【文徒】2014年(平成26)5月15日(第2巻88号・通巻290号)

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1)【記事】黒船オーバードライブがメディアドゥと組んで日本上陸の衝撃
2)【記事】KADOKAWAとドワンゴ経営統合
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】黒船オーバードライブがメディアドゥと組んで日本上陸の衝撃

メディアドゥがオーバードライブと資本・業務提携することになった。オーバードライブは世界最大の電子図書館プラットフォームである。オーバードライブが日本の出版業界にとって「黒船」なのは間違いあるまい。オーバードライブが単独で乗り込んできたならば、それこそ「攘夷」の対象となり、日本のマーケットで思うような活動はできなくなる可能性が高い。そういう意味でメディアドゥと組んだのは正しい選択である。
一方、電子取次として頭角を現してきたメディアドゥにとって、電子図書館ビジネスをメニューに加えることで更なる成長を期待できる。
「今回の業務提携によって、国内にある公共図書館約3,200館、大学図書館約1,400館(出所:「日本の図書館ー統計と名簿」)、学校図書館約25,000館(平成25年文部科学省)に向けた電子図書館サービスの提供、さらに米国で普及しつつある企業図書館など新しい業態も含めたサービスを展開していくとともに、双方が持つ電子書籍を中心とした膨大なデジタルコンテンツを連携することによって、ボーダレスなコンテンツ流通を実現していくことを狙っております」
オーバードライブは5,000以上の出版社や著作者からの100万以上のデジタルコンテンツ(電子書籍、オーディオブック、音楽、ビデオなど)を、世界36ヶ国で28,000館の図書館、学校、および大学に向けて提供している。
http://www.mediado.jp/corporate/1040/
https://www.overdrive.com/
昨年、東京国際ブックフェア紀伊國屋書店の高井昌史社長が次のように語っていたことが思い出される。
アメリカで図書館の95%を押さえているオーバードライブが日本に上陸しては困る。紀伊國屋書店電子書籍で負けているが、大学図書館や法人向けでも敗北すると、出版業界を守れない」
紀伊國屋書店電子書籍につづき、大学図書館や法人向けで敗北することが、どうして出版業界を守れないことになるのか?私には到底理解しがたいことである。日本の民衆は紀伊國屋書店が倒産しても少しも困らない。
確かにアメリカでもオーバードライブに対する出版社の対応はわかれている。例えばマクミランやサイモン&シュースターは図書館での電子書籍の貸し出しを許可していない。一方、ランダムハウスは総ての貸し出しを許可しているが、図書館に納入する電子書籍の価格を大幅に値上げしている。ハーパーコリンズの場合は一冊の電子書籍に対して図書館が貸し出せる回数を26回までに制限している(これを超えると再び購入しないと貸し出せない)。
http://www.dotbook.jp/magazine-k/2012/11/21/ebook_business_models_for_public_libraries/
次のような「まとめサイト」には一度、目を通しておくべきだろう。
http://fx2ch.blog.jp/archives/4654570.html

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2)【記事】KADOKAWAとドワンゴ経営統合

ADOKAWAとドワンゴは、KADOKAWAがドワンゴ株の12・23%を、ドワンゴはKADOKAWA株の2・49%を持つという形で2011年に資本提携していたが、この関係を更に深めるべく経営統合することになった。
「KADOKAWAの優れたコンテンツ編集力を活かし、ドワンゴのプラットフォーム上でUser Generated Contentとして創出される多様なコンテンツをプレミアム化し、メディアミックスを含めたKADOKAWAの販売・流通施策を通じて、KADOKAWAにおけるコンテンツ販売事業を最大化いたします。
魅力あるKADOKAWAのコンテンツとドワンゴの最先端のネットプラットフォームを融合させた新たなビジネスモデルのもとにプラットフォームを強化し、ドワンゴのプラットフォームの更なるユーザー数の増加・広告収入の増加という好循環を生み出します。
また、KADOKAWAの情報取材・編集力とドワンゴのネットプラットフォームにおける情報展開力を活かし、他のマスメディアを補完するネット時代の新しいメディアを構築いたします。
海外においては、既にKADOKAWAが展開している現地拠点やその運営ノウハウと、ドワンゴのネットプラットフォーム等を活用し、新たなビジネスモデルを検討してまいります」
http://cdn.kdkw.jp/release/20140514_adais.pdf
ADOKAWAとドワンゴの完全親会社であるKADOKAWA・DWANGOを発足させての経営統合である。KADOKAWAが「長銀」出身の松原眞樹を社長に据えたのは、この経営統合を見据えてのことであったことは、KADOKAWA・DWANGOの体制を見れば一目瞭然とする。代表取締役会長はドワンゴ川上量生だが、代表取締役社長は松原ではなく、前社長の佐藤辰男が就任する。

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3)【本日の一行情報】

◎京都のFIELDはグラフィックデザインの会社だが、同社が運営する中京区の「FIELD LAB」では「金曜・土曜・日曜・祝日に、公募で集まった約80点の写真を使ったzineやリトルプレスを展示・販売している」そうだ。そんなFIELDが京都市内の書店に呼びかけ、ブックフェア「KYOTO PHOTO BOOK MARKET」を開催している。京都は本当に書店の似合う街だ。
京都市内の6つの書店がテーマを設けて棚を展開。大垣書店四条店(中京区)と三条烏丸店が参加。それぞれ『美しき風景』『年代別日本の写真家』をテーマにしている。ふたば書房 FUTABA+京都マルイ店、YUYブックス(以上、下京区)、ガケ書房やPrinz(以上、左京区)なども参加。同ラボ副所長の河相勝太郎さんは『書店で写真集を手に取る機会は少ないのでは。店ごとに並ぶ本の個性が違うので本屋巡りも楽しんでいただけるはず』とも」
http://karasuma.keizai.biz/headline/2077/

◎「VERY」の今尾朝子編集長は産休に入ったそうである。
http://www.asahi.com/msta/articles/ASG4Q3RZYG4QUEHF008.html

◎あんたの頭は幼稚園児だったりして!
http://news.line.me/issue/business/c1ce0d03bb66

茂木健一郎の「美味しんぼ」についての連続ツイート。
「…一部の政治家が、今回の『美味しんぼ』の表現を問題視し、対応策をとるなどと発言していると伝えられていること。そもそも、いわゆる政治家は立法府の議員であり、法律をつくることがその職能である。ところが、日本では、「政治家」という呼称が一人歩きし、あたかも村社会の実力者、ボス階級と本人も勘違いする事例が後を絶たない。立法府の構成員として、心を砕くべきは福島の復興支援のための立法措置であり、一つの漫画がどのような表現をしたかということをあたかも魔女狩りのようにわめきたてることではないと私は考える」
http://togetter.com/li/666687

◎「マンガボックス」のダウンロード数が400万を突破。
http://ascii.jp/elem/000/000/893/893000/

◎いよいよアメリカで始まった。テレビからウェブへの広告費のシフト! ウォール・ストリート・ジャーナルは、こう書く。
「広告代理店大手スターコム・メディアベストは、過去1年間にテレビ向けの広告費を5億ドル(約510億円)超削減し、そのうちの4分の3をオンライン媒体に振り向けたと発言」
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303352004579558861348434076?tesla=y&tesla=y&mg=reno64-wsj

電通平成26年3月期連結決算は、国内、海外とも好調で売上高・売上総利益・経常利益は過去最高を記録した。具体的に言うと売上高 2兆3,093億円(前期比19.0%増)、売上総利益 5,940億円(同71.7%増)、のれん等償却前営業利益 1,141億円(同81.7%増)、営業利益 714億円(同22.3%増)、経常利益 825億円(同39.8%増)、当期純利益388億円(同6.8%増)。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/0513-003728.html
グローバル電通として第一歩を踏み出した記念すべき決算ということになるのだろう。

◎いよいよワールドカップが開催されるが、ブラジルの「美しすぎるサッカー女性審判」が話題になっている。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/05/13/soccer_n_5313883.html#gunosy

◎マガジンハウスの「relax」は好きな雑誌だった。編集長の名は岡本仁。現在はランドスケーププロダクツに籍を置いている。次のような発言はなかなか含蓄がある。
「最初から目標に向かって全力で泳ぐと体力を消耗するし、下手をすると泳ぎ切るだけの力を途中で使い切って、激流に飲まれてしまうかもしれない。とにかく今の流れがこっちなら、それに逆らわずに乗って行く。その方が無駄に力を使わなくて済む。流れに乗って浮かんでいる間に、いい感じの島が見えてきたら、その時にちょっとだけ泳ぐ。『ここだ!』と思った時の瞬発力と、その見極めだけを間違えなければ、大丈夫だと思います」
http://greenz.jp/2014/05/14/hitoshi_okamoto/
岡本の「ポパイ」を一度見てみたかった。

◎これは当たると思う。料理家の星谷菜々がマンガに登場する料理をレシピ化した「マンガレシピ」を講談社が刊行。
http://natalie.mu/comic/news/116524

◎グリーの2014年1〜3月は売上高が前年同期比68%減の310億7000万円、営業利益は前年同期比9%減の99億5000万円。DeNAは売上高が24%減の398億円、営業利益は47%減の97億円。両社ともスマホにシフトしきれていないことが低迷の理由だ。
http://itnp.net/story/764

◎緊デジ問題。朝日新聞も取り上げた。
「JPOは7日、各出版社に20日までに内容を再確認するよう求めた。補助金の返還も視野に入れている」
http://www.asahi.com/articles/ASG4X5QFVG4XUCVL020.html?iref=comtop_list_cul_f01
私は出版デジタル機構も経営陣を刷新すべきだと思っている。植村八潮取締役会長は退任し、野副正行代表取締役が取締役会長としたうえで、出版にも、デジタルにも明るい人材を代表取締役社長に迎えるべきだ。

NHKが報じていた平川秀幸大阪大学)のコメントが、平川の見解を正式に反映していないとして修整された。
http://yunishio.blogspot.jp/2014/05/Prof-Hideyuki-Hirakawas-comment-corrected-in-NHK-News.html

東京新聞は「美味しんぼ」について社説「美味しんぼ批判 行き過ぎはどちらだ」を掲げた。
「登場人物が事故と被害をどう見ていくのか。作品を通じ、作者は社会に訴えようと試みる。行き過ぎはないか。もちろん、過剰な反応も」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014051402000163.html
朝日新聞も社説で取り上げた。こちらのタイトルは「美味しんぼ『是非』争うより学ぼう」。
「ひとつの作品を取り上げて過剰に反応したり、大学の学長が教職員の言動を制限するような発言をしたりすることには、賛成できない」
http://www.asahi.com/articles/DA3S11133529.html?ref=editorial_backnumber

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4)【深夜の誌人語録】

いつかできると思ったら、いつかは永遠に訪れまい。できると思ったら、行動を開始することだ。