【文徒】2014年(平成26)5月16日(第2巻89号・通巻291号)

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1)【記事】電通 出版ビジネス・プロデュース局の組織改編
2)【記事】私はKADOKAWAとドワンゴ経営統合をこう考える
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.5.16 Shuppanjin

1)【記事】電通 出版ビジネス・プロデュース局の組織改編

電通の出版ビジネス・プロデュース局が6月1日付で組織改編を行うことになった。簡単に言ってしまうと11部体制から8部体制に移行する。業務統括部、制作推進部、ビジネス・プロデュース3部、ビジネス・プロデュース4部、ビジネス・プロデュース5部が発展的に解消されるとともに、新たに業務マネジメント部、ビジネス・プロデュース推進部が新設され、コンテンツビジネス推進部はビジネス開発部に改称する。
今回の改編で、まず押さえておくべきはビジネス・プロデュース推進部を新設したこととビジネス・プロデュース1部〜5部及び営業推進部を再編し、3部制に移行することであろう。
ビジネス・プロデュース推進部は現在の業務統括部が担ってきた「MCプランニング局ハブ機能」「収益拡大戦略策定機能」「業推機能」「デジタル広告推進機能」が移管されるl
が、最大のポイントは業種別プランニング機能を持つことだ。「情報通信」「食品・飲料」「家電」「IT」などに特化し、広告主に対して最適な提案活動を展開し、生活情報誌、モノ誌、男性誌などの編集情報を集約して営業局やCRP局、広告主にダイレクトにアプローチするという。そこで、それほど大きな規模の企画でなくとも、あるいは出版ならではの企画をしっかりと提案できるかどうかである。
ビジネス・プロデュース部は3部制となる。現在の1部、2部、3部が担当している出版社はビジネス・プロデュース1部が担当する。ビジネス・プロデュース2部は現在、ビジネス・プロデュース4部、5部で担当している出版社のメディアコンテンツ業務に特化する。営業推進部は現4部、5部で担当している出版社のアカウント業務(=出版営業)に特化する。
ビジネス開発部はコンテンツビジネス推進部の機能を特化させるとともにイベントプロデュースのノウハウを活用し、「出版社周辺のイベント業務の取り組みを強化することになる。
新設された業務マネジメント部は現在の計画推進部の台帳登録、デジタル送稿、設定、配本、名簿チェックなど局員の営業活動のサポート機能を担う。

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2)【記事】私はKADOKAWAとドワンゴ経営統合をこう考える

私からするとKADOKAWAとドワンゴ経営統合にかかわる報道は、どれもピンと来ない。周知のようにKADOKAWAは次々に出版社をM&Aで買収することで成長してきた企業である。成長戦略をM&Aによって描いてきたと言って良いだろう。具体的にいえば、角川書店メディアワークス富士見書房、SSC、エンターブレインアスキー中央経済社メディアファクトリーといった出版社がひとつの資本の下に結集したわけだが、もともとの単位で見ていったならば、大きく成長した出版社があるかといえば、ない、のである。
出版マーケットを考えれば、今後は出版社を買収することで株主を納得させるだけの数字を弾き出せることはできない段階を迎えていたと言って良いだろう。しかも、映画関連のビジネスは重荷になりつつあった。そこでホールディングカンパニー体制にあった企業群を結集するとともに贅肉を削ぎ落とし、次なる買収の準備に入る必要があった。昨年、ホールディングカンパニー体制を解消し、KADOKAWAのもと結集を図ったのは、ドワンゴ経営統合するための第一歩であったのである。KADOKAWAに結集するとともにドワンゴ資本提携したわけだが、この資本提携は結婚を前提にしてのお見合いであったのである。
これは断言しても良いと思うが、コンテンツに長けたKADOKAWAとプラットフォームに長けたドワンゴがひとつになったからといって、それほど大きなシナジーを望めるわけではあるまい。KADOKAWA・DWANGOが成立した段階で、新たなM&Aなり、経営統合が模索されることは間違いあるまい。私がもしKADOKAWA・DWANGOの関係者であれば、次のテーマはグローバル化に耐えられる「拡大」を考えるだろう。具体的に言うのであれば狙いはLINEである。
http://mainichi.jp/select/news/20140515k0000m020053000c.html

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3)【本日の一行情報】

セガのウエブサイトも不正アクセスされ、閲覧を停止している。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140513/556294/

NTTドコモは、「dマーケット」の新たなサービスとして、電子雑誌70誌以上の月額400円での定額読み放題サービス「dマガジン」を、2014年6月以降に提供開始する。
どんな雑誌が読めるのかと言えば「ホットドッグプレス」「Hanako」「週刊女性」「ル・ボラン」「LEON」「オレンジページ」「週刊朝日」「アエラ」「レタスクラブ」「〜ウォーカー」「おとなの週末」「Huge」「エルジャポン」「mina」「SCawaii!」「ダイム」「ビーパル」「CanCam」「AneCan」「Oggi」「Domani」「美的」「家庭画報」「Gegin」「週刊東洋経済」「プレジデント」など。
ホットドッグプレス」が40代をターゲットに10年振りに電子雑誌として復活を遂げる。
光文社、宝島社、集英社からは1誌もノミネートがない。
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2014/05/14_02.html
http://news.nicovideo.jp/watch/nw1067744

◎「英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄」(祥伝社新書)の虚妄を共同通信が報道し、これに対して祥伝社は「著者の見解」共同通信記事の虚妄を指摘した一件についての日本報道検証機構の見解。
共同通信の記事のうち、ストークス氏が『大虐殺』より『事件』という表現が的確だとの見解を示したとの部分や『南京で何か非常に恐ろしい事件が起きたかと問われれば、答えはイエスだ』と述べたとの部分は、間違いではなかったと考えられる」
http://blogos.com/article/86301/
極東ブログ」も、この問題に触れている。
共同通信のベン・ドゥーリー氏と木村一浩氏、翻訳の藤田裕行氏、著者のヘンリー・ストーク氏、およびアンジェラ・エリカ・クボ氏を交えた公開のパネル・セッションがあれば経緯はより明らかになるだろう。共同通信が提案してもよいのではないだろうか」
クボというのはストークに対するインタビューの録音テープを文書化する作業にあたっていたが、「南京大虐殺従軍慰安婦に関するストークス氏の発言が『文脈と異なる形で引用され故意に無視された』として辞職した」人物である。
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2014/05/post-cf11.html
かつて集英社新書を率いた鈴木耕のブログも読んでおいて良かろう。鈴木は祥伝社が「著者の見解」をホームページで公表したことは知らないらしいが、次のような指摘は当たっている。
「…現在では『新書』は『安価な単行本』に堕した。安く上げるためには、校正・校閲を重視しない。時間も人材も費用もかけない新書づくりが横行している。悲しいかな、それが現実なのだ」
http://www.magazine9.jp/article/osanpo/12539/

電通イージス・ネットワークは、カザフスタンの広告会社グループ「Fifty Four Media LLP」の株式51%の取得と、今後段階的にシェアを拡大して完全子会社化するオプションを有することで同社株主と合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/0514-003731.html

楽天も図書館ビジネスに乗り出した。図書館の周辺が熱くなるぞ。
岐阜県楽天は、教育分野において両者による初の官民共同事業となる車両型移動図書館楽天いどうとしょかん』の運行を5月14日より岐阜県内で開始した」
「『楽天いどうとしょかん』には、岐阜県より提供される書籍を搭載します。搭載書籍は岐阜県図書館が読書活動支援を目的に選定した絵本を中心とする児童書約7,000冊から、1,200冊を選別しています。また、貸出用に楽天が提供する電子ブックリーダー『kobo Touch』20台、閲覧用に7インチのタブレットKobo Arc 7』10台も搭載します」
http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2014/0513_01.html

文藝春秋の「Number」はワールドカップ期間中、週刊誌に変身する。6月5日発売号で「W杯カウントダウン特集」を組み、日本代表の旅立ち前のすべてを取材。その後、6月18日発売号ではコートジボーワル戦を、23日発売号ではギリシャ戦を、7月2日発売号ではコロンビア戦を、そして8日発売号ではベスト8を詳報、17日発売号では決勝速報、24日発売の「Number PLUS」では総集編を掲載するという。日本代表の成績次第で飛ぶように売れるだろうな。
http://number.bunshun.jp/

◎「エロスの記憶 文藝春秋オール讀物』官能的コレクション2014」は電子版で買うことにしよう。紙版が880円なのに対し電子版は556円。岸恵子「わりなき恋、その愛と性」、フィリップ・トルシエ「工場の機械のような日本のセックス」に注目している。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1405/14/news077.html

熊本県は「くまモン」を連れて集英社に抗議に行った!
「4月28日発売の『週刊少年ジャンプ』(集英社)に掲載された漫画に『くまモン』のイラストが無断で描かれたとして、熊本県が同社に抗議したことが分かった」
「県職員が気付いて13日にくまモンとともに同社を訪れ、編集者に抗議した上で経緯の説明を求めた。同社は後日、正式な回答をするという」
http://mainichi.jp/select/news/20140515k0000m040089000c.html
抗議とパブリシティを両立させてしまうところが凄い。
https://twitter.com/55_kumamon
熊本県集英社の広報にセンスがあったのだろう。

◎「美味しんぼ」に関しては朝毎読と全国紙が総て社説を掲げた。一番、わかりにくかったのが毎日新聞の「美味しんぼ『鼻血』に疑問あるが」だった。ちょっと引用のしようがない…。
http://mainichi.jp/opinion/news/20140515k0000m070146000c.html
讀賣新聞は「『美味しんぼ』 風評助長する非科学的な描写」。
表現の自由は最大限尊重されるべきだが、作者や出版社には、内容についての責任が伴うことを忘れてはならない」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140513-OYT1T50009.html

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4)【深夜の誌人語録】

変わるときは小さくではなく、大きく変わらなければ時代に取り残されるだけである。