私の映画ベスト100

私たちはランキングが好きである。ベスト何とかという記事や番組が後を絶たないのは、その証拠だろう。ひとつ私もやってみようと思う。対象は何にしようか。文学か、音楽か、映画か。『ニューズウィーク日本版』が「THE BEST 100 MOVIES」を特集していたこともあったので、「私の映画ベスト100」をやってみよう。なお監督に関しては一人一本を原則にした。
①『地獄の黙示録』(監督フランシス・コッポラ)ベトナム戦争を戦争として再現しながら、なお戦争をオペラのように描こうという意志を貫き、かつ戦争そのものを根源的に唾棄しようという文化人類学的にして哲学的な試みは、その野心の壮大さとは裏腹にもしかすると映画として破綻いているのかもしれない。しかし、その破綻が映画ならではのものであることに私は魅入らされてやまない。確かに映画としての完成度からすれば『ゴッドファーザーPartⅡ』のほうが上なのだろうが、映画として破綻していても映画以上の何かを秘めている映画はそうザラにはないということである。
②『地獄に堕ちた勇者ども』(監督ルキノ・ヴィスコンティ)ナチズムとは何であったのかを正面から見つめた重厚なドラマは『山猫』のヴィスコンティならではのものだが、そのロマンティシズムとリアリズムが合体した映像の端々から放たれる倒錯の腐臭すら漂う危険な香りに私はこの映画を何度見ても酔っ払ってしまう。『ベニスに死す』や『家族の肖像』も美しいし、『ルードヴィッヒ』も壮大だが、倒錯に崩れ落ちる人間の終末においてナチズムが妖しく光り始めるという、その倒錯の度合においてヴィスコンティであれば『地獄に堕ちた勇者ども』という選択になってしまうのである。
③『愛の嵐』(監督・リリアーナ・カヴァーニ)「愛」を描いた映画は数多くあれど、『愛の嵐』こそ最も完成度の高いメロドラマではないだろうか。どんな「愛」であっても多かれ少なかれ頽廃や倒錯を抱え込むものだが、その極地を描き出す。むろん、タナトスを孕まないエロスなど在り得ないのだから、映画は誰もが予想する通りに「死」によって閉じられるのだが、だからこそ安心して暗闇を後にできるというものなのである。
④『地獄の逃避行』(監督・テレンス・マリック)『天国の日々』もそうだし、『シンレッドライン』もそうだが「自然」を描かせたならばテレンス・マリックの右に出る監督はそうはいないだろう。しかし、私が『地獄の逃避行』を推すのは「自然」のみならず、「暴力」の描き方において突出しているからである。人間の「暴力」もまた「自然」の一部であれば、それも当然のことかもしれない。
⑤『ガルシアの首』(監督・サム・ペキンパー)ペキンパーは敗北者にしか興味のない作家であった。しかし、敗北者であっても容赦なく戦いに引き擦り込んでしまう。銃弾が放たれ、流血しながら斃れてゆく男たちをハイスピードで捉えることで「死」が舞踏のように活写され、そうした屍を積み重ねながら、敗北者は死を宿命づけられた「決起」に誘われるのである。
⑥『時計じかけのオレンジ』⑦『天国の門』⑧『ヘカテ』⑨『ロンググッドバイ』⑩『許されざる者』⑪『エロス+虐殺』⑫『さすらい』⑬『色情めす市場』⑭『気狂いピエロ』⑮『仁義の墓場』⑯『暗殺の森』⑰『太陽はひとりぼっち』⑱『キートンの探偵学入門』⑲『肉体の悪魔』(ケン・ラッセル)⑳『ブルーベルベット
以下順不同でジャスト100!
花様年華』『奇跡の丘』『哀しみのトリスターナ』『タクシードライバー』『ラストシューティスト』『サイコ』『悪魔のシスター』『フェリーニのアマルコルド』『旅芸人の記録』『ジプシーのとき』『フレンチコネクション2』『アメリカングラフィティ』『理由なき反抗』『マリア・ブラウンの結婚』『小人の饗宴 』『レザボア・ドッグス』『セコーカスセブン』『デリンジャー』『断絶』『モーターサイクリングダイアリーズ』『惑星ソラリス』『儀式』『箱の中の女』『総長賭博』『竜馬暗殺』『三里塚の夏』『恋恋風塵』『八月の濡れた砂』『けんかえれじい』『日本暗殺秘録』『0課の女 赤い手錠』『チャイナタウン』『灰とダイヤモンド』『そして人生はつづく』『恋のエチュード』『ロンゲストヤード』『脱出』『サムライ』『追憶』『追想』『青春の蹉跌』『ミツバチのささやき』『木靴の樹』『グロリア』(カサベテス)『連合赤軍』『イージーライダー』『真夜中のカウボーイ』『黒い砂漠』『恋』『やさしいにっぽん人』『赤い殺意』『アニー・ホール 』『ブレージングサドル』『駅馬車』『L.A.コンフィデンシャル』『ミラークロッシング』『曽根崎心中』『その男凶暴につき』『ドイツ零年』『去年マリエンバートで』『レニーブルース』『ルシアンの青春』『ジョーズ』『俺たちに明日はない』『草原の輝き』『ストレンジャーザンパラダイス』『ウエスタン』『サスペリア』『処女の生血』『マッチ工場の少女』『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』 『ドゥ・ザ・ライト・シング』『バットマンセーラー服と機関銃』『裸の島』『西鶴一代女』『東京物語』『カメラを持った男』『蜘蛛女のキス』『市民ケーン