【文徒】2015年(平成27)6月1日(第3巻100号・通巻545号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】文春OBの斎藤禎が「江藤淳の言い分」を上梓したぞ!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.6.1 Shuppanjin

1)【記事】文春OBの斎藤禎が「江藤淳の言い分」を上梓したぞ!

「政治と文学」なる言い方に私は今も昔も反対だが、「吉本隆明江藤淳」は「と」で結びつけるしかない二人だと私は思っている。何しろ中野重治の文学の最大の理解者は吉本であり、江藤である!この二人の文芸批評家に私は多大なる影響を受けて来た。
二人とも鬼籍に入ってしまったが、吉本隆明は全集が晶文社から刊行され始めているし、筑摩書房は「吉本隆明〈未収録〉講演集」の刊行を進めているし、糸井重里はフリーアーカイブ吉本隆明の183講演」を立ち上げている。また、中沢新一は「吉本隆明の経済学」を編集し、副島隆之は「『反原発』異論」を、松崎之貞と新海均は「吉本隆明 最後の贈りもの」をまとめている。
一方、江藤淳はといえば…。全集の刊行もなければ、講演集の刊行もないし、フリーアーカイブもないというように、ないない尽しなのである。福田和也筑摩書房で「江藤淳コレクション」を文庫本四冊にまとめた程度である。
斎藤禎が義憤にかられるのも、当然なのである。周知のように斎藤は文藝春秋で先輩たちを飛び越えて「諸君!」編集長に就任し、常務取締役にまでのぼりつめた人物であるが、そんな斎藤禎が「江藤淳の言い分」を上梓した。
それにしても斎藤の怒りは凄まじい。気の弱い私など、何故、丸谷才一全集であって、江藤淳全集ではないのかと詰め寄る書き出しの部分を一読しただけで震え上がってしまったほどだ。文藝春秋が選択したのは「裏声で歌へ君が代」の丸谷才一であって、丸谷の「裏声で歌へ君が代」にアメリカの影を読み取り、中上健次の「千年の愉楽」を絶賛する「自由と禁忌」の江藤淳ではなかったのである。
斎藤は「あとがき」で「江藤さんの文業を消そうとするある種の<力学>がどこかにはたらいているのではないか」とまで書き切る。
江藤淳の言い分」は「斉藤禎の言い分」に他ならない。斎藤は江藤淳の残した仕事に自分自身のこれまでの人生を対置しながら、書き進めてゆく。それは斎藤がラングから解放され、パロールを奪還してゆく過程でもあるのだ。「言い分」とは、そのように理解すべきだろう。江藤淳復権の第一歩が斎藤禎によって踏み出された。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4904701445?ie=UTF8&at=&force-full-site=1&ref_=aw_bottom_links
江藤淳の言い分」の版元は書肆工房早山である。早山隆邦が興した。早山は筑摩書房出身の名編集者として知られている。筑摩が倒産するとリブロポート、NTT出版を経て、書肆工房早山を立ち上げる。
ベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行」を手がけた編集者である。早山とともに「想像の共同体」は版元を変えていった。斎藤と早山は、「江藤淳の言い分」の「あとがき」でも紹介しているように野球を通じてのことである(ただし早山は慶応の相撲部出身である)。
漏れ聞くところによれば文藝春秋のOBである田中健五は「文春OBが書いた本のなかで最良のひとつ」と「江藤淳の言い分」を激賞したようだ。

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】

講談社がdマガジンで配信している「ホットドッグ・プレス」は、スターツ出版が運営するWEBサイト「OZmall」と共同で実施した女性の好感度調査「職場の残念な女」についての特集記事“コメント100連発”を5月28日(木)配信号で特集している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000654.000001719.html
「職場の残念な女」トップ10は、「OZmall」が発表している。
1位「口臭がきつい女」、2位「歯が汚い女」、3位 「香水がきつい女」、4位「姿勢が悪い女」、5位「近づくとタバコ臭い女 」、6位「化粧が濃い女」、7位「シャツの襟がよれよれの女 」、8位「 靴が汚れている女 」、9位「歩き方がブサイクな女」、10位「髪の毛がパサパサな女」。
http://www.ozmall.co.jp/beauty/special/2015052801b/

◎マンガ「進撃の巨人」にセリフや効果音を加えて、コマ割りを生かした「動画」として視聴できるようにした「Beeマンガ 進撃の巨人」が、映像配信サービス「dTV」で配信を開始した。
http://www.cinematoday.jp/page/N0073581

◎フジテレビの連続ドラマ「書店ガール」第7話の視聴率が何と3.3%という低視聴率を記録した。「書店」が世間では、その程度にしか注目されていないということなのだろうか。
http://npn.co.jp/article/detail/26221087/

◎「Number」(文藝春秋)が14年ぶりにプロレスを特集することになった。これにともない、「新日本プロレス総選挙」を開催している。上位7位までに入ったレスラーは必ず誌面に掲載し、1位に輝いたレスラーは、表紙を飾る。AKB総選挙のノリだね。
http://number.bunshun.jp/articles/-/823356

◎マンガ誌「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載の始まった「最果てにサーカス」(月子)は、詩人の中原中也と批評家の小林秀雄を描く。女優の長谷川泰子との三角関係がどう描かれるのか、今から楽しみである。泰子は中也を捨てて、小林秀雄と同棲をはじめる。
http://mantan-web.jp/2015/05/27/20150526dog00m200056000c.html

少年画報社から刊行されたコミックス「それでも町は廻っている」14巻(石黒 正数)を大阪屋の取引先である全国約500店舗の書店で購入すると、単行本未収録の短編が「楽天Kobo電子書籍ストア」から無料でダウンロードできる特製イラストカードを、先着順で提供している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000190.000005889.html
東京の書店が充実して来ている。
http://books.rakuten.co.jp/event/e-book/camp-soremachi/
もっとも福島、山形、秋田、岩手、青森の5県では、このサービスを享受できない。

直木賞作家の角田光代朝井リョウの書き下ろし小説が、森永製菓の「ミルクキャラメル」「あずきキャラメル」「ココナッツミルクキャラメル」に掲載される。KADOKAWAの「ダ・ヴィンチ」推薦により実現した。
http://www.morinaga.co.jp/public/newsrelease/web/fix/file555c192dd0be8.pdf
◎LINEの代表取締役社長・出澤剛がの外国特派員協会で会見。次のように語っている。「THE PAGE」が会見内容の全文を書き起こしている。
「今われわれがやっている見立てが正しいとすると、スマートフォンのインターネットはより今までのPCインターネットに比べて非常に生活にもっともっと入っていて、世の中のあらゆるトランザクションに関与してくるんだというふうに思います」
http://thepage.jp/detail/20150528-00000002-wordleaf?page=1&utm_expid=90592221-34.fYfHxQptRyiK24SGMTdjrQ.0&utm_referrer=http%3A%2F%2Fthepage.jp%2Fdetail%2F20150528-00000002-wordleaf%3Fpage%3D10

ジャストシステムが実施した「スマートフォンカメラに関するアンケート」によれば、スマホで撮影した写真を他の人に提供する際の方法として最も多かったのは「LINE」(41.0%)、次いで「Eメール」(33.3%)。年代別で見ると、10代、20代は「LINE」が多く(10代:64.9%、20代:51.4%)、30代以降は「Eメール」が多い(30代:37.2%、40代:44.9%、50代:43.6%)。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000101.000007597.html

ロッテアイスのハンディアイス「ぎゅぎゅっと」は、集英社の「Seventeen」とのコラボ企画商品を発売した。
http://www.lotte.co.jp/info/news/pdf/news1533.pdf

KADOKAWA・DWANGOが、10月1日付けでカドカワに社名変更。角川のカドカワではないそうだ。KADOKAWA・DWANGOの言い分によれば、KADOKAWAの「KA」、ドワンゴの「ド」、KADOKAWAの二つ目の「KA」、ドワンゴの「ワ」で「カドカワ」なんだって!経営統合を内外に強く示すためだとしているけれど、こんな愚劣な発想に基づく社名変更をしたところで株価が持ち直すとは思えない。「カドンゴ」のほうが、まだマシだろうに!朝日新聞の伊丹和弘が「毎日新聞朝日新聞が合併して『新会社の名称は毎日の毎と朝日の日をとって毎日新聞です』と言われたようなナニソレ感があるw」とツイートしていたが、その通りだ。そもそもKADOKAWAの「DO」と「WA」、ドワンゴの「ンゴ」を取れば「ドワンゴ」になる。
http://pdf.irpocket.com/C9468/ee2V/Mhnm/dG7R.pdf
http://ryusoku.com/archives/4402491.html

◎電子書店「BOOK☆WALKER」の新機能として「横断検索(β)」が5月29日にリリースされた。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1505/29/news044.html

日本航空とベネッセは、2012年から毎年実施している共同企画第4弾として、2015年7月1日より9月30日までの期間、夏休みの思い出づくりと知的好奇心を応援する「JAL×ベネッセ 小学生夏休み応援キャンペーン“そらとぶ自由研究”」を実施する。
http://press.jal.co.jp/ja/release/201505/003377.html

講談社は「手塚治虫文庫全集」全200巻をすべて電子化し5月29日より、リリースを開始した。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1505/29/news073.html

NTTドコモのdブックでは、マンガの「無料連載」をスタートした。このサービスは、「L・DK」や「好きっていいなよ。」、「GANTZ」、「うしおととら」などの、往年の名作から現在連載中の作品までマンガが無料で読める。日曜日から土曜日まで、計47作品(開始当初)を毎週1話ずつ更新し、毎日新しい1話を無料で閲覧できる。
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201505280600/

文藝春秋は、日本最大級の動画サービス「niconico」の「ニコニコチャンネル」に開設している「週刊文春デジタル」で、6月6日(土)に「AKB総選挙ウラ実況」を生放送する。
週刊文春」で数々のAKBスキャンダルを報じ、ファンの間で“文春砲“と恐れられているAKB担当男性記者と文春一のAKB好き女性編集者が、取材ウラ話を織りまぜつつ、福岡ヤフオクドームで行われている「第7回AKB48選抜総選挙」をウラ実況する!女性編集者は朝井リョウの担当であり、朝井の最新刊「武道館」のプロモーションを兼ねているところがミソである。
http://live.nicovideo.jp/gate/lv222794889

◎日販の決算概況。商品別売上概況を次のようにまとめている。
「雑誌は、定期誌・ムック合計の店頭売上増加率が7.3%減と厳しい状況となりました。特に月刊誌で最もシェアの高い女性誌の売上が、対前年15.7%減と大幅に落ち込みました。しかし『CLASSY』『and GIRL』『FUDGE』『LDK』など店頭売上対前年20%以上と非常に伸びているものもあり、銘柄ごとの差が大きくわかれました。
書籍も、店頭売上増加率が7.6%減と厳しい状況となりました。トマ・ピケティ著『21世紀の資本』や『アナと雪の女王』などの話題作が売上を伸ばしたものの、書籍全体の売上は減収、返品率は僅かな減少にとどまりました。ベースが落ちている中ですが、High-Profit企画で作家買いを促進する『講談社文庫 傑作宣言プロモーション』という増売企画では、対象銘柄48点の売上実績が企画開始前と比較して2.6倍となり、店頭売上とマージンアップに貢献しました。
コミックスの店頭売上実績は、書籍・雑誌が厳しい中、▲0.1%となりほぼ前年並の実績となりました。売上上位銘柄を見ると、『暗殺教室』『アオハライド』『弱虫ペダル』など、アニメ・映画・舞台と複合的に展開し、長期的に話題にのぼった銘柄が挙げられました。
開発商品は、書店ルート・CVSルート共に日販PB商品の点数・売上共に伸ばすことが出来ました。特に人気アニメグッズのPB商品を企画制作したところ、非常に好評だったため68期も注力していきます。また、『日めくり まいにち、修造!』のヒットや『Sta×2(スタスタ)』パッケージで提供している文具・DULTONの雑貨商品などの拡大もあり売上実績が対前年1.5%と伸ばすことが出来ました」
http://www.nippan.co.jp/news/2014%e5%b9%b4%e5%ba%a6%ef%bc%88%e7%ac%ac67%e6%9c%9f%ef%bc%89%e6%b1%ba%e7%ae%97%e6%a6%82%e6%b3%81/

プロ野球巨人の球団代表を解任された清武英利氏が執筆に関わった「会長はなぜ自殺したか」の「七つ森書館」による復刻版をめぐり、読売新聞東京本社が出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決で、知財高裁は28日、「七つ森書館」に販売禁止と171万円の賠償を命じた一審東京地裁判決を支持し、出版社側の控訴を棄却した。
http://www.sankei.com/affairs/news/150528/afr1505280014-n1.html

J-WAVEは、5月4日(月)のみどりの日に実施したイベントで、スポンサーの積水化学工業が建設したスマートハウスから太陽光発電の電力だけを使って2時間の生番組を中継していた。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1505/29/news030.html

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

夢は捨ててしまったら単なる妄想にしか過ぎなくなる。夢は抱きつづけるから価値があるのだ。