【文徒】2014年(平成26)11月26日(第2巻222号・通巻424号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】川上量生は何を考えているのか?
2)【記事】「小4なりすまし」政治サイト事件
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.11.26 Shuppanjin

1)【記事】川上量生は何を考えているのか?

これは興味深い内容だ。「withnews」によるドワンゴ川上量生インタビューの中編。川上は次のようにアマゾンを認識している。
「…アマゾンで実際に起こってますけど、アマゾンの売れているランキング上位に入ろうとすると、定価100円とかですよね。そうすると、みんなどんどんコンテンツ代が下がっていくわけですよ。そうするとコンテンツ代が下がるからみんな本屋で買わずキンドルで買おうという動きがどんどん進みます。そうすると結果的にだれが得して、誰が損したといったら、アマゾン以外、全員損しているということになっちゃいますよね。それがコンテンツを作らないプラットフォームの戦略に乗っかったコンテンツマーケットの末路ですよ。まあ、ほっとくとそうなります」
http://withnews.jp/article/f0141123000qq000000000000000W00j0901qq000011180A
川上は電子書籍にも再販制を適用したほうが良いと考えていることがわかる。こうした認識は日本出版者協議会に結集する中小出版社とさして変わりはない。だとすればKADOKAWA・DWANGOは10%のポイントサービスを実施しているAmazon Studentに対して再販制を逸脱していると正面から抗議すべきではないのか。しかも、Amazon Studentは現在6カ月間無料で体験でき、もれなく1000円分のポイントがもらえる。
http://www.amazon.co.jp/b?ie=UTF8&node=2410972051&tag=hydtw10333-22
川上は、こうも発言している。
「フランスは小さい書店とかが元気で生き延びている。地方の小さいお店が元気な国ってフランスだけらしいんです。それが反アマゾン法のおかげらしいんですよ。あまり知られてない事実で。むしろフランスが時代錯誤の国でネットのことをわかってない、みたいに報道されているけど、わかってないのは実は日本なんですよ。フランスの方がよっぽど頭いい」
日本出版者協議会は12月1日に文京シビックセンターで連続セミナー「再販制を考える」の第1回として「フランスにおける《反アマゾン法》とその背景」を開催する。講師はフランス著作権事務所代表で翻訳家のコリーヌ・カンタンである。
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/
「…ネット事業者はコンテンツホルダーから利益を奪うとき、消費者も共犯者として味方にすべくコンテンツの価格を下げようとするわけです。コンテンツがネットだと安く手に入ることは、結果的には、ネットの普及の原動力になるわけだから、2度、3度おいしいわけです」
これも川上の発言。アマゾンも全くそうだ。
この「東洋経済オンライン」のインタビューで川上は、こうも語っている。
「すべてのコンテンツは人類の共有財産です。それをたまたま最初に発見した人が、一時的に優先的に使用する権利を持っているにすぎません。
なのに、完全な私有物だと主張する人も多い。でも知的所有権は土地とは違っていて、本来はそういうのを認めるべきものじゃない。人類全体の共有物のはずですよ」
こういう考え方も私は支持できる。
http://toyokeizai.net/articles/-/54092
川上は要するにリアリストなのである。
「たとえばネットニュースがあります。でもネットで有料ニュースを購読しているよりも、紙の新聞にお金を払っている人の方が、全然多いんですよ。で、そのことに何でみんな気づかないのか。それはそのままネットにでてきたら、最強のメディアになりますよね。リアルな流通網を持っているのは古いってたたかれてるんだけども、本当はすごく強力な武器であって、それを持って闘うというのが正しいんですよ」
http://withnews.jp/article/f0141122001qq000000000000000W00j0901qq000011177A
それにしても、川上量生は、このところ出ずっぱりである。KADOKAWA・DWANGOとしてはDWANGO=川上を前面に出すことで、KADOKAWAが解決できずにいる「矛盾」をなるべく隠蔽したいのではないだろうか。そんな広報的な意図が私には、ハッキリと見えるのだ。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20141118-OYT8T50202.html

                                                                                                                        • -

2)【記事】「小4なりすまし」政治サイト事件

小学4年生=10歳にして、放送部に所属する「中村」少年が立ち上げたサイト「どうして解散するんですか?」がネットで話題になった。ツイッターでは20日にローンチされると、フォロワーは一日で100万を超えてしまった。しかし、その内容からして、到底、小学4年生のものとは思えないという疑問の声があがり、サイトのドメインと類似する「why-kaisan.jp」をNPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」が同時期に取得していたこともわかった。疑惑がそれこそ「炎上」するなか、NPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」の青木大和代表自らが「中村」少年になりすましていたことをツイッターで告白し、謝罪するに及んだ。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/11/22/kiji/K20141122009334760.html
http://matome.naver.jp/odai/2141663101508436701
http://www.yukawanet.com/archives/4780415.html
http://why-kaisan.com/
http://korokial.com/archives/2025
私はこの事件を通じてソーシャルメディアの「力」を思い知らされた。その拡散力と、ユーザーのリテラシー能力において、である。私などは別に目くじらを立てるようなことではないと思うのだが、安倍晋三首相は違った。自らのフェイスブックで、次のように激怒している。
「小学4年生による投稿と言われ巷で話題となった「どうして解散するんですか?」ですが、今回「NPO法人 僕らの一歩が日本を変える」の代表理事の大学生が小学生になりすまし行っていた事が明らかになりました。批判されにくい子供になりすます最も卑劣な行為だと思います。
選挙目当ての組織的な印象操作ではないでしょうが、選挙は政策を競い合いたいと思います」
https://www.facebook.com/abeshinzo/posts/646500852140028
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1411/25/news052.html
安倍首相は、政治家として小粒なようである。ハッキリ言って津田大介のほうが大人である。
「世界はそんなに単純な構造でできてるわけもないし、ちょっとググっただけで変な想像力働かせて匿名で事実と違うことを拡散してたとえそれが間違ってても謝りもしないまとめサイトとかツイッター民とか、明らかに人間として今回の小4解散サイト以下でしょ。彼らは少なくとも名前出して謝罪した」
http://togetter.com/li/748663

                                                                                                                        • -

3)【本日の一行情報】

紀伊國屋書店は「不動の魂」(実業之日本社刊)の発売を記念して 五郎丸歩選手のサイン会を新宿本店 8階イベントスペースで12月6日に開催する。五郎丸はラグビー日本代表の不動のフルバックだ。
http://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20141120095935.html
http://otomo-rug.jugem.jp/?eid=1354

◎柴田よしき「花咲慎一郎シリーズ」(講談社実業之日本社)がテレビ東京の金曜20時枠「金曜8時のドラマ」にてドラマ化される。
http://mysterytuusinn.seesaa.net/article/409220941.html

◎「ViVi」1月号が水原希子の魅力に迫る。「水原希子 in FANTASTIC プリクラ WORLD」!水原は「進撃の巨人」実写版にも出演する。
http://www.zaikei.co.jp/article/20141121/223328.html

◎宝島社が発行するクックパッドのレシピ本「BEST100」は、第3弾となる11月21日発売の「クックパッドの冬レシピ」の発売をもって累計121万部を突破。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000108.000005069.html

◎コスモ・コミュニケーションズと博報堂DYメディアパートナーズは、店頭来客者が持つスマートフォンに対してiBeaconからクーポン情報と店舗周辺の街に関する情報を配信するサービス「教えて!びい子」の提供を開始し、アーバンリサーチと共に実施する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000007977.html

日本テレビホールディングス は、サントリーホールディングス子会社のスポーツクラブ「ティップネス」を買収。サントリーからすれば米ビーム買収により膨らんだ有利子負債に対応するため、非中核事業を見直しているのだろう。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKCN0J50IE20141121

集英社が「ダッシュエックス文庫」の創刊に際して断行した秋葉原ジャックの模様が報告されている。
https://bbs.sumisora.org/read.php?tid=11065302

◎創刊10周年を迎えた光文社の「Mart」が、これを記念して「ららぽーと」とコラボして、「手づくりアクセサリー」フェスを11月30日に「三井ショッピングパーク ららぽーと甲子園」で開催する。関東エリアでも来年に開催される。都合4か所での開催となる。
http://mart-magazine.com/contents/sp/10th_event.html

小学館は来年3月に青年コミック誌ヒバナ」を創刊する。
http://mantan-web.jp/2014/11/23/20141122dog00m200039000c.html

◎プロレスラー三富政行は元博報堂社員。
http://news.ameba.jp/20141123-46/

◎「ダ・ヴィンチNEWS」で「コロコロコミック」の村上孝雄編集長は「読めない子が増えているとは思いません。『コロコロ』1号あたりの発行部数は今年の年末号で130万部に達する見込みで、昨年の平均より約50万部の増加です」と語っている。
http://ddnavi.com/news/215595/

◎「コミティア30thクロニクル」(双葉社)が第3集をもって完結する。もっと注目されて良いと思うんだけどなあ。
http://natalie.mu/comic/news/131951

別冊宝島「日本人の給料大辞典」。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000110.000005069.html
他人の給料って知りたいものね。

◎「劇場版『進撃の巨人』前編〜紅蓮の弓矢〜」の本編終了後に「2016年TVアニメ第2期製作決定」の告知があった。まだまだ進撃はつづく。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/11/23/shingeki-tv-animation_n_6206374.html

中央公論新社から刊行された高野文子の「ドミトリーともきんす」が発行部数が6万5000部に達する「異例のヒット」と読売新聞。嬉しいことである。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20141118-OYT8T50127.html?from=ytop_ymag

◎「ウォークマンぴあ」がソニーストアでも販売されている。
http://yagumo-camera.blog.so-net.ne.jp/2014-11-24-1

◎「天才」山藤章一郎によれば「曲がれねえんだ、俺は。ずっと向こうに延びているレールみたいに」という「鉄道員」における高倉健の台詞は後から追加したそうである。
http://www.news-postseven.com/archives/20141124_288612.html
私など高倉健というと「週刊女性」の生井孝雄を思い出す。記事にはならなかったものの高倉の実像に最も踏み込んだ編集者であった。

                                                                                                                        • -

4)【深夜の誌人語録】

欠点を恐れてはならない。むしろ、欠点は長所に通ずるということを忘れてはならない。