【文徒】2014年(平成26)4月8日(第2巻64号・通巻266号)

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1)【記事】宝島社の女性誌について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】宝島社の女性誌について

客 宝島社が「大人のおしゃれ手帖」につづいて「オトナミューズ」の創刊を成功させた。
主「大人のおしゃれ手帖」ほどの勢いはなかったけれど、ここ1〜2年の創刊誌のなかでは間違いなく良いよ。「大人のおしゃれ手帖」が成功したのは「家庭画報」などの広告的に成功している先行誌を一切無視したのが良かったんだと思う。読者に幻想を売らずにあくまでリアリズムで迫った内容がウケた思うな。オレなんか不思議で仕方ないんだけれど、「クウネル」を擁しているマガジンハウスが何故に「大人のおしゃれ手帖」のような雑誌を創刊しなかったかだよね。
客「オトナミューズ」はどう評価しているの?
主「オトナミューズ」は梨花という選択だよなあ。芸のない選択ではあるけれど読者からすれば安心できる選択だよね。佐田真由美とか、SHIHOの選択も同じで安心感を醸し出せる。内容的にいえば実用性が乏しいんだけれど、かといって読者をバカにしたような極端な高級志向もない。
客 附録は宝島社お得意のトートバッグだった。
主 これがなかなか考え抜かれている。アロハ柄なんだけれど、色がド派手ではなく柔らかいイエローだった。アロハ柄というと、若い女性っていうイメージになるけれど、色によって「これなら私でも大丈夫」と読者に安心感を与えるんだよ。ここは上手かったよ。
客 宝島社の女性誌って他の出版社の女性誌とどこが違うんだろうか。
主 読者に対して偉そうじゃないんだな。肩肘を張っていないのよ。そこが一番の魅力だ。それとこれは重要なことかもしれないけれど、広告をもっと稼ぐのであれば、もうちょっと違った本づくりになると思うんだけれど、そうはしていない。そんなところも読者に安心感を与えているんじゃないのかな。
客 君は宝島社から一銭ももらっていないのにヤケに評価が高いじゃないか。
主 偉そうじゃないというところは大いに評価している。マガジンハウスから昔出ていた「オリーブ」的な遺伝子を見事に大衆誌として見事に開花させたのだと思う。女性って本当に「かわいい」が好きなんだろうな。ただ宝島社の女性誌が好きか嫌いかと言われれば、実は「嫌い」なんだけどさ。オレが理想とする女性誌からすれば真逆だもの。雌ガールだとかイキリたつ女性誌も嫌いだけどね。いずれにしても、他の女性誌も鎧で身を固めるよりも、もう少し肩の力を抜いたらどうなんだろう。肩に力を入れているから偉そうってことになるわけよ。

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2)【本日の一行情報】

◎これが日本を代表する広告代理店なのかと首を傾げてしまう博報堂フェイスブック。ともかく何もない!昨日、私は次のように書き込んでおいた。
「御社の寺島二郎なる人物からいきなり電話をもらった。先週は出張に行っていてどうのこうのと電話で切りだしたが、会ったこともない人物が初めて電話する相手に言う言葉だろうか。初めて電話をおかけする博報堂の寺島二郎と申しますと、そういう電話をするのがビジネスマンとしての基本ではないだろうか。一体、博報堂はどういう社員教育をしているのだろうか」
削除されていなければ残っているはずだ。
https://www.facebook.com/HakuhodoDesign?fref=ts

アメリカの電子書籍ブームは終わったと大原ケイ。
「しかも一般書でいうと、2012年は前年比で33.4%の成長率だったのに、2013年は3.8%。でもまぁ、この数字にはウラがあって、出版社から出ているEブックはもはや急成長していないけれど、著者がセルフパブリシングで出しているEブックにかなりの読者が流れた
ということでしょう。ただし、こちらは刊行点数が増えても、数ドルという値段設定のため、Eブックを出せば誰もがウホウホと儲かるものではなく、ISBN番号もついていないので、一体どれだけの数が出ているのかも掴みきれません」
次のような指摘は耳の痛いところだ。
「その一方でアメリカの小さな本屋さんは、これまでEブック以外の敵と戦い抜いてきているので、残っているところは足腰が強いし、数も差し引きで少しずつ増えているぐらいです。しかも『アマゾンは敵』と理解していて、同じ土俵で戦おうとはこれっぽっちも考えていません。むしろアマゾンにできないことを常に実行してサバイバルの道を模索しています。自動配本で取次から送られてくる本を並べて『売れないなぁ』などと悠長なことを言っている本屋は1軒もないのですから」
http://oharakay.com/archives/3475

◎アマゾンが英語のできる編集者を募集している。ちなみに「ハーパース・バザー日本版」編集長だった秋山都はアマゾンに入って「Amazon Woman」を立ち上げている。年俸は500〜600万円だそうだ。ということは大手からの人材流出はあるまい。
http://next.rikunabi.com/rnc/docs/cf_s01800.jsp?list_disp_no=1&fr=cp_s01810&rqmt_id=0010708205&corp_cd=1886534&cntct_pnt_cd=023

◎イラン人の暴力団会長が存在する時代なのだと妙に感心してしまった。「大衆」「アサ芸」「実話」はどのように記事を書くのか今から楽しみである。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140404/crm14040421100012-n1.htm

SNS疲れが社会に蔓延しているらしい。「寝る前スマホ」という言い方があるようだ。
フェイスブックに限らず、多くのSNSを利用しているユーザーが、その使い方を誤ってしまうと、今後、SNSが原因でうつを発症する人が増加する可能性もあるだろう。厚生労働省は、睡眠に関しての指針で『寝る前スマホ』に警鐘を唱え、その見直しを行う方針を発表している」
http://economic.jp/?p=33318

◎野に下ってから言論に迫力が出て来た植草一秀が孫崎亭の「小説 外務省」(現代書館)を絶賛している。「さわやかな純愛小説」だとも!
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-ba99.html
大手出版社は「小説」であることにビビッて刊行を断ったという噂も流れている。

◎神戸市が昨年9月に閉店となった「海文堂書店」の復活を検討し始めた。
「方策としては、市民や企業に協力を呼び掛けてファンド(基金)を創設し、融資する▽市が新たな担い手に立地場所を提供したり、賃料を財政支援したりする‐などが考えられるという」
http://www.kobe-np.co.jp/news/bunka/201404/0006837871.shtml
無くなってからわかる書店のありがたさ、か。

◎「町には本屋さんが必要です会議」が6月13日午後7時半より妙蓮寺の石堂書店で開催される。石堂智之(石堂書店)・比嘉栄(三省堂書店新横浜店)・笈入建志(往来堂書店)が出演し、司会は夏葉社の島田潤一郎がつとめる。
http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/blog-entry-2243.html

小学館の「AD Pocket」より。
「広告局からのダイレクトな『生』の情報発信を始めました! AD news 第5弾をお届けします!」
Oggi」と丸の内商店街のコラボ企画を紹介している。
http://adpocket.shogakukan.co.jp/news_detail.html?1298
できれば週に一回のペースで情報発信してもらいたいものである。

◎インターネットには架空の「ル・アイド芸能社」なる芸能事務所が存在し、ウエブサイト「バクステ」を運営している。
「100名以上の『アイドルキャスト』が在籍しており、お客様には弊社のプロデューサーとなって、お気に入りのキャストを応援・育成・プロデュース(推し≒投票)して頂きたいのです!プロデューサー様の推しはランキングとして集計され、ランキング上位者にはアイドルとしてより多くのチャンスが与えられます」
東雲由姫は小学館の「ベビーブック」Web CMでナレーションをつとめているそうだ。
http://backst.jp/news/201404/479/

◎第45回講談社出版文化賞が次の通り決まった。
▽さしえ賞=岡田航也「啓火心」(日明恩作、「小説推理」)、「死んでたまるか」(伊東潤作、「小説新潮」)▽写真賞=半田也寸志「IRON STILLS――アメリカ、鉄の遺構」(ADP)▽ブックデザイン賞=名久井直子愛の夢とか」(川上未映子作、講談社)ほか▽絵本賞=ミロコマチコ「てつぞうはね」(ブロンズ新社
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20140404-OYT1T50179.html

◎私などは「善き書店員」というタイトルでメゲてしまうクチだ。
「6人のお話は、つかえることもなく読めたのだが、書店員さんの話を聞いた木村俊介さんの文章が最後に何ページかあって、そこの文章が私には正直読みにくかった。6人のお話をまとめたところはよかったのになーと思った」
http://we23randoku.blog.fc2.com/blog-entry-4863.html

◎ネット発のアニメが増えてきている。投稿サイト発といっても良いだろう。アニメ評論家の多根清史は次のように書いている。
「そしてネットは書籍におけるアンケートや、“編集者”の立場も兼ねている。小説投稿サイトの人気ランキングや読者の反応は『どのような作品が望まれているか』という生の情報を作者に与える。もちろん弱点もあり、特定のジャンルに偏る傾向もあるが、厳しい競争原理がクオリティーを磨き上げる面もある」
http://mantan-web.jp/2014/04/06/20140404dog00m200026000c.html
私の言葉を使うのであればインターネットによって編集力が大衆に解放されつつあるのだ。

◎「Marisol」(集英社)で活躍するスタイリストの菊池京子が自身の私物で4月1日から9月30日まで183日分のコーディネイトを紹介する「K.K closet スタイリスト菊池京子の365日 Spring‐Summer」(集英社)を刊行した。
http://kirei.mainichi.jp/kireinews/news/20140405dog00m100062000c.html
実は、これもネット発の本なのである。菊池が2年前から始めたウエブサイト「K.K closet」がベースになっているのである。
http://kk-closet.com/cordinate/

在特会在日特権を許さない市民の会)の八木康洋副会長が勤務先の日立化成から懲戒処分を受けたそうだ。
http://togetter.com/li/651918

◎第8回大江健三郎賞岩城けいさようなら、オレンジ」(筑摩書房)に決定。芥川賞では落選したけれど、本人からすれば、こっちの賞のほうが嬉しいかもしれない。芥川賞の選考では高樹のぶ子が絶賛していた。二重丸は高樹のほかに小川洋子宮本輝と候補作のなかでは最多だったが、否定派が最も多かったのも、この作品であった。否定派からすれば複雑な構造なのに普通の感動作じゃんということなのだろう。恐らく大江はそこを評価したに違いない。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014040700018
大江健三郎賞は今回で終了する。岩城は最後の受賞者となる。オレ、大江健三郎の小説は「万延元年のフットボール」以前の作品しか好きじゃなかったんだけれど、この賞は信頼している文学賞の一つだった。高齢が原因なので致し方あるまい。…2年後くらいに村上春樹賞が実現すれば面白いんだけどね、村上が一人で選んで、翻訳されるというカタチを踏襲して。そういう「精神のリレー」はあり得ないのかな。

◎グーグル歴史アーカイブで「手塚治虫コレクション」が公開された。
http://www.google.com/culturalinstitute/home?hl=ja&gclid=CMzrhvrCz70CFVgSvQodIDEAxQ#!browse:f.text=%E6%89%8B%E5%A1%9A%E6%B2%BB%E8%99%AB&hl=ja

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3)【深夜の誌人語録】

頭も腰は低ければ低いほど良いが、志は高ければ高いほど良い。