアン」が、ためこうのBL漫画「ジェンダーレス男子に愛されています。」を推している。
ジェンダーレス男子・めぐるが誕生した経緯を、著者のためこうさんはこう語る。彼のルックスは「私が描くのが得意な男の子の代表」とのことだが、たしかにメイクもファッションも眩しすぎる笑顔も、さらには性格に至るまでとにかくかわいい。そんな完璧すぎジェンダーレス男子が恋人に選んだのは、一見ごくごく普通の女性・わこだった。》
https://ananweb.jp/news/270644/
版元は祥伝社だ。
https://www.shodensha.co.jp/genderless/

◎「レイバーネット日本」は「週刊春も書かなかった事実 カジノ管理委員・遠藤典子氏の『正体』」を公開している。遠藤典子は元ダイヤモンド社の編集者。「レイバーネット日本」は原子力損害賠償・廃炉等支援機構の運営委員としての遠藤に焦点を当てている。
《厳密に言えば、遠藤氏の著書出版は2013年で「機構」成立はそれより前の2011年だから、遠藤氏の著書出版が「機構」設立という政策決定に何らかの寄与をしたわけではない。だが、この著書を出すことが、遠藤氏の「機構」運営委員就任にプラスに働いたことは容易に想像できる。自分で国の政策を賛美する著書を出し、その対象となった政策を推進する組織の役員に就く--こんな自作自演のやらせを平気で行う人物が、カジノ管理委員会の委員に就いているのである。普通の、まともな感覚を持った人間なら、こんな人物を役員に据えるカジノ管理委員会がまともに機能するとは考えないだろう。》
http://www.labornetjp.org/news/2020/1579866509866zad25714
遠藤の著書とは「原子力損害賠償制度の研究」にほかならないが、私が関心を持っているのは、同書が岩波書店から刊行されることになった経緯であり、朝日新聞社が主催する大佛次郎論壇賞の選考委員が「自分で国の政策を賛美する著書を出し、その対象となった政策を推進する組織の役員に就く」ような遠藤の著書を何故に選んだのかである。

主婦の友社は、1月24日「令和版 はじめての『ぬう』と『あむ』+おさいほう」を刊行した。2003年発行のロングセラー手芸入門書をリニューアルしたものだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001084.000002372.html

◎世界化社は、ピクサー初のキャラクターガイドブック「ピクサーキャラクター事典」を発売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000739.000009728.html

大藪春彦賞は赤松利市の「犬」(徳間書店)に決定した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000231.000016935.html
赤松利市がツイッターで、こう述べている。
《昨夜の今頃は美酒に酔っていました。1日おいてこれからのことを考えます。一作、一作腰を据えて取り組みたい。多作と言われますが、昨年の刊行ペースでやっと生活ができるのが専業作家の実状です。受賞で頂ける賞金は3冊分の印税を超えます。無駄遣いせずに、その分を作品の精度向上に充てます。》
https://twitter.com/hZoImkE6gPbGnUs/status/1221009763057594368
ラストで読者を置き去りにする剛腕が魅力の作家である。「下級国民A」がCCCメディアハウスから刊行される。これも面白そうだ
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784484202051

◎「CNN.co.jp」は1月25日付で「紛争取材重ねた記者退任、PTSD発症で 英BBC」を発表した。
《ロンドン(CNN Business) 英BBC放送は24日、アフリカ担当のファーガル・キーン編集長が職務を退くと発表した。世界各地の紛争取材が原因の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症を理由としている。》
https://www.cnn.co.jp/showbiz/35148477.html

◎「週刊ポスト」1月31日号で平山周吉が「芦川いづみ 愁いを含んで、ほのかに甘く」(藝春秋)を書評で取り上げている。編者の一人は「出版人 広告人」の協力スタッフである高崎俊夫である。
《読んで、見て、眺めて、いつまでも厭きない本だ。》
https://www.news-postseven.com/archives/20200125_1528405.html

◎「夕刊フジ」が1月24日付で掲載した「元テレビ朝日プロデューサーが切り込む! TOKYO-MX『欲望の塊』騒動、テレビ局の責任」で元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道は次のように指摘している。
《…「買い取り枠」では、放送局は各局の審査基準でいわゆる「考査」はするが、あまり制作現場には関与しないのだ。内容はほぼ自由。例えるならば普通の番組が「デパートの売り場で業者が商品を売っている」状態で「買い取り枠」は「商店街の空き店舗を小売業者に貸している」状態だ。》
https://www.zakzak.co.jp/ent/news/200124/enn2001240005-n1.html

◎「読書人」の明石健五がツイートしている。
《「読書人的読書生活」という名前で、ユーチューブチャンネルを間もなくはじめる。本の紹介専門の番組です。本日は、そのパイロット版を撮影しました(友人の映画監督とふたりで)。まだタイトルバックもできていませんが、できるだけ早くスタートしますので、是非その際はチャンネル登録お願いします。》
https://twitter.com/kengoa1965/status/1221323320169156608
オレも出版人チャンネルを開設するか。

日本経済新聞が1月26日付で「若者の42%、広告に不快感 ジェンダー固定の助長で」を掲載している。
《若者の42%が広告に違和感や不快感を持った経験があることが、国際非政府組織(NGO)プラン・インターナショナルの調査でわかった。最も多かった理由は「ジェンダー(社会的性差)固定観念の助長」で、男性は仕事、女性は家事といった固定的な役割、画一的な容姿や女性への性的イメージの押しつけなどが挙げられた。》
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54789040U0A120C2000000/

◎これも日経。正確に「日経MJ」の記事だ。1月24日付で「『テレビ』の意味が転換 スマホで視聴、広告の未来は?」(アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)を掲載している。
《若い世代がテレビ番組をリアルタイムで見ることが減り、テレビCMが若い世代に届かなくなったと言われている。
ネットフリックスには広告メニューがなく、広告主は契約者に広告を出せない。人気番組にテレビCMを露出して大勢の認知を獲得する手法に慣れた広告主からすると、非常に大きな変化がある。》
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO54738410T20C20A1H56A00/

◎私は船橋に住んでいるが「共産党の市長はNO」である。日本共産党がスターリニズムを克服したとは到底思えないからである。しかし、例えば千葉日報に10段の広告を出稿するという愚行にも加担しようとは思わない。「赤狩り」にはジョン・フォードの立場を見習いたいものである。1月26日付京都新聞に「大切な京都に共産党の市長はNO」という全10段の広告が掲載された。
https://blogos.com/article/431951/
http://www.din.or.jp/~grapes/doraku/file22.html

産経新聞は1月26日付で「拉致解決に思い寄せた編集者、増田敦子さん死去 『志継いでいく』と同僚編集者」を掲載している。増田敦子は草思社の編集者として、「めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる」(横田早紀江)、「竹島密約」(ロー・ダニエル)、「中国共産党 支配者たちの秘密の世界」(リチャード・マグレガー著)、「北朝鮮を知りすぎた医者」(ノルベルト・フォラツェン)、「毛沢東大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災1958-1962」(フランク・ディケーター)などの書物を手がけた。最後の仕事となったのは「韓国『反日主義』の起源」(松本厚治)であった。
https://www.sankei.com/world/news/200126/wor2001260022-n1.html
適菜収がツイートしている。
《昔、何回か一緒に仕事をした。体調があまりよくないことは知っていたが。3年くらい前に池袋西口の「おまた」で2人で飲んだ。ここのところ、50代後半から60代前半の知り合いが次々と死んでいく。ご冥福をお祈りします。》
https://twitter.com/tekina_osamu/status/1221494353262104577

◎「キャリアハック」は1月27日付で直木賞本屋大賞をW受賞した恩田陸の「蜜蜂と遠雷」の担当編集者である志儀保博による「小説『蜜蜂と遠雷』ができるまで。作家と編集者が共に歩んだ12年間」を公開している。
《初版1万5000部が売れても赤字は1000万を超える状況でした。幻冬舎の部数決定会議でそれを社長である見城徹に伝えなければなりませんでした。叱られるのは必至、もしかしたらクビになるかもしれない。それほど異例のことでした。ただ、見城に、正直に経費の説明をすると意外な答えが返ってきたました。「あ、そう」と一言だけ。こうして『蜜蜂と遠雷』は、2016年9月末に発売されました。》
《天才が傑作を作ろうとしているのですから、支える者としては「狂った勇気」を持ち続けなければならない。『蜜蜂と遠雷』でいえば、こんなにお金を使っちゃってるけど「まあ、しょうがない。傑作だもの」と思うことにしました。》
https://careerhack.en-japan.com/report/detail/1288
「狂った勇気」とは芸編集者の矜持にほかなるまい。

◎「リアルサウンド」は1月26日付で「能町みね子『結婚の奴』大増刷へ 刊行直後より品切れ店続出」を発表した。
《エッセイスト、コラムニストの能町みね子が、2019年12月20日に発売した『結婚の奴』(平凡社)の2度目の増刷が決定した。
刊行直後より大きな反響を呼び、全国の書店で品切れが続出。その数日後すぐに10000部重版し、年が明けてもその勢いは止まらず、この度3刷となった。》
https://realsound.jp/book/2020/01/post-492833.html

毎日新聞は「政治プレミア」で外信部長である澤田克己による「ベストセラー『反日種族主義』に書かれていないこと」を掲載している。
《ベストセラーとなっている「反日種族主義」は、在寅(ムン・ジェイン)政権によって圧迫される保守派からの反撃という政治的な性格の強い本だ。取り上げられている「反日は確かに見当外れだったり、事実誤認だったりで批判されてしかるべきものだろう。ただ、筆者たちの主眼は進歩派攻撃にあるので、「自分たちの側」の事情については目をつむっている。》
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200124/pol/00m/010/015000c?fm=mnm
筆者の代表である李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大教授は、李承晩を高く評価しているが、李承晩もまた激しい反日感情の持主であったと澤田は書いている。

◎「MANTAN WEB」は1月27日付で「SPY×FAMILY:『ジャンプ+』の人気作が累計200万部突破 『暗殺教室』に次ぐ異例のスピード」を公開している。
集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+(プラス)」で連載中の遠藤達哉さんのマンガ「SPY×FAMILY」の電子版を含むコミックス累計発行部数が、200万部を突破したことが1月27日、明らかになった。1月4日に発売されたコミックス最新3巻で200万部を突破した。2019年7月4日のコミックス第1巻発売から約半年での200万部突破は、アニメ化、実写映画化もされたマンガ誌「週刊少年ジャンプ」(集英社の人気作「暗殺教室」に次ぐ異例のスピードという。》
https://mantan-web.jp/article/20200126dog00m200013000c.html

-----------------------------------------------------

3)【深夜の誌人語録】

イデアを膨らませる場合は遠回りもまた良しである。