【文徒】2015年(平成27)6月16日(第3巻111号・通巻556号)

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1)【記事】今日もまた「絶歌」について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】今日もまた「絶歌」について

「絶歌」(太田出版)の担当編集者は「完全自殺マニュアル」を手がけたことでも知られている落合美砂だそうだ。
http://dmm-news.com/article/978845/
落合は「弁護士ドットコム」のインタビューに応じて、次のように語っている。落合はゴースト説を一蹴している。
「全くの素人でも、細かく作ってくる人はいますが、ここまで完成度の高いものは初めてで、経験がないですね。タイトルも見出しも、全部自分で付けて、口絵の写真も入れたいという形で、持ち込みのときには、構成も全部このまんまでした。
大きな直しは個人が特定できる部分を削ったりとかぐらいで、あとは、ここは分かりづらいので言葉を変えてくれとか、それぐらいですね」
http://www.bengo4.com/other/1146/1307/n_3240/
江川紹子が次のようにツイートしている。
「今回の本については内容を知らないので、何の評価もできない。加害者の手記の場合、その内容や表現において、被害者の名誉毀損や遺族のプライヴァシー侵害がないよう、出版社は特に注意すべきだし、被害者の心情への配慮もあった方がいい。ただ、『遺族が了解しなければ出版すべきではない』は違う」
「遺族の気持ちを察するとしても、『加害者側がその事件について手記などを出版する場合には被害者の承諾を得るべき』との意見には賛同できない」
https://twitter.com/amneris84/status/609647360507940864
https://twitter.com/amneris84/status/609629997679030273
驚くべきことに啓文堂書店では「絶歌」を販売していないという。「ハフィントンポスト」は次のように書いている。
啓文堂書店を運営する京王書籍販売(東京・多摩市)の担当者は6月15日、ハフポスト日本版の電話取材に答えた。『被害者遺族の心情に配慮した結果、6月11日に発売される前の時点で、一切取り扱わないことを決めました。お客様からの注文も受け付けていません』と説明している」
http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/14/zekka-keibundo_n_7582442.html?utm_hp_ref=tw
書店という商売のイロハのイも理解していないようなファシスト発言を平気でしてしまう神経が私には理解不能である。本当に京王書籍販売の担当者はこのように発言しているのだろうか。もし、事実であるのならば、極めて残念なことである。啓文堂書店なる電鉄系書店チェーンには一日も早く全面撤退してもらいたいものだと私は願わずにはいられない。書店人であれば、次のように判断すべきなのである。
「本は売らなければいけない。冒頭でも書いたように、店内のそれなりに"いい位置"に僕は置く。お客さんから問い合わせがあれば即案内できるようにアルバイトの人たちにも『今日はこういう本が発売になって、ここに陳列しておくよ』と伝える」
http://shiomilp.hateblo.jp/entry/2015/06/10/232125
丸善ジュンク堂書店でも「絶歌」を取り扱っていない!世も末だ。
http://grapee.jp/54469

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2)【本日の一行情報】

◎オプティムは、定額制の電子雑誌サービス「タブレット使い放題・スマホ使い放題(タブホ)」へのコンテンツ提供で新たに講談社と業務提携することになった。「FRIDAY」、「週刊現代」、「おとなの週末」、「クーリエ・ジャポン」の4タイトルが読み放題ラインナップに加わる。また、学研系のブックビヨンドと業務提携の拡大を行い「BMW COMPLETE」、「野菜だより」の2タイトルが読み放題ラインナップに加わった。
http://www.optim.co.jp/news-detail/16513

◎謎多きグーグル日本法人だが「東洋経済」によれば「年間売上高は約3000億円、従業員数は1000人超と見られる」のだそうだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/73058

紀伊國屋書店は、西武渋谷店イベントスペースで「なかよし60周年展」を6月19日から7月25日まで開催する。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1506/12/news118.html

◎「電撃文庫 秋の祭典 2015」が10月4日(日)に秋葉原UDXベルサール秋葉原の2会場で開催される。
http://db2015fes.dengeki.com/

◎今秋9月、「立命館メディア塾」が東京で開講される。そのプレイベントが6月6日に開催されていた。塾長は元NHKキャスターの川端義明がつとめる。
http://www.ritsumei-ac.jp/mediajuku/

紀伊國屋書店Kinoppyで「講談社 紙で入手困難な作品フェア」が6月25日まで開催されている。リストに橋本克彦や足立倫行、読売新聞大阪社会部の名前を発見する。
http://k-kinoppy.jp/kodansha/kamide_150612/web/

市進ホールディングス学研ホールディングスは両社の業務・資本提携をより強固で確実なものとするため、両社グループから、両社子会社に「アドバイザー」を選任することになった。
http://navigator.eir-parts.net/EIRNavi/DocumentNavigator/ENavigatorBody.aspx?cat=tdnet&sid=1258988&code=4645&ln=ja&disp=simple

◎「LINE MUSIC」はLINE(トーク)で、メッセージやスタンプと同じように友人に音楽を送れるのが魅力だ。先方が「LINE MUSIC」はインストールしていなくとも、iPhoneであれば30秒は試聴できる。ソーシャル化されたストリーミングサービスとなっているのだ。問題は楽曲数だろう。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/20150612_706750.html

電通デジタル・ホールディングスは、定額制ストリーミングサービス「Spotify」を世界で展開しているスウェーデンSpotify Technologyに出資した。
http://www.dentsu-digital.co.jp/release/20150615DDH-Investment-ReleaseJP.pdf
Spotify」も日本上陸を果たすだろう。「音楽」の世界で起きていることは、出版社も凝視しておく必要がある。

個人情報流出事件が尾を引いているのだろう。ベネッセの「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」などの通信教育講座の会員数は、この1年間で25%も減っている。1年間で94万人も減ったことになる。
http://biz-journal.jp/2015/06/post_10339.html

文藝春秋WEBによれば、富山県の文苑堂書店福田本店はCD・ビデオ店、化粧品・雑貨、文具、ドーナツショップを店内に持つなど兼業化を進める一方で、新聞書評コーナーを充実させ、「藤原書店岩波書店みすず書房といった硬派の出版社の棚も備え」ているそうだ。
「スタッフが山にカブトムシを取りにいって店頭で配ったり、夏祭りには浴衣、ハロウィンにはコスプレでお客様を迎えたりする」というサービス精神も良い。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/3754

◎夭折した歌人・中澤系の「uta0001.txt 新刻版」が双風舎から刊行されていたとは知らなかった。「ぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわ」「くちづけて不意に目をやる高窓の黄の風船の、ように愛そう」。エッもう品切れで重版の予定はないんだそうだ。
http://sofusha.moe-nifty.com/
茅ヶ崎の長谷川書店ネスパ店には、まだ在庫があるそうだ。
https://twitter.com/Books_Hasegawa
中澤は茅ヶ崎出身である。

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3)【深夜の誌人語録】

沢山の無駄を経験することが人間としての厚みとなる。