【文徒】2014年(平成26)7月22日(第2巻135号・通巻337号)

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1)【記事】小学館を退社した佐藤幸一が悟空出版を設立
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】小学館を退社した佐藤幸一が悟空出版を設立

佐藤幸一は2014年7月18日に小学館を退社し、7月22日に「乗換案内」を運営しているジョルダンの援助を得て悟空出版を設立した。早業である。佐藤とは、どんな人物なのか。そのキャリアを見ておこう。生年は1953年。1976年に慶應義塾大学法学部政治学科を卒業し、小学館に入社している。編集者としては「週刊ポスト」畑でキャリアを積んでいる。元十両四季の花他の告発で「大相撲八百長問題」を担当したことでも知られる。「週刊ポスト」では副編集長までつとめ、「サピオ」に異動、ここで小林よしのりの「新・ゴーマニズム宣言」を統括する。2000年、小学館文庫となり、ここで編集長に就任する。2012年、「小学館101新書」の編集室を立ち上げ室長に就くや、2013年、同新書を「小学館新書」にリニューアルする。佐藤が企画・制作した単行本、文庫、新書の合計は150冊以上に及ぶそうだ。
佐藤以外にも小学館講談社、光文社、中経出版双葉社などで活躍してきた編集者、ライターと小学館の販売、広告、宣伝等で活躍してきた営業マンが悟空出版に集まるそうだ。
ジョルダンは「連立小会社的中会社」を基本戦略としている。ジョルダンのウエブサイトには、こう書かれている。
「組織としては『連立小会社的中会社』を基本戦略とし、数人から10人程度の『小会社』ごとの責任の明確化を図るとともに、組織の柔軟性・機動性を高め、素早い展開を可能にする。また、より独自性を持って機動的に動くためには、状況に応じて、出資等による子会社の取得、子会社・関連会社の設立、パートナー企業との資本提携等を行い、事業展開の速度を上げていく」
ジョルダンは出版と全く無縁な会社ではない。2008年には総合オピニオン誌表現者」の版元を引き受けているし、「読書の時間」を運営しているのもジョルダンである。昨年はスマホと連動した料理雑誌「キレイ食」にもチャレンジしている。悟空出版は「表現者」や「読書の時間」とも連携することになるのだろう。
http://www.jorudan.co.jp/company/
佐藤幸一によれば悟空出版は「空を悟りたいと思いつつもなかなか悟れず、穏やかに生きたいと願いつつも妖怪退治に立ち上がってしまい、出版、言論空間でやんちゃに暴れ回る」出版社なのだそうだ。

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2)【本日の一行情報】

古舘伊知郎が「AERA」7月14日号(朝日新聞出版)で次のように語っているんだって。
「世の中ってうそ八百で成り立ってるし、ホントのところは新聞も雑誌もテレビも伝えないし、たまに言外に漂わせたり、におわせたり、スクープで追及したりってことはあっても、ほとんどがお約束で成り立ってるわけですね。プロレスですよ、世の中。完全にプロレスです」
http://lite-ra.com/2014/07/post-238.html
こういう屈折、嫌いじゃない。

◎次々にラノベの新レーベルが誕生しているが、ラノベによって「小説」のあり方が変わるような気がしてならない。
http://getnews.jp/archives/623827

◎7月10日にレベルファイブから発売されたゲームソフト「妖怪ウォッチ2 元祖/本家」の累計販売本数が130万本を突破。「妖怪ウォッチ」は一昨年12月に小学館の「コロコロコミック」で連載を開始し、ゲームソフトは昨年7月に発売、アニメは今年1月にテレビ東京で放送開始されている。
http://www.inside-games.jp/article/2014/07/16/78635.html
小学館としては「ドラえもん」「ポケモン」に次ぐ第三の柱として大切に育てたいところだ。3大キャラクターとして並立させることが肝要である。ちなみに7月20日レベルファイブ日野晃博社長の誕生日であった。
「ダイヤモンドオンライン」のインタビューに答えて日野は次のように語っている。
ドラえもんのような普遍的な作品をつくりたいと思いました。その時代の子供たちに愛され、長く続くような作品を、一から生み出したい。今の時代を映した設定やキャラクターなどを考えました」
http://diamond.jp/articles/-/56267

新潮新書から中村淳彦の「日本の風俗嬢」が刊行される。中村は「名前のない女たち  企画AV女優20人の人生」はデビューしている。私は「崩壊する介護現場」が好きだけど。
http://www.shinchosha.co.jp/book/610581/

白泉社水谷京子「蜜談〜甘い新婚編〜」第1巻の刊行に際して、電子版を先行させた。また「着物エンジェル」「リミラブ」も電子書籍化し、「リミラブ」は単行本未収録話もバラ売りでリリースされるという。更にWEBマガジン「Love Silky 」で、水谷の新連載「野獣は激しく奪う」をスタートさせた。女性向けの「エロ」がデジタルと相性が良いのは、ガラケー時代に証明されているが、マンガにおいてはデジタルをどのように絡ませるかが必須の課題となりつつあると考えて良いだろう。
http://natalie.mu/comic/news/121347
10円コンテンツが可能になるような仕組を作れば、電子出版の様相は劇的に変わるのではないかという仮説を私は捨て難く抱いているのだが…。

◎JCJ大賞に東京新聞が選ばれた。JCJとは日本ジャーナリスト会議の略称。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014071702000145.html
日本ジャーナリスト会議は歴史的に言えば1955年に東側諸国のジャーナリストを中心に組織された国際ジャーナリズム機構の呼びかけで結成されている。私は東京新聞の購読者だが、JCJ大賞をもらっても、それほど嬉しくない。

学研教育出版はシリーズ累計3900万部というロングセラーの幼児向けワーク「学研の頭脳開発シリーズ」の「ちえのおけいこ4歳」を、iPad、Andorid、kindle fire対応のタブレット用アプリとしてリリースした。
http://gakken-ep.co.jp/news/201407/20140715.html

◎フジテレビは、スマートエデュケーションと共同で、フジテレビのバラエティ番組「めちゃ×2イケてるッ!」内のコーナー「めちゃギントン」をモチーフにしたオリジナルの知育アプリ「おやこであそぼう めちゃギントン」を東京お台場で開催している「お台場新大陸2014」にて一般の来場者にプレ公開し、今秋よりリリース開始。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140717/prl14071711580053-n1.htm
めちゃ×2イケてるッ!」のような番組を母胎にした知育アプリとは、いや日本は平和な国である。

◎LINEとソニーミュージックが組んで次世代のスターを発掘するべく、「LINE オーディション」を開催するそうだ。
http://www.barks.jp/news/?id=1000105697

芥川賞柴崎友香の「春の庭」(「文学界」6月号)。直木賞黒川博行の「破門」(KADOKAWA刊)。柴崎は「その街の今は」で芸術選奨文部科学大臣新人賞を、「寝ても覚めても」で野間文芸新人賞を受賞している。「きょうのできごと」が刊行されたのは2000年で、小説だけで16点ほど刊行されている。黒川が「二度のお別れ」でデビューしたのは今から30年も前の1984年。日本推理作家協会賞吉川英治文学新人賞を受賞している。「春の庭」が柴崎のこれまでの作品に比べて格段に優れていたろうか。「破門」が黒川のこれまでの作品に比べて、ひときわ面白かったのか。う〜ん、考え込んじゃうよね。書店からすれば、受賞作家の過去の作品を集めての大がかりなフェアを開催できるのだろうけれど。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFG17H0Q_X10C14A7000000/

◎ベネッセの「個人情報漏洩」で思ったことは二つ。福武総一郎最高顧問は謝罪するのであれば、もっと早く謝罪すべきだったのではないか。もう一つは、「個人情報保護法案」があるから、大問題となったわけだが、この程度の漏洩が本当に刑事事件に発展するほどの大事件かということである。
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO74362060X10C14A7TJ2000/

◎元AKBメンバーの篠田麻里子のプロデュースの「ricori」を展開するリゴレが営業を停止。
http://www.asahi.com/articles/ASG7J74X5G7JULFA035.html

講談社から刊行された佐村河内守の自伝本「交響曲第1番」の帯に「もし、現代に天才と呼べる芸術家がいるとすれば、その一人は、まちがいなく佐村河内守さんだろう」という推薦文を書いたのは五木寛之だった。ジャーナリストの塩田芳享は「彼を最初にモンスターに仕上げた最初の部分というのは、五木寛之さんと講談社だ」と主張しているそうだ。
http://www.bengo4.com/topics/1797/

◎日販は、7月17日(木)より、「ファンタスティック3 夏推し!ネオファンタジーコミック」フェアを全国500書店で開催している。フェア対象コミックは、「ひきだしにテラリウム」(イースト・プレス九井諒子)、「惑星9の休日」(祥伝社/町田洋)、「魔法使いの嫁(1)」(マッグガーデンヤマザキコレ)。
http://www.dreamnews.jp/press/0000096189/

KADOKAWAが「レタスクラブ」を介して絵本ナビに急接近か。
http://www.sankei-kansai.com/press/post.php?basename=000000676.000007006.html

◎「CanCam」は今年5月に専属モデルに起用したシンガー・ソングライターのchayを表紙に起用する。オリコンスタイルは次のように書いている。
「8月20日発売の4thシングル「Summer Darling」では、業界初となる『CanCam』とのコラボレーションパッケージが実現(初回限定盤)。36ページにも及ぶフォトブック仕様となっており、ジャケット制作を同誌編集チームが担当したほか、全8ポーズの衣装による撮りおろし、初披露となる私服姿のジャケット、メイクの秘訣に迫るなど、ファッション誌並みの読み応えとなっている」
井亀真紀編集長の編集長の「編集者というのは惚れ抜いた才能と心中する仕事」という発言も古典的で良い。
http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/culture/149848.html

◎エヌ・ティ・ティ・ソルマーレが運営する「コミックシーモア」は7月19日(土)より10日間に渡り700冊以上が半額となる「実業之日本社コミック 全巻半額キャンペーン!」を開催している。
http://www.cmoa.jp/special/?page_id=0719_jitsugyom/index.html

◎日経社長と女性社員の交際を報じた「週刊文春」を日経が文藝春秋に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で高裁は「文春側に計1210万円の支払いと謝罪広告の掲載などを命じた1審・東京地裁判決を支持し、文春側の控訴を棄却する判決を言い渡した」(読売新聞)とのこと。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140718-OYT1T50135.html?from=ycont_top_txt

◎六本木のクラブ「FLOWER」で起きた傷害致死事件に関して無罪を主張しつづける元「関東連合」リーダーの石元太一の獄中手記が双葉社から刊行された。「関東連合」の内側が語られていて、非常に興味深い一冊となった。
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-30717-7.html?c=&o=date

KADOKAWAの「エンタミクス」9月号の中で、全国3000店の書店員の投票による「NEXTブレイク漫画RANKING BEST50」を発表した。ベストテンに集英社は三作品が入っている。
1位「高台家の人々」(森本梢子 集英社
2位「魔法使いの嫁」(ヤマザキコレ マッグガーデン
3位「累」(松浦だるま 講談社
4位「スピリットサークル」(水上悟志 少年画報社
5位「磯部磯兵衛物語 〜浮世はつらいよ〜」(仲間りょう 集英社
6位「甘々と稲妻」(雨隠ギド 講談社
7位「ヤコとポコ」(水沢悦子 秋田書店
8位「BIRDMEN」(田辺イエロウ 小学館
9位「かくかくしかじか」(東村アキコ 集英社
10位「パレス・メイヂ」(久世番子 白泉社 既刊2巻)
http://ddnavi.com/news/201216/

◎米アマゾンは月額9.99ドルでキンドルの読み放題サービス「Kindle Unlimited」の無料トライアルを7月18日から30日間にわたって実施する。
http://jp.techcrunch.com/2014/07/19/20140718amazon-officially-announces-kindle-unlimited-offering-reading-and-listening-for-9-99-a-month/
音楽では既にサブスプリクションの波が押し寄せているが、活字コンテンツでも同じような情況になるのだろうか。

◎「オール讀物」8月号の特集は「戦争を忘れない」。三浦しをんの「女性が読む戦記文学」とか、平山周吉 の「兵隊作家・火野葦平 二百万部の苦しみ」が面白そうだ。
http://www.bunshun.co.jp/mag/ooruyomimono/ooruyomimono1408.htm

◎「フォーブス」を発行する米出版社フォーブス・メディアは、香港を拠点とする「インテグレーテッド・アセット・マネジメント(アジア)」が率いる投資家グループに身売りされることになった。
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20140719-1337101.html

◎「マキア」の湯田桂子編集長、「ノンノ」の小林亘編集長、「ウオモ」の西川淳編集長が紹介されている。小林の次のような発言が印象に残った。
「18歳〜21歳を中心とするノンノの読者世代は1日平均2〜3時間をネットに費やしています。そのほとんどの時間をSNS等で情報を発信しあっている状況です。雑誌の情報も、ネットの中で拡散・共有されることによって反響が増加していくことが多く、この世代に影響力を与えていく上で、WEBメディアを巻き込んでいくことが重要だと感じています」
同感である。
http://adnavi.shueisha.co.jp/topics/pdf/corporate05.pdf#page=2

DeNAのマンガアプリ「マンガボックス」は、「寄生獣」(岩明均著 講談社)7月25日から毎週金曜日に、12週にわたり1話ずつ無料配信する。
http://aplista.iza.ne.jp/f-iphone/173504

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3)【深夜の誌人語録】

目の位置を変えれば視界に入って来る風景もまた変わるのである。