【文徒】2020年(令和2)7月31日(第8巻140号・通巻1797号)


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1)【記事】作家・石原慎太郎の「差別ツイート」について
2)【記事】S・バトラーの「エレホン」が武藤浩史訳で新潮社から刊行された
3)【本日の一行情報】
4)【人事】藝春秋 2020年8月27日付
5)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】作家・石原慎太郎の「差別ツイート」について

作家の石原慎太郎ツイッターに次のような投稿をして炎上した。
《業病のALSに侵され自殺のための身動きも出来ぬ女性が尊厳死を願って相談した二人の医師が薬を与え手助けした事で「殺害」容疑で起訴された。武士道の切腹の際の苦しみを救うための介錯の美徳も知らぬ検察の愚かしさに腹が立つ。裁判の折り私は是非とも医師たちの弁護人として法廷に立ちたい。》
https://twitter.com/i_shintaro/status/1287602343660228609
起訴もされないうちに起訴などと大臣や東京都知事を経験して来た石原慎太郎が書くとは思えないし、「逮捕」と書くべきところを起訴と書いてしまったのなら、学者としての資質に疑問符をつけざるを得ない。ALSを「業病の」と形容するのは、石原の仏教(=世界)観なのだろう。「業病」とは「前世の悪業の報いによって起こるとされる、なおりにくい病気」(日本国語大辞典)にほかならない。
毎日新聞は7月30日付で「石原慎太郎氏の差別発言はなぜ繰り返されるのか 『業病』ツイートの根底に優生思想」を掲載している。この記事によれば石原の差別発言は今に始まったことではないのである。それにしても、よくもまあ、懲りることなく差別発言を繰り返しているものだ。これでは差別発言に関しては確信犯としか言いようがあるまい。
《石原氏が3期目の東京都知事だった2010年12月8日付の毎日新聞朝刊の社会面にこう書かれている。<石原知事は7日、同性愛者について「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティーで気の毒ですよ」と発言した。石原知事は3日にPTA団体から性的な漫画の規制強化を陳情された際、「テレビなんかでも同性愛者の連中が出てきて平気でやるでしょ。日本は野放図になり過ぎている」と述べており、その真意を確認する記者の質問に答えた>
今、読み返しても「足りない感じ」「遺伝とかのせい」という言葉は耳を疑う。》
《古くは40年以上前の1977年4月、当時国会議員で環境庁官だった石原氏は熊本県水俣市を視察した際、水俣病患者から抗議を渡されたことについて「今あった患者さんたちはIQが低いわけですね」などと発言し、謝罪に追い込まれた
都知事に就任した99年9月には、重度心身障害者施設を視察した後の記者会見で、入所者について「絶対に戻らない。放っといちゃ骨折だらけで死んじゃう」とした上で、「ああいう人ってのは人格あるのかね。意志持ってないからね。ぼくは結論出してないんだけども、記者の皆さんどう思うかってさ」と述べた。》
水俣では土下座までしているというのに…。
《00年4月の三国人発言はあまりにも有名だ。陸上自衛隊第1師団の記念行事に出席し、「東京では不法入国した多くの三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。大きな災害が起きた時には、騒じょう事件すら想定される」と発言。》
《「週刊女性」01年11月6日号に掲載された記事で、テレビで対談した大学院教授が言ったこととして「明がもたらしたもっとも悪(あ)しき有害なものはババァ」「女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄」「きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害」などと発言した。》
東日本大震災が発生した11年3月には「天罰」発言が飛び出した。記者団に「我欲に縛られ政治もポピュリズムでやっている。それが一気に押し流されて、この津波をうまく利用して我欲を一回洗い落とす必要がある。積年たまった日本人の心のあかをね。これはやっぱり天罰だと思う。被災者の方々、かわいそうですよ」と語ったが、批判を浴びて撤回した。》
https://mainichi.jp/articles/20200730/k00/00m/040/006000c
京都精華大学准教授・佐々木中は石原に「黙れよ」とリツイートて言い放った。
《黙れよ。お前若い頃小説ではとても敵わないから嫉妬に狂って大江健三郎のご子息に対しても生きる資格なし大江の遺伝子は劣等みたいな発言してたろ。いつもそうやって来たように生涯劣等感の泥の中で這いずり回っていろ。ちなみに通報したからな。》
https://twitter.com/AtaruSasaki/status/1287695864878653440
佐々木は、こうもツイートしている。
石原慎太郎と同じレベルに落ちるな、相手にするな、という忠告をくださる方が何人かいらっしゃいましたが、そういう「我関せず」な考えこそが数知れぬ「有名人」の優生思想や人種差別をここ数十年跋扈させてきたことに少しは思いを致してくださいますように。》
https://twitter.com/AtaruSasaki/status/1288443173954392064
政治家・石原慎太郎の差別発言は「学」に守られて来たのかもしれない。「『デモ』とは何か――変貌する直接民主主義」(NHK出版)で知られる政治学者の五野井郁夫も連投し、石原の差別発言を振り返っている。
《1977年当時、環境庁長官だった石原慎太郎水俣病で肢体不自由な患者が必死に書いた抗議を会見で「これを書いたのはIQが低い人たち」「補償金が目当ての偽患者もいる」と暴言。批判され患者の前で土下座し謝罪した。だが何も反省していない。優生思想的犯罪を「美徳」と言い換え煽動する最低のオス。》
都知事時代の1999年、重度心身障害者の病院を視察後に記者会見で石原慎太郎は「ああいう人ってのは人格あるのかね?」と吐き捨てるように感想を述べた。石原って男には才はあるだろう。だが彼には学者である前に決定的に欠けているものがある。それは、人としての心だ。》
東日本大震災直後の2011年3月14日、都知事石原慎太郎は「津波をうまく利用して(日本人の)我欲を一回洗い落とす必要がある。これはやっぱり天罰だと思う」と暴言を吐いた。もう分かっただろう。才はあっても彼には人としての心がないのだ。この老人は叱られねばならない。》
《いまのヘイトを作り煽ったのも石原慎太郎だ。2000年の陸上自衛隊行事後に石原は「不法入国した三国人が凶悪な犯罪を繰り返している」と虚偽を述べた。わたしの大切な友である辛淑玉さんや学友や編集者、会社員の友人たちをあの男は公然と侮辱したのだ。だから絶対に許さない。》
石原慎太郎は軽率な発言でこの日本国も危機に晒した。2012年石原は「東京都は尖閣諸島を買うことにした」と発言して中国を挑発し領海侵犯のきっかけを作った。森本敏防衛大臣が「中国が領海侵入をしだしたのは、石原さんが2012年に尖閣を買おうとしてから」と証言している。》
石原慎太郎の鉾先は女性全体にも向いた。2001年石原は「“女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です”って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を生む能力はない…非常に悪しき弊害」とある学者の妄言を引用して逃げ道を作り自説を開陳した。最低な男だ。》
《「石原慎太郎を叱る」(仮題)という原稿をいま7000字書き切って送りました。歴史的背景等も含めてよりまとまったものとしてみなさまにお届けできると思います。最後は稲葉振一郎さんの『ナウシカ解読』の最後の平和と生命の尊さの議論で〆ています。掲載されたらこちらでお伝えしますね。乞うご期待。》
《今後公開の論説は石原慎太郎吉田健一川端康成大江健三郎、そして三島由紀夫との関係も描きました。田中角栄福田赳夫の間での動きも。わたしの石原慎太郎論は平和憲法戦後民主主義の保育器の中で改憲ごっこ遊びをして安穏と長生きした運のいい坊やが何いきがってるの?という感じですかね。》
https://twitter.com/gonoi/status/1287694432901292032

https://twitter.com/gonoi/status/1287844659780231168
共著「LGBTとハラスメント」(集英社新書)が発売されたばかりの松岡宗嗣は次のように石原を引用ツイートしている。
《この人は過去に同性愛についても「どこか足らない、遺伝とかのせい」とも「女性が生殖能力を失っても生きるのは無駄で罪」とも発言している。悔しいのは、こうした無知で愚かな優生思想を振りかざす人たちが、政治を含む様々な領域で実際に権力を握っているという社会構造。》
《石原氏のような自分の気に入らない者たちを排除したいという確信犯的なものも、"冗談”と言いながらの国家による遺伝子選定すべきツイートも根っこは同じ。そんなに自分と同質な人たちだけが気持ちよく生きられる社会にしたいのかな。でもあなたも一瞬で"選ばれない側"になる可能性も全然あるんだよ。》
https://twitter.com/ssimtok/status/1287723790282104833
https://twitter.com/ssimtok/status/1287728231219486720
石原慎太郎の「学」は暴力(=差別)を擁護して来たのではあるまいか。経管栄養と人工呼吸器を使い介助を得ながら暮らす詩人の岩崎航も引用ツイート。みんな石原に怒っている。
《この事件に寄せて、武士道、切腹介錯の美徳、と言葉を連ねる。時代錯誤と的外れもここまでくると眩暈がします。所感を持たれるのは自由ですが、こうした発言をする人が、かつて国会議員も都知事も務めた政治家、そして作家と呼ばれているのが恥ずかしい。
https://twitter.com/iwasakiwataru/status/1287714090094170113
https://www.1101.com/c/iwasaki_wataru/2014-02-06.html
能川元一が言う「あんたら」は毎日新聞のみならず、石原慎太郎重宝して来たマスコミ全体を指すのだろう。
《あんたらが「過激な発言」とか「歯に絹着せぬ」などと言葉を濁して甘やかしてきたからだよ》
https://twitter.com/nogawam/status/1288626564964311040
マスコミが石原慎太郎を甘やかして来たのは、石原を学者と位置づけて来たからだ。実際、石原は芥川賞の選考委員をつとめている。適菜収によれば石原慎太郎は…
石原慎太郎反日アナーキストのゴミ野郎。
三島由紀夫からも、お前、共和政とか、いい加減なことを言っていると殺すよ、とたしなめられていた。》
https://twitter.com/tekina_osamu/status/1287781640010207237
朝日新聞記者・三浦英之も引用ツイート。
《私に社会とは何かを教えてくれたかけがえのない師は数年前にALSで亡くなっている。ALSを「業病」と呼ぶ政治家を私は心から軽蔑するし、そのような行為を全力で忌避する》
https://twitter.com/miura_hideyuki/status/1287696683774558210
BuzzFeed News」の7月28日付「石原慎太郎都知事、また暴言『業病のALS』 当事者、支援者『呆れる』『恥ずかしい』」は、こう書いている。
《ALSとなった母の介護経験があり、患者の生活支援に取り組むNPO法人「ALS/MNDサポートセンターさくら会」副理事長・川口有美子さんは、「差別発言の伝道師のような人で今回の発言も驚きはない。呆れて言葉も出ない」と話す。
石原氏が都知事の時、ALSとなった学習院大学名誉教授の篠沢秀夫さんと共に、東京都の難病相談員を増やしてほしいと陳情に行ったことがある。
「その時、篠沢教授を指差しながら、そばにいた医系技官に『この人あと何年生きるの?』と言い放った人です。本人が聞いているところでそんな言葉が言える神経の人ですよ」》
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/ishihara-bougen
小説家の王谷晶のツイート。
《老齢の力を振り絞ってでも断固として差別をしたい、人を貶めたい、持てる力の全てを弱者を踏みにじることに使いたいという石原慎太郎の邪悪パワー。こんなのを10年以上首都のトップに座らせてたわけで、とっくの昔からここは腐りきってるんですわよ》
https://twitter.com/tori7810/status/1287689815354294272
梁英聖にとって石原慎太郎は「人殺し」と同じだという。
石原慎太郎がASL患者を「業病」とよんで差別煽動しましたが、これは政治が「死んでいい人間」を提示する、「人殺し」賞揚に等しい。
政治家や公人が堂々と差別することは、言葉が強いかも知れませんが「人殺し」と同じです。
ぜったいに許してはなりません。》
https://twitter.com/rysyrys/status/1288464163056971777
ALS当事者で医師の竹田主子は7月30日付毎日新聞に「『絶望の先に力強い人生が待っている』 ALS患者の医師『2択ではない』」を寄稿している。
《「自分は死ぬしかない」と思い詰めた時、「肺炎になっても治療はいらないし、そのまま死にます。呼吸器もつけません」と病院でカルテに書いてもらったこともあります。医師による自殺ほう助(安楽死)が認められていれば、書類にサインしていたかもしれません。
前向きになるきっかけは、24時間ヘルパーさんの介護利用が行政から認められ、家族に迷惑がかからなくなり、視線で入力できるパソコンを導入して世界が広がったことです。たくさんのママ友が、私がしてあげられない部分をフォローしてくれたり、医療チームが、辛抱強く、静かに支えてくれたりと、周りの人に恵まれました。
https://mainichi.jp/articles/20200730/k00/00m/040/100000c
京都新聞は「ALS発症の女性医師『絶望の先に力強い人生』 京都『安楽死』事件への思いとは」を掲載しているが、これも竹田の寄稿だ。「YAHOO!ニュース」が7月29日付で配信している。
《「死なせて」という言葉を、ケアする側は、真に受けない事が大事です。人間は強い時もあれば、弱い時もある。弱い方に大きくぶれないようにすることがケアの役目です。基本的に傾聴がいい。「どうしてそう思うのか」「何が一番つらいのか」。思う存分、考えを聞いて下さい。打ち明けない場合は別の機会を見つけて。
思い切り泣けば、案外人って、前に進むものです。気休めのアドバイスは、かえって傷つけ、壁を作ることになる。解決する手だてがあるなら、全力でサポートしてあげてください。》
《私たちにとって人工呼吸器や胃ろうなどのいわゆる「延命治療」は、眼鏡と同じで、機能を失った運動神経を補う道具でしかありません。人工呼吸器を着けて生きてほしいと思いますし、そのような患者を許容し、支援できる社会であってほしい。》
https://news.yahoo.co.jp/articles/8c20a7584902a1d7ed80a806d9fecc4be03bea35?page=1
「ハフポスト日本版」は7月29日付で「『死ぬことばかり考えていた』ALS患者の医師を絶望から救ったもの」を公開している。ALS当事者で医師の太田守武は次のように語っている。
《「安楽死は、重度障害者がまだまだ受け入れられない社会だから生じる概念だと感じています。ALSは尊厳を奪われ、誰もが死にたいと思う病気です。でも、決して絶望だけではありません。外出も、飛行機に乗って旅行もできます。寝たきりの時代は終わったのです。ALS患者が自由に生きられる環境が整いつつあるということを、私はもっともっと伝えていかなければいけません。辛い時はいつでも相談してほしいです」》
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f1ff538c5b6945e6e3f7411

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2)【記事】S・バトラーの「エレホン」が武藤浩史訳で新潮社から刊行された

新潮社がサミュエル・バトラーの「エレホン」を刊行した。翻訳は「『ドラキュラ』からブンガク」、「『チャタレー夫人の恋人と身体知」の武藤浩史だ。
https://www.shinchosha.co.jp/book/507151/
フランケンシュタインについて造詣の深い小川公代がツイートしている。
《サミュエル・バトラー『エレホン』(1872)を訳者の武藤浩史先生からご恵贈賜りました。深謝。E.M.フォースターの「機械がとまる」(1909)にも影響を及ぼした作品。「エレホン」というのは、未来の機械支配を予言し機械の使用を固く禁じた国。この作品に風刺される「弱者叩き」の風潮は驚くほど現代的。》
H.G.ウェルズの『タイムマシン』がちょうど中間の1895年刊行なのでSFの系譜について考えると面白い。『エレホン』の主人公もウェルズの時間旅行者と同じく全くの異世界に迷い込んでいる。エレホン国に迷い込んだ主人公が懐中時計をしているのをみたエレホン人は「眉を寄せてとても嫌そうにして」いる。》
https://twitter.com/ogawa_kimiyo/status/1288526983236706305
https://twitter.com/ogawa_kimiyo/status/1288529529900642304
これも小川のツイート。
《AIは人知を超えるか、人間らしさとは何かといったアクチュアルな問題に繋がるテーマを扱うご本二冊をたまたま同時期にご献本いただいた。川端康雄先生からは『ジョージ・オーウェルー「人間らしさ」への讃歌』、武藤浩史先生からは訳書『エレホン』。現代社会が抱える問題とは何かを考えさせられる。》
https://twitter.com/ogawa_kimiyo/status/1288619764940595200
昭和薬科大学英語研究室教授・鈴木英明のツイートを読んでいると「訳者解題」が興味深くなってくる。
《サミュエル・バトラー著、武藤浩史訳『エレホン』新潮社。訳者解題によれば、この小説は現代の新自由主義やテクノロジカル・シンギュラリティとの繋がりにおいて「生々しいまでの現代性をそなえた、まさに今読むべき傑作である」。そういえばDGの『アンチ・オイディプス』にも引用されていた。》
https://twitter.com/hidexi11/status/1288301132700295173
東京大学総合化研究科言語情報科学専攻准教授・武田将明が「エレホン」を知ったのはドゥルーズ&ガタリの著書だったという。
《『エレホン』新訳が出たんですね。私はドゥルーズ&ガタリの著書で本書を知った覚えが。AIが人知を超えるか否かなんて言ってる時代に、機械の意識について論じた本書中の「機械の書」はどう再読できるのか。》
https://twitter.com/swiftiana/status/1288535267398152193
そうか、そうか、ドゥルーズ&ガタリは「アンチ・オイディプスで「エレホン」を引用している。
《私たちの誰もが、無限に小さい極微動物から発生したのだ。これらの極微動物は私たち自身の再生産体系の一部をなしている。どうして、私たちがもろもろの機械の再生産体系の一部をなさないことがあるであろうか。》
《……私たちを欺くのは、われわれが一切の複雑な機械を単一の対象と考えていることである。ほんとうは、それは、ひとつの都市、あるいはひとつの社会であり、その要素は、それぞれすべて直接的に自分自身の種にしたがって生まれてくる。私たちは、ひとつの機械を全体と見なしそれにひとつの名を与えてそれを個体化する。私たちは自分の手足を見て、こう考える。これらの組み合わせがひとりの個人を形成しているが、この個人は再生産の働きをする唯一の中心から生まれてきた、と。》
https://twitter.com/AntiOedipus_bot/status/1287427513224818689
https://twitter.com/AntiOedipus_bot/status/1287442614451494912
https://twitter.com/AntiOedipus_bot/status/1287457710980513793
「最後の人間」(ニーチェ)、「人間の消滅」(フーコー)についても深く考えさせられることになるのかもしれない。ブログ「憂愁書架」は2008年5月31日 (土)に岩波庫版の「エレホン」を取り上げ、次のように書いている。
《『エレホン』には他にも「機械の書」という章があって、そこではいつの日か機械が意識を持ち、人間を支配するようになるだろう、という鋭い思想も見られます。その時代の支配者であった科学にバトラーほど激しく噛み付いた作家はいないでしょう。男色であったためか、彼は終身独身を守りました。画家として身を立てようとも思い、また歌劇やオラトリオも作曲しました。(ヘンデルこそ彼の最も愛した芸術家であったのです) 
「オディッセイア」を英訳し、その弛まざる探究心から、オディッセイアの作者はナウシカ王女に違いないと確信し、『オディッセイアの作者は女なり』を出版しました。さらに、シェークスピアのソネットを研究し、そこに登場するW.Hなる人間についてを書きました。彼の本は、生前最後の『エレホン再訪』を除いてはすべて自費出版で、多額の赤字を彼にもたらしました。ニュージーランドで蓄えた資産と父の遺産で、何とか働かずに暮らせたのです。死後に出版された『万人の道』はヴィクトリア時代代表する傑作の一つと言われています。》
http://saiki.cocolog-nifty.com/shoka/2008/05/post_cc06.html
ちみに芥川龍之介の「河童」は「エレホン」の影響を受けて書かれたと言われている。

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3)【本日の一行情報】

◎「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」(藝春秋)で大佛次郎論壇賞を受賞している今野晴貴は次のようにツイートしている。
《「ブラック企業」という言葉を安易に否定する議論に対しては、強く批判しなければならない。「ブラック企業」はうつ病に追い込まれ、命の危険にさらされ、そして実際に生命を奪われるまで抵抗できなかった労働者たちの「声なき声」が形になったものだからだ。この脈を踏まえることが絶対に不可欠だ。》
https://twitter.com/konno_haruki/status/1288633530398859264
うつ病に追い込まれ、命の危険にさらされ、そして実際に生命を奪われるまで抵抗できなかった労働者たちの「声なき声」を踏まえるとともに、うつ病に追い込まれ、命の危険にさらされ、そして実際に生命を奪われるまで抵抗できなかった黒人たちの「声なき声」を踏まえた言葉が必要なのである。

◎マーチングバンドの部活をテーマに青春を描く山田はまちのマンガ「みかづきマーチ」(双葉社)が7月28日に発売となったが、コミックス発売に合わせ、マーチングバンドの世界で圧倒的な実績を残す強豪校「埼玉栄高校 マーチングバンド部」とコラボしたPR動画を双葉社は作成、公開している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000189.000014531.html
これがそう!
https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=fDU4ikTSGjM&feature=emb_logo
ドラマ化に期待が膨らむ。

古谷三敏の「レモン・ハート」(双葉社)はシリーズ累計900万部突破の酒(場)コミックの金字塔だが、連載35周年を迎えるそうだ。最新刊35巻も発売ということで、特製ラベルのウイスーミニボトルを35名にプレゼントするというキャンペーンを開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000188.000014531.html
私は酒精もドライが好きだが、酒場もドライな緊張感が漂う店が好きである。

◎コミック配信サービス「まんが王国」を中核に、コンテンツプラットフォーム事業を展開するビーグリーは、無料マンガアプリ「コミックevery」において、7月29日(水)より、「ザ・ファブル」「ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~」などを含む講談社作品の配信を開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000180.000034768.html

宇山佳佑集英社庫「桜のような僕の恋人」が売れ始めた。「ほんのひきだし」によれば集英社「ナツイチ2020」フェアの対庫で、「(読者による)TikTokの投稿動画がきっかけで手にとった」という声も多くあがっているとのことだ。
https://hon-hikidashi.jp/more/111876/

直木賞を受賞した馳星周の「少年と犬」(藝春秋)は8万部重版され、累計9万5,000部となった。
https://hon-hikidashi.jp/more/111892/

祥伝社の「on BLUE」で連載された紀伊カンナのデビュー作であるBL漫画「海辺のエトランゼ」が劇場アニメ化され9月11日より公開されるが、MONO NO AWAREの新曲「ゾッコン」が主題歌に決まった。
https://www.barks.jp/news/?id=1000186399

下山進は「2050年のメディア」で日本テレビ代表取締役会長の大久保好男を取り上げている。
読売新聞グループ本社社長の山口寿一を「カミソリのような人物」とすれば、大久保は「ナタのような人物」と評した読売新聞社がいた。》
《大久保はローカル局の問題を抱えるネット同時配信ではなく、有料サブスクモデルに集中投資をすることで、「放送」という新聞の「紙」に相当する分野の衰退を「ネット」でカバーしたということになる。その手腕は、日経が、有料電子版の成功で、「紙」の衰退をカバーして売上を維持しているのと似ている。》
https://mainichi.jp/sunday/articles/20200727/org/00m/040/001000d

◎「30% Club」は2010年に英国で創設された、企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を通して企業の持続的成長の実現を目的とする世界的なキャンペーンで、現在14カ国で展開されているが、朝日新聞社は、7月30日をもって「30% Club Japan」のメディアグループに加盟した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000897.000009214.html
電通グループやテレビ朝日は既に加盟している。
https://30percentclub.org/about/chapters/japan

斎藤美奈子現代書館のホームページで森達也とともに連載している「web掲示板談話」で石井妙子の「女帝 小池百合子」(藝春秋)をジェンダー論の観点からも、ノンフィクションとしての質の問題からも一刀両断している。
《はっきりいいますが、この本を褒めた人は、(1)じつはきちんと読んでいない、(2)都知事選前の時流に流された(リベラル陣営に忖度した・選挙で彼女を落選させたかった)、(3)そもそも本を読む力がない、(4)そもそも性差別主義者である、のどれかではないかと思います。》
《自らのアザのコンプレックスと、美人の従妹への対抗心が今日の小池百合子を作ったといいたいのだろうか? こんなストーリー(しかも憶測に基づく)って、昭和30年代の少女マンガだよ。てか、少女マンガだってここまで嫌らしくはない。美醜に異常にこだわっているのは、小池ではなく著者ではないのだろうか。「女にとって容姿は人生を左右するほど決定的な要因なのだ」といわれているようで、非常に気分が悪いです。》
《この人に限らず、本書に証言者として出てくる人は、匿名が多いのね。「小池をよく知る、ある人」とか「遠い親戚のある男性」とか「ある国際関係の専門家」とか。
「小池さんに関して迂闊なことを言うと、いろいろと支障が出るので」「アラビア関係の仕事をしていて、小池さんを実名で批判することなんてできない」などの証言もあって「報復が怖いから実名が出せない」式のことを匂わせてはいますが、ふつうこういうのは証言でも批判でもなく「悪口」「陰口」「噂話」といいます。
小池百合子本人にはもちろん、キーパーソンであるはずの細川護熙小沢一郎小泉純一郎らの証言が少ない(取材したのかどうかもわからない)のも疑問だし、週刊誌記事からの引用が多いことも気になります。》
http://www.gendaishokan.co.jp/article/W00154.htm

朝日新聞デジタルは7月29日付で「給付金事業の委託先変更も 電通関与の団体、入札不参加」を掲載している。
《中小企業などを支援する持続化給付金の事業をめぐり、民間委託先が変わる可能性が出てきた。経済産業省から今年度第1次補正予算分の手続き業務を委託されている一般社団法人サービスデザイン推進協議会は、第2次補正分の委託先を選ぶ入札に参加していない模様だ。事業者が交代することになれば、支払い手続きなどに影響が出ないか懸念される。》
https://www.asahi.com/articles/ASN7X7V3XN7XULFA03L.html

◎子ども向けアプリ・タブレット教材開発・運営などを行うワンダーラボは、小学館を引受先とした2.5億円の第三者割当増資による資金調達を実施することで合意した。小学館常務取締役・丸澤滋が次のようなコメントを発表している。
《ワンダーラボのコンテンツ企画力・開発力と、STEAM教育/非認知能力分野での知見に大きな可能性を感じています。教育テック分野でも非常にユニークな存在です。
小学館の幼児・児童向け出版活動や、小学館集英社プロダクションの保育園・幼児教室などの教育事業のDX推進など、すでにいろいろな協業やコンテンツ開発が始まっています。今回の資本提携を機に、お互いの強みを活かして大きなシナジーを創出していきたいと考えています。それによる両社の成長をとても楽しみにしています。》
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000060.000012970.html

◎「映画ドラえもん」シリーズの22作品が、8月3~8日、同10~14日に各日2作品ずつABEMAで無料配信される。
https://mantan-web.jp/article/20200730dog00m200014000c.html

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4)【人事】藝春秋 2020年8月27日付

中部嘉人
新:代表取締役社長(経理部・経営企画室担当)
旧:代表取締役社長(経営企画室担当)

飯窪成幸
新:専務取締役 社長補佐藝春秋編集局、週刊春編集局、庫局、藝出版局、コミック編集局統括
旧:常務取締役 庫局、藝出版局統括(編集委員室、藝春秋編集局、週刊春編集局担当)

石井潤一郎
新:常務取締役 総務局、ナンバー局、クレア局、メディア事業局統括、関連会社(デジタル戦略事業局担当)
旧:常務取締役 総務局、デジタル戦略事業局、ナンバー・クレア局、メディア事業局統括

濱宏行
新:常務取締役 営業局統括(情報システム部、次世代システム開発室、資材製作局担当)
旧:取締役 営業局統括(資材製作局担当)

鈴木洋嗣
新:取締役 編集委員室、編集総務局、春新書局統括(新規事業開発局、宣伝プロモーション局担当)
旧:取締役 新規事業開発局、編集総務局統括(宣伝プロモーション局、春新書局担当)

内田博人
新:執行役員(法務・広報部、管理部、編集総務局担当)
旧:執行役員(総務局担当)

大川繁樹
新:執行役員藝出版局担当)
旧:執行役員庫局、藝出版局担当)

河野一郎
新:執行役員(総務部、社史編纂室、クレア局担当)
旧:執行役員(法務・広報部、ナンバー・クレア局、社史編纂室担当)

勝野聡
新:執行役員(営業局担当)
旧:執行役員(営業局担当)

小濱千丈
新:執行役員(メディア事業局担当)
旧:執行役員(メディア事業局担当)

※令和2年7月30日の決算役員会で内定。8月27日の株主総会、取締役会で正式決定。

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5)【深夜の誌人語録】

時間に振り回されるのではなく時間を狡賢く利用するのである。