【文徒】2015年(平成27)7月6日(第3巻125号・通巻570号)

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1)【記事】栗田出版販売の債権を見てみよう
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.7.6 Shuppanjin

1)【記事】栗田出版販売の債権を見てみよう

客 栗田出版販売の「倒産」を細かく見ていきたいんだけれど。
主 未払金で最も大きいのは、図書カードを扱っている日本図書普及で6億3824万8千円。大阪屋55%、栗田45%の出資比率で立ち上げたOKCは5876万1千円。出版共同流通が1961万2千円。
客 支払手形ではKADOKAWAがダントツだと聞いたけれど。
主 2億9600万円あるからね。次に大きいのは主婦と生活社で3708万円。これに学研マーケティングの1910万円、NHK出版の1690万円が続く。
客 買掛金では…。
主 小学館 6億7142万9千円、
集英社 6億5725万円、
ADOKAWA 5億1112万6千円、
講談社 3億8284万円、
宝島社 2億5888万9千円、
デアゴスティーニ・ジャパン 1億8926万7千円、
スクウェア・エニックス 1億7551万円、
三栄書房 1億4904万円、
幻冬舎 1億2331万5千円、
学研マーケティング 1億463万円、
新潮社 9989万7千円、
文藝春秋 9193万2千円、
星雲社 9036万6千円。
客 講談社が意外と少ないんだね。
主 以下こう続く。
光文社 8926万3千円、
NHK出版 8711万2千円、
ベネッセコーポレーション 8576万1千円、
高橋書店 8489万7千円、
晋遊舎 8076万7千円、
インプレス 7845万8千円、
一迅社 7599万2千円、
技術評論社 7552万4千円、
エイ出版社 7296万円、
東京ニュース通信社 7175万7千円、
ホビージャパン 7169万9千円、
ソフトバンククリエイティブ 7003万8千円、
徳間書店 6715万7千円、
成美堂出版 6598万5千円、
芳文社 6478万6千円、
主婦と生活社 6465万3千円。
KADOKAWAは支払手形と合算すれば、8億712万6千円となるし、主婦と生活社にしても、1億186万3千円になる。もっと詳しく知りたければ「倒産・民事再生・債権者情報」で調べてくれれば良い。URLも掲げておこう。
http://www.asu-b.com/folder15/file2764.html

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2)【本日の一行情報】

◎日本出版者協議会副会長をつとめる晩成書房の水野久は、次のように書いている。
栗田出版販売の『連絡』では、6月25日までの取引債務を凍結したうえで、26日以降の取引は仕入については大阪屋が、物流・返品実務はOKCと出版共同流通が支援することで、事業を継続するとしている。
地域の読者につながりの深い中小書店との取引の多い老舗の取次、栗田出版販売にはぜひ再生してほしいが、どのような再生への道のりが示されるのか、FAXの文書では不明な点が多々あり、7月6日に行われる『債権者説明会』を注視したい」
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/

集英社の2015年5月期の通販売上高は計画通り前年比約30%増の45億円。通販新聞は次のように書いている。
集英社は、16年5月期の通販売上高は前年比約22%増となる55億円を計画しており、6月からゲスト購入をスタート。新客開拓のスピードを上げるのに加え、取引先ブランドとのデータ連携を加速するほか、サイトの高速化にも着手する計画だ」
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2015/07/45.html

◎「別冊少年チャンピオン」(秋田書店)の「魔法少女・オブ・ジ・エンド」と「少年ジャンプ+」(集英社)の「カラダ探し」という二つのホラーマンガのコラボが実現した。『「魔法少女・オブ・ジ・エンド」×「カラダ探し」〜魔法少女VS赤い人〜』は、前編を「少年ジャンプ+」、後編を「Championタップ!」で無料配信している。
http://mantan-web.jp/2015/07/02/20150701dog00m200056000c.html

NTTドコモの雑誌読み放題サービス「dマガジン」は1周年記念特別企画として32社75誌の「創刊号」を8月31日まで無料配信している。「dマガジン」の会員は200万人を突破している。
https://magazine.dmkt-sp.jp/magazine/category/first
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20150701_709710.html

◎「すたぴぃ〜あなたはもっと輝ける〜」はDMMゲームズ、レッド・エンタテインメント講談社の三社によるメディアミックスプロジェクトだが、スマホ用ゲームで新キャラクター「五十嵐 祐太」と攻略シナリオが追加された。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000260.000002581.html

講談社現代新書の「新・自衛隊論」を読了。冨澤暉、小原凡司、渡邊隆、林吉永、山本洋といった自衛隊出身者の論考が興味深かった。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062883207

◎「NEWSポストセブン」でオバタカズユキが次のように書いている。
専守防衛に徹したとしても、事が起きて殺す/殺される場に立たされるのは自衛官だ。命の危険性の高い仕事を命じられたとき、警察官や消防官は拒否する自由があるけれども、自衛官にはない。リベラルを自認する者こそが、そういう『弱い』彼らの立場から言葉を発するべきなのである。反戦運動に関わる者は、リアルな死を前提に声をあげてほしいのである」
http://www.news-postseven.com/archives/20150704_333670.html?PAGE=1#container

講談社の吉村浩・デジタル・国際ビジネス局次長は、中西享の「広がり始めた電子書籍市場  攻めるAmazon村上春樹で挑む新潮社」のなかで次のように語っている。
(紙と電子を)「同時発売にしたことで電子書籍の売り上げが増え、14年は13年と比較して電子書籍事業は6割伸びた。これからは宣伝ではないプロモーションを積極的に行い、SNSソーシャルネットワークシステム)なども使いながら、多くの人に発売されたことを気付いてもらえるような方法を考えたい」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5068?page=1

ソフトバンクとヤフーは、Yahoo! JAPANの子会社であるGYAOの運営協力を得て、Y!mobile利用者向けに月額500円(税抜き)で映像・電子書籍が見放題、読み放題のオプションサービス「エンタメパック」の提供を開始した。
http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2015/20150701_02/

福井県内を中心に活動する読書愛好者グループ「Have a nice book!」が、勝木書店グループの「SuperKaBoS(スーパーカボス)新二の宮店」で書籍フェア「勝木書店×HNB!『わたしのおススメ→だれかのキッカケ』」を企画した。7月31日まで開催されている。
http://fukui.keizai.biz/headline/147/
書店のソーシャル化である。

◎平成元年にスタートし、これまでに累計2,800万作品以上が応募している日本最大規模の創作公募コンテスト「伊藤園お〜いお茶新俳句大賞」の入賞作から厳選した107作品を紹介する書籍「お〜い俳句 伊藤園お〜いお茶新俳句大賞傑作選」がマガジンハウスから刊行される。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000011926.html

◎絵本「ビジードッグ」(実業之日本社)の刊行を記念して、「ヨハンナ・ラーソン×ジェームス・ブレーク対談」が7月22日(水)に代官山 蔦屋書店で開催される。翻訳は角田光代だ。
http://www.j-n.co.jp/event/?article_id=288

◎7月1日付読売新聞によれば「大館市の花岡鉱山で1945年6月、強制連行された中国人が過酷な労働に耐えかねて暴動を起こし、鎮圧などの際に400人以上が死亡したとされる『花岡事件』から70年の30日、同市花岡町の十瀬野公園墓地で『中国人殉難者慰霊式』が行われた」そうだ。
花岡事件に関して平岡正明朝倉喬司船戸与一、石飛仁がシンポジウムを開催したことがある。石飛を除いて、平岡、朝倉、船戸の三氏は既にこの世にはいない。
http://www.yomiuri.co.jp/local/akita/news/20150630-OYTNT50331.html

◎ 資生堂は「LINE」を使って、顧客別に情報を配信するサービスを開始する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ01HLO_R00C15A7TJC000/
http://japan.zdnet.com/article/35066830/

博報堂は7月1日付で中尾文美がグローバルビジネス担当の執行役員に就任した。同社にとって女性の執行役員は初めてのことである。
http://www.advertimes.com/20150702/article197019/

◎「コンテンツとテクノロジーとを融合させたサービスが展開できるような体制」も必要だろうが、KADOKAWAはその前に過剰生産による自転車操業から脱皮することが求められているのではないだろうか。
http://aplista.iza.ne.jp/f-iphone/231778
こんな文書がネットでは出回っている。
「特に現状などを調べてみるとわかるのが、一人で突っ走っていく会長に対して前時代的な考えでついていけない社員たちという構図がどうやら出来てしまっているらしく、もう少し頭を柔らかくして良いプラットフォームや、いい作品作りにつなげていただきたいと思いました」
http://www.kadokawa-gardencinema.jp/
角川書店のメディアミックス手法は商業的には巨大な金をうねらせ、吸い込むとてつもない妙策とはなりましたが、しかし、実際に作品を作ったことがない、作品を育てたことがなく、いわゆる他社版権をこねて稼ぐというマーケットのエンクロージャー(囲い込み)戦略だけという非常に心もとない状況が続いています。よって実際にドワンゴを買収したからといって、良質なコンテンツがバシバシ生まれる土壌が出来るとか、新たなマーケットが生まれるなどといった思考は正直あまり期待できなさそうです」
http://www.kadokawa-gardencinema.jp/kadokawa/
KADOKAWAの手放したドメインに突如として出現した「怪文書」である。
http://togetter.com/li/842150

石田衣良がメルマガ「石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』」を創刊する。石田は次のような危機感を抱いているという。
「個人的には、あと3年ぐらい後、消費税が2度目のアップをするぐらいのタイミングで、大手出版社の一角が倒産してしまうんじゃないかって、それぐらいの強い危機感を持っています。でも、出版の世界の人たちは、みんな『ネットで何ができるんだろうねぇ』と、まだのんびり構えている感じなので……」
http://www.mag2.com/p/news/19598
私はKADOKAWAがこのままでは危ないと認識している。

凸版印刷と子会社のBookLiveは、BookLiveが運営する電子書籍サービス「マンガ無料連載」と国内最大級の電子チラシサービス「Shufoo!」(シュフー)との連携を開始させ配信を拡大させた。
http://www.toppan.co.jp/news/2015/07/newsrelease150703.html
Shufoo!(シュフー)」は、日本の主婦を応援する「出産・育児・子育て支援」Projectも開始している。
http://www.toppan.co.jp/news/2015/07/newsrelease20150701.html

◎「クックパッドmagazine!」が宝島社から創刊された。
http://cookpad.com/articles/8104
オレンジページ」や「レタスクラブ」って必要なの?

朝日新聞出版の週刊誌「AERA」は、ユーザベースのグループ会社であるニューズピックスのソーシャル経済ニュース「NewsPicks」(https://newspicks.com/)とコラボし、2つの編集部が共同で企画・取材した特集「ニッポンから課長が消える?」を、7月6日(月)発売の「AERA」に掲載。また、同日からNewsPicksでもコンテンツを25日連続で配信する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000004702.html

◎「くすみ書房」の屋号で創業された久住書房は、6月29日、札幌地裁より破産開始決定を受けて倒産した。負債総額は約5億円。「平成23年7月期には3億2251万円の売上高をあげていた」が、「26年7月期の売上高も2億7500万円」であったという。
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20150703_01.html
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/economy/economy/1-0152946.html

◎ぴあが、複数のJリーグサッカークラブに提供している「空メール応募フォームシステム」で2692件のメール誤配信が発生した。
http://corporate.pia.jp/news/detail_0702.html

◎このブログは楽しみだ。鎌倉の「ブックスペース 栄和堂(仮)」が立ち上がるまでが記録されるようだ。
http://blog.eiwado.space/post/123169678140

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3)【深夜の誌人語録】

先手を欠いた仕事に迫力はない。