【文徒】2015年(平成27)7月7日(第3巻126号・通巻571号)

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1)【記事】7月6日、栗田出版販売「債権者説明会」を開催
2)【記事】「R25」が紙版を休刊し、デジタルへ全面移行
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.7.7 Shuppanjin

1)【記事】7月6日、栗田出版販売「債権者説明会」を開催

栗田出版販売の「民事再生申立てに関する債権者説明会」が7月6日、港区「ベルナール汐留」B1Fホールにて2回に分けて(版元向け:午前10時半〜。書店向け:午後3時〜)行われた。
版元側から出席した出版関係者によると、午前10時半からの回には1000人ほどの債権者が集まり「受け付け開始(9時45分)から5分ほどの時点で会場の席の8割ぐらいがほぼ埋まった」という。当然、その大多数は出版社からだったが、中には「版元の反応も見たい」という書店関係者もいたようだった(ただし質疑応答は出席者を番号で呼ぶ形式だったゆえに正確な所属はわからなかった)とのこと。
また、入場時には受付にてA4判で25ページに及ぶプログラム(?)が参加者に配布されたが、ここには「民事再生申立ての概要について(資産・負債・その他財産状況を示す直近3期の貸借対照表損益計算書など)」や「民事再生手続スケジュール」に加え「よくあるご質問と回答」という想定Q&A(全部で15問)も7ページに渡ってあらかじめ掲載されているという準備万端ぶり。
「そのうえでまずは山本高秀社長による『お詫びのご挨拶』、続いて会社からの説明があり、『民事再生手続が終わり次第、山本社長と下村賢一取締役は退任します』ということも含めた話がなされたのですが、会社側からの直接の発言はここまで。後は民事再生申立代理人の弁護士たちが今後の手続についての説明のうえ質疑応答に応える形で、会社側からの発言は全くありませんでした。
ちなみに代理人弁護士(千代田区丸の内「弁護士法人 淀屋橋・山上合同」を連絡先とする計10名)はみな言葉が関西弁で『ようするにこれは大阪屋マターなのかな』と聞きながら思ったものでした」(上記の出席者)
 続いて行われた質疑応答は、プログラムに「よくあるご質問と回答」まで用意されていたこともあってか最初のうちは粛々と進んでいたが、やはりそこは約1000人と見られる債権者が集まったこともあって、終盤にかけて「それなりに紛糾した」(同上)。
質問のほぼ100%近くはやはり返品の問題で、特に6月25日以前の返品が大阪屋経由で戻ってくることについて「よくあるご質問と回答」の「Q5」で、
《返品が予定されている出版物の取引は、買主のみに片面的な解約権がある売買取引です。
したがって、旧商品の買主である栗田出版が出版社様に返品する場合には、買主としての解約権が行使されたものであるため、出版社様には返品を受け入れていただく義務があります。
他方、大阪屋は、旧商品の買主ではないため、買主としての解約権の行使としての返品をすることはできません。
実務対応説明書において、「返品」との表現を用いておりますが、これはわかりやすく表現したものであって、法的に正確に表現すれば、大阪屋が、出版社様に対し、新たな取引として、大阪屋が栗田出版から買い取った出版物を買い取っていただくことを申し込むものであり、出版社様において、これに応じていただく義務まではございません。なお、この場合の買い取り代金額としては、栗田出版と出版社様の間の代金額と同額とすることをご依頼・ご提案するものです》(説明会プログラムの16〜17ページ)
などと説明されている部分については参加した債権者たちもやはり穏やかでないものを覚えたようだ。
「ようするに大阪屋が栗田出版から返品を買い取り、それをまた版元に売るという話ですからね。『返品を受け取らない場合は栗田に連絡を』という話でしたけど、書籍はともかく雑誌の場合はまるで伝票を買い取っているようなもので……。
代理人弁護士も『返品の問題については法的には(上記のやり方で)正しいが、出版取引における慣習も鑑み、希望に適えられるような努力はします』と説明していましたが、どうも今回のケースではあらかじめ妙なスキームを組んだうえで押し付けられている感じがして、会場内にも出席者のもやもやした怒りが漂っているのが感じられました。確かに、これが妙な前例として今後また何か起こった時に通用してしまうのもよくないですし」(同上)。
そのほかにも債権者たちからは
「計画倒産と見られても仕方がないケースだ。今後は透明性のもとに情報開示を行ってほしい」
「ここに出版共同流通と大阪屋から担当者が来ていないのは何故だ」
「資金繰りが苦しい版元が連鎖倒産に巻き込まれないか心配だ」
「本の著者にも印税が払えない」
「前期から今期にかけて債務が膨らんでいるのは何故だ(代理人からは「関連会社の減損処理をしたため」との旨の回答があったとのこと)
といった声があがったそうだ。
また、代理人からも「今回は比較的債務超過が少ないが、これは金融機関からの借り入れがなかったからで、そういう意味では珍しい」と、異例のケースであることを認める発言も出たとか(既に社屋も売却するなどして資産がないために金融機関から借りられなかったということなのだろうが)。
ただし全体としては終始「それほど悲惨なことにはならないのではないか、それにここでまとまらないと書店様にご迷惑がかかる……という感じで話が進んでいった」(同上)そうで、参加者の中には質疑応答の途中で席を立って帰っていく人もぼちぼちいたとか。
なお、以上のこの日の会合は「債権者説明会」であって「債権者集会」ではない。今後の手続の流れを記したスケジュール(プログラムの8ページ)によれば、債権者集会期日・認可決定は11月下旬。認可決定の確定は12月下旬を予定しているという。(岩本太郎)

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2)【記事】「R25」が紙版を休刊し、デジタルへ全面移行

R25」と言えばリクルート電通の合弁企業Media Shakersによるフリーマガジンとしてリクルートホールディングス発行で2004年7月に創刊された。私などからすると、4色1頁の広告料金が最も高い雑誌として認識されている。
そんな「R25」が、来たる9月発行号をもって「紙版」を終了することになった。10月1日から「web R25」とブランド統合し、今後「R25」はデジタルデ バイスでの情報提供を主軸にしたメディアへとリニューアルされることになった。
思い切ったデジタルシフトだが、決して不思議な選択ではない。電車内をスマホが占拠している光景をからすれば、むしろ当然の選択と言えよう。
R25」は販売収入をハナからあてにしていないフリーマガジンだったから、このようにデジタルシフトを決断することができたとも言えるだろう。
では、販売収入を収入源とする紙の雑誌は、紙であることをやめ、フリーウエブマガジンに移行して生き残る可能性は果たしてあるのだろうか。少なくとも、紙の雑誌はこの問いに正面から向き合ってみる必要はあるだろう。
R25」のように紙から全面撤退するのではなくとも、重心を紙からデジタルに移行するという選択肢もあるはずだ。
http://mediashakers.co.jp/wp-content/uploads/2015/07/R25%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E7%B5%B1%E5%90%88%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B.pdf

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3)【本日の一行情報】

学研教育出版は、「書籍+アプリ+動画」で新しい学びを提案する、陰山英男監修の「おうちゼミシリーズ」を3000円台で発売した。対応アプリや動画の利用にも追加料金は一切必要ない。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000509.000002535.html
アプリを開発したのはODKソリューションズだ。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1265506

大日本印刷とミライトは、公衆Wi-Fi機能付きデジタル情報スタンド「PONTANA」(ぽん棚)」上で、電子書籍を気軽に閲覧・購入ができる書店「honto.jp」のサービスを2015年内に開始する。2020年度までに全国50,000ケ所への設置を目指すそうだ。
http://www.mrt.mirait.co.jp/info/3018.html
http://www.dnp.co.jp/news/10112198_2482.html

朝日新聞社集英社による教育プロジェクト「本と新聞の大学」が受講生を募集している。全8回で69,120(税込)。定員は78名。
http://www.hontoshimbun.jp/
姜尚中東京大学名誉教授)と、一色清朝日新聞社教育コーディネーター)の2人がモデレータ―をつとめるだけあって、リベラル色が濃い。

◎プロジェクト8が、「SPUR.JP」「MAQUIA ONLINE」のウエブディレクター、ウエブエディターを募集している。
http://www.wwdjapan.com/fashion/2015/07/06/00017033.html

◎3日に発売された集英社の「ONE PIECE」コミックス78巻の初版発行部数は380万部。
77巻の初版で400万部を切ったが、78巻は77巻の水準を維持した。
http://mantan-web.jp/2015/07/03/20150703dog00m200001000c.html

◎「小学館キャラパーク」は7月5日(日)をもって、営業終了。7月15日(水)コロコロ公式ショップ「コロコロBASE〜コロコロひみつ基地〜」がオープン。ららぽーと富士見でのハナシ。
http://www.lalaport-fujimi.com/info/10286329_24559.html

講談社とパイプドビッツは、女性ファッション誌「ViVi」のEC事業展開に関して、パイプドビッツが出資する新設会社「ウェアハート」と講談社との間で、業務提携することになった。講談社が情報の提供を行い、システム開発、サイト構築、商品の仕入れおよび物流等については、ウェアハートが担う。
http://www.pi-pe.co.jp/ir/news/2015/20150703_01.html

ツール・ド・フランス開幕前日となる7月3日(金)からパリ・シャンゼリゼにゴールする26日(日)まで、講談社現代新書ツール・ド・フランス」(山口和幸)の電子書籍版が半額になる。
http://cyclestyle.net/article/2015/07/03/24798.html

電通サイバー・コミュニケーションズは、アニメ有料放送局「アニマックス」を運営するアニマックスブロードキャスト・ジャパンと共同で、アニマックスが提供するアニメ動画コンテンツ配信サービス「アニマックスPLUS」におけるインターネット動画広告事業を2015年8月1日から開始する。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0703-004088.html

東京堂書店の元店長であった佐野衛の次のような発言に全く同感である。
「利益のために出版の理念を曲げることが、90年代のバブル以降、平気で行われるようになりました。
私が書店で定点観測してきて最もひどいと感じたのは、エンターテインメント系の本の粗製乱造です。作家は使い捨てになってしまうからかわいそうです」
http://dot.asahi.com/wa/2015070100082.html?page=1
「良い本」の読者であることが出版人の条件である。そういう出版人が減っているから市場はますます縮小する。

経営コンサルタントの山田修が次のように指摘している。
「ヨドバシのネット通販での売り上げは、14年3月期に650億円に達したとされる。15年3月期には1000億円に到達するのではないかという観測もあった。国内年商2000億円といわれるアマゾンの売り上げを追い抜くと期待されているのがヨドバシだ。ヨドバシ.comでカバーしている商品数は300万点を超え、家電という枠をとっくに外れている」
http://biz-journal.jp/2015/07/post_10595_3.html
ヨドバシ.comはネット書店でもある。
http://www.yodobashi.com/ec/feature/81001_811000000000000000/index.html

◎特集上映「デビュー50周年記念 女優・梶芽衣子」が7月18日から東京のシネマヴェーラ渋谷で開催される。何を隠そう、私が最も好きな女優が梶芽衣子である。
http://www.cinemavera.com/schedule.php?id=160
「女囚701号/さそり」(伊藤俊也)、「修羅雪姫」(藤田敏八)、「仁義なき戦い 広島死闘篇」(深作欣二)、「女番長 野良猫ロック」(長谷部安春)がリストに入っていないのが不満ではある。

石破茂の「自民、感じ悪いよね」という一言がツイッターでちょっとしたブームになっている。
http://www.asahi.com/articles/ASH725HLVH72UTFK018.html
http://togetter.com/li/842054

ジャストシステムの「定額制音楽ストリーミングサービスに関するアンケート調査」によれば、「利用している」という人は、全体の35%。興味深いのは無料トライアルを利用している人に、今後の利用意向を尋ねると、「無料期間が終わったら解約したい」という人が63.3%にものぼったことだ。
http://www.rbbtoday.com/article/2015/07/03/132926.html

◎「ニコニコアプリ」で、ユーザーがゲーム実況を行うことができるゲームタイトル数が合計50タイトルになった。
http://gamebiz.jp/?p=146052

半藤一利保阪正康による「文春トークライブ 『日本のいちばん長い日』を語る」が8月11日にイイノホールで開催される。入場料は5000円。
http://www.bunshun.co.jp/info/150702/
私たちは半藤、保阪が「左」に見える時代に生きている。

◎ミステリー作家の石持浅海さいたま市中央区の「ブックデポ書楽」を舞台に短編小説を書いたことがある。このことを知ったブックデポ書楽は石持の学園ミステリー「フライ・バイ・ワイヤ」(東京創元社)の文庫化に合わせてフェアを開催中だ。
http://www.saitama-np.co.jp/news/2015/07/04/11.html

主婦と生活社の「週刊女性」6月23日発売号は、「嵐の宮城公演、開演時間30分繰り上げに松本潤『なんで?』」なる記事で、9月開催の嵐による宮城公演が、非常にアクセスが不便な場所であることから、国会議員の要請により急きょ公演のスタート時間が変更になったと報じたが、ジャニーズ事務所はオフィシャルWebサイト「Johnny's net」で「週刊女性」を名指ししなかったものの反論している。こうしたケースは稀というか、これまでなかったのではないだろうか。
「9月19日・20日・22日・23日に、ひとめぼれスタジアム宮城において開催予定の「ARASHI BLAST in Miyagi」に関し、一部週刊誌において、交通アクセス等に数多くの問題があり、そのことについて国会議員の方からのご指摘を頂いたことが契機となって、開演時間を繰り上げた旨の報道がなされています。
しかしながら、『ARASHI BLAST in Miyagi』の開催決定に当たっては、主催者において、予め宮城県庁とも十分協議をさせていただいておりますし、開演時間の変更は、ファンの皆様の交通アクセス等や体調に配慮したいというタレントと主催者の希望によるもので、外部の方からのご指摘を頂戴して変更した事実はございません」
http://www.johnnys-net.jp/page?id=matters

◎昨日の「文徒」で栗田出版販売の「倒産」によって生じた講談社の債権を「意外に少ないんだね」と書いたが、この「3億8284万円」は3月末の債権残高であり、実際はこの二倍以上の債権が存在するという。

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4)【深夜の誌人語録】

「避ける」と「逃げる」は違う。前線から「逃げる」のではなく、前線にとどまるために「避ける」のだ。