【文徒】2015年(平成27)2月26日(第3巻37号・通巻482号)

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1)【記事】KADOKAWAリストラ問題、会社側が遂に「退職強要」を開始!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】KADOKAWAリストラ問題、会社側が遂に「退職強要」を開始!

『メディア クリティーク』1月31日号でもお伝えしたKADOKAWAの「300人リストラ問題」がここにきて急展開を見せている。さる2月19日、同社社内にある3労組の一つである「角川映画労働組合」(旧大映労組)の上部団体、映画演劇労働組合連合会(映演労連)の幹部より本誌(岩本太郎記者)あてに「とうとう会社が社員に退職強要を始めた!」との一報が寄せられたのだ。
その後2月24日、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が開催した春闘決起集会で、映演労連は「映演労連・臨時ニュース 2015.2.24」として「あのKADOKAWAで『4月以降にあなたの居場所はない』『リストラではない』と言いながら、悪質な退職強要相次ぐ!」というタイトルのビラを配布した。問題の発端からの流れも含めてわかりやすくまとめられた内容なので、以下に全文をそのまま引用しておこう。
《2013年10月に角川グループ10社が大合併して「株式会社KADOKAWA」が誕生しましたが、昨年10月にはさらにドワンゴ経営統合して「株式会社KADOKAWADWANGO」 ができました。その連結子会社となった株式会社KADOKAWA今年1月16日、「セカンドキャリア支援プログラム」と称する希望退職募集を一方的に発表しました。
対象者は41歳以上かつ勤続5年以上の正社員で、募集人員は300名、募集期間は平成27年3月2日〜3月20日、退職日は4月30日です。対象者は約900名ですから、募集人員300名というのは、その3分の1以上を解雇するという大規模リストラです。
昨年10月のドワンゴとの経営統合に際して株式会社KADOKAWAは、角川グループ労組と映演労連・角川映画労組、出版労連・SSCユニオンの三労組に対して「経営統合に伴うリストラ『合理化』は行わない」ことを覚書で確認しています。今回の大規模な希望退職募集は、この覚書にも違反しています。
角川映画労組は面談開始の条件として「面談の回数は2回までとする」「組合員の面談に際し、中央執行部の立会いを認めること」という要求をしましたが、会社は「本プログラムは、経営統合に伴うリストラ『合理化』にあたるものではない」として要求を拒否しました。しかし、当該労組以外の対象者に対しては希望退職の面談を開始し、「4月以降にあなたの居場所はない」「あなたに任せる仕事はない」などの退職勧奨言動を繰り返し行っています。これは悪質な退職強要です。
角川映画労組は会社に抗議するとともに、面談拒否の継続など退職強要を許さない闘いを開始しています。
私たち映演労連も角川映画労組の闘いを大きく支援していきます。皆さん、ぜひご協力ください!》
どこの世界に「4月以降にあなたの居場所はない」などと退職を強要される「希望退職」などがあるというのだ!
いや、最近はその種の手段に出るブラック企業も増えていることでもあろうが、仮にも東証一部上場企業傘下の主力企業にして、老舗・角川書店の流れを汲みつつ様々な会社を吸収合併のうえ生まれた出版業界最大手クラスの企業での話だぞ?
しかも上記の通り昨年10月には社内3労組との間で「経営統合に伴うリストラ『合理化』は行わないという覚書を交わしてから半年も経たない、舌の根も乾かぬうちの暴挙である。これを「リストラではない」といけしゃあしゃあと言い切る同社経営陣の神経も大したものだと呆れるのを通り越して感心すら覚えてしまうところだ。
とはいえ、気になるのは今後KADOKAWAの各組合そして社員たちがこれに対してどうするのかということだ。上記ビラにもある通り会社側は角川映画労組が要求した面談開始の条件を拒否しており、同労組側も会社側に既成事実を作らせないためにも先方からの申し出は突っぱねる方針であるようだ。
さすが往年の大映争議を戦ってきた労組だけに骨のあるところだが、反面、先の『メディア クリティーク』でも報じたように同社の場合は生い立ちのまったく異なる企業をどんどん吸収合併することで規模を拡大した結果、労働組合も一つの会社の中で生い立ち別に三つに分かれるという格好になっている。
3労組は今後も協調しながら会社側と争っていく姿勢だが、一方では角川映画労組以外の組合に所属の社員、あるいは組合員以外の社員に対しては既に上記のような退職強要が始まっているだけに、労組側としても今後の対応は悩ましいところだろう。そんなわけで、本誌としてもこの問題の推移については注視しつつ、引き続きレポートしていくこととしたい。(岩本太郎)

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2)【本日の一行情報】

◎今年、「ドラえもん」映画が35周年を迎える。そこで新作「映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)」の公開を記念してARマガジンを使ったキャンペーンが展開される。スマートフォンアプリ「SATCH VIEWER」をインストールし、小学館から発行される雑誌35誌や「J:COMマガジン」3月号をアプリで読み込むことでARが起動、「映画ドラえもん 週刊スペースヒーローズ」のメニューが開き、最新映画をテーマにしたコンテンツを楽しむことができる。
http://www.asahi.com/and_w/interest/entertainment/CORI2049010.html

◎今井大輔の「古都こと」が出版社の垣根を越えて「漫画アクション」(双葉社)と「ヤングチャンピオン」(秋田書店)の二誌で同時連載をスタートさせたが、両社は「ブラック・ジャック」(秋田書店)と「クレヨンしんちゃん」が一緒に描かれたロゴを作成。このロゴのついた「クリアファイル」を24日に発売された「ヤングチャンピオン」では附録とし、3月3日発売の「漫画アクション」では、やはりロゴ入りのポストカードが附録となる。
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/368618/

◎「東洋経済オンライン」はアマゾンの「ビジネス・経済」ジャンルの売れ行きトップ200を毎週、公開することになった。今回、第1位に輝いたのは「21世紀の資本」(みすず書房)ではなく、講談社文庫の「わたしはコンシェルジェ」であった。何と2010年に刊行された「旧作」だが、2月16日にNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」で著者の阿部佳が特集されたことが、トップに押し上げたようだ。「テレビの力」の大きさを見せつけられたということだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/61430?utm_source=gunosy-p&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

◎第35回日本SF大賞藤井太洋の「オービタル・クラウド」(早川書房)、長谷敏司の「My Humanity」(早川書房)に決定。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1502/23/news095.html

電通が「2014年 日本の広告費」を発表した。これによれば日本の総広告費は6兆1,522億円、前年比102.9%と3年連続で前年実績を上回った。広告マーケットは、好況を呈しているのだが、私にはそういう実感がまるでない。
それもそのはず。媒体別に見てみると雑誌広告費は2,500億円(前年比100.0%)、新聞広告費は6,057億円(前年比98.2%)。雑誌広告も、新聞広告も前年を上回っていないのだ。
旧マス4で良かったのは、ラジオ広告費(1,272億円 前年比102.3%)とテレビメディア広告費(1兆9,564億円 前年比102.8%)。やはりというべきだろう。インターネット広告費は1兆519億円(前年比112.1%)と高度成長を遂げた。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0224-003977.html

京都新聞の「押し紙」裁判は、京都新聞が店主に和解金300万円を支払うことで1月に和解が成立していた。「SAKURA FINANCIAL NEWS」は、次のように書いている。
「裁判を起こしていた店主は、1988年から2店舗を経営していたが、過剰な新聞部数(「押し紙」)の卸代金を負担できなくなり2011年に自主廃業に追い込まれた。買い取りを強いられていた新聞部数は、廃業前には搬入される新聞の2割を超えていた」
http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20150224_2

◎宝島社は「ポケコロ」初の公式ファンブックを発売する。「ポケコロ」は300万人の女性が利用している可愛いアバターアプリだという。「ポケコロ」という語呂が良いね。
http://news.biglobe.ne.jp/economy/0224/prt_150224_1929162943.html

集英社は2月24日にECメンズデザイナーズセレクトショップ「mirabella homme(ミラベラオム)」をグランドオープンし、創刊10周年の男性ファッション誌『UOMO』と人気16ブランドがコラボしたスペシャルアイテムを販売している。雑誌と連携するが、雑誌と切り離してEC通販を展開することが集英社の本気度を物語っている。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000011454.html
「UOMO」表参道駅ジャックのプロモーションに合わせ、東京・青山のコンセプチュアルショップ「ICON」内に期間限定POP-UP SHOPをオープンしている。

◎「WWDジャパン」は、男性ファッション誌「Safari」(日之出出版)と共同で、東京ミッドタウン・アトリウムと六本木ヒルズ・大屋根プラザをメイン会場にして、ファッション&ライフスタイルイベント「Safari×WWD 66PROJECT」を開催している。
http://www.wwdjapan.com/fashion/2015/02/24/00015526.html

文藝春秋は「東大合格生の秘密の『勝負ノート』」(太田あや)を刊行するにあたり、教育出版社の旺文社と協力して「勝負ノート」で目指せ合格!コラボ キャンペーンを実施。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/3392
「ノートを借りてみたい東大卒小説家は?」アンケートは結果が楽しみ。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/3390

◎10月1日を目処に、学研教育出版学研パブリッシング及び学研マーケティングの出版3社を統合し、学研M文庫や一部のムック(歴史関係や一部女性実用)などの事業から撤退することになった。経営資源を学習参考書や児童書などの教育分野や、「教育ICT」「電子出版」「海外展開」を軸とした新しい教育サービスなどの重点分野へ再配分するそうだ。
http://ghd.gakken.co.jp/ir/pdf/20150225.pdf
併せて若干名の希望退職者(10名前後だそうだ)を募るリストラを実施する。

◎グルメアプリ「TERIYAKI」は、幻冬舎のライフスタイルマガジン「GOETHE」と提携し、共同でグルメ情報の配信を開始した。
http://www.value-press.com/pressrelease/137863

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3)【深夜の誌人語録】

リーダーであればこそ謙虚でなければならない。リーダーシップと傲慢を勘違いしてはならないのだ。