【文徒】2015年(平成27)6月18日(第3巻113号・通巻558号

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1)【記事】「さいとう・たかをの「ブレイクダウン」を改竄−リイド社に何が起こったのか?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「さいとう・たかをの「ブレイクダウン」を改竄−リイド社に何が起こったのか?

こんなことがあるんだねぇ。だってリイド社は「さいとう・プロダクションの出版事業部として発足」している出版社なんだよ。そもそも社長の斉藤發司は、さいとう・たかをの兄である。
そんなリイド社さいとう・たかをの「ブレイクダウン」をコンビニ向け商品として5月27日に発売した際に、さいとう・プロダクションに無断で400ページを省き、本来は約1400ページになる作品を上下巻1000ページで出版してしまったそうだ。
その結果「下巻の冒頭から何の説明もなく新しい人物が登場したり、主要な人物が姿を消したりして意味が通じなくなって」(読売新聞)しまったという。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20150615-OYT1T50099.html
リイド社は次のような「お詫びとお知らせ」を発表した。
「平素より弊社出版物に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
この度の『ブレイクダウン』出版に際し、新聞・ニュース等で多大のご心配、ご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げます。
さて、5月27日に発売いたしました、さいとう・たかを著作『ブレイクダウン』(上・下)に関しまして再編集の都合上、作品を割愛させていただきましたが、その箇所を読みたい、との問い合わせが弊社に多数寄せられました。
読者の皆さまのご要望に応えるため、作者さいとう・たかを先生とご相談、ご了解の上、割愛箇所を本日、6月16日より、無料で公開いたしておりますので、今後ともご愛読お願いいたします」
http://www.leed.co.jp/news/n110.html
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1506/16/news114.html
作品にとって無茶苦茶な改造を著作権者に黙って隠密裏にしなければならないほどリイド社も経営が苦しいのかもしれない。そうでなければ、こんなことは起きやしまい。

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2)【本日の一行情報】

◎「ONE PIECE」がギネス世界記録に認定されたことは既に報じたが、これを記念して「少年ジャンプ+」は、連載がスタートした「週刊少年ジャンプ」1997年34号を無料で配信している。相変わらず、集英社は宣伝上手だ。
http://www.appbank.net/2015/06/16/iphone-application/1043520.php

JリーグFC岐阜は、講談社の「週刊少年マガジン」連載作品「聲の形」とのコラボマッチを7月12日のホーム横浜FC戦で開催する。作者である大今良時岐阜県大垣市出身であり、作中に、大垣市の風景がモデルとなった様々な背景が登場しているそうだ。講談社が運営するサッカー総合サイト「ゲキサカ」も上手く絡ませることができると良いんだよね。
http://www.fc-gifu.com/information/9215

◎スポーツ報知の記事のタイトルは「『酒鬼薔薇』手記、一部書店で販売せず 『啓文堂書店』遺族感情に配慮で賛同の声」。これは何度でも書くが、私は「10日に発売が判明した時点で、本の内容を確認せずに販売しないことを本社上層部による会議で決定した」啓文堂書店に賛同する気持ちには絶対になれない。それにしても啓文堂書店を批判する声が少しも上がらないのは、どうしてなのだろうか。ここまで「戦後民主主義」は劣化してしまったのだろうか。私は書店に「岡っ引き根性」は必要ないと思う。
http://www.hochi.co.jp/topics/20150615-OHT1T50209.html
この問題を社説で取り上げる新聞はないのだろうか。ノンフィクション賞の選考委員で声をあげる人物はいないのか。私には不思議でならない。

トーハンが発表した週間ベストセラー(7〜13日)で、「絶歌」(太田出版)が総合1位となった。
http://www.sankei.com/affairs/news/150616/afr1506160016-n1.html
マスコミが倫理的な言葉を振り回して騒ぎに騒いだ結果である。

トーハンとグループ会社の明屋書店は、森ビルが愛媛県松山市一番町に開業する複合施設「AEL MATSUYAMA」2階に「SerenDip 明屋書店アエル店」を8月26日にオープンする。
オーガニックコスメの john masters organics と erbaviva を専用の美容部員も配置したうえで取扱い、地元で今治タオル専門店「伊織」他を展開するエイトワンが運営するカフェ「Branch Coffee by 81」には購入前の本も持ち込めるようにする。
更に売り場の一画には、地元あいテレビ(TBS系列)が運営するサテライトスタジオが[ i-studio with 明屋書店]の名称で併設されるそうだ。140坪の店舗でありながら、フロアの床材が統一されているため、他店舗との連携を図り、フロア全体の統一感を武器にしようということだろう。ここは注目したい。
http://www.tohan.jp/news/20150615_539.html
http://www.mori.co.jp/img/article/150615.pdf
兼業化で最も気をつけなければならないのは、肝心なのは書店としての魅力だということだ。書店として魅力がなければ兼業化は失敗する。

トーハンは、今年度新たに立ち上げた店頭活性化プロジェクトを始動する。6月下旬よりWOWOWとのコラボ企画をスタートさせるのだ。年内に番組と連動した3企画を展開し、書店店頭とWOWOW保有するコンテンツをつなげて、映像の世界をより広く、より深く楽しめる関連書籍のフェアやキャンペーンを全国の約600書店およびオンライン書店e-hon」で実施する。
http://www.tohan.jp/news/20150615_540.html

トーハンは、主婦の友社との共同企画で「主婦の友社アウトレットセール」フェアを6月中旬より全国の書店で開催する。旧価格版の最大50%オフ、全品840円以下の新価格だそうだ。
http://www.tohan.jp/topics/20150617_538.html

◎「ジブリがいっぱいCOLLECTION×文春ジブリ文庫サマーキャンペーン」が7月17日(金)から始まる。スタジオジブリ関連作品ブルーレイディスク&DVDを購入すると、その場でプレミアムグッズ「文春ジブリ文庫ジブリの教科書<特別編>」(全3冊セット)がもらえるそうだ。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/3816

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、コンテンツやブランド体験と消費体験の統合化を図る「ブランド・コマース」領域のケーパビリティーを強化するため、英国のEコマース専門エージェンシー「eCommera Global Limited」の株式100%を取得することで合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0615-004076.html
電通よりも海外本社「電通イージス・ネットワーク」が大きくなることで、電通は成長しようとしているわけだが、電通の日本人経営陣で「電通イージス・ネットワーク」の全容を理解している役員が何人いるのだろうか。

バンダイナムコオンラインは、男性アイドルユニットの育成が楽しめるスマートフォン向けリズムアクションゲーム「アイドリッシュセブン」を発表。「アイドリッシュセブン」を起点にして、音楽、ノベル、コミックと立体的なメディアミックス展開を繰り広げる。
コミックは「花LaLa online」で7月24日からスタートし、ノベルは7月末より「WEB白泉社ノベル」でスタートする。キャラクター原案は「神風怪盗ジャンヌ」「満月をさがして」の種村有菜が担当する。音楽はkz(livetune)が手がけている。
http://idolish7.com/
https://www.youtube.com/watch?v=duYjdf-oebY&feature=youtu.be
https://twitter.com/iD7Mng_Ogami
デジタル領域でメディアミックスをスタートさせ、ここでヒットさせて紙やアニメに落とし込む戦略だ。

◎eBookJapanの「この少女マンガがすごい!」特集は、宝島社の「このマンガがすごい!」編集部が、少女マンガの黄金時代といわれる、1970年代を中心とした少女マンガをランキング形式で紹介する企画だ。
1位「ベルサイユのばら
2位「ガラスの仮面
3位「はいからさんが通る
4位「風と木の詩
5位「生徒諸君!
6位「ポーの一族
7位「王家の紋章
8位「スケバン刑事
9位「エースをねらえ!
10位「たそがれ時に見つけたの」
集英社白泉社講談社小学館講談社小学館秋田書店白泉社集英社集英社となる。「集英社白泉社」で5本!一ツ橋グループと考えれば7本になる。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/special/st/konomanga_girls.asp
オレもベスト10をつくってみる。
1位「風と木の詩
2位「はみだしっ子
3位「「ポーの一族
4位「ファイヤー!」
5位「綿の国星
6位「はいからさんが通る
7位「たそがれ時に見つけたの」
8位「カリフォルニア物語」
9位「ベルサイユのばら
10位「ラスコーリニコフ ロジオン ロマーヌイチ」
って感じかな。高野文子がデビューする頃までは少女マンガを結構読んでいたんだよね。

◎中国に機密情報を漏らしたという報道で名誉を傷つけられたとして、副農相だった筒井信隆・元民主党衆院議員が読売新聞東京本社と記者に損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は、330万円の支払いを命じた。
http://www.asahi.com/articles/ASH6H5J09H6HUTIL02D.html

◎「るろうに剣心明治剣客浪漫譚−」が宝塚で上演されることになった。
https://gunosy.com/articles/RJF7t

◎「カーヴィーダンス」の樫木裕実は自らの公式サイトで「女性自身」の記事は事実無根と反論している。そのうえで次のように書いている。
「なお、この件につきましては、弁護士と法的手続きを進める方向で検討をしているところです。今後の方針が決まりましたら、なんらかの形でご報告させて頂く予定です」
https://kashiki.net/contents/16574

◎台湾の大手出版社・青文出版社の黄詠雪総経理が「ITmedia eBook USER」の「まつもとあつしの電子書籍セカンドインパクト」に登場している。
「出版社側の電子書籍に対するマインドが日本を含めたアジア諸国の中でも非常に消極的なのが大きな違いです。電子書籍に対する取り組みがとても遅いんですね。
その大きな理由が、書籍に占める翻訳タイトルの多さです。4万2000点のうち半分以上が教科書・参考書で、その4分の1は翻訳書。セールスランキングの上位70%も翻訳書が占めています。台湾オリジナルのタイトルは少ないです。
このことが電子書籍化に当たってハードルになります。台湾で生まれた=自分たちで生みだしたタイトルであれば電子化も比較的容易ですが、外来の書籍ではそうはいきません」
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1506/16/news037.html
青文出版社はボイジャーをパートナーとしている。

KADOKAWAが夏のコミックフェア「角コミ★2015 SUMMER」を全国書店で開催。対象の帯が巻かれたコミックスを1冊購入すると、全10種の特製メモ帳“ネタメモ”をその場でもらえる。
http://www.kadokawa.co.jp/company/release/detail.html?id=2015201565

◎「オカンの嫁入り」など宝島社を舞台に活躍している咲乃月音は、香港在住のいわゆる「日本人妻」である。16日放送のTBS「世界の日本人妻は見た!」で紹介された。咲乃はボーンデジタルの小説家でもある。
http://mdpr.jp/news/detail/1494738
http://moonsound.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-2585.html

リクルートライフスタイルが企画・編集する国内旅行情報誌「九州じゃらん」は、福岡県の菓子メーカーである東雲堂とコラボし、「にゃらん」二○加せんぺい(にわかせんぺい)を発売する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000115.000011414.html
たとえ全国誌であっても、雑誌は積極的に地方を狙うべきだ。

◎「サントリー天然水かき氷サーバー」を買おうかどうか迷っている。
http://www.suntory.co.jp/water/tennensui/tennensui-kohori2015/product.html

◎米ファッション誌「ラッキー(Lucky)」が廃刊。ショッピングサイト「Luckyshop.com」は継続。
http://www.fashionsnap.com/news/2015-06-16/lucky-ceasedpublication/

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3)【深夜の誌人語録】

小さくても良いから志とか誇りを失ってはなるまい。むろん、他人に気づかせる必要などない。