【文徒】2014年(平成26)3月19日(第2巻51号・通巻253号)

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1)【記事】「マンガボックス」成功が示唆すること
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「マンガボックス」成功が示唆すること

3ヶ月で300万ダウンロードを突破した「マンガボックス」の樹林伸編集長はマンガ市場の縮小を断ち切るには「立ち読み」の復活しかないと認識しているようだ。曰く。
「コンビニの拡大と漫画市場の拡大時期は一致しており、コンビニが漫画を立ち読みできなくした時期と漫画市場が縮小し始める時期も一致している。立ち読み禁止で中高校生の新規読者の流入が減り、どの雑誌もだんだん年齢層が上がっている」
こう発言する樹林は「マンガボックス」で立ち読みしてもらおうと考えた。記事は次のように書いている。
「マンガボックスは、コンビニで立ち読みするように、アプリ内で漫画を無料で楽しめる。アプリを起動するだけで面白い漫画が並ぶため、ユーザーは検索などで漫画を探す必要もなく、『テレビのように』受け身で楽しめるのが特徴だ」
「マンガボックス」は常駐5人、非常駐3人の編集者を抱えている。収益化は、これからだが、ソーシャルゲームの大作を創造するよりもコストは安い。
「コンテンツ制作にかかるのは基本的に原稿料のみ。出版社と同水準の原稿料を支払っているが、印刷代もかからず、サーバコストなどを含めても『持ち出しているコストは大型のソーシャルゲームを作るよりはるかに安い』という」
収益化するためのビジネスモデルは紙の雑誌と基本的に変わらない。
「アプリ内への広告配信に加え、連載漫画の電子書籍化や単行本化、アニメ化、ゲーム化などを収益源にしていく考え。雑誌は赤字でも単行本などで回収する漫画雑誌のビジネスと同じ考え方だ」
紙の雑誌のコストを考えるのであれば、紙の雑誌ではなく、デジタル版をコンテンツ創造の「母胎」と位置づけるビジネスは今後、盛んになるだろう。KADOKAWAの「コミックウォーカー」は明らかに「マンガボックス」の成功を踏まえていると見て間違いあるまい。たとえマンガを無料で読者に提供しようとも、「進撃の巨人」とまでは行かなくとも、コミックスが当たればビジネスとして充分、成立し得るのだ。
「連載作品のどれか1つが大きく当たれば、単行本だけでなくゲーム化や映画化などマルチメディアに展開でき、大きな収益を見込めるためだ。ほかのコンテンツビジネスと比べると、漫画は制作期間が短く、単行本化による回収までのスパンも短いため、比較的短期間で黒字化できるとみる」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1403/17/news056_3.html
同様なことはマンガだけではなく小説にも当てはまる。既に投稿サイトからベストセラーが生まれているが、紙の小説誌を持つよりも、投稿サイトを母胎にしたほうが、コスト的に安価に済むのではないか。そう考える出版社が自前の投稿サイトなり、小説アプリを立ち上げるという動きは充分あり得よう。紙の雑誌がこれまで果たしていた役割がインターネットに移行してゆくというケースはマンガや小説に限らず、今後、増えるのは間違いあるまい。

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2)【本日の一行情報】

◎3月22日、23日の両日にわたって東京ビックサイトを会場に「AnimeJapan 2014」が開催される。
http://www.anime-japan.jp/
コミック出版社の会も後援しているし、講談社集英社小学館が協賛しているが、出版社で力を入れているのは協賛していないKADOKAWAであるようだ。
http://ddnavi.com/news/187389/

中川淳一郎リクルートのCMを徹底的に糾弾している。そのサワリをお読みいただこう。
「給料が安かったり、残業時間が長かったり、満員電車が辛かったりもするが、でも、休日は神宮球場に行ってヤクルトを応援して、あぁ、ウインナーうめぇな。お気に入りのビール売り子のリナちゃんも元気だったなぁ。バレンティンのホームランも見れたなぁ、あぁ、オレ、案外楽しいや−−これでいいじゃねぇかよ!!!!!
こういったごく普通の人生をお前らリクルートとこの広告作ったお前らは否定するのか! なんだよ、そもそもお前らの人生は! 転職エージェントに勤めたのが夢か? 広告代理店に入ったのが夢か? つーか、お前らはそれ以外の人生を送っている人間をdisってるのか!
disっていないというのならば認識が甘い。お前らはdisってる。それはわざわざ『イケてない無個性サラリーマンの典型風景の超絶ステレオタイプ的イメージ』をこれでもか! とばかりに繰り出す演出を施したからだ」
中川節が全開だあ!中川は労働者の本質を理解している。リクルートが資本の手先でしかない本質をしっかりと見抜いている。
http://blog.goo.ne.jp/konotawake

◎既刊本だが、くりぃむしちゅー有田哲平が最高傑作のミステリーと絶賛したことから、乾くるみの「イニシエーション・ラブ」(文春文庫)が何度目かの大ブレーク!累計80万部を突破した。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167732011
村上春樹の短編集「女のいない男たち」も初版20万部でスタートするようだし、「半沢直樹」以外の池井戸文庫も累計350万部を突破したというし、文藝春秋の「文芸」は、このところ好調がつづいている。

◎オールアバウトは「はてな」とイベントタイアップ形式の広告商品を開発。これはクライアント企業の商材と親和性の高いリアルイベントを企画し、専門家の視点で情報発信するだけでなく、参加したブロガーによる効果的な情報拡散を図るもの。第一弾として、パナソニックの新ビデオカメラ「HC-W850M」のプロモーションを目的としたイベント「我が子とのイベントを臨場感あふれる動画で残すコツ講座」(講師:All About「デジタルビデオ」ガイド 阿部信行)の様子をレポートするタイアップ記事を公開している。
http://corp.allabout.co.jp/corporate/press/2013/140317_01.html
オールアバウトは大日本印刷リクルートホールディングスが大株主である。

徳間書店「LARME」の中郡暖菜編集長は27歳と若く、美人と評判である。
http://yukan-news.ameba.jp/20140317-36/

カルチュア・コンビニエンス・クラブの「消費税に関するアンケート調査」によれば消費増税後に節約以外で新たにやりたいことは…1位「チラシを見てお得な情報を探したい」 (29.9%) 2位「ポイントカードをまめに出すようにしたい」 (24.3%) 3位「これまで見なかった商品も、価格比較サイトで値段をチェックしたい」 (17.0%)。
http://www.sankei-kansai.com/press/post.php?basename=000000209.000000983.html

ソニーの敗北は「ハードとソフトの統合モデル」に拘りすぎてしまったことに尽きる。
ソニー電子書籍に必要な技術は持っていたけれど、出版社に対する交渉力はなかった。
逆にアマゾンは、技術はなかったけれど、出版社に対する交渉力は強かった。アマゾンが電子書籍事業を始めるに当たって、自ら持っていた最大かつ唯一の『資源』は、『出版社との交渉力』でした」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140312/260988/?P=1
ソニーは技術を過信したうえに超一流病に取り憑かれ、格好ばかりつけたあげくにの果てに大衆(=ユーザー)に奉仕することを忘れてしまっていたのである。パナソニックなども似たようなものであろう。

◎102歳の医師・日野原重明童話作家としてデビュー。童話の絵本「だいすきなおばあちゃん」(朝日新聞出版)を上梓した。
http://www.asahi.com/articles/ASG3H32VCG3HUCLV002.html

秋田書店板垣恵介「バキ」シリーズの全編を無料で読めるキャンペーンが、電子書籍ストアのBookLive!、漫画全巻ドットコム、読書のお時間です、BOOK☆WALKERひかりTV書店、デジタルe-honYahoo!ブックストアニコニコ静画ソク読み、honto、eBookJapan、コミックシーモア、LINE マンガ、Readerストアなどで、3月18日から20日までの48時間限定で実施されている。
http://natalie.mu/comic/news/112213

安野モヨコの「監督不行届」(祥伝社)がテレビアニメ化される。「監督」とは安野の亭主である「エヴァンゲリオン」の庵野秀明である。3分アニメで全13回の放映となる。
http://www.dle.jp/kantoku/

集英社女性誌BAILA」4月号のCMで綾野剛が書店員を演じている。
http://mdpr.jp/news/detail/1339695

主婦の友社から刊行された「育脳Baby-mo」が重版決定。育児系ムックとして初めてバッグサイズを採用している。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/enterprises/release/detail/00079630.html

上野千鶴子の講演会が予定通り開催された。
http://www.asahi.com/articles/ASG3K3TVPG3KUZOB003.html

フェイスブック仲俣暁生が次のように書いている<著作権法改正は、「出版文化」云々ではなく、ウェブと電子書籍による「著作者の爆発的増大」と「プラットフォームの多様化・複線化」を前提に考えなくてはならないのに、ある時代固有のメディア環境のなかでに生まれたプラットフォームの一つにすぎない「近代出版流通システム」のもとでの「商習慣」を文化として護持することを最優先にし、新たな著作者の利害や出版者(私は単なる配信プラットフォームも含めていいとかんがえる)の利害を無視して、「電子書籍ビジネスが発展」するという発想がどうしても理解できないのです>
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1345237.htm

博報堂、大広、読売広告社の2月度売上高。博報堂でも雑誌は前年同月を上回った。しかも105.8%である。
http://www.google.co.jp/url?q=https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/ir/pdf/%25E3%2580%2590%25E5%258D%259A%25E5%25A0%25B1%25E5%25A0%2582DY%25E3%2580%25912014%25E5%25B9%25B42%25E6%259C%2588%25E5%25BA%25A6%25E6%259C%2588%25E6%25AC%25A1.pdf&sa=U&ei=Zs0nU_viKo7PkgX91oGoAg&ved=0CB4QFjAA&sig2=kBlrw-N8owZJ2fYZmbQvtg&usg=AFQjCNFBnPnOKU9NtG3lX8hUefBh_5ubfA

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3)【深夜の誌人語録】

臆病であることは勇者の条件の一つである。