【文徒】2015年(平成27)8月19日(第3巻156号・通巻601号)

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1)【記事】「Number」松井一晃編集長のツイートに拍手喝采だ!
2)【記事】百田尚樹が自作を名著と大放言
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.8.19 Shuppanjin

1)【記事】「Number」松井一晃編集長のツイートに拍手喝采だ!

総合スポーツサイト「Number Web」の公式ツイッターアカウントで「Number」の松井一晃編集長がNHKBSでのスポーツ解説に端を発する「報道」のあり方について批判している。
この手の「報道」はスポーツに限ったことではあるまい。そうした「報道」を批判してきたのが雑誌であった。紙であろうと、ネットであろうと「雑誌」ならではの文春ジャーナリズムは健在だ。
「おはようございます。編集長松井です。今朝の錦織選手、1セット目の終盤から明らかに動きが悪くなって、故障が心配です。私はGAORAの辻野さんの解説とNHKBSの中継をザッピングしながら見ていたのですが、辻野さんは早くから錦織選手の故障の可能性を指摘していました」
https://twitter.com/numberweb/status/632744800601534464
「ところが、NHKBSの解説者とアナウンサーが、あたかも錦織選手がマレーに圧倒されたために気落ちしたかのような解説をするものだから、ネット上では錦織選手が批判され、挙げ句、スポーツ新聞のサイトまでが『意気消沈』『戦意喪失』とNHKにひきずられたような見出しを打つ……」
https://twitter.com/numberweb/status/632746072633307136
「私は現地で取材していないので現段階で正確な情報をもっていませんが、この数年、錦織選手を見ていて痛感したのは、テニスのトッププレーヤーたちがかくも過酷なスケジュールで連戦を重ねていること。そして、錦織選手が決して自ら試合を投げるようなまねはしないことです」
https://twitter.com/numberweb/status/632747228252106752
「私の目には、身体に異変を感じつつ、それでも試合を投げたくはない錦織選手が、それこそ、たとえ脚が動かなくても指の1本でも動くなら……と、最後までマレーに抵抗しようともがいているように見えました」
https://twitter.com/numberweb/status/632747891803590657
「それを、NHKの確証もない論評が『戦意喪失』という憶測を生み、錦織選手が批判されるのではあまりにひどい。現在、取材中の記者、ジャーナリストの皆さん、錦織選手の名誉なために、正確な情報をお願いします。長くなってすみません……」
https://twitter.com/numberweb/status/632827125481902080
公式ツイッターになると「よそゆき」というか、単なるプロモーションのためにしか使わない雑誌が多いなか、松井編集長は公式ツイッターでも雑誌が果たすべき役割を全うしてくれた。こうしたツイートを読んだユーザーは、雑誌「Number」でテニスの錦織選手が特集されたならば、書店に走ることになるだろう。少なくとも私はそうする。ちなみに「Number」は8月20日から紙版に加えて電子版もリリースすることになった。

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2)【記事】百田尚樹が自作を名著と大放言

百田尚樹新潮新書「大放言」がヒットし、百田はツイッターで引退を撤回した。
「本日、拙著『大放言』(新潮新書)が発売6日目で3度目の重版が決定しました。これで累計13万部になりました。これもひとえに読者の皆さんのお陰です!ありがとうございます。もう少し作家を続けてみようかなと思いました^^;」
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/633190540960358401
このツイートを踏まえて書いた日刊スポーツの記事を百田は朝日新聞のサイトで読んで、再び引退を宣言!
「なんでこんなしょうもないことがニュースになるんや! 腹立つから、引退する!!マジで引退する!!! 【〈速報〉百田尚樹氏「大放言」が売れて小説家引退宣言を撤回】 http://www.asahi.com/and_M/interest/entertainment/Cfettp01508170031.html
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/633239267032985600
ところが引退撤回のニュースが炎上していることを知るや、死ぬまで書くと大放言!
Twitter上では、僕の『引退撤回のニュース』に、ものすごく沢山の人が怒ってる。『とっとと引退しろ!』『早く辞めろ』のオンパレード(^_^;) 僕を引退させたい人がそんなに沢山いるとは知らなかった。嫌がらせの意味でも絶対に引退せん!死ぬまで書く!」
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/633279305196277760
百田尚樹はサービス精神が旺盛なんだよな。典型的なテレビ人である。それにしても自分の著作を自分で名著だとよくもいけしゃあしゃあと言えるよな。
「今日、発売以来初めて、『大放言』をはじめからじっくりと読んでみた。「これはもしかしたら名著ではないか」という気がした^^;」
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/632876290647830528

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3)【本日の一行情報】

ホーム社の隔月刊行のマンガ誌「画楽.mag」が休刊。連載作は今後、無料マンガサイト「画楽ノ杜」で連載される。
http://mantan-web.jp/2015/08/17/20150816dog00m200029000c.html

三省堂は、「ICTことば辞典」の電子書籍版の配信を開始した。電子書籍版ではすべてのページがフルカラーとなっている。紙版が本体価格2000円(税別)なのに対して、電子書籍版は
希望小売価格は1,600円(税別)。
http://ict-enews.net/2015/08/17sanseido/

◎電子雑誌出版社のブランジスタ東京証券取引所マザーズ市場に上場することになった。見城徹が会長をつとめる出版社である。ネクシィーズの関連会社であり、楽天幻冬舎も出資している。楽天が12%、幻冬舎が5.14%の出資だ。売上高は2014年9月期で17億0,838万円に過ぎない。
http://www.brangista.com/pdf/20150814_press.pdf

◎長洋弘の「写真集 インドネシア残留元日本兵」(社会評論社)を「インドネシアニュース」が紹介している。インドネシア独立戦争(1943年8月〜49年12月)に関わった日本兵は903人。そのうち、独立戦争で死亡した者は246人、行方不明は288人。生存者は369人で、324人はインドネシアにとどまり、インドネシアの地で生涯を閉じた。長洋弘の写真集には、110人の残留元日本兵が登場する。
http://www.ind-news.asia/news_wR3W2Zt80.html

◎それにしても次から次へと「パクリ疑惑」が浮上してくる。今度は名古屋の東山動物園のシンボルマークが、中コスタリカ国立博物館ロゴマークに似ているという指摘があったそうだ。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2015081890125146.html
確かに「今回の問題は、ゴーストライターを利用して作曲をしていた佐村河内守氏の一件とも重なる」(東洋大学准教授 藤本貴之)。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150818-00010001-mediagong-ent
こうなると佐野は東京五輪の公式エンブレムを自ら辞退すべきだという声も強まるのではないだろうか。
http://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2015/08/18/0008314138.shtml
事態の収束をはかるためには、佐野が世間を騒がせたことを謝罪し、辞退するというシナリオもあり得るだろう。

◎「週刊少年サンデー」36・37合併号で編集長以下、全編集部員の名前を掲げて「読者の皆様へ」という、いわばマニュフェストを発表した。その心意気や良し。市原武法編集長は「多くの連載作品が誌面を去り、代わりに才能溢れる新人・若手作家さんが次々と誌面を賑わす」大改革を断行しようというのだ。
「この改革の中枢として、新人賞の一次選考・新人作家さんのデビュー読切から大ベテラン作家さんの新連載企画にいたるまで少年サンデーの『漫画』に関わるすべての意思決定は編集長である僕がただ一人で行います。僕の独断と偏見と美意識がすべてです。当然これは、今後の少年サンデーの運命の責任は僕一人が背負うという覚悟の表明でもあります」
市原編集長の「今後の少年サンデーの運命の責任は僕一人が背負うという覚悟」は評価したい。その覚悟をもって「編集力」を読者に開いてみてしまってはどうだろうか。編集長の「独断と偏見と美意識」をすべてとするのではなく、読者の判断をすべてとし、その責任を編集長が全面的に負う。私は、そうした大改革をマンガ誌に限らず紙の雑誌で見てみたいものである。
http://nyaasokuvip.net/archives/8023

◎「スポーツ報知」はこういう差別記事を書いていたのか!この記者が人権オンチなのは間違いあるまい。
「真夏の甲子園が、サバンナと化した。オコエは本能をむき出しにして、黒土を駆け回った」
http://www.huffingtonpost.jp/2015/08/14/okoe-rui-hochi-report_n_7986326.html

◎BuzzFeeとヤフーは、合弁事業会社「BuzzFeed Japan」を設立し、今冬、日本向け「BuzzFeed」を創刊することになった。
http://pr.yahoo.co.jp/release/2015/08/18a/

NHKハートネットTV「シリーズ戦後70年」「障害者と戦争 ある知的障害者たちの戦中戦後記」が本日と明日20時からNHK・ETVで放送される。伊豆大島と多摩にある藤倉学園の悲劇である。
http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2015-08/19.html

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4)【深夜の誌人語録】

言葉はひとり歩きをする。その一言が凶器になり得るのだ。