【文徒】2015年(平成27)5月21日(第3巻93号・通巻538号)

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1)【速報】小学館が「All WebMedia 2015」を開催(5月20日
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【速報】小学館が「All WebMedia 2015」を開催(5月20日

 小学館では初めてとなるWebメディアに特化した形での説明会「All Web Media 2015」が昨日14時から、現在仮本社のあるTKP竹橋ビル2階の大ホールで開催された。
総計で月に約2億2000万pvを誇る、出版社が運営するウェブメディアでは国内最大級とも言われる小学館だけに、新規企画の発表も含めたプレゼンは約2時間に及ぶなかなかボリューム感に溢れたものとなった。
プレゼンターを務めたのは以下の5氏(登壇順)。タイトルの通りまさに小学館のWebメディアが勢揃い。

1. 嶋野智紀氏
『Woman Insight』ほか担当。女性誌編集局プロデューサー兼メディア事業局長
2. 藤井敬也氏
『美レンジャー』『Menjoy!』『WooRis』『BizLady』『VenusTap』の5サイトの編集長&総合プロデューサー。デジタル事業局コンテンツ開発室長
3. 水野麻紀子氏
『@DIME』『サライ.jp』『BE-PAL』『Suits.woman.jp』などを担当するライフスタイル誌事業局チーフプロデューサー
4. 鈴木崇司
『NEWSポストセブン』プロデューサー
5. 伊藤真嗣氏
広告局雑誌ブランドビジネス室課長

 まず最初に登壇した嶋野氏は、『Woman Insight』がスタートしてから1年半の実績についての手ごたえを語った後、今秋より新たに「体験共有型の大人のラグジュアリー情報Webサイト」(名称は未定)を開設することを発表。その背景として「高級品については顧客にとって信頼に足る情報を提供するサイトが少ない」との見方のもと「実はかつては雑誌がそうしたニーズに応える存在だったのではないか。そこに私たち出版社が“信頼できる第三者”として、これまで雑誌編集で培ってきたノウハウや人脈をもとに応えていきたい」と抱負を語った。
 次に登壇した藤井氏は、トレンド総研が女性向けニュース・情報サイトについて行ったアンケート調査で、『美レンジャー』『Menjoy!』がそれぞれ2位・7位になったことも披露しつつ、ネイティブアドを活用した広告効果の可視化プランについて説明。これまでのpvやClickなどの数的な指標だけでは計測が困難だったネイティブアドの効果や、最終的に消費者が商品の購買やブランド認識に至るまでの態度変容のプロセスをいかに可視化するかについて念入りな説明を行った。
 ライフスタイル編集局の水野氏は、この7月からローンチする『PETomorrow』(ペット関連)、『Men'Ss Beauty』(男性向け美容関連)という2つの新たなジャンル特化型Webメディアを紹介。「今では全国にペットの犬猫が約2100万に対して15歳以下の子供の人口は約1600万人」「男性美容市場は今や年間1000億円強」といった数値を引き合いに出して会場を沸かせながら、それぞれのメディアとしての将来性をアピール。
『NEWSポストセブン』の鈴木氏は、今や雑誌からは離れたオリジナルコンテンツが約4割を占め、月に9650万pvを獲得するニュースサイトの雄にまで成長した現状に触れつつ、新たな展開としてコメント欄の拡充によるサイトの活性化、および広告メディアとしての機能強化策として7月から動画(YouTube)掲載オプションを設けることについて説明した。このコメント欄の拡充については『出版人・広告人』連載筆者の高木利弘氏が取締役であり、同4月号でもスタッフへのインタビューを掲載した、コメント管理システムを運営する会社Quelon(クーロン)が協力している。
 最後に登壇した広告局の伊藤氏からは、小学館のWeb広告売り上げが2011年からの3年間で271%もの急成長を遂げてきたこれまでの経過において、やはり2012年頃から進めた「スマホ最適化」が一つの節目だったとしたうえで、さらなる今後の施策として、キュレーションサイトの「Antenna(アンテナ)」との協業や、Instagram活用による情報の拡散を通じたブランド力の向上を図っていくとの旨の説明がなされた。
 このように、既にいずれも媒体として相当なパワーを発揮している小学館のWebメディア群だが、出版業界でも比較的取り組みが早かったことを思えば、こうした全Webメディア一斉の発表会は今回が初めてだったというのは、むしろ遅すぎた感すらある。
とはいえタイトル末尾に「2015」とあることからも今後も継続的に開催されていくと思われるだけに、次回以降も楽しみなところだ。(岩本太郎)

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2)【本日の一行情報】

総務省による「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」が発表された。これによれば、スマートフォンの利用率が全体で6割超。年代別で見ると、20代94.1%、30代82.2%、40代72.9%、50代48.6%。モバイル機器からのインターネット平均利用時間は平成24年調査から34%増加し、50.5分(平日)。ソーシャルメディアの利用率が全体で6割超。
これを年代別に見ると、20代95.0%、30代82.6%、40代70.3%、50代45.9%。ソーシャルメディアを利用した者の利用時間は平均70.9分(平日)。それにしても、だ!「主なメディアの利用時間」というところを見て欲しい。「主なメディア」として揚げられているのはテレビ、ネット、新聞、ラジオ。そこに雑誌の名前はない。ということは雑誌は「主なメディア」に数えられていないということである。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000357568.pdf
「第III部 メディアの利用目的とメディアイメージ」には雑誌の二文字が見えるものの雑誌への言及はないと言って良い。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000357570.pdf
編集者諸君!今こそ雑誌の怖さを見せつけよ!そういう気概を失ったならば、雑誌なんてみんなから見捨てられちまうぜ。

◎「これが愛知県の某高校の実態」として投稿された教師が生徒に突き飛ばされる動画が話題になっている。本当なのだろうか?「Buzz+」は、次のように書いているのだが。
「インターネット上では、生徒に対して怒りの声が寄せられている。しかし『数年前の動画』『昔話題になった動画』『ヤラセだ』との情報もあり、情報が錯綜している」
http://buzz-plus.com/article/2015/05/18/boryoku/

◎「withnews」が朝日新聞の飛び地であるとは言い得て妙だ。「withnews」の奥山晶二郎が次のように語っている。
「『ジャポニカ学習帳』だけだと、通常の新聞の現場ではそこまで大きな話じゃないだろうみたいに思われてしまう部分もあると思うんですよね。しかし、ネットであれば、『まず読ませないといけない』ですから『ジャポニカ』というキャッチーなアイコンが大事なんです。その上で、その事象の背景みたいなところまで踏み込んで説得力のある記事が書けるかどうか、というのは従来のメディアならではなのかなと考えています。この記事は最終的に新聞紙面にも載りました。
いままでのメディアのやり方だと、重厚な内容のものを直球勝負で『大事なんだから読んで当たり前だよね』といって、投げ続けていた部分があると思うんです。そこは反省というか、今までとは違った記事の読ませ方もあるんだということを学んでいます」
http://blogos.com/article/112184/?p=1
雑誌にも「飛び地」が必要だ。「飛び地」は一つではなく沢山あったほうが良いだろう。編集者一人が一つのネットメディアを運営する。できないだろうか?

◎米雑誌編集者協会(ASME)が10年ぶりに行ったガイドラインの改定で表1の広告スペース販売を奨励しない方針が削除されたそうだ。
http://dentsu-ho.com/articles/2541
本の雑誌が積極的に取り組むべきは表1を使った「編集タイアップ」であろう。表1〜表4まで総てを使った企画は、間違いなく話題になるはずだ。

◎ぴあは、オーガス、イープラス、ローソン HMV エンタテイメント、及び日本ユニシスとともに、票券管理や施設予約管理システムの販売・開発を請け負う新会社、オーガスアリーナを設立した。
http://corporate.pia.jp/news/%E3%80%90%E3%81%B4%E3%81%82%E3%80%91%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%82%B9%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8A%E8%A8%AD%E7%AB%8B_20150518.pdf
資本金は2400万円。出資比率はオーガス33.4%、イープラス20%、ぴあ20%、LHE20%、日本ユニシス6.6%。

◎英字新聞「The Japan Times」編集担当執行役員の大門小百合が次のように発言している。正しい判断である。
「紙の読者とネットの読者は(関心事などが)少し違うのですが、私たちはネットにまず記事を出す『Webファースト』を昨年7月から始めました。紙面スペースには限りがあるので、ネットで早くたくさんの記事を出すようにしています」
http://president.jp/articles/-/15296

◎視聴率とTwitterの相関関係だが、高齢層より若年層、投稿よりインプレッション(表示)、ニュースではなくドラマやバラエティなどのコンテンツ番組で関係性が相対的に強いという傾向がビデオリサーチのデータ分析でわかった。
http://www.videor.co.jp/tv-echo/casestudy.htm

見田宗介は成長をやめれば良いというけれど、近代市民社会を貫徹する「欲望の体系」がそう容易く崩れるとも私には思えないのである。
http://www.asahi.com/articles/DA3S11760782.html

◎欧米のジャーナリストや歴史家と秦邦彦の対談が読みたい。ジョン・ダワー、エズラ・ボーゲルイアン・ブルマ、秦邦彦、渡部昇一櫻井よしこが一堂に会したらスゴイよね。
http://mainichi.jp/select/news/20150520k0000m030109000c.html

◎「ニコニコ動画」から在特会の公式チャンネルが消えた。在特会が自主的に判断したのではなく、利用規約違反があったとしてドワンゴが閉鎖した。在特会は自らのサイトで次のように書いている。
「本日ドワンゴより『規約違反』を理由に『チャンネル閉鎖』の通告があり、公式チャンネルページも削除されました。具体的な説明は一切ありませんでした」
http://www.47news.jp/CN/201505/CN2015051901002136.html
http://www.zaitokukai.info/modules/news/article.php?storyid=656
具体的な説明を一切しないというドワンゴにも問題がある。そもそも今日に至るまで閉鎖していなかったのがおかしいのである。

民事再生手続開始直後から、スポンサー選定を模索していた美術出版社だが、CCCグループのカルチュア・エンタテインメントをスポンサーにすることとなった。
http://book.bijutsu.co.jp/newsrelease/2015/05/20150519.html
蔦屋書店の展開に役に立ちそうだものね。

◎湘南 T-SITE に泊まれるキャンペーン「店内にふかふかベッド、本に囲まれながら泊まるドリームナイト」が開催される。ジュンク堂を真似たな。
http://enuchi.jp/2549/apply-to-win-to-stay-one-night-at-shonan-t-site

◎アマゾン日本法人が、音楽レーベル「アマゾン レコード」を立ち上げる。「ビルボードライブ東京」でのライブCDを公演から3週間以内に発売するという。
http://www.asahi.com/articles/ASH5M61V8H5MULFA02Y.html

◎5月18日の首相動静。マスコミ対策に抜かりなし。読売は別格だ。
「午後6時32分、官邸発。同43分、東京・大手町の読売新聞東京本社ビル着。渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長、橋本五郎読売新聞東京本社特別編集委員、清原武彦産経新聞社会長、芹川洋一日本経済新聞社論説委員長、今井環NHKエンタープライズ社長、評論家の屋山太郎氏と会食」
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201505/2015051800057&g=pol

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3)【深夜の誌人語録】

壁はハンマーで壊し、溝はシャベルで埋め、邪魔者は黙らせ、セクショナリズムを排す。