【文徒】2015年(平成27)4月27日(第3巻79号・通巻524号)

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1)【記事】掲示板から悲鳴が聞こえて来るKADOKAWAの窮状
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】掲示板から悲鳴が聞こえて来るKADOKAWAの窮状

ADOKAWAが実施した希望退職に232人の応募があった。予定していた300人には及ばなかった。当初、募集期間は3月2日から同月20日までと発表していたが、4月10日まで延長しての数字である。KADOKAWA・DWANGOは、2015年3月期に総額106億4900万円の特別損失を計上する見通しだという。
http://pdf.irpocket.com/C9468/Q8aV/l0P2/NWCF.pdf
掲示板が荒れるのは当然だろう。そのなかで真っ当な書き込みをピックアップしてみた。
「また仲間が去る。ここの会社、なんだかんだで社員は頑張ってる。管理する側がクソ過ぎるだけなんだよ。
そんなに金、予算っていうのであればトップダウンで仕事を取ってきて、それを社員にやらせればいい・・・
結局、上の連中、査定する連中は安全圏にいて逃げ切る事しか考えていない。少なくとも私は社員を人の人生として扱わない奴らを否定する」
角川歴彦佐藤辰男、松原眞樹の三人は、社員を大量リストラしておいて、自分たちの経営責任は棚上げでは、社内には殺伐とした空気が流れ、知らず知らずのうちに仕事も荒れてくるだろう。
角川歴彦氏に意見できる取締役が一人もいないからでしょ。佐藤辰男氏はどうやら角川氏から見限られたようだし、他にもそんな状況に嫌気がさして退任した役員もいるし。松原氏は良くも悪くも現場を知らないし」
角川歴彦氏は相当ドス黒い。春樹コカ事件の密告者も歴彦氏でしょ。因果応報、歴彦氏も川上から追放されるかもね」
ADOKAWAの経営は株価に振り回されるばかりで、社員と向き合おうとしなかったツケが、ここに来て一気に噴出してしまっているのだ。
「残留を選択した場合、7月には給与がD社の水準に合わせられます。出身本籍によっては相当のダウンになりますね。むしろ上がる本籍の人もいますが」
「実際、ここの編集は質が悪い。作家陣を大事にしないスタンスはやばい。いつ訴訟を起こされてもおかしくない事案ばっかり」
「歴彦の春樹への凄まじい劣等感が会社を暴走させたんでしょ」
ADOKAWAに残留する社員にしても地獄が待っているのは間違いあるまい。給与体系も未だに統一されていないままに中途半端なカタチでブランドカンパニー制を廃止するなど、事態が改善される要素がどこにも見当たらないとあっては、経営の求心力は低下するばかりだろう。
「残る方が地獄だよ…6月過ぎたら辞める」
「某転職サイトでカドカワ経理部門の正社員を大募集中、マネジメントもお任せします、だってよ。社員をリストラした意味なくない?経理部門なんて外部に丸投げすりゃいいんだよ」
「しっかり統合してさっさとこのギスギスした空気どうにかしないと、会社として破綻するのでは」
「なぜ一部bcだけのこる?不満ですわ」
「この調子だと給与体系の統一もずるずる引き伸ばしそうだな」
「エンブレとアスキーが抵抗しているせいで何も進まん。お気に入りのファミ通は事業移管したからもう満足やろ。他のグループの人間の事も考えろ」
「面談で執拗に退職勧奨された人が多くいたと聞いた。また退職を引き留められた人もいたと聞いた。規定は条件提示と意志表示の2回で済むはずなのに組合が抗議しているにもかかわらず3回以上面談があった人はそのどちらかなんだろう」
社内組織として「エンターブレイン」と「アスキー・メディアワークス」の名称を残してしまったことは混乱に拍車をかけるのではないか?
「旧角川書店(2006年以前)とメディアワークスアスキー除く)出身者が会社の根幹を牛耳っている。吸収した側だから仕方がないところもある」
「なんだよAMW局とeb局って中途半端すぎw。儲かってないくせに、どんだけリストラに抵抗したんだこいつら」
アスキー出身がごそっと辞めたという話だが・・大丈夫なのかねえ」
次のような言葉は重い。
「地道に働いてた同僚が去っていく 。残った人も顔色うかがうような感じで 殺伐としてきてやな空気」
http://www.logsoku.com/r/2ch.sc/zassi/1422702549/
問題はKADOKAWAだけではない。消息筋によればドワンゴニコニコ動画の現状を見ると危機は既に顕在化しているという。

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2)【本日の一行情報】

有隣堂は、楽天および楽天傘下の大阪屋の子会社であるリーディングスタイルと協業してオープンした小田急百貨店新宿本店10階の「STORY STORY」。もともとここには三省堂書店が入っていた。電子書籍端末「Kobo」の販売スペースはあるが、昨年6月に有隣堂ヨドバシAKIBA店で実証実験を行った書店で電子書籍が購入できるカード「BooCa」の販売は行わない。楽天からすれば「BooCa」は儲からないという判断に至ったのだろう。こういう経営の速度に出版業界がついていけるのかどうかが問われている。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20150423_699312.html

◎日販は、5月31日(日)まで、全国の130書店で「おはなしマラソン」読み聞かせキャンペーンを展開している。
http://www.nippan.co.jp/ohanashi_marathon/
http://www.asahi.com/and_M/information/pressrelease/Cdpress000111353.html

◎音楽ビジネスで進行していることは、とても示唆に富む。
オーディオレコードの生産金額は、1998年の6075億円をピークに、2013年は1985億円と、3分の1以下に減少。「音楽配信」のピークは2008年の1773億円がピークで、2013年は490億円にまで急減している。
サブスクリプション市場」は急増、2013年は27億円。「コンサート市場規模」は急速に拡大。
オーディオレコードのピークだった1998年の「コンサート市場規模」は711億円、2013年は2318億円と、3.3倍に急増し、2013年にCDの売り上げを初めて抜く。
ダイヤモンド社が「情報メディア白書」(電通総研編)を刊行。
「本書の特集Iと特集IIを読むと、音楽産業がインターネット動画を活用して告知し、ソーシャルメディアを連係させてファンクラブを大規模に組織化し、コンサートの動員に結び付けていることがわかります。」という。
http://diamond.jp/articles/-/70467
出版もイベントで利益を上げることを真剣に考えるべきだ。イベントを出版物を売るためのプロモーションと考えていては駄目なのである。発想を逆転させることも必要だ。

村上春樹をして「新潮社の校閲はとくにしっかりしていて、ゲラが真っ黒になって戻ってきます」と言わしめる新潮社の文芸出版社としての実力はやはり瞠目すべきものがある。
http://www.welluneednt.com/entry/2015/04/22/115528

産経新聞大阪本社サンケイスポーツ営業局の岸田浩晃広告部次長がタクシー運転手を殴ってけがをさせたとして逮捕された。
http://www.asahi.com/articles/ASH4R3PLXH4RPTIL006.html
酒精を飲んだら、飲まれるな!が鉄則である。

◎米国インターネット広告市場の2014年度年間売上高は前年比16%増の495億ドルとなり過去最高を更新、5年連続の2桁成長。米ではインターネットがテレビを抜き、その差を拡げつつある。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/14/110601779/042300164/

◎確かに「ニッチな分野に特化したSNSはこれからの成長分野」だと思う。FishBrainは「釣り」に特化したSNSである。
http://forbesjapan.com/translation/post_3612.html
出版社からすれば雑誌のSNS化という課題が見えてくるはずだ。私は何度も繰り返し述べて来たが、雑誌が垂直軸のコミュニケーションに依拠しているのだとしたら、雑誌のSNS化は、水平軸のコミュニケーションに雑誌を開いていくことに他ならない。

◎「わずか一期でNHK理事を退任することになった元ディレクターの退任挨拶」だそうだ。「公共放送NHKは、戦後初期の理想の時代が生んだ素晴らしい存在、残すべき価値のある公共財だと思っています」で始まる挨拶に一読の価値はある。
http://togetter.com/li/811109

◎トレンド総研による「書籍・電子書籍」についてのレポート。「紙の書籍だけを読む」と回答した人が77%、「電子書籍だけを読む」と回答した人は7%、「紙・電子書籍のどちらでも読む」人は16%。
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201504239633/

◎AUBE(オーブ)は、LINEアプリ上で利用が可能なアルバイト求人情報サービス「LINEバイト」の登録ユーザー数がサービス公開後約2ヵ月となる4月15日時点で200万人を突破したと発表した。
http://www.inte.co.jp/news/2015inte/20150423.html
求人情報と言えば昔は「紙」であった。

◎フジテレビ恒例の夏のイベント「お台場夢大陸〜ドリームメガナツマツリ〜」が7月18日から8月31日まで開催される。
http://www.oricon.co.jp/news/2052021/full/

サイバーエージェントは2014年10月〜15年3月期の連結決算を発表。売上高は29%増の1239億円。純利益が前年同期比99%増の98億円
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXLZO8607542023042015DTA000
これだけ急成長している市場を前に何もしないでは、雑誌は生き残れまい。

◎ロイターによれば、 ソニー の役員OBが平井一夫社長に対して創業者の井深大氏が起草した設立趣意書について現経営陣の「理解がない」といら立ち、「取締役会のメンバーのうち、実質的な社内取締役が平井社長と吉田憲一郎副社長の2人」だけという平井体制に不満を募らせているようだ。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL4N0XK5D520150424
ソニーから革新的企業だというイメージが消滅してしまったのは、1995年から10年間にわたってトップとして君臨した出井伸之の責任であることは間違いないように思う。

双葉社の「月刊アクション」で連載中の高野苺の「orange」が実写で映画化される。単行本は現在4巻まで刊行されているが、累計発行部数は150万部を突破し、世界9カ国で翻訳出版されている人気作である。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1504/25/news008.html
http://www.futabasha.co.jp/introduction/orange/pc/movie.html

◎「週刊実話」(日本ジャーナル出版)によれば、「下戸に近い人ほど胃がんになりやすい」そうだ。ちょっとした朗報だね。
http://wjn.jp/article/detail/6618387/

首相官邸の屋上でドローンが見つかった事件で逮捕された容疑者が「官邸サンタ」を名乗ったブログを公開していた。
http://guerilla47.blog.fc2.com/
この容疑者は、こんなシリアスなマンガも描いていたようだ。
http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-31607.html

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3)【深夜の誌人語録】

経験は未来を切り拓く武器となるが、狎れは未来を切り拓くにあたって障害にしかならない。