【文徒】2015年(平成27)5月18日(第3巻90号・通巻535号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】電通の2015年3月期連結決算
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.5.18 Shuppanjin

1)【記事】電通の2015年3月期連結決算

電通は、国際会計基準による2015年3月期連結決算を発表。
収益が7286億円(前期比10.4%増)、当期利益が798億円(前期比20.1%増)の増収増益となった。
注目すべきは売上総利益。国内事業が3339億9500万円(前期比1.7%増)、海外事業が3432億3200万円(前期比19.6%増)と海外事業が国内事業を上回った。創業以来、初のことだ。海外事業は、アメリカ、ヨーロッパ、アジアともに前期を上回っている。
日本基準の単体では売上高1兆5351億500万円(前期比1.3%増)、当期純利益639億5000万円(同36.2%増)とサッカーワールドカップや企業の業績回復もあって好調だった。
グループ全体でのデジタル比率は30%に達しているというほどにデジタル化で電通は大きく変わったが、グローバル化でも大きく変わろうとしている。成長の舞台を国内から海外にシフトしようとしているのだ。成長領域で25件のM&Aを実行し、M&A投資額361億円に及んだというが、成長領域とはデジタルとグローバルなのである。今期から決算期を12月に変更するのもグローバル化の一環であろう。
今後、役員人事もデジタル化とグローバル化を大きく反映することになるのかもしれない。
http://www.dentsu.co.jp/ir/data/pdf/2015EAPREJ0.pdf
http://dentsu-ho.com/articles/2529
電通のデジタル化、グローバル化のテンポが緩むことはない。英国のコンテンツマーケティング会社「John Brown Media Group Limited」(ジョン・ブラウン・メディア社)の株式85%の取得で合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0514-004050.html
ここって昔は雑誌出版社だったんだってさ!

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】

三省堂書店は、小田急線経堂駅北口の経堂コルティに4月24日、雑貨店「神保町いちのいち経堂店」を出店した。これで4店舗目、書店内ではない単独出店としては2店舗目になるそうだ。
http://shimokita.keizai.biz/headline/2265/
単独出店は失敗するのではないだろうか。

◎日販発表による4月の雑誌・書籍・コミック売上動向。雑誌・書籍・コミック合計売上は前年同月比4.3%減。書籍は4.1%減。コミックは1.9%減。
http://ryutsuu.biz/sales/h051315.html

徳間書店が即戦力の編集スタッフ(契約社員)を募集している。「月給25万円〜」という条件だ。
http://www.tokuma.jp/topicsinfo?tid=7611

◎純利益で過去最高の30億円となったテレビ東京ホールディングスは、高橋雄一副社長が6月19日付で社長に昇格。テレビ東京の社長もつとめていただけに、まあ順当な昇格なのだろう。日経では米州編集総局長、編集局長、日本経済新聞デジタルメディア社長、日経常務、日本経済新聞出版社副社長をつとめている。
また、BSジャパンは、社長に日本経済新聞社の小孫茂副社長が6月17日付で就任する。小孫はテレビ東京ホールディングス副社長も兼務。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ13H9Z_T10C15A5XV0000/
日本のテレビ業界は新聞社で社長になれなかった連中が溢れかえっている。

◎5月23日より東京のシアター・イメージフォーラムで「大島渚レトロスペクティヴ」が開催される。私は「儀式」を10回くらい見ている。「少年」とかも好きなんだよなあ。
http://natalie.mu/eiga/news/146767
「太陽の墓場」「青春残酷物語」が上映されないのが淋しいけれど。

博報堂は、中華圏事業の拡大と域内統括機能を強化するために、上海市に「博報堂インターナショナルチャイナ」を設立した。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2015/05/20150514.pdf

博報堂は、地方自治体が地域の創生に関わるさまざまな政策を立案・施行していくにあたって、マーケティング、コミュニケーション上の課題解決をはじめ、地域社会における新たなマーケティングのあり方を支援する専門ビジネス組織「地域創生ビジネス推進室」を設立した。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2015/05/20150514_2.pdf

博報堂・大広・読売広告社 の4月度売上高。三社とも前年比を上回った。
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr/tdnetg3/20150514/9a3y0d/140120150513475789.pdf

電通4月度単体売上高。全社で前年比114.1%と好調。そうしたなか新聞とラジオが不調だ。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015045-0514.pdf

日本郵便は、女性誌「Kiite!」(きいて!)を22日から全国約2万カ所の郵便局で販売すると発表。女性向けに旅、食、生き方、健康などの知りたい情報を取り上げている月刊誌で、発行元は産経新聞社。340円。
http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2015/00_honsha/0513_01_01.pdf
http://kiite-kiite.com/

佐藤卓己が5月14日付毎日新聞で次のように書いている。<有山輝雄「『中立』新聞の形成」(世界思想社)は、「中立」を金科玉条とする日本型ジャーナリズムがどのようにして成立したのかを実証的に分析している。たとえば、「大阪朝日新聞」は三井銀行を通じた明治政府の秘密資金援助によって全国紙に発展した。こうした「中立」新聞は、国家から主体的には自由な新聞だが、体制維持に不可欠なコミュニケーション装置という意味では「汎権力」装置である。そうした「半権力」状況を前提としない限り、政権批判もメディア批判も有効ではない>
http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20150514org00m070003000c.html

◎メディアドゥは、新開発のタテヨコ自在読み機能「ユニバーサルフリック」(2015年4月7日特許及び商標出願済み)を搭載した本棚&ビューアアプリ「MD Viewer」の提供を開始した。「MD Viewer」連携の電子書籍ストア第一弾として、メディアドゥが運営するWebストア「コミなび」に対応させる。雑誌を読むのには便利だ。
http://www.mediado.jp/service/1178/

KADOKAWA・DWANGOは、2015年3月期の連結決算を発表。売上高1005億6600万円、営業利益13億9100万円、経常利益24億7200万円、最終利益140億5500万円。ただし、これは2014年10月から2015年3月までの6カ月決算。
内訳を見てみよう。
書籍IP事業は売上高383億4300万円、セグメント利益(営業利益)30億3800万円。
情報メディア事業は売上高159億5300万円、セグメント損失(営業損失)11億6400万円。映像IP事業は売上高158億6600万円、セグメント利益(営業利益)9億8700万円。
ポータル事業は売上高95億6500万円、セグメント利益(営業利益)13億7700万円。
ライブ事業は売上高11億9100万円、セグメント損失(営業損失)4億5900万円。
モバイル事業は売上高49億6600万円、セグメント利益(営業利益)17億5600万円。
ゲーム事業は売上高71億6900万円、セグメント損失(営業損失)10億1500万円。
「当期に大きく売上を伸ばした電子書籍は、成長を一層加速させるべく、電子書籍販売プラットフォ ーム『BOOK☆WALKER』を中心としながら、外部販売サイトへのコンテンツ配信も強化することで、飛躍的な収益拡大を目標としてまいります」
としているが、決算の数字ほどにはKADOKAWA・DWANGOの経営は楽ではあるまい。楽でないからKADOKAWAはリストラに踏み切ったのである。
http://pdf.irpocket.com/C9468/ee2V/Ph8U/o4BQ.pdf
http://gamebiz.jp/?p=143902

集英社が刊行した門田隆将「風にそよぐ墓標 父と息子の日航機墜落事故」の出版差し止め命令が確定した。時事ドットコムは次のように書いている。
「問題となったのは、日航機事故を題材にした2010年出版の門田氏の著作「風にそよぐ墓標」。事故で夫を亡くし、96年に『雪解けの尾根』を出版した大阪府の池田知加恵さんが訴えていた。
二審知財高裁は、一審東京地裁判決とほぼ同様に、門田氏の著作のうち14カ所の記述が、池田さんが手記で記した感情表現と酷似しており、『利用する許可を得たと認める証拠はない』と指摘。著作権侵害に当たり、精神的苦痛を受けたと判断した」
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201505/2015051400768&g=soc
門田は自らのブログで次のように書いている。
「もちろん、手記本と同一の文章はひとつもない。忠実にただ『事実』だけを淡々と描写させてもらったのだ。事実がひとつしかない以上、突き詰めて取材すれば、『事実』が当事者の手記と似ているのは当然である。いや、似ていなければ、それはノンフィクションではなく、小説である」
http://www.kadotaryusho.com/blog/2015/05/post_785.html

◎第22回松本清張賞に、額賀澪の「ウインドノーツ」。第16回小学館文庫小説賞は、額賀澪の「ヒトリコ」。というわけで、受賞作2作を6月26日同日発売とし(「ウインドノーツ」は「屋上のウインドノーツ」と改題)、文藝春秋小学館はコラボ・プロモーションを実施する。
http://www.sankei.com/life/news/150427/lif1504270006-n1.html
http://www.sankei.com/life/news/150513/lif1505130015-n1.html
http://www.bunshun.co.jp/award/matsumoto/
http://bp.shogakukan.co.jp/shogakukan_bunko16/
http://www.art.nihon-u.ac.jp/blog/2015/05/%E3%80%90%E6%96%87%E8%8A%B8%E5%AD%A6%E7%A7%91%E3%80%91%E5%8D%92%E6%A5%AD%E7%94%9F%E3%81%AE%E9%A1%8D%E8%B3%80-%E6%BE%AA%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%8C%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E6%96%87%E5%BA%AB%E5%B0%8F/


大日本印刷の2015年3月期の連結決算は、売上高は約1%増の1兆4621億円。営業利益が約4%減の481億円、純利益は5%増の269億円。
http://www.dnp.co.jp/ir/pdf/fin201505.pdf
資本効率の向上を図るとともに、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を実行する ため、200億円を上限とする自社株買いを発表。自社株買いは約7年ぶり。
http://www.dnp.co.jp/topic/__icsFiles/afieldfile/2015/05/14/info_150514_2.pdf
さらに、発行済み株式の約2.9%にあたる2000万株の自社株を28日に消却することも発表した。
http://www.dnp.co.jp/topic/__icsFiles/afieldfile/2015/05/14/info_150514_1.pdf

三島由紀夫賞は上田岳弘「私の恋人」(「新潮」2015年4月号掲載)、山本周五郎賞は柚木麻子の「ナイルパーチの女子会」(文藝春秋)に決定。
http://ddnavi.com/news/239295/

ウナギイヌの手拭いがムック「赤塚不二夫80年ぴあ」の附録となる。
http://hatenanews.com/articles/201505/23514
こういう企画って内容を確かめずに「勢い」と「ノリ」で買っちゃうんだよね、オレ。

◎飲食店支援サイト「飲食店.COM」を運営するシンクロ・フードは、「食」にまつわるWEBマガジン「Foodist」(フーディスト)を5月14日に創刊した。
http://www.synchro-food.co.jp/press/detail/264
業態別の給与ランキングで1位がラーメン店なんだなあ。
http://www.inshokuten.com/foodist/data/179/

KADOKAWAの「CD&DLでーた」は、元気がでる曲のランキングを発表。第1位は「負けないで」ZARD)。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001510.000007006.html

トーハン「ほんをうえるプロジェクト」の一環として企画されたダンボール自販機制作キット「クレヨンしんちゃん 親子で作るミニコーラ販売キット」の売れ行きが好調だそうだ。
http://ichigaya.keizai.biz/headline/2147/

◎全国の公立図書館数で、「電子図書館」サービスを導入している図書館は約1%に過ぎない。読売新聞は次のように書いている。
電子書籍検索サイト運営会社『hon.jp』の推計では、市場に流通する電子書籍は75万タイトル超。だが、図書館が貸し出せるのは、そのうち数千〜1万数千とみられる。電子書籍の場合、貸し出しは著作権法の『公衆送信』にあたり、紙と違って著作者の許諾が必要になるからだ」
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20150508-OYT8T50060.html?from=ytop_ymag

◎マンガ家のピョコタンは「多摩あるある」のイラストを描いたが、版元のTOブックスから原稿料22万円が支払われず、「ニコニコ生放送」で暴露した。
http://getnews.jp/archives/956166

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムDAC)、米国アクシオムコーポレーションの日本法人であるアクシオムジャパンと、博報堂DYメディアパートナーズは、DACが提供するデータ・マネジメント・プラットフォーム「AudienceOne(R)」とアクシオム社が提供するデータオンボーディングサービス「LiveRamp Connect」とを連携し、共同で効果的な広告配信を行うことになった。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/service/20150513_10042.html

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

一分の隙もない人間に情報は集まらない。一分の隙が他者を安心させるのである。