【文徒】2020年(令和2)11月12日(第8巻210号・通巻1867号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】ノンフィクション本大賞は佐々涼子「エンド・オブ・ライフ」(集英社インターナショナル)に決定!
2)【記事】共同通信が変だ!印象操作の可能性も
3)【本日の一行情報】
4)【組織・人事】集英社 2020年11月10日付
5)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.11.12 Shuppanjin

1)【記事】ノンフィクション本大賞は佐々涼子「エンド・オブ・ライフ」(集英社インターナショナル)に決定!

Yahoo!ニュース|本屋大賞 2020年ノンフィクション本大賞」は佐々涼子の「エンド・オブ・ライフ」(集英社インターナショナル)に決まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000034293.html
佐々涼子が喜びのツイートを投稿している。
《応援していただいたみなさん。ありがとうございました。書き手なのにうまく言葉が出ません。身に余る幸せにやっぱり腰が抜けそうです。笑
書店さんにたくさん置いていただいています。ぜひ足をお運びください。私、思うんですよね。書店で出会ってからが読書です。》
https://twitter.com/ryokosasa1/status/1326067694240559105
受賞のスピーチも良いよねぇ。読者によって本も成長するし、本によって読者も成長する。
《本をつくるのは、ひとりではできないと思っていて、いつも「佐々涼子」というのはユニット名だと、グループ名だと、オーケストラだと言っております。2014年に『紙つなげ!』という本を書いてよりそう思ったんですけど、紙をつくってくださる人、印刷してくださる人、運んでくださる人、売ってくださる人……みんなが力を合わせてつくったのが、あの本だと思います。
わたしは会ったこともない、名前も知らないたくさんの人に支えていただいて、本ができました。そして、このように素晴らしい賞をいただきました。……みなさんおめでとうございます。》
https://www.youtube.com/watch?v=jl9_BbGJt9c&feature=youtu.be
https://news.yahoo.co.jp/newshack/inside/nonfiction_award_2020.html
佐々涼子は「エンジェルフライト国際霊柩送還士」(集英社)で開高健賞を受賞している。
https://www.youtube.com/watch?v=ihB-iIz3nRo
早川書房営業部も佐々を絶賛している。佐々の「紙つなげ!」「駆け込み寺の男 玄秀盛」の版元は早川書房だ。
佐々涼子さん、おめでとうございます! 『エンド・オブ・ライフ』はじめ、『紙つなげ!』や『駆け込み寺の男 玄秀盛』など、佐々涼子さんの温かな視線で描かれるドキュメンタリーをもっともっと多くの方に読んでいただきたいです!》
https://twitter.com/hykw_sales/status/1326031763273965571
これも佐々の言葉だ。
《本を書くときは毎回「奇跡だな」って思う時があります。すべてのパーツが揃ったと思ったときに、7年も経っていた。まだ待っていてくれた編集者がいたのは大きいことでした。》
https://news.yahoo.co.jp/nonfiction/award2020/interview_grandprize/index.html
担当編集者の田中伊織もツイートしている。
《ノンフィクション大賞を受賞しました。書店の皆様、応援していただき、本当にありがとうございました。より多くの人に、この本の大きな感動を伝えられることを嬉しく思います。今後もご支援よろしくお願い致します。(担当編集T)》
https://twitter.com/Shueisha_int/status/1326105264106430464
田中は「PLAYBOY 日本版」最後の編集長である。休刊まで6年半の長きにわたって編集長をつとめている。その後「kotoba」の編集長に就任し、インターナショナル新書を立ち上げた。
https://www.iwanamishinsho80.com/post/bian-ji-chang-wofang-netedi-2hui-intanasiyonaruxin-shu-bu-chang-tian-zhong-yi-zhi-san

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2)【記事】共同通信が変だ!印象操作の可能性も

共同通信は11月10日付で「首相、人事の事前調整は適法 日本学術会議の会員任命拒否巡り」を配信している。
菅義偉首相は10日の衆院本会議で、日本学術会議の会員任命拒否問題を巡り、学術会議と政府の間で2017年に行われた人事の事前調整は適法との考えを強調した。擦り合わせを踏まえた会員候補の推薦は、日本学術会議法に基づき「学術会議が行うものだ」と述べた。》
https://this.kiji.is/698837577751725153
この記事を読むと、私などは世論誘導とか、印象操作の類に意識的に関与しているのではないかと疑念を抱かざるを得ないのだ。今回の記事もそうなのだが、最近、共同通信の記事に首を傾げているのは私だけではないようである。ツイッターのタイムラインを見てみようではないか。
《これ、首相が勝手に"適法"と言っているが、それを判断するのは司法だ。
共同は記事で、首相の言い分が職務権限を踏み越えていることに言及しないのは客観報道と言えないだろう。》
https://twitter.com/guangzibei22/status/1326175903966134274
共同通信の記事は首相の言い分しか書いていないのである。しかも、首相は一方の当事者である。次のようなツイートが投稿されるのは致し方あるまい。
《何なんだこの菅の言い分を後押しするような共同通信の見出しのつけ方は。》
https://twitter.com/n02u0_2/status/1326126441705058304
《適法か否かは、当事者が言っても意味なし。第三者の判断が必要。》
https://twitter.com/19890430yoshi/status/1326137584322375680
清水潔も黙ってはいない。こう呟くことを忘れない。
《「適法」って、首相は裁判官だったのかよ。》
https://twitter.com/NOSUKE0607/status/1326130324418424832
これは山崎雅弘のツイートだ。
《相変わらずの共同通信菅首相の柿崎明二補佐官の出身企業)。
「首相、おれのやっていることは適法」などと、無批判無検証で見出しにして社会に拡散する行為の意味をわかっているのか。権力者の行為が適法かどうか判断するのは、権力者ではないことくらい、わからないか。》
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1326154255187668992
これは平野啓一郎のツイート。
《首相の「オレが法律」を認めたら、日本は法治国家として終わりだろう。今後も、「前例打破」と称して、法律を破りまくるのだから。》
https://twitter.com/hiranok/status/1326105857591971840
こちらは小沢一郎
《総理と官邸の行為は何でも適法とされてしまう恐ろしい国へ。そのうち批判者の摘発までも全て公共の福祉に基づくもので適法と判断されるのではないか。安倍前政権以降、この国は急激に「いつか来た道」を歩んでいる。我々が過去に学ばなければ、待っているのは国の破滅である。》
https://twitter.com/ozawa_jimusho/status/1326321509862830081

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3)【本日の一行情報】

紀伊國屋書店は、Taylor & Francisグループ傘下のF1000 Research社が提供するオープンリサーチ出版プラットフォーム「F1000Research」の学術機関向け法人販売について、日本販売総代理店とする契約を締結した。「F1000Research」は、2013年に立ち上げられた世界初のオープンリサーチ出版プラットフォームである。
https://current.ndl.go.jp/node/42459

JTBパブリッシングは、11月17日(火)に新宿区新宿の全3階建てビル、「るるぶキッチンビルヂング」2階と3階に飲食店「にくたびと」をオープンする。9月29日(火)にオープンした1階「酒処 何方此方」とあわせて「るるぶキッチンビルヂング」のグランドオープンとなる。
https://prtimes.jp/a/?f=d24732-20201110-1091.pdf
ここは行ってみたい。いずれにせよ、雑誌ビジネスが縮小するなかで、雑誌で培ってきた編集力をもって、雑誌以外のリアルメディアを立ち上げる試みは増えることになるだろう。編集力をいかに紙のビジネスから解放するかは出版社にとって避けては通れない課題なのかもしれない。

◎総合電子書籍ストア「BookLive!」は、グループ会社である「フレックスコミックス」と協業し、異世界ファンタジーのコミカライズ作品を中心とする新レーベル「COMICアーク」を創刊した。第一弾として、11月11日(水)より、男性向け3作品の独占配信を開始する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000146.000022823.html

小学館は「スピリッツ創刊40周年記念連載確約漫画賞」を設立。大賞受賞者には200万円!にして「週刊ビッグコミックスピリッツ」か「月刊!スピリッツ」で必ず連載される。プロもアマも、新人もベテランも、同人誌、Twitter漫画も大歓迎だそうだ
https://bigcomicbros.net/35834/
審査員に脚本家の野木亜紀子が名前を連ねていることに注目したい。野木は映画「アイアムアヒーロー」やドラマ「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」「MIU404」の脚本を手がけている。漫画は映像化がマストなのであろう。

◎「ほんのひきだし」は11月10日付の「御書印帖とめぐる日本の本屋」で、信堂書店 長岡店(新潟県長岡市)を取り上げているが、同店の實山美穂が次のように語っている。
《長年当店で推し続けている『八本脚の蝶』という本が今年庫化され、御書印に添える言葉にも選んでいるのですが、この本を数年前に単行本で買われたお客様が今年の夏にご来店され、庫をお買い上げくださいました。このお客様は「この本によって人生が変わった」とおっしゃっていた方なので、その人生に私たち書店員も関わっていることは、少しの驚きとともに、感動させられた出来事です。》
https://hon-hikidashi.jp/bookstore/117631/
同店には「『八本足の蝶』庫化 私が書店員である限り、置き続けることをここに宣言します」と書かれたパネルが飾られている棚があるそうだ。

◎「春オンライン」は11月9日付で「『ジャンプ』からスポーツ漫画が消えた日――『ハイキュー!!』連載終了で起こった“事件”」を発表している。
《もちろん『ハイキュー!!』はそれ自体が人気作品ではあり、その終了は残念ではあったのだが、それ以上にインパクトがあったことがある。
それが、その連載の終了を以て「ジャンプ」連載陣からスポーツ漫画が消えたということだった。これは1968年に雑誌が創刊されて以来、50年を越える同誌の歴史の中で初めての出来事である。
https://bunshun.jp/articles/-/41400

中山義秀学賞は、中山義秀の生まれが白河市であり、白河に中山義秀記念学館があることから、白河市が深く関わって来た賞だが、実は中山は千葉県とも縁が深い。成田中学校(現・成田高等学校)に英語教師として赴任し、教師を続けながら小説を発表していたのである。成田山公園には教え子たちによって中山義学碑が建てられている。ちなみに成田中学では中野好夫も教壇に立っていた。
ちなみに三里塚芝山連合空港反対同盟で委員長をつとめた戸村一作は二人の教え子であった。
https://www.city.narita.chiba.jp/content/000077364.pdf
さて、中山義秀学賞である。今年の受賞作は木下昌輝の「まむし三代記」(朝日新聞出版)に決まった。
https://www.minpo.jp/news/moredetail/2020111080816
木下昌輝がツイートしている。
中山義秀賞を受賞することができました 祝
連絡がうまくつながらずご報告遅れて申し訳ありません。
僅差ときいております。賞の名前に恥じぬよう頑張ります!!お米と巨大達磨の副賞でも名を馳せる賞ですので、今から楽しみです。
なお肉親から最初に届いたお祝いメッセージを添付します。
おかん…》
https://twitter.com/musketeers10/status/1325385291465519106

◎NEWS加藤シゲアキにとって約3年ぶりとなる新作長編「オルタネート」が11月19日(木)に新潮社より刊行される。加藤自らの企画のもと、自身も出演するプロモーションムービーも制作された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000069.000047877.html
https://www.youtube.com/watch?v=ZU40ECVOTG4&feature=youtu.be

◎GUのティーン向けコレクションAND24LOVELYと新潮社のティーン誌「ニコラ」モデル林芽亜里・深尾あむの初コラボ商品が発売されることが決まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000047877.html

◎新潮社から刊行されたハライチの岩井勇気のエッセイ集「僕の人生には事件が起きない」は発売から1年が経過しているにもかかわらず毎月のように重版を重ね、11月には15刷が書店に配本されたそうである。ロングセラーである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000047877.html

◎「LINE」は、11月9日 14時32分から14時52分の約20分間、メッセージを送受信できない等の不具合が発生した。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3487

朝日新聞デジタルは11月11日付で「米ネトフリ創業者『日本アニメの大きな市場を作る』」(尾形聡彦)を掲載している。米ネットフリックスの創業者兼共同最高経営責任者(CEO)のリードヘイスティングス朝日新聞の取材に応じた。
ヘイスティングス氏は、日本の制作チームが関わった「ゼウスの血(英語名ブラッド・オブ・ゼウス)」を挙げ、「世界の主要国でトップ10に入っており、日本でも人気だ。これはまさに我々がやりたかったこと」と言及。「我々は日本の化を輸出する主要な担い手になりたいと考えている。我々の取り組みが進んでいることを非常に誇りに思う」と語った。
ネットフリックスは東京にアニメの制作チームを置いており、「日本沈没2020」などの独自作品を制作する一方、世界各国のアニメ作りのサポートも手がけている。「ゼウスの血」は米国の制作会社が作ったが、東京のチームが手助けしており、世界でも人気を集めている。東京を中核としたアニメの世界展開が奏功している形だ。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNCB75H8NCBUHBI02X.html?ref=mor_mail_topix1
コンマリ人気も米ネットフリックスが世界に広めた。

化功労者にインターネットイニシアティブ会長の鈴木幸一とぐるなび会長の滝久雄が選ばれているのか…。日刊ゲンダイDIGITALは11月11日付で「“スガ友”顕彰 終身年金350万円『化功労者』に経済人の愚」を掲載している
《所管する科省の元次官の言葉だけに説得力がある。
東京新聞のコラム(8日付)で前川喜平氏が、化の向上に功績があった人を称える「化功労者」について<自らは創造活動をしない経済人が選ばれたことには、強い違和感を覚えた>と疑問を呈していた。》
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/281108
日刊ゲンダイが指摘しているように滝久雄は菅相の「オトモダチ」である。

毎日新聞は11月11日付で「GoToトラベル、恩恵は大手ばかり 嘆く中小『我々は必要とされていない』」を掲載し、次のように書いている。
《政府の旅行需要喚起策「GoToトラベル」事業を巡り、中小の旅行会社の間に「恩恵が大手に偏っている」との批判が強まっている。利便性の高い大手旅行会社のサイトや宿泊予約サイトを通じて予約されることが多く、中小の旅行会社の利用が伸び悩んでいるためだ。》
https://mainichi.jp/articles/20201110/k00/00m/040/104000c

パシフィックリーグマーケティング社は元メジャーリーガーの長谷川滋利の「気持ちが伝わる! 好かれる英会話」(日経BP)の出版を記念し、11月18日午前7時から、長谷川と元ドジャース球団職員のスポーツビジネスコンサルタントの佐藤弥生によるオンラインイベントを開催する。
https://www.nikkansports.com/baseball/news/202011100000524.html

◎ステキコンテンツ合同会社(代表:中村航)は、小説投稿サイト「ステキブンゲイ」の公式YouTubeチャンネルにおいて、小説家の海猫沢めろんと、KADOKAWA編集者 山田剛史をゲストに迎えて、小説家中村航とのトークライブを配信する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000055379.html

日本経済新聞は11月10日付で「NHKのネット事業費、上限200億円 肥大化懸念強く」を掲載している。
NHKは10日、インターネット事業費の上限を年200億円とする案を決めた。これまで上限を撤廃する考えを示していたが、外部から「(費用が)青天井になる」などと批判が相次ぎ、ひとまず上限を200億円とする。ただ放送を補完する位置づけだったネット事業の拡大に意欲をみせており、NHKの肥大化懸念は強まる可能性がある。
同日の経営委員会で議決し、総務省認可申請した。総務省はNHKの案についてパブリックコメントを募り、最終的に認可するかを決める。》
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66071440Q0A111C2TJ2000/

信濃毎日新聞は11月11日付で掲載した社説「学術会議人事 異論の排除があらわに」で次のように書いている。
《安倍前政権が進めた政策に強く反対し、公の場で積極的に発言していたことを官邸が問題視したと複数の政府関係者が明らかにした。学術会議内で反対運動を主導しかねないと懸念したという。
6人のうちの憲法学者は国会の公聴会で、憲法9条に反するとして安全保障法制の廃案を求めた。共謀罪法の審議に参考人として出席した刑事法学者は、戦後最悪の治安立法と批判していた。沖縄・辺野古への米軍基地建設に抗議声明を出した行政法学者もいる。
任命した中にも政府を批判した学者はいるが、署名など限定的な意見表明だとして区分けしたようだ。》
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20201111/KT201110ETI090008000.php

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4)【組織・人事】集英社 2020年11月10日付

〈組織変更〉
新規事業開発部「新規事業開発第1課」を「ゲーム事業・映像事業開発課」に、
「新規事業開発第2課」を「キャラクター創出・海外EC事業課」に改称する。

〈人事〉
井藤涼
新:ジャンプ・コミック出版編集部ジャンプ・コミック出版編集長(兼)第4編集部4編企画室室長
旧:ジャンプ・コミック出版編集部ジャンプ・コミック出版編集長

成田慶子
新:資材部資材課課長代理
旧:制作部雑誌制作課課長代理

岡田忠博
新:制作部雑誌制作課副課長
旧:資材部資材課副課長

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5)【深夜の誌人語録】

待ち時間を無駄にしてはなるまい。