【文徒】2015年(平成27)8月12日(第3巻151号・通巻596号)

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1)【記事】一件落着とはならない?佐野研二郎の「五輪公式エンブレムのパクリ疑惑」
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】一件落着とはならない?佐野研二郎の「五輪公式エンブレムのパクリ疑惑」

五輪公式エンブレムのパクリ疑惑について多摩美術大学の教授でもある佐野研二郎は8月5日に記者会見を開き、「まったくの事実無根だ」と疑惑を全面的に否定した。産経はこう書いている。
「…佐野さんは会見で『要素は同じものがあるが、デザインに対する考え方が違うので、まったく似ていない』と反論。『自分の知識と経験の集大成ともいえる作品で、まったくのオリジナルと自信を持っている』と述べた」
http://www.sankei.com/sports/news/150805/spo1508050018-n1.html
しかし、バイラルメディアの「netgeek」は納得しなかったようだ。佐野研二郎の過去の作品に遡って五輪公式エンブレムのパクリ疑惑を検証し、次のように書いている。
「以上の新たに持ち上がった疑惑についても記者会見を開いて誠実に説明すべきではないだろうか。フリー素材サイトからの画像使用はまだしも、時計のカルバン・クラインのパクリは法的問題に発展しかねない大失態。きちんと経緯を説明してほしい」
http://netgeek.biz/archives/44618
http://netgeek.biz/archives/45562
ここで指摘されているフランスパンを使ったデザインのトートバッグに関してはブログ「パンレビュー」が炎上する事態となっている。このブログ主が撮影したフランスパンとトートバッグで佐野の使用したフランスパンの写真は瓜二つであることが判明したのである。このブログには次のようなコメントが書き込まれている。
「はじめてのコメントです!SUNTORYのオールフリーのトートバッグにブログ主さん記事のバゲット写真が使われていて驚きました!No.18のバゲット柄のトートバッグです。
http://www.suntory.co.jp/beer/allfree/campaign2015/
SUNTORYに採用されてすごい!と思って書き込んでしまいました。 パン写真が上手すぎです〜。パン情報楽しみにしています!」
http://panreviews.blogspot.jp/2014/06/baguette-pompadour.html
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-7539.html
大阪芸術大学の純丘曜彰教授が「INSIGHT NOW!」に「東京オリンピック・エンブレムはもう無理筋」という文章を発表し、次のように述べている。
「もう止めた方がいいって。小保方と同じ道を辿っている。審査員たちも、政治家や役人たちも、奈落へ道連れになるぞ。ゴリ押しを続ければ、それだけ関連支出が拡大し、いよいよ取り返しのつかないことになるぞ」
もちろん純丘の「恥」や「穢れ」といった言葉を持ち出す言い回しには同意できないし、私は不快感すら禁じ得ないのだが、佐野は再び記者会見を開いて疑惑に答えるべきだろう。
「事実として盗作であるかどうかはともかく、盗作を疑われていること自体が、許されざるハジだ。瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず、みずから身を律してこそ、日本のプライド。「日本人」は、ケガレを嫌い、ハジを嫌うのだ。ましてオリンピックは、フェアプレイの場。ケガれたもの、ハジであるものは、オリンピック、パラリンピックという人類の祭典、日本のハレの舞台にあってはならない」
http://www.insightnow.jp/article/8591
マスコミを納得させればそれで済むという時代ではなくなったようだ。2020年東京五輪パラリンピック組織委員会森喜朗会長は佐野デザインの公式エンブレムを「自信をもって使う」と断言しているのだけれど。
http://www.nikkansports.com/sports/news/1521018.html

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2)【本日の一行情報】

◎「モーニング」(講談社)で連載中の鈴ノ木ユウコウノドリ」が綾野剛でTBSによってドラマ化される。
http://natalie.mu/comic/news/156492

◎「ITAN」(講談社)で連載中の雲田はるこ昭和元禄落語心中」がTVアニメ化され、来年1月より放映される。
http://eiga.com/news/20150809/12/

◎「月刊少年マガジン」(講談社)で連載中のマンガ「ノラガミ」(あだちとか)を原作としたスマホ向けゲーム「ノラガミ〜神ト縁〜」がさくらソフトによってリリースされる。
http://gamebiz.jp/?p=147927

集英社の女性ファッション誌「BAILA」9月号の付録は、先月号に引き続き「りぼん」絡みの冊子だ。
http://www.oricon.co.jp/news/2057376/full/

高知市中心部の旧ダイエー高知店跡を再開発した複合商業施設「帯屋町チェントロ」に「金高堂書店本店」が移転オープンした。「他のチェーン店と違い『本』で勝負する店。お客様が本との出会いを見つける場にしたい」という亥角理絵店長のコメントが印象的である。売り場面積は1〜3階計約500平方メートルから1フロア730平方メートルに拡大している。
http://mainichi.jp/area/kochi/news/20150810ddlk39040432000c.html
http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=342231&nwIW=1&nwVt=knd

◎「火花」を全文掲載した「文藝春秋」9月特別号が13万部の増刷。累計発行部数は105万3000部。「蹴りたい背中」(綿矢りさ)、「蛇にピアス」(金原ひとみ)を掲載した平成16年3月号の118万5000部に次ぐ歴代第2位。「火花」も19刷20万部を決定し、これで累計発行部数は229万部。文藝春秋は「火花」景気に沸いている。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/08/10/kiji/K20150810010911930.html

サイバーエージェントが発表した「国内動画メディアの接触率調査」の結果によれば、10代のスマホからのオンライン動画接触率は80%で、テレビ接触率の85%とほぼ同率となった。
http://japan.cnet.com/marketers/news/35068372/

◎「トヨタマーケティングジャパンのやっている広告活動、マーケティング活動の大半は若者離れをどう食い止めるかをやっているといっても過言ではない」とトヨタマーケティングジャパンの土橋代幸取締役は発言している。出版は若者離れをどう食い止めるかにもっと力を入れるべきではないのか。
http://www.sbbit.jp/article/cont1/30030

◎韓国・ミレエヌ出版の科学漫画を翻訳したシリーズで累計発行部数が400万部を突破した科学マンガ「サバイバル」シリーズ(朝日新聞出版)を講談社の「MOVE COMICS」(ムーブコミックス)が追撃開始。6月下旬に4巻、7月末に2巻を刊行した。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20150724/1065746/?rt=nocnt

◎8月10日付朝日新聞によれば「女性自身」(光文社)では7月7・14日合併号の「寂聴さん『このままでは戦争に…』」が読者アンケートの人気ランキング1位になったそうだ。
http://www.asahi.com/articles/ASH8233KRH82UCVL001.html

KADOKAWA恒例の電撃文庫の夏のフェアだが、今年は、10月刊行の「ヘヴィーオブジェクト 外なる神」をもって3,000タイトルに達することを記念して「電撃文庫3000タイトル突破!!大感謝フェア」として8〜10月の三か月間にわたって展開される。
http://dengekibunko.dengeki.com/3000/
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001669.000007006.html

◎IPサイマルラジオの配信サービス「radiko」が過去一週間分の番組の無料配信を年内にも開始する。また月額350円のエリアフリー視聴でも過去一週間分の聴取が可能になる。ラジオがエリアと放送時間から解放される。これは魅力的だ。
http://www.47news.jp/CN/201508/CN2015080801001179.html

サイバーエージェントが運営する「Ameba」は、国内初となる、ユーザー誰もがパーソナリティになることができる、インターネットラジオ番組の配信アプリ「ラジ生?」をスマホ向けiOSAndroid版アプリとして提供開始している。
https://www.cyberagent.co.jp/news/press/detail/id=10839&season=2015&category=ameba
インターネットによって、五木寛之の小説などで取り上げられた「海賊ラジオ」が可能になったということである。

◎トライバルメディアハウスは音楽アーティスト、映画、ドラマ、演劇、イベントなどのエンターテインメントに特化したクチコミ分析レポート「Lotus」の提供を開始した。スポットクチコミ分析:30万円〜(調査期間は3ヶ月)で、年間クチコミ分析:100万円〜(調査期間は3ヶ月×4回)。
http://www.tribalmedia.co.jp/news/detail/283

イーブックイニシアティブジャパンは、オリジナル描き下ろし作品を集めてweb&アプリ雑誌「みんなのコミック」(略称:「みんコミ」)を10月より無料で配信開始する。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/news/detail/?news_id=26973
これだけネットでマンガが無料で読めるようになると紙のマンガ誌にも影響が出て来ることは間違いあるまい。

◎吉田典史の「『負け組編集長』の自慢話はホラばかり!中高年の劣等感で澱む出版社」を「ダイヤモンドオンライン」で読む。
「この編集長に限らないが、一部の編集者には『書くこと』に根強いコンプレックスや、それとは裏腹に憧れの思いがある。特にこの編集長のように、若かりし頃、全国紙や通信社の記者になりたかった者は、驚くほどに『書くこと』に執着する」
http://diamond.jp/articles/-/76472
http://diamond.jp/articles/-/76517

◎メディア経営に詳しいソーシャルアナリストの新田哲史は「週刊ポスト」の取材を受けて「朝日新聞東洋経済を買うシナリオ」については長めに話をしたそうだが、記事に掲載された「一番インパクトのある組み合わせは、ソフトバンクがフジテレビを買収することでしょう」というコメントに関しては新田の発言ではないらしい。
「え?いやいや、これってポストの記者さんから提示されたシナリオなんだけど。。。(絶句)確かに、その買収が実現すればインパクトがある云々は話したかもしれないが、それは常識的な受け止め方の範囲だろうっての」
http://blogos.com/article/127405/

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3)【深夜の誌人語録】

欲望を否定してしまったならば人間は人間でなくなってしまうだろう。人権を支えるのも欲望なのだ。