【文徒】2015年(平成27)4月10日(第3巻68号・通巻513号)

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1)【記事】出版社の倒産と新興勢力の台頭
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】出版社の倒産と新興勢力の台頭

東京商工リサーチによれば、企業倒産は全体的に低水準に推移しているが、出版業の2014年度倒産は3年ぶりに前年度を上回ったという。
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20150408_05.html
帝国データバンクによれば、出版業の倒産は前年度比5割超の大幅増だ。負債総額は、前年度(30億100万円)比で272.5%増となる111億8000万円。
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p150405.pdf
しかし、その一方で新たな出版社も生まれつつある。特に目立つのがIT産業の周辺から紙へと参入してくる勢力だ。今回、紹介するタイレル出版の創業は2009年である。
この新興出版社が、スマホをかざすだけで授業が見放題の参考書「基礎から動画で」シリーズ第1弾6冊を刊行した。
https://www.youtube.com/watch?v=DiEeCTI_mAk
タイレル出版の代表取締役の猿川雅之は「新卒で大手ベンチャーキャピタル企業に入社。国内IT企業を中心とした投資活動に従事」というキャリアの持つ主のようだ。
「2009年発足。2012年、元カリスマ予備校講師で現大学教授の土屋博映先生を名誉校長として迎え『みんなの受験ナビ』として、日本初のインターネット完全無料予備校を開講。その後、名称変更し『チノトポス』『チノポス』へ。2014年、(株)ヤフー様から『Yahoo! 知恵袋で大学受験対策 有名予備校講師初めてのWEB夏期講習』の業務委託を受ける。
この時のテキストを電子書籍としてYahoo!ブックストアから発売。教育分野の電子書籍、一般書籍を中心に、学校法人からの業務受託等も手掛ける。一般書籍には自社開発した、スマートフォンをかざすだけで無料講義を受けることができるシステム『カザストケル』を備える」
http://tyrell-publishing.co.jp/#ebook

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2)【本日の一行情報】

◎私も何度か指摘してきたことである。サイバーリテラシー研究所の代表である矢野直明が「プレジデントオンライン」で次のように書いている。
「現在の広告の雄はグーグルであり、その収入源はクリック連動型広告である。顧客には大企業もいるとは言え、数の上で多いのは中小企業や個人である。1件ごとの広告費は少ないが、それが積み重なってグーグルを世界有数の広告会社にした。まさに『ちりも積もれば山となる』。フェイスブックも、ツイッターも同じで、彼らはロングテールで商売している。これがインターネットの基本構造である」
http://president.jp/articles/-/14983

◎「小説家になろう」は、言わずと知れた小説投稿サイト。住野よるの「君の膵臓を食べたい」はタイトルからしてドキリとさせる。この作品が双葉社によって書籍化されることになったと住野は報告している。
http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/412514/blogkey/1128240/

◎日販は、BLコミック「セブンデイズ MONDAY→THURSDAY」と「セブンデイズ FRIDAY→SUNDAY」の2作品を、それぞれ実写映画化した。前編にあたる「セブンデイズ MONDAY→THURSDAY」は6月6日(土)より、また後編にあたる「セブンデイズ FRIDAY→SUNDAY」は7月4日(土)より池袋HUMAXシネマズで公開され、全国で順次劇場公開の予定。原作は大洋図書から刊行されている。日本最大の取次がBL映画を製作したということだ。
http://www.dreamnews.jp/press/0000110542/
http://sevendays-movie.com/

◎女性三人の同居生活を描く鳥飼茜のマンガ「地獄のガールフレンド」(祥伝社)。最近、読んだマンガの中ではイチオシだ。映像化向きだよね。鳥飼は「おんなのいえ」(講談社)で講談社漫画賞にノミネートされている。
http://www.shodensha.co.jp/torikai/

日本雑誌協会デジタル国際委員会によって、昨年12/27〜1/4に15社51誌が参加した「NEXT MAGAZINE」は900万PV以上を達成したが、再びゴールデンウイーク(4/28〜5/10)に開催されることになった。
今回は、17社61誌以上が参加予定だという。運営幹事会社はハースト婦人画報社小学館集英社、プレジデント社。女性誌だけなのが、私からすれば不満がないわけではない。加えて書店の店頭と連動させるような工夫も欲しいところだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000012118.html

双葉社は「週刊大衆」の中吊り広告を4月から中止した。「週刊大衆」がツイッターで報告した。
http://togetter.com/li/805352
「週刊大衆」のツイッターアカウントがリツイートしているけれど、「この世界のゲスさや猥雑さが凝縮さ(れ)たような広告は嫌いじゃなかった」とは言い得て妙だ。私もそう思う。

◎CM総合研究所による「2014年度 企業別CM好感度ランキング」(2014年4月度から2015年3月度)。
1位(3)KDDI au /三太郎シリーズ:学割・桃太郎の出生
2位(1)ソフトバンクモバイル SoftBank白戸家:お父さん回想する
3位(2)サントリー食品インターナショナル ボス/宇宙人ジョーンズとマツコと夏目:黒ドレスの女
4位(7)日本コカ・コーラ ジョージア山田孝之:海の家従業員
5位(4)トヨタ TOYOTOWN キャンペーン/ TOYOTOWN:のび太ジャイ子の娘
6位(5)花王 エッセンシャル/櫻井翔山本美月:触ってみて
7位(6)P&G ファブリーズ/松岡修造:枕リレー&夜のカーペット
8位(15)日清食品 カップヌードル錦織圭: SAMURAI ー K
9位(11)ダイハツ WAKE /玉山鉄二:WAKE 兄弟・ゴルフ
10位(12)味の素 クックドゥ山口智充:食欲全開・黄金比
()内は昨年の順位。
http://www.cmdb.jp/service/pdf/newsrelease2015spring.pdf

◎メディアドゥは、電子図書館プラットフォームの世界最大手であるOverDriveとの戦略的業務提携のもと、昨年から準備を進めてきた日本国内での電子図書館サービスの事業展開を4月から正式にスタートさせた。
http://www.mediado.jp/corporate/1172/

◎「読む人権 じんけんのほん いま読みたい じんけんマンガ50」が、東京都人権ブラザで開催されている。
http://natalie.mu/comic/news/143462
http://www.tokyo-jinken.or.jp/annai/annai.htm

◎2015年度(第46回)「講談社出版文化賞」が決定。さしえ賞はスカイエマ。写真賞は中井精也中井精也 写真集 1日1鉄!」(インプレスジャパン)。ブックデザイン賞は川添英昭。絵本賞は石川えりこ「ボタ山であそんだころ」(福音館書店)。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/20150408award(1).pdf

電通2015年3月度単体売上高。メディアはネットの一人勝ち。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015034-0407.pdf

◎石橋毅史の「口笛を吹きながら本を売る--柴田信、最終授業--」(晶文社)が刊行された。岩波ブックセンター柴田信のこれまでの生き様が描かれている。もともとは中川六平の企画だったんだよね。彼が柴田のもとを訪ね、柴田に石橋を紹介されて晶文社での企画がスタートしたと記憶している。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=3547

◎「飯田橋のふたばちゃん」に「宝島ちゃん」が初登場!
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1504/02/news045.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

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3)【深夜の誌人語録】

編集者とは自らが楽しむとともに、人々を楽しませる稼業である。