【文徒】2014年(平成26)3月3日(第2巻39号・通巻241号)

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1)【記事】ブルズアイがADKと業務提携へ
2)【記事】光文社のECサイト不正アクセスが発覚
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ブルズアイがADKと業務提携へ

アサツーディ・ケイは2月28日、ブルズアイコミュニケーションズとの業務提携を発表した。
電通がザ・ゴールを擁し、博報堂がコスモ・コミュニケーションズを擁し、雑誌広告専門の広告代理店ならではの「小回り」(具体的に言えばファッションや化粧品、高級ブランドといった得意先に対する提案力、機動力、人的ネットワーク)を確保しているなかで、ADKはコスモ・コミュニケーションズに業務提携を打ち切られて(博報堂に乗り換えられてしまった!)以降、「小回り」をいかに取り戻すかは課題であったはずだ。ブルズアイコミュニケーションズと業務提携することで、ADKは、この課題の解消を図ったといえるだろう。
推測するにADKは最初からブルズアイコミュニケーションズに的を絞っていたわけではないように思う。ワールド・モード・ホールディングスに株式譲渡を果たしたアイアドバタイジングなども「候補」であったに違いない。ADKは経営内容などを含め、ブルズアイコミュニケーションズを選択したはずだ。恐らく、ブルズアイコミュニケーションズの歴史の浅さと広告代理店としての勢いを買ったのだと私は思っている。
ブルズアイコミュニケーションズの設立は2006年。村山公大によって創業された。かつて業務提携していたコスモ・コミュニケーションズと比較すれば分かるように歴史は浅く(それゆえ若さが横溢している)、短期間のうちに雑誌広告のプレイヤーとして認知されたことからも分かるように創業期のエネルギーを未だ確保している。論より証拠。ブルズアイコミュニケーションズのフェイスブックをご覧いただきたい。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=3&cad=rja&sqi=2&ved=0CDYQFjAC&url=https%3A%2F%2Fja-jp.facebook.com%2Fpages%2F%25E3%2583%2596%25E3%2583%25AB%25E3%2582%25BA%25E3%2582%25A2%25E3%2582%25A4-%25E3%2582%25B3%25E3%2583%259F%25E3%2583%25A5%25E3%2583%258B%25E3%2582%25B1%25E3%2583%25BC%25E3%2582%25B7%25E3%2583%25A7%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25BA%2F171494612907503&ei=-YUSU9RZhLqSBbr6gIAM&usg=AFQjCNEkoX3uik57TlFOoiynxCCmYMA14Q&sig2=_Zjac5xW4FURe99Ld2azkw
ブルズアイコミュニケーションズとすれば、ADKと提携することで、メディアバイイングにおける総合広告代理店ならではの力量に期待できるし、何といってもデジタライゼーションを踏まえた総合広告代理店ならではのソリューション能力は自らが到底、構築できるようなものではあるまい。雑誌専門のブティック型エージェンシーは、どんなに「小回り」に優れていても、それだけでは成長戦略を描き難くなっているのが現状である。
「ブルズアイ」とはダーツの的を指す言葉だが、学生時代は卒業ギリギリまで波乗りとバイトに明け暮れていたという村山らしいネーミングである。営業部には徳間ジャパン出身の元アイドルまで戦力として揃えている。
1963年生まれの村山は新卒として小学館系列の広告代理店として知られる昭通に1985年に入社するも、石の上にも3年を実践できず、昭通を退社し、1987年にダイヤモンド社に入社する。むろん、広告の配属となり、2002年にセブンシーズ アンド カンパニーに取締役として迎えられるまで勤めることになる。それでも約15年。しかもセブンシーズに取締役で迎えられたものの2004年にはエスクァイア マガジン ジャパンに移籍している。このエスクァイア マガジン ジャパンに在籍したのも2年足らずで、2006年にブルズアイコミュニケーションズを立ち上げているのだ。
こうしたキャリアは一昔前ならば「転職バッタ」などと揶揄され、信用を築き上げることはできなかったものだが、そういう意味でも時代は大きく変わりつつあるのだろう。その時代の波に乗り、村山はブルズアイコミュニケーションズの創業を成功させる。
村山からすればADKとの業務提携は「第二の創業」ということになろうか。
http://www.adk.jp/html/news/2014/20140228_002011.html
http://bullseyecom.co.jp/pdf/release140228.pdf

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2)【記事】光文社のECサイト不正アクセスが発覚

光文社と伊藤忠ファッションシステムとの業務提携により運営するECサイト「kokode.jp KOBUNSHA SELECT SHOP(http://kokode.jp/)」「女性自身百貨店(http://jisin.kokode.jp/)」「Mart SELECT SHOP(http://mart.kokode.jp/)」のサーバに対して外部からの不正アクセスによりシステムへの侵入をゆるし、2013年12月29日から2014年1月21日の間にクレジットカード決済を行った1160件の顧客のクレジット情報が不正に取得された可能性があることがわかった。
光文社は2月26日に警察署に捜査を以来するとともに情報が流出した可能性のある顧客にメールで通知するなどして、顧客に被害が及ばぬように万全を期すという。同時に再発防止のため次のような対策を打ち出した。
1) 第三者のセキュリティ専門会社にシステムセキュリティの脆弱性診断を委託し、発生し得るセキュリティリスクを定期的に排除する。
2) クレジットカード業界のセキュリティ基準(PCI DSS)の順守を徹底する。
3) 運用マニュアルを改版して、本事業の運用に携わる人員のスキルやリテラシーの向上に努め、システム監視体制の強化のみならず、人的リスクに対しての意識改革も併せて実施する。
http://www.kobunsha.com/news/pdf/release_20140228.pdf
このところインターネットにかかわるシステム障害などのトラブルや不正アクセスといった犯罪が増えてきているように感じる。もともとインターネットは、そうしたトラブル、事件が後を絶たないのだが、そう感じるのは出版社も、そのビジネスにおいてインターネットを積極的に活用しはじめたからにほかなるまい。
積極的に活用しはじめたといっても、ようやくスタートラインに立った程度のものであろう。逆に、こうした事件に直面することで、だからネットビジネスは信用できないとか、リスクが大きすぎるとかいって、出版社は紙のビジネスにとどまっていたほうが安全だと早計な判断を下し、インターネット戦略を後退させてしまってはならないはずだ。もちろん深く反省することは必要だが、インターネットを恐れて歴史の歯車を逆行させてはならないのである。

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3)【本日の一行情報】

小学館系列のネットアドバンスが運営するジャパンナレッジでシステム障害が発生した。2月28日、18時25分より検索ができない障害が発生し、同日22時5分に復旧した。
http://www.netadvance.co.jp/

◎ 私情を挟むまでもなく、井川遥の株がグングンと上がっている。
http://thepage.jp/detail/20140227-00000002-wordleaf

テレビ東京も好調。
http://mantan-web.jp/2014/02/27/20140227dog00m200035000c.html
「女子アナ王国」が崩壊寸前のフジテレビだけが不調である。どうせ不調なんだから、日本のFOXテレビを目指せば良い。そうすればサンケイ新聞の販促にもつながる。

博報堂はマレーシアで「博報堂マレーシア」「People’n Rich-H」に続く三社目の拠点として「Lunch Communications」をクアラルンプールに設立した。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/16056

KADOKAWAWebコミックマガジン「ComicWalker」を3月22日に立ち上げ、人気マンガ200作品を無料で読めるようにする。
http://cw-start.com/
紙の雑誌の「赤字」に耐えかね、ウエブサイトをコミックスの供給源にしようという考え方が増えてくるように思う。それはニールセンが発表したマンガアプリのランキングでも明らかである。1位が「全巻無料!ろくでなしBLUES」で約208.6万人。2位が「マンガボックス」の179.7万人、3位が「comico」の95.8万人、4位が「ジャンプLIVE」で57.6万人。
ちなみにニールセンの調査によればスマホ電子書籍を購入・閲覧したユーザー数は2075.4万人で、スマートフォン利用者の55%に及ぶという。
http://www.netratings.co.jp/news_release/2014/02/Newsrelease20140227.html

◎「婦人公論」(中央公論新社)が読者体験をアンケートで募り、これをベースに漫画家の柴門ふみが作詞を手がけた「ありがとう 人生」は元ル・クプル藤田恵美のニューアルバム「ありがとう〜あなたの詩 わたしの歌〜」に収録された。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20140221-OYT8T00441.htm
◎小説「KAGEROU」の一発屋として出版界では知られている水嶋ヒロツイッターが話題になっている。延々と「ブログ更新!」というツイートを発し続けているのである。で、水嶋ヒロがブログを更新しているのかと言えば、していないらしい。
http://blog.livedoor.jp/ninji/archives/36649908.html

楽天が運営する「みん就」こと「みんなの就職活動日記」2015年度卒新卒就職人気企業ランキング。1位「全日空」、2位「電通」、3位「JTBグループ」、4位「日本航空」、5位「三菱東京UFJ銀行」、6位「博報堂博報堂DYメディアパートナーズ」、7位「伊藤忠商事」、8位「オリエンタルランド」、9位「三井住友銀行」、10位「資生堂」。
http://news.mynavi.jp/news/2014/02/28/334/index.html

電通の役員人事。5氏が執行役員に選任された。第16営業局長の内田龍之、電通イーシ゛ス・ネットワーク事業局専任局長の佐野弘明、経営企画局長の千石義治、第7営業局長の日比野貴樹、タ゛イレクトマーケティンク゛・ヒ゛シ゛ネス局長の大山俊哉がそうだ。そこに新聞の名前もテレビの名前も出版の名前もなかった。電通は広告会社として完全に舵を切ったのだろう。目指すはグローバル・エージェンシーということか。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/pdf/2014016-0224.pdf
2月28日にはドイツのデジタルマーケティング・エージェンシー「explido」の株式 100%を同社株主から取得したことを発表した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/pdf/2014017-0228.pdf
次から次へと外国のエージェンシーの買収がつづいている。確かに一社ごとでみれば業績に与える影響は軽微だが、そうした買収の総和が電通に与える影響は決して軽微にとどまるものではあるまい。電通イージス・ネットワークの日本ブランチが電通になるということも充分にあり得るだろう。というよりも、そうした形になってこそイージスを買収し、グローバル戦略を再編した意味があると、そう考えることさえ可能であろう。

文部科学大臣国土交通大臣をつとめた経験のある中山成彬ツイッターでの発言が話題になっている。都内の図書館で「アンネの日記」関連の書物が大量に破られた事件について次のようにツイートしたのである。
「各地の図書館でアンネの日記が破られているというニュースに、瞬間日本人の感性ではない、日本人の仕業ではないと思った。ディスカウントジャパンに精出す国、安倍総理ヒットラーに例える国もある。図書館にも隠しカメラがあるの嫌だが、徹底して調べてほしい。不可解な事が多発する日本、要注意だ」
http://hosyusokuhou.jp/archives/36542718.html
この中山のツイートを受け、一部のサイトでは「中山成彬アンネの日記破りの犯人は朝鮮人の可能性がある」』と差別意識丸出しのタイトルを掲げている。
http://blog.livedoor.jp/societynews/archives/3710344.html
国会議員の片山さつきのツイートも中山と似たり寄ったりの差別意識に支配されていると言って良いだろう。片山は、こう書いている。
アングレームに乗り込んだ韓国チョ・ユンソン女性家族部長官は、ユネスコ事務局長に、2月2日『アンネの日記世界遺産登録されている』、と従軍慰安婦の被害記録の登録を主張したそうです。そして、都内でアンネの日記が図書館被害。事件の徹底捜査を警察に要請します!ささいな情報でも通報を!」
http://togetter.com/li/634059
仮に中山や片山の推測する通りの犯人であったとしても、自らの発言が差別的なものであることに気が付かないほど、二人は人権感覚を欠如させていると言って良いだろう。こうした差別意識が様々な冤罪を生んできたということも付言しておこう。
一方、韓国のメディアは、この事件をどう伝えているかといえば、慰安婦問題絡みで伝えている。例えば「朝鮮日報」は2月27日付の社説「日本はイスラエルから表彰された独首相を見習え」のなかで東京都内の図書館でアンネ・フランクに関する書籍が大量に破られてとんでもない事件が起きたと書いたうえで次のように書いている。
「米国ニューヨークのクイーンズ・コミュニティー・カレッジのホロコースト博物館では、館内に慰安婦展示館を常時設置することになった。これが開館すれば、海外でオープンする最初の慰安婦展示館となる。第2次大戦当時、ナチス・ドイツが行った『ホロコースト』と日本の軍国主義者が行った集団性犯罪が一つの空間に並べて展示されるのだ」
「…アムステルダムの『アンネ・フランク・ハウス』は慰安婦問題と関連する資料を収集するため、5月に関係者が来韓することが決まった」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/02/27/2014022701008.html?ent_rank_news
讀賣新聞は3月2日付社説を「歴史認識問題を外交に持ち込む朴槿恵・韓国大統領の反日の主張がエスカレートした。日韓関係の改善はさらに難しくなったと言えよう」と書き出している。

◎「Instagram」に投稿した自らの料理写真をめぐって「炎上」した木下優樹を「メリット」のCMに起用した花王だが、日刊ゲンダイが「メリット」の不買運動にまで発展したと報じているそうだ。
http://news.livedoor.com/article/detail/8577638/
不買運動といっても、さしたる効果はあがっていないようである。
http://alfalfalfa.com/archives/7120761.html

いとうせいこうの小説「想像ラジオ」が、西田敏行小泉今日子の出演でニッポン放送がラジオドラマ化。ちょっと楽しみだ。
http://www.sanspo.com/geino/news/20140228/oth14022804520014-n1.html

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4)【深夜の誌人語録】

読書とは本を読んで、その内容を真に受けることではない。知識を増やすことが読書の目的ではないということだ。