【文徒】2014年(平成26)4月2日(第2巻60号・通巻262号)

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1)【記事】ネットから小説家が生まれる時代
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ネットから小説家が生まれる時代

投稿サイトの「小説家になろう」から、ラノベの書き手が次々にデビューする。この投稿サイトに掲載されている小説は総23万6929作品というから驚きである。登録者数41万3648人というから、小説誌の部数から考えれば、この数も驚きである。
小説家になろう」を運営しているのはヒナプロジェクトなる企業。本社は京都にあり、2010年設立のベンチャー企業である。「小説」に特化したビジネスを展開している。もともと代表取締役の梅崎祐輔が学生だった2004年にサービスは開始している。
http://hinaproject.co.jp/hina_gaiyou.html
大ヒットした佐島勤の「魔法科高校の劣等生」(電撃文庫)も「小説家になろう」から生まれた作品である。主婦の友社KADOKAWAなど既存の出版社と手を組み、新人発掘のための文学賞を設けている。

KADOKAWAがプロモーションに力を入れている糸森環という作家は、自らのサイトで830万というアクセス数を記録している。
http://kevin565.blog.shinobi.jp/小話/?pageNo=1
紙の世界でのデビューは双葉社であった。2012年に「花術師」を刊行している。
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-23765-8.html?c=30300&o=date&
一迅社文庫アイリスからも「恋と悪魔と黙示録」が刊行されている。
http://ameblo.jp/ichijin-iris/theme-10065834288.html
ライトノベルス帝国」KADOKAWA角川ビーンズ文庫からも「花神遊戯伝」シリーズが刊行されている。
https://www.youtube.com/watch?v=Uvh6Qz9T51g
そんな糸森環の「she & sea」と「F」もKADOKAWAが手がけた。「she & sea」は四六判として刊行され、「F」は角川ビーンズ文庫として刊行された。「she & sea」は既に重版が決定したそうだ。言うまでもなく、これらの作品は既にウエブで公開されていたものである。
ウエブサイトが雑誌の役割を果たしているということである。そして今、小説の世界で起きたことが今度はマンガの世界で起きようとしているのだと私は思っている。こうした傾向は果たして小説やマンガの世界にとどまるものなのだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/ud/pressrelease/53393223b31ac931da000003

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2)【本日の一行情報】

ジャストシステムは、セルフ型アンケートサービス「Fastask (ファストアスク)」を利用して、「企画、マーケティング、広報、販売促進、市場調査・分析(リサーチ)の職種に従事している」と回答した全国の20 代〜 60 代の男女235 名を対象に「マーケティングトレンドに関する調査」を実施した。
「情報収集に関しては37.4%のマーケッターがニュースアプリを利用しており、なかでも『日本経済新聞電子版』が最も多く利用されていました。また43.4%のマーケッターがRSSリーダーを利用。最も利用されているのは『MyYahoo!』であることも分かりました」
http://www.field-pr.net/news_cxSaZWBhjm.html?right123
https://www.fast-ask.com/report/report-marketing-20140326.html
企業における情報のプロにしてからが、新聞のデジタル版をはじめとしたニュースアプリを活用しているのは43.4%と未だに5割を切っていることに私などは衝撃を受けてしまう。

◎確かに旅は「非日常」をもたらし、涙腺を緩くする。旅行ジャーナリスト寺田直子の「泣くために旅に出よう 涙旅のススメ」(実業之日本社)。「涙旅」って使える言葉だな。
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-45482-5

JCBの会員専用Webサービス「MyJCB」に不正アクセスが繰り返されているようだ。
http://www.jcb.co.jp/news/myj_20140327.html

◎「ヤンキー化」とは、要するに深く考えないことだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/33742

◎流行の言葉で言えば「キャリアポルノ」本の典型なのだけれど、宝島社が昨年10月に刊行した「まんがでわかる7つの習慣」が10刷、55万部に到達したそうだ。しかも、主人公が23歳のバーテンダーであることもあり、女性読者が5割を超えている!女性読者を狙ったキャリアポルノが売れ筋になる予感がする。
http://www.narinari.com/Nd/20140325296.html

◎2013年度の平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)において日本テレビが全日とゴールデンで首位。プライムはテレ朝が首位。テレビも読売新聞と朝日新聞の時代がやって来た。
http://www.sanspo.com/geino/news/20140331/oth14033114390020-n1.html

◎日販が「HELLO KITTY×ROOTOTE ルー・ガービッジ」(要するにキティちゃん柄のトートバッグだ)を全国の取引書店、コンビニで販売している。
http://www.dreamnews.jp/press/0000090828/
出版物以外の商材の扱いが取次では間違いなく増えるだろう。

Facebookバーチャルリアリティ技術のOculus VRを20億ドルで買収へ。「潜在性を考えると、バーチャルリアリティ技術は次のソーシャルとコミュニケーションプラットフォームの有力候補として浮上する」ということらしい。
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/column/infostand/20140331_642027.html

◎「VOGUE JAPAN」のTwitterフォロワー数が20万を突破した。どんな雑誌にも言いうることだが、Twitterフォロワー数は多ければ多いほど良いのである。そんなのカネにならない?フォロワー数を増やしてから考えれば良かろう。
http://www.vogue.co.jp/lifestyle/news/2014-03/31/twitter20

◎「紙の新聞に目を通すのに要する時間は25分。一方、オンラインニュースサイトで1日に費やす時間は70秒にすぎない」のだとすれば当然「ファクトやデータに基づき、ジャーナリスティックな物語を追求しながらも、クリエイティビティに優れた取り組み」といったような物言いが成立するのだろう。「デジタル×ジャーナリスティック×クリエイティブに可能性」があるのは事実だとしても、クリエイティブに足を掬われ、「深さ」を失ってしまってはなるまい。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38803

明屋書店萩店(山口県)がリニューアルオープン。文房具と雑貨の大型売場「notanova(ノータ・ノーヴァ)」の第1号店だそうだ。
明屋書店萩店では、『食(うつわ)』・『衣(バッグ)』・『住居(インテリア小物)』をキーワードに、出版物と親和性の高い商品群を揃え、ライフスタイル提案型の売場を目指す。__萩焼の陶器やステンレスのキッチングッズ、各種グラス、手ぬぐい・ハンカチ・タオル、ふきんや入浴剤、クロック、バッグ、知育玩具やブリキの玩具まで、地方の店ではこれまで目に触れることのなかった商品を中心に品そろえした」
http://ryutsuu.biz/topix/g033108.html
床面積を広くし過ぎてしまった書店のリニューアルが相次ぐことであろう。文具・雑貨、コンビニ、カフェを店内に設けて書店としての生き残りを図るというわけである。

リクルートホールディングスは4月1日、研究開発投資を目的とした組織「Recruit Institute of Technology(RIT)」を発足させた。50億円のファンドを組成し、年度内に30社をめどに投資する予定だ。これはリクルートの海外戦略でもある。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140331/262063/?ST=manage&rt=nocnt

双葉社からウエブ版「日刊大衆」が創刊されたぞ!これは期待したい。
http://taishu.jp/
「やくざ」関連の記事が見あたらない!

ボイジャーは、TEXTと朗読パフォーマンスを組み合わせた電子本レーベル「PoETRY」を立ち上げた。第一弾は「詩人天気予報」の活動を続ける詩人・菅原 敏が読む詩集『朗読:裸でベランダ/ウサギと女たち』(著作・朗読:菅原 敏)。
http://www.voyager.co.jp/hodo/140401_press_release.html
私はボイジャーの「紙の本をただ電子化するだけの電子出版を越え、本と出版の多様なあり方を追求」する姿勢に共鳴する。

◎「ビッグコミックスピリッツ」18号に掲載された川端新の「不忠の春」が良い。主人公は陸軍幼年学校に在籍する軍人の卵、舞台は昭和初期であろうか。平和とは何か、軍隊とは何かを考えさせられる掌編なのである。日露戦争で大陸に出征し、義足となった帰還したサンカが不意に登場し、そのサンカに戦争の悲惨さを「みんな怪我と病気で死んでいく。嫌だ、帰りたい、ってなァ」と語らせながらも、「『平和』にも困ってんだよ」と言わしめるシーンは圧巻だ。川端はコミティア出身で商業誌には、これが初登場だという。ダウンロードできるので是非お読み頂きたい。こういう作品こそ単発ではなく連載で読みたいものである。
http://download-manga.net/mangalist/spinet201418fuchuu.php
http://manga-zip.jp/mdata.php?id=33821

◎浦和DFの「硬骨漢」槙野智章がフォトブック「守りたいから前へ、前へ」(幻冬舎)と「ビッグハート」(フロムワン)を2冊同時刊行。
http://www.nikkansports.com/soccer/news/f-sc-tp1-20140331-1278354.html

レッドソックスの上原が「ISSEY MIYAKE MEN」の春夏コレクションを身にまとい「家庭画報」5月号に登場。撮影は篠山紀信だ。
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/04/01/kiji/K20140401007886540.html

電子書籍販売サイト「eBookJapan」は「春マン!集英社 春のデジタルマンガ祭」を5月7日まで実施し、「ONE PIECE」「NARUTO」「キングダム」「甘い生活」など少年マンガ・青年マンガの人気コミック約3000冊(※2)を対象に、第1巻を税別93円(税込100円)(※3)、続刊を税別278円(税込300円)(カラー版コミックスは税別370円(税込399円))で販売している。最大79%オフというキャンペーンだ。
http://japan.cnet.com/release/30067636/
「春マン!集英社 春のデジタルマンガ祭」はBook Live!やニコニコインフォ、BOOKWALKERなどでも展開している。
http://booklive.jp/feature/index/id/haruman14
http://blog.nicovideo.jp/niconews/ni045411.html
http://bookwalker.jp/ex/sp/shueisha-haruman/

小学館集英社プロダクションは、テレビ東京系列で4月2日より放送開始の「のりスタE-ネ!」の英語コーナー「みんなでE-ネ!」を監修協力している。
http://www.atpress.ne.jp/view/44917

◎アマゾンジャパンは4月1日に女性向けストア「Amazon Woman」を開設した。「ワーキングママ」「専業ママ」「セレブ志向」「恋・婚活ガール」「サブカル・文化系」「アウトドア系」という6つのペルソナを設定してオススメ商品を掲載している。このプロジェクトの中心となったのは「東京カレンダー」や「ハーパース・バザー日本版」で編集長経験を持つ秋山都。昨年夏にアマゾンジャパンに転じ、現在、ファッション事業部のエディトリアルディレクターだ。
「今回の取り組みのきっかけになったのが、靴やファッション小物の専門サイト『Javari.jp』の存在。雑誌記事のように写真を大きく使い、着こなしやライフスタイルを提案する手法を取り入れることで売り上げが伸び、通販サイトとしての存在感が高まっている。その雑誌的な手法の一部を『Amazon.co.jp』にも活用することを日本側から米本社に提案し、既存のデザインや操作体系の枠組みの中で取り入れた。その第一弾が、Amazon Womanというわけだ」
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20140328/1056244/?P=1
アマゾンは日本流の進化も遂げるつもりだ。

丸善CHIホールディングスは利益の9割近くを図書館向け書籍販売や大学向け教科書販売を行う「文教市場販売事業」と、図書館運営を受託する「図書館サポート事業」で稼いでいる。
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140331/ecn1403311829004-n1.htm

◎今年も講談社がエイプリールフールを楽しませてくれた!こういう講談社は大好きである。
http://april2014.kodansha.co.jp/
集英社は「週刊ジャンプティーン」だ。
http://www.shonenjump.com/j/index_jack2014.html
これも愉快だった!「ジャンプはオシャレ少年漫画誌へ」だって!!来年は小学館にも参戦してもらいたいものである。
KDDIは、デアゴスティーニ・ジャパンとコラボレーションし、自作スマートフォンを組み立てる「週刊スマホを作る」を創刊、全520号というのも凄い。
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20140401_642177.html

福岡伸一訳「ドリトル先生航海記」と阿川佐和子訳「ウィニー・ザ・プー」の2点で創刊された「新潮モダン・クラシックス」。
http://getnews.jp/archives/545921

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3)【深夜の誌人語録】

約束を守れない人間ほど卑しい存在はない。