【文徒】2014年(平成26)4月4日(第2巻62号・通巻264号)

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1)【記事】さわや書店フェザン店のカリスマ書店員
2)【記事】「週刊文春デジタル」配信開始!
3)【記事】ニュースアプリ「Antenna」を知っていますか?
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.4.4 Shuppanjin

1)【記事】さわや書店フェザン店のカリスマ書店員

さわや書店フェザン店(盛岡駅)の松本大介の名前をしかと記憶しておこう。松本は松沢呉一の「ぐろぐろ」を追加発注した際にほぼ絶版状態にあることを知る。そこで松本は版元の筑摩書房に重版をかけあう。
「…『こんなに面白い本はない。重版してもらおう』と、増刷分1000冊全てを同書店で販売するつもりで重版を出版社に持ちかけた。(中略)重版が決まった後、全国数社の書店も仕入れを希望したことから、同店では700冊を入荷。地方書店としては異例の決断だったが、2013年12月に増刷分の販売を店頭で始め、約2カ月で500冊を売り切った」
版元との直取で販売したそうだ。東京でも明正堂やブックス・ルーエ、久美堂でも販売している。
松本といえば「思考の整理学」のPOPを書き、「思考の整理学」の生命力を見事に引き出したことで知られているが、「ぐろぐろ」のPOPでは、こう書いている。
「ぐろは黒より出でて黒より黒い……。この傑作を絶版の淵から救うため、さわや決意の700冊仕入れ。東北では当店でしか買えません。炎上に表わされるような規制ばかりのよのなかで、書店でしか選べない自由がある。禁断かつ抱腹絶倒の、ちくま文庫最大のタブーを遠ざけない勇気があなたにはあるか!?松沢呉一『ぐろぐろ』」
書店員が主体的に動くことによって「世界」はまだまだ変わり得るようだ。
http://morioka.keizai.biz/headline/1571/

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2)【記事】「週刊文春デジタル」配信開始!

ドワンゴ及びニワンゴ文藝春秋は、ドワンゴニワンゴが運営する日本最大級の動画サービス「niconico」の「ニコニコチャンネル」において、ブログ&メールマガジン機能「ブロマガ」を使った「週刊文春デジタル」の配信を4月2日より開始した。
週刊誌のネット配信というと、これまで電子雑誌形式が主流だったが、「週刊文春デジタル」は、誌面のブロマガ(メルマガ)配信を行う。ブロマガは、月額課金制による定期購読モデルであることが特徴で、記事をチャンネルにアップロードする際、記事をメルマガに自動作成して登録者に送信することもできるため、購読者に対して毎週記事を直接届けることができる。
週刊文春デジタル」は、毎週木曜日の「週刊文春発」売時刻と同時に、同誌掲載のすべての特集記事をブロマガで配信するという。
チャンネル登録者は、月額864円で、毎週配信されるそれらの記事を最新号含め過去5冊分購読できる。更に、無料で閲覧できるスクープ速報も配信するという。
http://ch.nicovideo.jp/shukanbunshun
週刊文春デジタル」がどの程度、売り上げるのか。競合誌も注目していることだろう。「週刊文春」と比べれば月額864円という設定は、いわば半値だが、特集によって週刊誌を買いわけてきた読者が、この価格をどう評価するかである。もちろん、「週刊文春デジタル」によって新しい読者を開拓できれば、それにこしたことはない。
ジャニーズタレントに殴打された女性の写真が生々しい。こういう部分が「商品価値」として、どう評価されるかだろう。

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3)【記事】ニュースアプリ「Antenna」を知っていますか?

ニュースアプリ「Antenna」はECサービス「Antenna ショッピング」の提供を開始した。
「ユーザーは、自分好みの情報を視覚的に収集する中で、気になった商品の画像をタップすると、出品者が綴る商品に関するストーリーを読むことができ、そのままAntenna上で決済・購入が可能です。まずは、『インテリア・雑貨』『食器』『ファッション』『アクセサリー』など、作り手のこだわりが感じられる本当に良い商品を扱う出品者からスタートします」
https://antenna.jp/wp-content/uploads/2014/04/20140402_gliderassociates_press.pdf
「Antenna」は300万ユーザーを突破したという。凄いペースでユーザーを拡大している。
「生活者の情報収集の仕方が急速に変化する中で、写真から記事を読むという独自のインターフェースがユーザーから支持を受け、2013年10月に100万ユーザー、2014年2月に200万ユーザーを突破し、本日300万ユーザー達成となりました」
https://antenna.jp/wp-content/uploads/2014/04/20140402-02_gliderassociates_press.pdf
「Antenna」と現在提携しているメディアは次の通り。
https://antenna.jp/web/publishers/
「Antenna」の運営会社はグライダーアソシエイツ。代表取締役社長をつとめるのはリクルート出身で、ネットリサーチ会社マクロミルを立ち上げた杉本哲哉である。
http://case.dreamgate.gr.jp/mbl_t/id=903
杉本のマクロミルは昨年、グライダーアソシエーツに15億円を出資している。その段階ではグライダーズアソシエートの社長は町野健であったが、現在、町野は取締役COO。
http://www.macromill.com/company/release/20130808glider/
町野はこんな発言をしている。
「僕、雑誌が好きで毎月40冊くらい読んでいるんですが、女性誌って面白いんですよ。別にオネエでも何でもないのですが(笑)。『GINZA』や『sweet』をはじめ、女性誌は情報が詰まっていて面白い。Antennaは女性向けメディアの情報も配信していますが、そんな面白さをみんなにも体験してほしいんですよね。男性はわざわざ女性誌のコーナーにまで行って読まないですから、そこにある情報は一生入ってこない。自動車が好きな女性もいるのに、自動車雑誌は男性目線のものしかない。それこそサービス側がやるべきで、Antennaはユニセックスなメディアだからできるなと」
http://www.lifehacker.jp/2013/03/130309antenna_interview.html

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4)【本日の一行情報】

トーハンが運営する電子書店「e-hon」がポイントサービスを開始。宅配利用の読者に購入金額100円(本体)につき原則1ポイントを付与する。トーハンのアマゾン対策なんだろうけれど。
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/ehon_34/

◎「ドリームガールズ」はファッションに目覚めた女子小・中学生をターゲットに創刊された。隔月刊。626円。関西発の情報が満載されている。版元は大阪を拠点とするオンリーネット。
「雑誌は今後、奇数月に刊行するほか、雑誌と連動した撮影会・ショーなどの参加型イベント、読者が誌面に登場できる発掘企画、本誌とウェブとの連動企画、グッズ展開なども予定する。読者参加型イベントの第1弾として、ファッションショー『DREAM KIDS Collection』を8月12日に『グランフロント大阪』(北区)で開く。モデルを一般公募し、書類選考とオーディションを勝ち抜いた子どもたちがモデルとしてランウェーを歩く」
阪神百貨店梅田本店のJS(女子小学生)ファッション売り場は「JSの聖地と呼ばれているのだそうだ。
http://namba.keizai.biz/headline/2785/
オンリーネットはイベントやプロモーションにキャンペーンスタッフを派遣する会社だ。
http://www.onlynet.co.jp/about/

大日本印刷の北島義俊社長は次のように語っている。
「読む人が自由に選択できる環境を構築していくことが大事であって、われわれが押しつけるべきではない、との考え方です。電子書籍が普及したからといって、紙の印刷がなくなるわけではありません。だから当社では、紙の印刷物と電子書籍の相乗効果を高める『ハイブリッド型総合書店』に取り組んでいます。小説は紙で読みたいという人もいるでしょうし、紙と電子を使い分ける流れも生まれているようです」
社長に君臨して35年!
http://www.sankeibiz.jp/business/news/140401/bsd1404012248009-n1.htm

TBSホールディングスによるクラシック専門のインターネットラジオ局「OTTAVA(オッターヴァ)」を6月末で休止されることになった。
http://ottava.jp/news/2014_0401.html
クラシック専門のインターネットラジオ局の可能性が消滅したわけではない。

京都新聞社持株会社制に移行。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2014040101106
京都新聞ホールディングスの社長に白石方一が就任し、新聞編集事業に専念する京都新聞社の社長には黒田清喜が就任する。で、昨年、取締役に就任した白石京大はどうなったんだろうか?白石京大については次のようなブログをお読み頂きたい。
http://30771.diarynote.jp/201107160124352351/
http://plaza.rakuten.co.jp/camphorac/diary/201107210000/

◎凄いスケールになって来た。LINEのユーザーが全世界で4億人を突破した。
「3億人の突破は2013年11月25日で、約4カ月で1億人が増加したことになり、今年中に利用者5億人突破を目指す」
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2014040200342
LINEは、例えば雑誌がツリー型なのに対して、リゾーム型というべきなのかもしれない。

◎これも凄い。何しろ日本は世界最速ペースで会員数が増加したという。不倫専門SNS「アシュレイ・マディソン」は100万突破!日本は「官能の帝国」なんだよなあ。
http://exdroid.jp/d/69083/

◎「白泉社e-net!」が1周年を迎えたのを記念して「白泉社電子書籍まるごとプレゼント」を実施している。1024作品2699冊、データ量13万メガバイトにも及ぶ電子書籍が抽選で1名に当たるそうだ。
http://www.hakusensha-e.net/1st_fair.html

◎こういうネタで話題になることは良いことだと思う。集英社女性誌「SPUR」5月号は落合信子のインタビューを掲載している。
http://okmusic.jp/#!/news/35648
そう言えば私は季刊誌「MyAge」について未だ紹介していなかった。もう一つそそられないんですよ。肩に力が入りすぎているのが見えてしまってね。
http://www.advertimes.com/20140402/article153505/

◎これまでインターネットをフィールドとしてきたイードは、インフォレストおよびインフォレストパブリッシングが運営するパズル事業を譲り受け、同事業にて発行している雑誌8誌を4月9日以降、イードより発行することになった。
http://www.iid.co.jp/news/detail/2014/0401.html
イードに出資しているマイナビが発売及び広告営業を引き受ける。博報堂DYメディアパートナーズはイードと資本・業務提携している。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/02/HDYmpnews201402031.pdf

集英社は電子写真集「デジタル週プレBOOK」の配信を始めている。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1404/02/news051.html

◎「サントリー 和膳」のイメージキャラクターは和装と和服が似合うことから薬師丸ひろ子が起用された。昔はセーラー服が似合った薬師丸である。
http://mainichi.jp/sponichi/news/20140403spn00m200019000c.html

真島ヒロFAIRY TAIL」の公式ファンブックとTVアニメのDVDのセットから成る「月刊FAIRY TAIL(仮)」が講談社より創刊されることになった。
http://natalie.mu/comic/news/113575

オーム社は11月1日で創立100年を迎える。これを記念して「読者が選ぶオーム社の100冊プロジェクト」を実施する。
http://www.ohmsha.co.jp/ohmsha100books/
創立は1914年、「OHM」の創刊とともに歴史を刻み始める。
http://www.ohmsha.co.jp/ohmgrp/history.htm

孫崎享が遂に小説を書いてしまった。現代書館から4月10日に刊行される「小説 外務省 尖閣問題の正体」がそうだ。孫崎はノンフィクションよりも、舞台を近未来に設定した小説のほうが大胆に「真実」に迫れると判断したのではないだろうか。外務省の第一線で働き、防衛大学で教鞭をとっていた孫崎ならではの知見にみちた小説であることは間違いない。孫崎は近未来から現在を振り返って次のように書いている。
「この頃から日本は、『正しいこと』を『正しい』と言えない国になってきたのだ。日本の社会は、あちらこちらでギシギシ音を立て、変容してきている。その音は日増しに大きくなっている。一方、『おかしいこと』を『おかしい』と言っても、摩擦が生じ、ギシギシ音がする」
http://www.gendaishokan.co.jp/article/T00050.htm
安倍晋三に謹呈して欲しい一冊だ。

新潟市秋津区のショッピングセンターにある「本の店 英進堂」の諸橋武司社長がインタビューに答えて次のように語っている。
「…この間もうちに来ていた若いカップルのお客さんが、『なんか私この店に慣れていないからよくわからない』と話しているのが聞こえて。つまり、コンビニのようなチェーン店はお客さんにとって使い慣れている店なわけです。どこに何があるかがいつもわかっているような状態。_ある版元営業の方が『某チェーン店の書店に行くとどこも同じだし、同じBGMがかかっているから、一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなるときがある』とおっしゃっていたんですね。でも、それはお客さんにとってはすごく快適なお店だということでもあると思うんです。いつもの場所にいつものものが置いてある」
英進堂は所謂「本好き」を納得させる棚を売りにしていた書店だが、2000年の最盛期に比べ売上が6割強に落ち込むなかで、方向転換を図っているようだ。諸橋の発言は、ある意味で正しい。正しいのだが、簡単便利を売りにする書店であればチェーン書店のチェーンストアオペレーションには適うべくもないのではあるまいか。地場のコンビニがセブンイレブンなどに叩き潰された歴史を繰り返すことになるだけなのではないか。
http://machihon.hatenablog.com/entry/2014/04/02/182703

イオンモール幕張新都心で4歳〜小学生高学年を対象に次のようなイベントが行われている。
「実際の売り場で商品を使ってできる“本屋さん”のお仕事体験です!コミックの袋かけや、レジ打ちを体験できます!体験の参加料は無料♪人気のイベントとなっていますので、お早目にお申し込みください♪」
http://makuharishintoshin-aeonmall.com/news/event/420

◎米アマゾンは動画ストリーミング装置「FireTV」を発表した。価格は99ドル。
「99ドルとの価格設定をめぐっては、ライバル社よりも値段を引き下げなかったことで、一部のアナリストからは失望の声も上がった。だがアマゾンは、他社の製品より性能が高く、操作が簡単と強調している」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJEA3101J20140402

朝日新聞小保方晴子のパロディー記事掲載で物議を醸し出したコラムニスト今井舞のデジタル版での連載「ウソうだん室」を打ち切った。たった三回の連載であった。
http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/251633/

◎米のニュースサイト「The Digital Reader」の記事によれば2013年度の電子書籍売上高は前年比+3.8%の13億ドル(約1,348億円)で、書籍市場全体における売上シェアは27%に上昇した。
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=5379

往来堂書店が「頑張りすぎないでフェア」を開催している。「頑張って生きるのが嫌な人のための本〜ゆるく自由に生きるレッスン〜」(大和書房)の海猫沢めろんが近くに住んでいるのだそうだ。
「店長の笈入建志(おいりけんじ)さん(43)は『この時期、前向きな本はたくさん出るが、そればかりではしんどい人もいる。視点を変えてみることも大切では』と話す」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20140403/CK2014040302000114.html

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5)【深夜の誌人語録】

考えるときは「目次」を作成しながら考える。そうすればアイデアが整理されるものだ。