【文徒】2014年(平成26)6月26日(第2巻118号・通巻320号)

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1)【記事】出版社が売りに出される時代がやって来た!
2)【記事】女性向け官能小説が売れている!
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】出版社が売りに出される時代がやって来た!

その情報は広告関係者からもたらされた。ある出版社が売りに出されているというのだ。いったいどこなのだろうか。販売においても、広告においても、雑誌は縮小がつづいているといってよいが、コミック部門を擁さない中堅出版社は二、三の例外を別にすれば、どこも経営は苦しく、どこが売りに出されても驚くに値する情況ではあるまい。
こうも言える。中堅出版社を買収できる体力を持っているのは講談社小学館KADOKAWAなど、これまた数えるほどである。KADOKAWAなど買収によって規模を拡大してきたわけだが、今回はドワンゴとの経営統合を控え、新たな買収どころではあるまい。
次なる情報がもたらされたのは講談社に近い筋からであった。
「どうやらオレンジページさんから話が講談社さんにあったようです。もっとも講談社さんは断ったようですけれど」
オレンジペーシといえば親会社はJR東日本であるだけに意外な感じがしないのでもないのだが、確かにJR東日本からすれば、オレンジページを傘下に持つメリットはあるまい。しかも、オレンジページは、もともとダイエー系列の出版社であり、そもそもオレンジはダイエーのコーポレートカラーにほかならない。2001年、ダイエーが巨額の有利子負債を抱えた際にオレンジページも売却されることになり、当時のオレンジページ経営陣が自ら動いてJR東日本傘下に入ったという経緯がある。約85億円で買収されたと言われている。恐らく、今回もオレンジページ経営陣自らが動いたのかもしれない。
言うまでもなくオレンジページは雑誌『オレンジページ』でもっているモノカルチャー経営の出版社である。しかも、『オレンジページ』は典型的な広告依存型の雑誌であり、昨今の厳しい雑誌広告事情からしても、利益を出すのに四苦八苦しているのは間違いあるまい。しかし、悪い物件ではないと私などは思うのだが、買収する側からすれば簡単には手を出せないそうだ。その辺りの事情に詳しい消息筋は私たちに次のように語ってくれた。
オレンジページさんは売上高の割に社員数が多すぎるのです。しかも、編集ではなく、非生産部門の社員が偏っています。それこそリストラでもされて、社員をそれなりに削った後でなければ手を出せないのではないですか。それにダイエー時代から経営陣は同じ顔ぶれのままですよね。この経営陣が一緒にくっついてくるというのも考えものですよね」
イオンあたりに話を持って行くのだろうか?

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2)【記事】女性向け官能小説が売れている!

日本人は男も、女もエロが根っから好きなようである。女性向け官能小説が人気だ。特に女流作家による女性向け官能小説が注目されているし、意外な佳品に出会うこともある。「ガジェット通信」は次のように書いている。
「『官能小説という意識では買っていないですね。表紙も綺麗だし、一般的な小説を買って読むのと同じ感覚です』
KADOKAWAメディアファクトリーの女性向け官能小説レーベル『フルール文庫』を愛読する20代女性はこう話す。昨年創刊された同レーベルの装丁は少女漫画タッチのものが多く、一見しただけでは官能小説と分からないかもしれない。同レーベルを支える編集スタッフは全員女性だ。他にも、一昨年の創刊以来売り上げを伸ばしているという集英社の『シフォン文庫』や、イースト・プレスの『ソーニャ文庫』など、女性向け官能小説レーベルは続々と誕生している」
http://getnews.jp/archives/604361
女性向け官能小説は性描写にアクセントが置かれた禁断の恋愛小説に他なるまい。スマホのコンテンツとしても最適であろう。女性向け官能小説を読み放題のアプリとかも誕生してくるのかもしれない。

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3)【本日の一行情報】

学研教育出版は、iPhone/iPad対応の語学アプリ「中国語三昧 旅行&ビジネス会話」「ハングル三昧 旅行&コミュニケーション会話」「インドネシア語三昧」「タイ語三昧」をリニューアルし、お手本音声の高低・強弱が波形グラフで表示され、そこに自分の声を録音し波形グラフ化される新機能を搭載した。6月30日まで通常価格900円を特別価格500円で販売する。
http://ict-enews.net/2014/06/24gakken-3/

コミケで出版社にスカウトされ、1年間にわたりネーム600頁を描いて提出にしたもののボツになってしまったという木星在住のSFマンガ「機械人形ナナミちゃん」がニコニコ動画YouTubeで公開され、話題になっている。むろん、木星本人が投稿したものだ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1406/23/news106.html
http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-24882.html
もし、これで単行本化でもされ、売れちゃったとなると、ボツにした出版社の編集者が無能だということになる?編集者の能力も白日の下に曝される時代がやって来たようだ。木星在住は自らのホームページで版元を探している。
http://mokusei2.blog46.fc2.com/

◎鷹野凌が「マガジン航」でインプレスR&Dが手がけるデジタル・ファースト出版方式「NextPublishing」について詳細にリポートしている。
「さて問題は、これでビジネスとして成り立つのか? という点でしょう。インプレスR&Dブランドで発行している本は、正味売上60万円、販売部数400で粗利が出るように設計しているそうです。なお、電子版の販売価格は、オンデマンド印刷版の6割程度に設定しているそうです。そのやり方で2年間続けてきて、累積販売部数が2014年4月末時点で3万8908部、平均販売部数は371部だそうです。つまり「販売部数400で粗利が出るように」という設計値まで、あと一息というところまできています。ちなみに、これまでで最も売れたタイトルは、7107部で売上1214万円。当初はオンデマンド印刷版が多かったのが、最近は電子版も増えてきて、53:47と拮抗してきているそうです」
http://www.dotbook.jp/magazine-k/2014/06/23/next_publishing/

◎日本のエロは世界に通じるか、ということだよな、これは。ワニマガジンが「米国の変態ポータル大手「Fakku.net」(日本からは閲覧不可)と提携した模様」だってさ!
http://hon.jp/news/1.0/0/5618/

読売新聞社が進める21世紀活字文化プロジェクトの一環賭して、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹を講師とする「読書教養講座」(西南学院大、活字文化推進会議主催)の公開授業が6月22日、福岡市の西南学院大で開催された。
http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20140623-OYS1T50009.html?from=sytop_main3

◎文芸出版では老舗中の老舗の新潮社もライトノベルスに進出するということだろう。新潮社が「新潮文庫nex(ネックス)」を8月28日に創刊する。
http://blog.livedoor.jp/wannabenews/archives/38806118.html
もちろん、新潮社のプライドからなのだろう、ライトノベルスという言葉は使っていないが、これはライトノベルスそのものだよね。
http://shinchobunko-nex.jp/
こうなると文藝春秋はどうするか、だ。

◎何かと話題の前田敦子が「美的」8月号の表紙を飾った。
http://kirei.mainichi.jp/kireinews/news/20140623dog00m100057000c.html

◎ニュースアプリ「Gunosy(グノシー)」は媒体社への広告収益の還元を前提とした記事の複製データ(キャッシュ)の配信を開始した。これにより、ユーザーは通信環境を問わず、どんな場所でも記事閲覧をできるようになる。また、提携している媒体社に対してはGunosyの広告収益の一部を、記事に対する対価として還元する。
http://gunosy.co.jp/downloads/Gunosy_20140624.pdf
どんなニュースアプリであれ、現状では既存メディアの寄生虫に過ぎないということは、しかと認識しておきたいところである。

◎バイクブロスが運営し、バイク関連の出版物のみを紙でもデジタルでも扱うネット書店の「BikeBooks」が雑誌の定期購読の取り扱いを開始した。
http://www.pronweb.tv/release.php?code=9946
紙も電子も扱うネット専門書店が増えて欲しいなあ。

◎アマゾンが徐々にではあるが広告モデルを導入しつつある。アマゾンは広告の世界でも台風の目になるだけの潜在力を秘めている。
http://jp.techcrunch.com/2014/06/24/20140623amazon-brings-free-ad-supported-tv-episodes-to-ios-plus-hbo-content/

出版デジタル機構の社長人事が決定した。野副正行は代表取締役社長を、植村八潮は取締役会長を、野間省伸、堀内丸恵、相賀昌宏は取締役をそれぞれ退任し、代表取締役社長に新名新、代表取締役副社長に広岡克巳が就任する。新名はKADOKAWA出身、広岡は小学館出身である。日本出版インフラセンターと連携して「共通書誌情報システムの構築」などに取り組むのだろうが、無駄な投資はしないでもらいたい。電子書籍化支援事業でもそうだが、産業革新機構が絡むだけに「透明性」と「公開性」をしっかりと担保してもらいたいものである。
http://www.pubridge.jp/wp/wp-content/uploads/2014/06/20140624_pubridge_press-release_011.pdf
取締役には土田 誠行(産業革新機構)福井 義高(産業革新機構)山崎 富士雄(大日本印刷)大湊満(凸版印刷)の4氏は留任し、古川公平(講談社) 大久保徹也(集英社)江草貞治(有斐閣)の3氏が新任された。古川、大久保は編集がわかる人材だし、江草は学術専門書に詳しい。そういう意味では悪い人選ではないと思う。

集英社の「ジャンプ改」が10月10日発売の11月号をもって休刊することになった。
http://jumpx.jp/oshirase/index.html
そう言えば「ロケットニュース24」が仄めかしていた。
「とある日本の代表的な出版社。そこが発行している漫画雑誌が、廃刊(または休刊)するという情報が入ってきた。『熱い漫画家と編集者がいた雑誌だけに残念』との声も出ている」
http://rocketnews24.com/2014/06/24/457583/?utm_medium=partner&utm_source=gunosy#gunosy

KADOKAWAの「コミックウォーカー」が主催する「艦これコミック大賞」が休止!何があったのだろうか。
http://comic-walker.com/news/detail/89/

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4)【深夜の誌人語録】

劣等感こそあらゆる才能の母胎である。