【文徒】2014年(平成26)6月3日(第2巻101号・通巻303号)

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1)【記事】2014年上半期ベストセラーの憂鬱
2)【記事】インターネットは何を解放しようとしているのか!?
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】2014年上半期ベストセラーの憂鬱

トーハンの2014年上半期ベストセラーが発表された。総合で第1位を獲得したのは「長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい」(アスコム)、第2位「人生はニャンとかなる!明日に幸福をまねく68の方法」(文響社)、第3位「村上海賊の娘」(和田竜 新潮社)、第4位「ポケットモンスターX・Y公式ガイドブック 完全カロス図鑑完成ガイド」(オーバーラップ)、第5位「まんがでわかる7つの習慣」(宝島社)、第6位「忍耐の法『常識』を逆転させるために」(幸福の科学出版)、第7位「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(KADOKAWA)、第8位「女のいない男たち」(村上春樹 文藝春秋)、第9位「ポケットモンスターX・Y公式ガイドブック 完全ストーリー攻略ガイド」(オーバーラップ)、第10位「アナと雪の女王(デイズニーアニメ小説版)」(偕成社)。
http://www.tohan.jp/cat2/m6/2014_1/
日販のベストセラーも殆ど同じ顔ぶれ。
http://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2014/06/cea78ab75e3bb5551ebc0757d660d92f.pdf
「長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい」が93万部、「人生はニャンとかなる!明日に幸福をまねく68の方法」が70万部というけれど、取次発表のベストセラーのランキングを見ていて、いつも思うのは、10年後に忘れられてしまうような内容の本が売れるということである。売れたからといって、必ずしも「良い本」ではないんだよなあ。皮肉でも何でもない。事実である。それぞれ20位までにランキングされていて買った本は一冊もなかった。和田と村上は文庫になってから買うつもりである。「呆韓論」は知り合いに借りて読んだ。私からすれば毎度のことながら、ベストセラーなんざ、そんな程度のものである。

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2)【記事】インターネットは何を解放しようとしているのか!?

「ハフィントンポスト」にアップされた「『ググレカス』が世界を変える/ネットのコンテンツは『紙と放送の時代』と何が違うか」は、次のような重要な指摘をしている。
「ネット前夜の『紙と放送の時代』には、コンテンツに消費者の知らない情報を含められなかった。たとえば大衆向けの新聞記事に専門用語は使えなかったし、テレビで進化論やマクロ経済のような『概念』を伝えるときは、ごく簡単な一部分しか伝えられなかった。
しかし、現在は違う。
コンテンツに含められないのは検索で調べられない情報だ。逆に言えば、検索でかんたんに分かるなら、たとえ消費者の知らない情報でもコンテンツに含められるようになった」
インターネットは「情報0円」を実現することで「情報」を経済的に解放するだけではないというわけだ。「検索」によって「情報」をいわば下部構造として支える「知」までも解放してしまうのである。インターネットは「情報」と「知」を水平軸に再編する力学に支えられているということだ。
http://www.huffingtonpost.jp/rootport/google_b_5416120.html

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3)【本日の一行情報】

◎昨日の一行情報の訂正から。富山新聞北国新聞の間違い。正しく書くとこうなる。92歳の水木しげる泉鏡花の世界をマンガ化する。北国新聞小学館の企画だ。
http://www.hokkoku.co.jp/subpage/H20140531102.htm

◎イギリスの映画雑誌「エンパイア」が映画ファンの投票によって史上最高の映画を選出。
第1位「スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲」、第2位「ゴッドファーザー」、第3位「ダークナイト」、第4位「ショーシャンクの空に」、第5位「パルプ・フィクション」、第6位「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」、7位「ロード・オブ・ザ・リング」、8位「ジョーズ」、9位「レイダース 失われたアーク(聖櫃)」、10位「インセプション」。
http://news.walkerplus.com/article/47215/
私も10本をあげておこう。
第1位「地獄の黙示録」、第2位「地獄に堕ちた勇者ども」、第3位「愛の嵐」、第4位「地獄の逃避行」、第5位「ガルシアの首」、第6位「時計じかけのオレンジ」、第7位「天国の門」、第8位「ヘカテ」、第9位「ロンググッドバイ」、第10位「許されざる者」。

産経新聞の赤地真志帆政治部次長(44)が六本木でタクシーを蹴ってドアをへこませ、器物損壊の疑いで現行犯逮捕された。酔った勢いって恐いんだよね。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140531-OYT1T50076.html?from=ytop_main8
読売テレビの営業企画開発部に所属する松下泰紀チーフプロデューサーは酒気帯び運転で現行犯逮捕。
http://mainichi.jp/select/news/20140601k0000m040049000c.html

新日本プロレスで「世界一小ズルい男」の異名を持つタイチが不倫相手の女性から、二人が抱き合っている写真やLINEでのやり取りを晒されてしまったそうだ。こんな具合に。
http://ronsoku.com/archives/54841386.html

◎大一商会のパチンコ新機種「パチンコCR風雲維新ダイショーグン」はKADOKAWAのアニメとコラボしている。過去の作品ではなく、現在、放映されている深夜枠アニメとコラボしているところがミソだ。
http://img.d777.jp/machine/pachinko/daishogun/

ゼンショーの小川賢太朗社長の過去が暴露されている。
日経ビジネスに掲載された2010年のインタビュー記事によると、小川氏は1968年に東京大学に入学。当時の日本は急速に経済発展を果たす一方で、労働災害が増え、現場で働く人が『高度成長期の犠牲』になっていた。
こうした状況を打破するため、小川氏は東大で『全共闘』に参加し、資本主義の矛盾を解決するべく社会主義革命を目指していたという」
http://blogos.com/article/87520/
私はかつて「毛沢東に学ぶ勝利のビジネス方程式」において、ゼンショーの経営が毛沢東主義と極めて親和性が高いことを指摘している。女性の文体でデッチ上げ、一週間で書いちゃった一冊なんですよね。興味ある方は是非!電子版もあります。
http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784864084239

◎「読書権」を考えるセミナーがNPO法人大活字文化普及協会の主催で開催された。この協会の理事長は小学館の相賀昌宏社長である。「読書権」とは誰でも不自由なく読書できる権利のことである。1970年に視聴覚障害者によって提唱されたのが始まりだそうだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20140601/CK2014060102000104.html

◎「死の淵を見た男―吉田昌郎福島第一原発の五〇〇日」の門田隆将が「BLOGOS」で朝日新聞の吉田調書スクープは誤報であると断言している。
「私は、吉田氏に直接取材した人間として、さらには100名近い関係者から実名証言を得た人間として、朝日新聞が『所長命令に違反』して9割の人間が『撤退した』と書いているのは『誤報』である、ということを言わせていただきたい」
http://blogos.com/article/87529/

赤坂真理講談社現代新書「愛と暴力の戦後とその後」。私も「憲法」の「憲」の意味を知らなかった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39356
赤坂真理鶴見俊輔の正統的な後継者であることが痛いほどわかる一冊である。

◎「SFマガジン」7月号は「創刊700号記念特大号」であったが、早くも品切れとなった。私は別にSFファンではないのだが、こういう話を聞くと嬉しくなる。
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/721407.html

◎「塩レモン」ブームなのだそうだ。
「5月13日に池田書店から発売された『おいしい新調味料 塩レモン・塩ゆずレシピ』は、発売直後たちまち3刷が決定したそう」
http://news.livedoor.com/article/detail/8890304/

リクルートの上場の目的は海外でM&Aを加速させるための資金調達だけではなくIT技術の強化にあるという「週刊ダイヤモンド」の大坪雅子の指摘は正しい。
http://diamond.jp/articles/-/53841

◎確かに「書き下ろし時代小説の巨星」であることに間違いはあるまい。書店に行けば出版社別で文庫は並べられているのが普通だが、佐伯泰英の場合は、「佐伯泰英コーナー」が設けられている。刊行点数は200点目前というが、新シリーズ「新・酔いどれ小藤次」が8月6日から文春文庫に登場する。
http://hon.bunshun.jp/sp/kotouji

◎長崎書店のフリーペーパー「ナガショ通信」6月号が完成。
http://nagasakishoten.otemo-yan.net/e848439.html

◎KADOKAWAは、コミックスフェア「角★コミ 2014 夏」を2014年6〜8月の3カ月間、全国の書店で開催する。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20140602_kc2fa.pdf

武田徹の「暴力的風景論」(新潮選書)は、松田政男の「風景の死滅」(田畑書店 今年になって航思社から復刊された)以来の風景論である。
権力そのものである「風景」を切り裂くために弾丸を発射したのが「略称 連続射殺魔」永山則夫だったと松田は「風景の死滅」で主張したが、武田からすれば、その「風景」はすぐに弥縫されたばかりか、結局、永山自身も「風景」を操る権力によって死刑に処せられてしまったではないかということになる。
目の前にある「風景」は個人の暴力などいとも簡単に回収してしまうのである。秋葉原連続殺傷事件で加藤智大が切り裂いた「風景」もあっという間に弥縫されてしまった。永山から加藤に至るまで日本という「風景」は何も変わっていないのである。
そうであれば「風景」の共同幻想性、権力性を意識し、そのヴェールを剥ぎ取り、社会の実相を見定め(露呈させ…とここまでがジャーナリズムの仕事である)、それを改革するという「風景の政治」の、取り敢えずの実践が求められているのだと、武田の辿り着いた結論であろう。恐らく武田は「風景」が死滅する夢を禁じているのである、ロマンティシズムに流されないために。
http://www.shinchosha.co.jp/book/603749/

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4)【深夜の誌人語録】

どんなに素晴らしく見えても私心や私利を否定する論理を信じないようにしている。清く美しい論理ほど本質的に暴力的なのである。