【文徒】2017年(平成29)年8月24日(第5巻159号・通巻1088号)

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1)【記事】MimiTVの親会社はCandleで、Candleの親会社はCROOZだという話
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】MimiTVの親会社はCandleで、Candleの親会社はCROOZだという話

ビューティー動画メディア「MimiTV」(ミミ・ティービー)は、メイクやコスメなど美容をテーマした動画を、YouTubeFacebookInstagramといったSNSと自社アプリに配信している。登録ユーザーは100万超、再生数は月間1,600万超。これが「MimiTV」。
http://mimitv.jp/
山下主暉代表取締役社長は「アドタイ」のインタビューに応じて次のように語っている。
「『MimiTV』を開設した2015年、メディアのコンテンツが徐々にテキストから動画に移行していくことを感じていました。動画になることで、より情報としての価値が高まり、ユーザー数が増える可能性を持つ領域は何だろうと考えたときに出てきたのが、『料理』と『美容(メイク・コスメ・ヘアアレンジ)』でした。
当初は料理メディアもチャレンジしてみたのですが、当社の強みであるモデルのキャスティング力を生かすという観点と、プレイヤーの参入数など市場性から、美容に絞ることに決めたのです」
https://www.advertimes.com/20170821/article256048/
こうした認識を出版社で女性誌にかかわっていた編集者は持てたであろうか。彼、彼女らは紙のエリートを志向するばかりで、デジタル文化の一兵卒たることを忌避したのではなかったか。
あだしごとはさておき、MimiTVはCandleの子会社である。山下はCandleでは取締役である。Candleの代表取締役社長は金靖征である。
http://candle.co.jp/aboutus/culture
金は愛知県の出身で在日韓国人実業家の父を持つ。東京大学東京大学起業家サークル「TNK」の9期生だ。Candleを創業したのは2014年4月。何と20歳での起業だ。同年10月に、初めての自社サービスであるファッションコーディネートアプリ「Moode」をリリースしているが、躍進するのは女性向けキュレーションメディア「MARBLE」をもってだ。そして2016年10月にはクルーズ社によるM&Aを発表する。
https://thepedia.co/article/1743/
Candleはファッション通販「SHOPLIST.com byCROOZ」を中心としたEC事業を手がけるCROOZの子会社なのである。
http://crooz.co.jp/about/company
http://crooz.co.jp/
CROOZはゲーム事業を大幅に絞り込み、大胆にもファッション通販にシフトしたことで知られている。小渕宏二代表取締役社長は小渕恵三を尊敬する群馬県人である。福田や中曽根ではないんだよね。小渕は金と違って叩き上げの起業家だ。IBMのグループ会社でトップセールスマンであったそうだ。
http://www.bci.co.jp/netkeizai/interview/234
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20170328/ecn1703281130004-n2.htm
http://venturetimes.jp/interview/portrait/11118.html
ゲーム事業を譲渡したから12億5000万円でCandleを買収できたのである。
http://newswitch.jp/p/7361
12億5000万円程度であれば大手出版社もCandleを買収できたはずである。石橋を叩いて渡るのが出版文化なのだろう。

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2)【本日の一行情報】

◎出版人ライブラリの第三弾として岩本太郎の「炎上!百円ライター始末記」を刊行することにした。岩本太郎の単著デビュー作となる。そこで今回もクラウドファンディングを立ち上げることにした。ご笑覧を!
https://camp-fire.jp/projects/view/41319

◎文学はスマホと指で創造できることは周知の事実だが、マンガもまたスマホと指で描ける時代なのである。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1708/22/news008.html

◎誰でも動画コンテンツを発信できる時代なのである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000025680.html
誰でも動画コンテンツを発信できるということは「誰でもテレビ局」時代の幕が開いたということである。「誰でもテレビ局」の時代において、ある種のプロフェッショナリズムは、既成に胡坐をかく反動として大衆から嫌悪されるだろう。テレビが開局以来、「ある種のプロフェッショナリズム」を担っていたのは、リベラリズムである。「誰でもテレビ局」の時代とはポピュリズムが右傾化する時代として立ち上がるのかもしれない。

◎「台湾で開かれたASUS新製品発表会では、プレゼン中、日本メディアと某国のYoutuber同士で一触即発の緊張状態にあった」(石川温)そうだ。
http://www.mag2.com/p/news/261203
日本から出席したのは10名ほどのフリーランスなどであったようだが、彼らはプロフェッショナリズムに胡坐をかいているのではないかと半畳を入れたくなる私であった。フリーランスだからといって「自由」を希求しているわけでは決してないのである。

◎版元は早川書房だ。MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長・伊藤穰一が「クラウドソーシング」という言葉の命名者として知られるジャーナリストのジェフ・ハウと共著で「9プリンシプルズ」を刊行した。
http://goo.gl/tcro4w
これSFじゃないよ。二人はクラウドワークス社のクラウドソーシング事業アドバイザーに就任しているんだね。
http://markezine.jp/article/detail/20950
茂木健一郎がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの「Dream HEART」(土曜22:00〜22:30)に、8月26日、9月2日の2週にわたって、伊藤穰一がゲストとして出演する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001187.000004829.html
日本におけるインターネットのエバンジェリストであった伊藤穰一と林郁の出会いがデジタルガレージを生み出すこととなった。

◎グリコ・森永事件をフィクションで推理した「罪の声」(講談社)の塩田武士は大泉洋を主人公のモデルにした小説「騙し絵の牙」がKADOKAWAから発売される。塩田は次のようなコメントを発表している。
「実在の俳優、それも唯一無二の役者をアテガキにして小説を書く──。
芸能事務所の方と編集者と打ち合わせを続け、『完全アテガキの社会派小説』という未知の世界を前に何度もプロットを修正。新時代のメディア・ミックスに備えました」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003578.000007006.html

KADOKAWAの「電撃マオウ」で「文武両闘」を連載中の内々けやき秋田書店のウエブサイト「チャンピオンクロス」で連載中の「グレートヤンキーみちるくん」がKADOKAWAのウエブサイト「コミックウォーカー」に登場し、また、「チャンピオンクロス」では「文武両闘」1〜3話を更新中というように出版社の垣根を超えた作品交換プロジェクトが試みられている。
http://comic-walker.com/news/detail/995/

◎なかなか良いセンスしているなあ。吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を復刊するとともに、「ケシゴムライフ」の羽賀翔一によるマンガ版もマガジンハウスは刊行した。佐渡島や柿内の日常を描く「今日のコルク」の羽賀である。
https://magazineworld.jp/books/paper/2946/
https://magazineworld.jp/books/paper/2947/
コルクの半井志央が次のようにツイートしている。
「いよいよ明日発売の羽賀翔一さんの漫画『君たちはどう生きるか』(原作:吉野源三郎)、羽賀さんに直接お話しを伺っていると原作を読んだことがある人にこそ漫画版を読んでもらいたいと思った!老若男女を問わない、いつ読んでも気付きがある、長く読まれている理由がよく分かる作品です」
https://twitter.com/shionakarai/status/900194736740290560
先行発売している丸善 日本橋店では大反響のようだ。マガジンハウス営業部のツイートである。もちろん、佐渡島庸平リツイートしている。
「8月24日発売予定の『漫画 君たちはどう生きるか』、同時発売の新装版『君たちはどう生きるか』。丸善 日本橋店様で只今、先行発売中です。大反響につき、急遽大量追加搬入が決定! さらに大々的にご展開いただける予定です。ご期待ください」
https://twitter.com/magazine_sales/status/898711381012172800
マガジンハウスとコルクは相性が良いはずだ。コルクのマンガをマガジンハウスから、どんどんと出せば良い。

電通デジタルは、デジタルマーケティング支援を行うトライベック・ストラテジーと、デジタルコマース時代に求められるECサイトの新評価指標として、「ECサイト診断」サービスを共同開発し、提供を開始した。
https://www.dentsudigital.co.jp/release/assets/DD2017012-0821.pdf

篠原千絵のマンガ「天は赤い河のほとり」(小学館)が、宝塚歌劇団で舞台化されることになった。
https://mantan-web.jp/article/20170822dog00m200001000c.html

中日新聞は富山版で次のように書いている。
経済誌の「地方『元気』企業ランキング2016」のトップに輝いた「明屋書店」(愛媛県)の小島俊一代表取締役が二十二日、富山市高田の情報ビルで、「いくら赤字でも自治体に残る最後の本屋を絶対にやめない」と地域を大事にする理念を語った〉
http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20170823/CK2017082302000016.html
この「経済誌」とは「週刊ダイヤモンド」である。

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3)【深夜の誌人語録】

創造力よりも想像力を優先するから、「忖度」文化が生まれる。