【文徒】2015年(平成27)7月30日(第3巻141号・通巻587号)

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1)【記事】日経のFT買収に今日も外野は大騒ぎ
2)【記事】社会現象となった又吉直樹「火花」
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.7.30 Shuppanjin

1)【記事】日経のFT買収に今日も外野は大騒ぎ

日経出身の町田徹が日経のFT買収について「現代ビジネス」で次のように述べている。
「編集に比べ、ビジネス面での協力は容易だ。双方の広告営業部隊が相手方の広告営業をすれば、双方の広告収入の拡大に役立つはずである。デジタル化が進展する以上、システム開発投資が膨らみ続けるので、緊密に協力して資本と開発資源をうまく集中できれば、これも双方にとって大きなメリットになるはずである」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44380
ITmediaビジネスONLINE」の「日経が世界の経済メディアのなかで『大きな存在感』を示すのが難しい理由」は辛辣だ。
「つまり、日本人にとって新聞の購読というのは、『共産主義国家における党員の義務』のようなものなのだ。日経が注目を集める今、この『真実』に欧米のジャーナリストたちが気づくのは時間の問題だろう。
それはFTの記者たちも同様である。『ジャーナリスト』にとって『機関紙』に雇われるのは耐え難い屈辱である。日経が世界のビジネスメディアのなかで大きな存在感を示すのはなかなか難しいかもしれない」
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1507/28/news081.html
日経がFT買収で日本株式会社の機関紙から脱却できるかといえば、答えはノーだろう。いずれにしても、今回の買収に最も衝撃を受けているのは、読売と朝日なのではあるまいか。だからなのか、朝日新聞オリンパスの元社長マイケル・ウッドフォードを紙面に登場させた。
「ウッドフォード氏は日経について『企業と親密で、かつ、企業に頼っている』と批判。『日本企業の不正を暴露したい人は今後、FTには行かないだろう』と述べた」
「ウッドフォード氏は『ソーブル記者に会って数時間のうちにFTが疑惑を報じたのとは対照的に、日経はその後も長く、オリンパスのPR事務所のように行動した』と述べ、『日経は、日本の大企業への批判の先頭には立たない。その観点では日本メディアの中で最悪だ』と批判した」
http://www.asahi.com/articles/ASH7W532ZH7WULZU00N.html

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2)【記事】社会現象となった又吉直樹「火花」

ダ・ヴィンチ」は45ページにわたる又吉直樹特集を組んだ6月5日発売の7月号を2万部増刷。バックナンバーまでも増刷させるほど、又吉はブームになっている。
http://ddnavi.com/news/249385/
文藝春秋芥川賞を受賞した「火花」の大幅増刷(16刷)を決定した。累計発行部数は144万部。こうなると「火花」は社会現象だよね。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/07/28/kiji/K20150728010826180.html
電子書籍は7月26日時点で実売7万4088DL(ダウンロード)を突破した。これについて「東洋経済オンライン」で野呂エイシロウが「『火花』が電子書籍でもバカ売れする意味」を発表し、次のように結んでいる。
「局地的ながらも電子書籍で爆発的な売れ行きを示す事例が出てきたことは、出版を取り巻く市場環境がますます変わっていく可能性を示しているようでもある」
http://toyokeizai.net/articles/-/78577
それにしても又吉直樹は、すっかり作家の顔になっている。

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3)【本日の一行情報】

小学館の国語辞典「大辞泉」編集部は、現在も実施中の「小学館大辞泉 あなたの言葉を辞書に載せよう。2015キャンペーン」の一環として、「―100歳以上―ご長寿が考える【人生】の語釈」を発表した。「中で生きること。上を見ても下を見てもキリがない」なんて「深夜の誌人語録」向きだよなあ。
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201507242229/

◎サクライタケシのルポマンガ「ジャンプの正しい作り方!」が面白そうだ。後で買いに行こう。「ダ・ヴィンチNEWS」が紹介している。
「雑誌の顔ともいえる表紙。これはマンガ家ではなく、専任のデザイナーが考えているという。毎号、数人のデザイナーがラフ案を出し、副編集長の判断をもって、表紙デザインが決定されるのだ」
http://ddnavi.com/news/250162/

幻冬舎の女性ファッション誌「GINGER」9月号の付録はライオンから発売されている「休足時間」足裏専用シートだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000127.000007254.html

◎「ひらく美術」(ちくま新書)の北川フラムは約50万人が訪れる「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」総合ディレクターであることは間違いないが、北川もまた平岡正明朝倉喬司が担ったテック闘争から生まれた才能である。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480068422/

アメリカほどではないにせよ、インハウス化の波は日本にもやって来るだろう。「ダイヤモンドオンライン」で桐生学(ネットイヤーグループ)は次のように書いている。インターネットが広告ビジネスのあり方を変えることは間違いない。
「米国広告業界団体ANAが行った調査では、インハウスエージェンシー(=自社内のマーケティング企画・実行部門)を設置していると回答した企業は過半数に上る。自社内でメディアバイイング(広告枠の買い付け)を含む広告運用まで行う企業は少数であるが、運用・管理能力の装備や、その能力の拡大トレンドは顕著だ。P&Gなどのグローバル企業もインハウスエージェンシーを設置しているし、広告会社やマーケティングエージェンシーが広告主に協力してインハウスエージェンシーを組織化しているケースもある」
http://diamond.jp/articles/-/75503

◎日販は、えい(木偏に世)出版社が発行する「甲子園100年物語」を日販限定流通商品として全国の取引書店・コンビニエンスストアで販売している。
http://www.dreamnews.jp/press/0000116620/

トーハンも負けてはいない。トーハンの「ほんをうえるプロジェクト」企画商品第5弾として、あさ出版の「人とチームの魅力を引き出す ドラマ思考のススメ」(平野秀典著)を8月10日より全国の取引書店・コンビニエンスストアで発売する。
http://www.tohan.jp/news/20150728_560.html

蓮實重彦の「映画時評2012〜2014」(講談社)が犯罪的なのは、批評の対象となる映画よりも、批評の方が遙かに官能的であるという一点においてである。蓮實のアジテーションに映画が飲み込まれてしまう悲劇に快楽を感じてしまう倒錯を許容できるサディストにとっては魅力的な一冊ということになろうか。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062196291
「群像」という雑誌の文学史的価値は映画評に蓮實や山根貞夫を起用したことだが、同時にそのことが文芸誌として限界を露呈しているとも言えなくもない。私であれば映画評に上野昂志を介在させていたに違いない。上野は「週刊現代」の記者出身だが、何よりも竹内好の直系である。

徳間書店の7月27日付組織改編、および人事異動。クロスメディア事業部を新設し、役員会直轄とした。第一制作局映像事業部を廃組とし、クロスメディア事業部に統合し、第一制作局 宣伝担当を、クロスメディア事業部に統合した。「アサヒ芸能」の大滝雄裕副編集長が同誌編集長に昇格。

◎私は木村元彦の言い分に賛成である。
ヘイトスピーチは表現ではありません。ウソやデマが混じった憎悪の扇動であり、暴力と認識すべきです。表現ではない以上、法律で規制することは可能なはずです」
http://wpb.shueisha.co.jp/2015/07/28/51312/

トヨタ自動車の上半期の世界販売台数はフォルクスワーゲンを下回り、2位となった。朝日新聞は次のように書いている。
「米国や中国では販売を伸ばしたものの、消費増税後の販売不振が続く日本国内や、東南アジアでの苦戦が足を引っ張った」
http://www.asahi.com/articles/ASH7X3RWPH7XOIPE00S.html

◎「週刊ダイヤモンド」の指摘する通りである。
「今回の不正会計の背景として、佐々木氏と、その前任の西田厚聰氏の確執に端を発したプレッシャーを挙げる声は多いが、その確執の理由は、経営手腕だけでなく、"財界総理"といわれる経団連会長をめぐる争いだったともされる」
http://diamond.jp/articles/-/75598

千坂恭二が「歴史からの黙示」(田畑書店)以来、42年ぶりに「思想としてのファシズム」(彩流社)を刊行した!何とも過激な大東亜「解放」戦争肯定論である。著者はインパール作戦を「義戦」と言い切っている。千坂は松田政男が編集長をつとめる「映画批評」の執筆陣のひとりであったんだよね。
http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-7791-2143-2.html

◎林下熱志の「ハダシの熱志」(ぴあ)は発売前に重版が決定したそうだ。林下熱志は「ビッグダディ」の次男なんだってね。「林下家の子供たちはみんな美奈子が嫌いだった!!」という帯が凄い。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000090.000011710.html

◎LINEは、ネット上のコミュニケーショントラブル根絶に向けた活動の一環として、2015年9月より、青少年におけるネット利用実態把握を目的とした10万人規模の全国調査を実施する。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1039

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、ブラジルのデジタルエージェンシー「Redirect Digital Marketing Ltda.」(リダイレクト・デジタル・マーケティング社)の株式100%を取得で合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0728-004104.html

JTBパブリッシングが運営する電子書籍サービス「たびのたね」サイトは、遂に日本国内全域47都道府県を対象エリアとし、全国対応オープンをした。
http://www.jtbpublishing.com/newsrelease/20150728222.pdf

小学館の少女マンガ誌「ちゃお」9月号の附録は「夏モテ プレミアムネイルセット」。このジャンルの附録戦争は熱い。
http://www.ciao.shogakukan.co.jp/jigou/

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4)【深夜の誌人語録】

半径5メートルの近所づきあいを大切にしたいものだ。