【文徒】2020年(令和2)4月2日(第8巻60号・通巻1717号)


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1)【記事】エイプリルフール?笑うところなのか? 神頼み五輪
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.4.2 Shuppanjin

1)【記事】エイプリルフール?笑うところなのか? 神頼み五輪

朝日新聞デジタルは3月31日付で「五輪、来夏は大丈夫? 森会長『神頼みのところあるが』」を掲載している。
《組織委の森会長はこの日、「(安倍)総理が言ったように、東京五輪を成功させることが、大変な事態を突破することの証しになりたい」と語ったうえで、「神頼みみたいなところはあるが、そうした気持ちが必ず通じていくと思う」と語った。》
https://www.asahi.com/articles/ASN303H0QN3ZUTQP01D.html
森といえば総理在職中に神道政治連盟国会議員懇談会で飛び出した「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国である」という、所謂神の国発言が有名である。昨年4月28日付で「春オンライン」に掲載された辻田真佐憲の「森喜朗『日本は天皇中心の神の国である』発言は、神社業界への“おべんちゃら”だった?」をお読みいただくことにしよう。
https://bunshun.jp/articles/-/11625
朝日新聞デジタルは4月1日付で社説「五輪日程決定 『完全な形』に縛られず」を掲載している。
《目標がはっきりしたことは、選手を始めとする関係者には朗報だろう。ただし、新型コロナウイルス禍の収束が開催の大前提であるのは言うまでもない。
にもかかわらず、どの時点で、世界がいかなる状態になっていれば最終的に実施に踏み切るのか、判断の基準や手続きなどは、国際オリンピック委員会(IOC)からも、日本側からも示されていない。
果たして責任ある態度といえるだろうか。組織委員会森喜朗会長からは「神頼み」との発言も飛び出した。精緻なものは無理だとしても、今後想定されるケースごとに対応策を考え、その内容をていねいに説明しながら、社会の合意を形づくっていく必要がある。》
https://www.asahi.com/articles/DA3S14424683.html?iref=comtop_shasetsu_p
讀賣新聞は4月1日付で社説「五輪日程決定 開幕までの時間を生かしたい」を掲載しているが、これは平和ボケした社説というしかないような酷い代物である。
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200331-OYT1T50308/
日経は4月1日付で社説「延期された五輪を成功に導くためには」を掲載している。日経でさえも、こう書かざるを得なかった。こうした危機感が讀賣の社説からは読み取れないのである。
《専門家の間では、ウイルスとの戦いは長期になるとの見方が強い。ワクチンの開発までには、1年以上の時間がかかる予想という。日本でも経路が追跡できない事例が増えるなど、爆発的な感染のおそれが消えない。
来年春ごろまでに、事態が収まっていなければ、再び開催が不安視されることもありうる。》
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57465220R30C20A3SHF000/
日経は4月1日付の「春秋」も良かった。敵はそんなにヤワではないにもかかわらず、オリンピックについて語る連中は、首相も知事も「昭和の戦争指導者」の亡霊が憑依しているとしか私には思えないのである
《▼コロナ制圧の意気やよし。しかし気になるのは「打ち勝った」の未来図に惑わされ、いま全力を尽くすべき感染との戦いに楽観が生じないかということだ。国際オリンピック委員会IOCと日本側は、延期した五輪を旧日程の1年後、来年7月23日開幕と決めた。たしかに目標はできたが、敵はそんなにヤワだろうか。
▼そもそも延期に伴う膨大な作業がある。開催国の日本は、ウイルスと戦いつつこれにも対処しなければならない。そんな二正面作戦を強いられるわけだ。「7.23」は迫る、感染は終息しない。そうなったときの心構えだって必要だろう。昭和の戦争指導者みたいに、現実から目をそむけて精神論をぶつわけにはいくまい。》
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO57495190R00C20A4MM8000/
信濃毎日新聞が4月1日付で掲載して社説「五輪新日程公表 釈然としない運営の論理」は現実から目を背けることなく迫力があった。
《大会組織委員会の会見は事務的だった。新日程とともに、準備を急ぐ姿勢を示したにすぎない。》
《海外の一部メディアから「無神経の極み」との批判が上がり、共感の声がネット上に飛び交う。》
《史上初の延期に見舞われてもなお、「選手第一」の観点に立った判断がなされていない。
今回の発表も不十分だ。新型コロナは1年では終息せず、ワクチンも間に合わないと指摘する専門家が少なくない。世界がどんな状況なら五輪を開くのか、いつ判断するのか。説明がない。》
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200401/KT200331ETI090006000.php
北海道新聞は4月1日付で社説「五輪日程決定 まず感染終息に全力を」を掲載している。この社説も危機感をもって書かれている。
《しかし今、感染者は欧州や米国だけでなく、アフリカなどでも急増し、地球を覆う勢いだ。ワクチンが開発され市販されるのは1、2年先との指摘もある。
1年の延期幅が十分かは分からない状況だ。一部海外メディアからは、先行きが見通せない中での決定に批判も上がっている。
今後の感染状況によっては、日程の再検討を迫られる可能性にも留意する必要がある。》
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/408090?rct=c_editorial

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2)【本日の一行情報】

元木昌彦現代書館から「野垂れ死に――ある講談社・雑誌編集者の回想」を上梓した。
《無駄に永らえた人間がやるべきことは、自分が生きてきた時代の証言者になり、後の世代に“何か”を伝えていくことだろうと考え、この本を書き上げた。》
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-5878-5.htm
むろん「出版人・広告人」5月号の著者インタビューに登場願うことにした。

東京商工リサーチは3月30日付で(株)デイズジャパンの破産開始決定を発表した。
《(株)デイズジャパン(TSR企業コード:296978930、法人番号:7010901019453、世田谷区松原1-37-19、設立2003(平成15)年12月19日、資本金1000万円、代表清算人:川島進氏)は3月25日、東京地裁より破産開始決定を受けた。破産管財人には深井麻里弁護士(中島・宮本・溝口法律事務所、中央区銀座6-4-1、電話03-5537-787)が選任された。
 負債は現在調査中。》
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20200330_01.html

◎ぴあが3月31日付で「当社業務の対応」を発表した。
《当社グループでは、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全ての事業所において、在宅勤務とリモートワークへの転換を進めております。お取引先様には何かとご不便をおかけしますが、何卒ご了承ください。
これに伴い、4月1日の入社式につきましても、全社員が同時中継を利用して、祝賀の思いを共有できるようにいたします。引き続きご支援のほどをお願いいたします。》
https://corporate.pia.jp/news/detail_20200331.html

産経新聞は3月30日付で「新型コロナで欧米の新聞業界に打撃 ネット記事は好調」を掲載している。
《調査機関によると、ルモンド紙のウェブ版アクセス件数は通常平均の約2・2倍、フィガロ紙は1・2倍に増加した。携帯アプリのアクセス増加幅はさらに大きく、それぞれ2・8倍、2・1倍だ。
《米国では、多くの都市で外出規制が導入され、町のニューススタンドは閑古鳥状態に。規模が小さく、広告収入に頼る地方の新聞は影響が深刻だ。従業員の解雇や、発行頻度を減らすなどして対応しているほか、寄付金を募る地方紙も増えている。》
《英紙フィナンシャル・タイムズのルーラ・カラフ編集長は23日、電子版で声明を出し、ロンドンの本社でほとんどの従業員が勤務していないと発表した。新型コロナの感染拡大で、各国のオフィスもほぼ閉鎖され、同社が発信している大半の記事は、記者や編集者が自宅などで編集作業を行っていると明かした。》
https://www.sankei.com/world/news/200330/wor2003300024-n1.html
「戦後」をしっかりとイメージしておくことが必要だ。

毎日新聞は3月30日付で「世論調査ベンチャーを設立 埼玉大と毎日新聞社が連携」を掲載している。
埼玉大学社会調査研究センター長の松本正生教授が30日、埼玉県庁で記者会見し、毎日新聞社などと共同で新たな世論調査会社を設立すると発表した。社名は株式会社「社会調査研究センター」とし、4月1日付で設立。事務所は埼玉大の学内に置き、松本教授が社長に就く。》
https://mainichi.jp/articles/20200330/k00/00m/040/172000c

琉球新報は4月1日付で社説「新型コロナ米兵感染 地位協定の問題浮き彫り」を掲載している。
《米軍は新型コロナウイルスの感染防止のためどのような対策を講じているのか。兵士は無防備のまま国内外を行き来しているのではないか。そうした疑念が拭えない。》
日米地位協定に基づき、米軍は日本の検疫を受けず、米軍の検疫手続きが適用される。大きな問題だ。
過去には海外から県内の基地へ戻る途中に米軍機が民間空港に緊急着陸し、搭乗していた米兵が検疫を受けずに外出していたことがあった。
新型コロナの感染拡大で地位協定がもたらす危険性が改めて浮き彫りになった。県民の命や健康を守るためにも早急な改定が不可欠だ。》
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1099592.html

◎LINEは、厚生労働省と3月30日(月)に締結した「新型コロナウイルス感染症クラスター対策に資する情報提供に関する協定」に基づく同省への情報提供を目的として、3月31日(火)に国内ユーザー8,300万人を対象とした第1回「新型コロナ対策のための全国調査」を実施した。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3148
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3149

朝日新聞デジタルは3月31日付で「NHKレンタル家族番組は放送倫理違反 BPOが意見書」を掲載している。
https://www.asahi.com/articles/ASN304Q4SN3ZUCVL052.html
《2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは2019年5月29日、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。委員会は9月、利用客が会社関係者でないこと等の確認が適切に行われるべきであったところ、十分な確認をしなかった可能性がうかがわれるため、放送に至るまでの経緯や原因を検証する必要があるとして審議入りを決め、議論を続けてきた。
委員会は、放送倫理基本綱領の「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」、NHK「放送ガイドライン」の「NHKのニュースや番組は正確でなければならない」との規定に照らすと、出演者が本物の利用客ではなかった点、また、出演者が会社関係者だったのにその関係を明らかにしていなかった点において、放送の内容は正確ではなく、したがって、NHKが適正な考査を行わなかったことを含め、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断した。》
https://www.bpo.gr.jp/?p=10308&meta_key=2019
https://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2019/34/dec/0.pdf

ディスカヴァー・トゥエンティワンが刊行する絵本「もいもい」がテレビアニメ化され、4月6日(月)からレギュラー放送されるテレビ東京「シナぷしゅ」の1コーナーに登場することになった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000364.000018193.html

◎10万以上の「いいね」が集まる百田尚樹のツイート。
《【拡散するな!】
炎上覚悟で言う。
今回のコロナウイルスで収入が減った国民のために、国民全員にお金を給付する話が出ている。
それは賛成だが、生活保護の人に給付金を出すのは反対!
彼らは今回の騒動で1円も収入が減ってないのだから。》
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1244919099127300102
こんな緊急報告もツイッターでしている。
《私はずっと書店を応援したいために、電子書籍は出してきませんでした(一部例外あり)。
しかし、多くの人が外出を自粛している状況を鑑み、これまで出してきた小説や新書を電子書籍にすることにしました。
出版社に連絡して、これから準備にかかります。》
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1244542056833232896

◎本家本元のカリフォルニア州にあるディズニーランドが無期限閉鎖を決めた。
https://www.asahi.com/articles/ASN3066N4N30UHBI011.html

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、NHKは、大河ドラマ麒麟がくる」と連続テレビ小説「エール」の収録を当面、見合わせることになった。また、TBSは1日、4日に予定していた生放送特番「オールスター感謝祭2020春」の放送を延期すると発表した。日曜劇場「半沢直樹」「私の家政夫ナギサさん」「MIU404」という新ドラマの放送開始も遅らせる。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040100574&g=soc
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202004010000028.html
BuzzFeed Japan記者の神庭亮介がツイートしている。
《撮影の許可が得られず、ドラマの現場は四苦八苦しているよう。他局でも延期・中止するドラマが出てくるかもしれない。》
https://twitter.com/kamba_ryosuke/status/1245081929436655616
小田嶋隆がツイート。
NHKはむこう3年くらい再放送だけでまわして行けば良いと思う。》
https://twitter.com/tako_ashi/status/1245229045911937024

宮藤官九郎伊丹十三賞に決まったと報じられた、その翌日、今度は宮藤が新型コロナに感染したことがわかった。
朝日新聞デジタルは3月30日付で「伊丹十三賞に宮藤官九郎さん 大河『いだてん』脚本」を掲載している。
《昨年放送のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」で、「チャレンジングな脚本によりテレビドラマの可能性を広げた」と評価された。》
https://www.asahi.com/articles/ASN3Z4JXHN3ZPFIB002.html?ref=tw_asahi
朝日新聞デジタルは3月31日付で「宮藤官九郎さん、コロナ感染 『まさか自分が、と過信』」を掲載している。
《脚本家で俳優の宮藤官九郎さん(49)が新型コロナウイルス感染した、と所属する劇団「大人計画」が31日夜ホームページで発表した。宮藤さんは腎盂炎の治療中で、同日夜に感染が判明。コロナ感染による症状は、発熱のみという。》
https://www.asahi.com/articles/ASN307GG0N30UCVL02B.html?ref=tw_asahi
宮藤は次のようなメッセージを発表している。
《まさか自分が、と過信してしまいました。/罹った今も、なんで自分が?と信じられない気持ちです。/腎盂炎の腰の鈍痛も消え、さあこれから……という時に。/チケットを買って下さった皆さまにも、役者、スタッフにも、家族にも、/悲しい思いをさせてしまい、本当に申し訳ございません。/幸い、落ち込んだり、泣いたりする体力はあるし、肺炎や風邪の症状も今はありません。/少しでも早く、元気な姿をお見せ出来るよう、治療に専念します》
http://otonakeikaku.jp/stage/2020/womens14/index.html

◎監督として近鉄日本ハムを優勝させた梨田昌孝も新型コロナウイルスに感染した。
https://www.nikkansports.com/baseball/news/202004010000302.html

高崎市の新刊書店rebelbooksのツイート。
《感染した著名人の謝罪が気になります。「感染してご迷惑おかけして申し訳ありません」は「感染したやつ迷惑、謝れ」と表裏一体、同じメッセージの表明になります、本当によくないです、みなさん感染しても絶対謝っちゃダメです。僕も感染しても絶対謝りませんので。》
https://twitter.com/rebelbooksjp/status/1245215114346647552
オレもそう思うよ。

NHK Eテレ「100分 de 名著」で光社古典新訳庫作品が3カ月連続で名著として選ばれた。3月がアーサー・C・クラーク幼年期の終わり」、4月がカルロ・コッローディ「ピノッキオの冒険」、5月がカント「純粋理性批判」(全7巻)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000332.000021468.html

キューバ武漢にも、イタリアにも医療団を送っている。えっ!「駐日キューバ大使が日本の厚生労働省と意見交換を行い、新型コロナウイルス対策の協力を申し出ている」のか!写真家の板垣真理子が3月30日付で「論座」に「新型コロナに『医療先進国』キューバはどう立ち向い、世界に貢献しているか」を発表している
キューバの活躍を喜ばない米国の現政権は、各国にキューバ製のインターフェロンアルファ2bをオーダーしないように呼び掛けた、という記事も目にしたが人命尊重の立場から見ると目を覆いたくなるような発言は、聞くも心苦しい。》
https://webronza.asahi.com/culture/articles/2020033000011.html?page=1

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3)【深夜の誌人語録】

弱さを強さにできるかどうかである。