【文徒】2018年(平成30)1月26日(第6巻15号・通巻1189号)

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1)【記事】マガジンハウスの機構改革と編集長人事
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2018.1.26 Shuppanjin

1)【記事】マガジンハウスの機構改革と編集長人事

マガジンハウスで編集局を再編する機構改革と人事異動があった。第五編集局が新設され、それぞれの編集局の担当雑誌は次のようになった。
第一編集局「ポパイ」「カーサブルータス」
第二編集局「クウネル」
第三編集局「ブルータス」「ターザン」「ギンザ」
第四編集局「アンアン」「ハナコ
第五編集局「クロワッサン」「&プレミアム」
石渡健文取締役が第一編集局と第三編集局を担当する。石渡は第一編集局局長とデジタル戦略局局長を兼務する。一方、第二編集局、第四編集局、第五編集局を担当するのは鉄尾周一取締役。鉄尾は第二編集局局長と書籍・ムック出版局局長を兼務する。
「ポパイ」を起点とした男性誌を石渡が、「アンアン」を起点とした女性誌を鉄尾が担当するといったほうがわかりやすいかもしれない。
やはり関心を呼ぶのは編集長人事であろう。いわば紙の原理主義者として、「ポパイ」の原点回帰を果たし、それこそデジタルシフトをしなくとも能、狂言、歌舞伎のように生き残らせることが可能であることを示唆した木下孝浩が「ポパイ」の編集長を離れることになった。しかも総務部勤務と発表された。
これがどういうことかといえば木下は、メディアかグローバルブランドかはわからないが何がしかの企業からスカウトされ、マガジンハウスを退職することになるということを意味するはずだ。
「ポパイ」編集長に就任するのは、「カーサブルータス」で紙とデジタルを両立させた松原亨。松原がデジタル戦略室長を兼務することから、「ポパイ」のデジタルシフトが一気に進むのだろうが、デジタルに対する色気を捨てて紙の雑誌を「古典芸能」のように生き残らせるという方法もあると思うんだけどなあ。もっとも松原がもともと「ポパイ」育ちであることも忘れてはなるまい。
「カーサ ブルータス」の後任編集長には、西尾洋一副編集長が昇任する。
「アンドプレミアム」の柴崎信明編集長が第五編集局局長に昇任した。柴崎はマガジンハウスの次代を担うエースのひとりと見て間違いあるまい。芝崎は実は「理科系」であることも付言しておこうか。
「ギンザ」編集長の中島敏子がカスタムプロデュース部部長となった。私などは中島の「ポパイ」とか「アンアン」も見てみたかったクチである。「GINZA」編集長には同誌キャップであった萩島紗弥が就く。
ミスター「ターザン」とも言うべき大田原透が「ターザン」の編集長を降り、書籍編集部編集長となる。「ターザン」の編集長に就任したのは「ポパイ」でキャップをつとめていた山口淳である。
https://www.wwdjapan.com/544677

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2)【本日の一行情報】

◎「GQ JAPAN」の魅力は、何よりもこういう文章を書ける鈴木正文という才能を編集長に据えていることに他ならない。
ホールデンが嫌った世渡りのための『型』に、部分的にでもはまらずに生きて行くことが容易でないことは、たとえば服装=ファッションに例を見てみてもあきらかだ。しばしばサラリーマンの『ユニフォーム』といわれてきたスーツは、まさにそうした『型』のひとつで、それはその画一性によって、着用者の外見的個性を消失させることを使命としている。スーツはその意味では平等主義者であり、本質的にいって、貴族社会崩壊後のデモクラティックなブルジョワ社会の産物であるとともに、その時代的な表現である」
https://gqjapan.jp/magazine/letter/20180123/editors-letter-177
ホールデンというのはサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の17歳の主人公なんだけどね。鈴木正文による「GQ JAPAN」3月号所収のエディターズ・レターは、こう結ばれている。
「そのビートルズのまぎれもない主役のひとりだったジョン・レノンは、1980年12月8日、ニューヨークの路上でマーク・チャプマンなる男によって射殺されたが、チャプマンは殺害後、歩道に座って『ライ麦畑でつかまえて』を読みながら警官の到着を待ったという。ホールデンもまたレノン同様、かれのヒーローだったのだ」

◎スペイン内戦を背景に持つ「パンズ・ラビリンス」をもって私を驚愕せしめたギレルモ・デル・トロの「シェイプ・オブ・ウォーター」がアカデミー賞の大本命だ。何しろ13部門にノミネートされている。
http://www.bbc.com/japanese/42799371
メキシコ出身のギレルモ・デル・トロは「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」「レヴェナント:_蘇えりし者」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、「ゼロ・グラビティ」「天国の口、終りの楽園。」のアルフォンソ・キュアロンとともにメキシコで製作会社「チャチャチャ(Cha-Cha-Cha)」を設立している。
ギレルモ・デル・トロアメリカの作家チャック・ホーガンとの共著で小説も書いている。「沈黙のエクリプス」「暗黒のメルトダウン」「永遠の夜」が早川書房から刊行されている。
http://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopbrand.html
「沈黙のエクリプス」はテレビドラマ化されている。
http://video.foxjapan.com/tv/strain/s1/introduction/
ギレルモ・デル・トロ押井守監督のファンである。
http://eiga.com/news/20150428/15/
パシフィック・リム」では文字通り「KAIJU」を登場させるなど、日本の特撮映画やアニメに対する造詣が異様に深い。
https://www.cinematoday.jp/page/A0003796
永井豪の「マジンガーZ」の大ファンであることも判明している。永井を「マシンアニメ界のモーツァルト」と絶賛している。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1706/16/news048.html

電子書籍レンタルサイト「Renta!」は、縦スクロールで読むフルカラーコミック「タテコミ」にアニメーション効果を付加した新サービス「タテコミMove!」をリリースした。「タテコミMove!」は、タテコミのコマに、花びらが舞う/キャラクターが動くなどのエフェクトが加えられる。第一弾は双葉社の「君の膵臓をたべたい」コミック版。
初年度には100作品、将来的には1000作品を「タテコミMove!」として販売していくことを目指すそうだ。
https://www.papy.co.jp/info/index.php?page=/release/180123.htm

白泉社の少女漫画雑誌「LaLa」3月号は通常のB5判の他に、ポケットサイズのB6版が発売された。
http://www.dreamnews.jp/press/0000167259/

直接民主主義の「道具」として期待されていたソーシャルメディアだが、そうであるがゆえに民主主義に対する「脅威」にもなり得る。
「交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブックFacebook)は22日、ソーシャルメディアの爆発的な拡大は民主主義への脅威になり得ると認め、問題解決に取り組むとともに、自社のプラットフォームを有益な場にすると約束した」(AFP BBニュース)
http://www.afpbb.com/articles/-/3159581
フェイスブックでプロダクトマネジャーを務めるサミド・チャクラバルティ氏は、ハーバード大学ロースクールのキャス・サンスティーン教授らの『民主主義におけるソーシャルメディアの役割』についてのブログに『プラス面がマイナス面を上回ると保証できればと心から願っているが、私にはできない』と投稿した」
https://jp.reuters.com/article/facebook-democracy-idJPKBN1FC0DY

◎ヤフーは6月に開催される株主総会の決議を経て社長交代となる。現社長の宮坂学は代表権のない会長に、副社長の川邊健太郎代表取締役社長CEOに就任する。
http://jp.techcrunch.com/2018/01/24/yahoo-japan_s-new-ceo-is-mr-kawabe/

◎AOKIは、小学館CanCam」と、女優・モデルとして活躍中の山本美月との初トリプルコラボ企画商品化を実現した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000155.000011795.html

大河ドラマ西郷どん」の林真理子による原作小説を出版するKADOKAWAは、西郷隆盛ゆかりの鹿児島県と連携し期間限定のスタンプラリーを開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004091.000007006.html

◎「ゲス不倫」を「週刊文春」にスクープされ、衆議院議員を辞職することになった宮崎謙介は自らのブログ「前向き宣言」で次のように書いている。
小室哲哉さんの一件で週間文春が批判されはじめた。
でも、実際のところ週刊誌が何を書こうが影響は限定的で、それをテレビのワイドショーが取り上げると桁違いに影響が大きくなる。
(中略) 週刊誌で疑惑が報じられているだけだと疑惑止まりだが、テレビで朝から晩まで報道され続けると疑惑が事実になるような感覚に陥る」
https://ameblo.jp/miyaken117/entry-12345942007.html
毎日新聞が掲載した「小室さん不倫疑惑報道で『文春砲』炎上」も、このブログを紹介している。この記事で気になるのは次のようなくだりだ。
「ライバル誌の週刊新潮の記者は『うちの編集部内で『フライデー襲撃事件みたいなことにならなければいいが』と話題になってます』と打ち明ける。事件は1986年に起き、過激な報道姿勢で人気を集めていた写真週刊誌が凋落するきっかけになったとされる。『ただ、著名人の不倫疑惑は読者の関心が高く、週刊誌記者にとっては不動の取材テーマ。そう簡単に変わらないとは思いますけど……』」
https://mainichi.jp/articles/20180125/k00/00m/040/016000c
今週の「週刊文春」はNHKを退職し、フジテレビのニュース番組でメインキャスターになることが決まっていた登坂淳一アナのセクハラ事件をスクープしている。これでなけりゃ、週刊誌は!

◎「幻冬舎plus」に対して第三者による不正アクセスがあり、流出した可能性があるのは、会員登録した最大で9万3014件分の名前、メールアドレス、ユーザーIDだそうだ。
「なお、会員登録時に同時にご入力いただいたパスワードや生年月日などの情報、決済時のクレジットカード情報、プレゼント応募時にご入力いただいた住所や電話番号などの情報は流出可能性のある情報に含まれておりません」
http://www.gentosha.co.jp/news/n446.html

欅坂46長濱ねる写真集「ここから」(講談社)は4度目の重版が決定し累計発行部数は16万部を突破した。
https://mdpr.jp/news/detail/1742405

講談社の「月刊少年シリウス」にて好評されている清水茜の体内細胞擬人化マンガ「はたらく細胞」のテレビアニメ化が決まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000875.000016356.html

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3)【深夜の誌人語録】

失敗を恐れる必要はないが失敗を憎め