【文徒】2015年(平成27)10月16日(第3巻194号・通巻639号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】「Pitchfork」がコンデナストの傘下に
2)【記事】架神恭介が「ダンゲロス」シリーズを講談社から刊行しなかった理由
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】


1)【記事】「Pitchfork」がコンデナストの傘下に

ライアン・シュライバーが10代の頃、最初はインディ・ミュージックに関するブログとして立ち上げた音楽レビューサイトの「Pitchfork」がブレークしたのは2004年のことである。
「このサイトがそれまでの主要音楽メディアと肩を並べるほどの存在感を示すに至ったのは、04年のこと。アーケイド・ファイアのデビューアルバム『フューネラル』を当初から高く評価し、また作品も大ブレイクするに至った。このことによってピッチフォークは、リスナーのみならずミュージシャンやメーカーにとっても、無視できない存在であることが明らかとなった。つまり、時代の音楽の代弁者として認知されるに至ったのだ」
http://news.livedoor.com/article/detail/7811950/
現在、ライアン・シュライバーはCEO。今や世界で最も影響力のある音楽メディアとさえ評価されている。実物はコレ。
http://pitchfork.com/
そんな「Pitchfork」がコンデナストの傘下に入ったという。欧米の雑誌社はデジタルメディアに敏感である。日本の出版社がマンガ誌を除けば鈍感すぎるとも言える。
http://ro69.jp/blog/miyazaki/132316
佐藤慶一も「メディアの輪郭」で、この件を取り上げている。そのなかで佐藤は次のように書いている。
「コンデナストはこれまでもさまざまなイベントやカンファレンスを開催し、近年ではロンドンにファッション・スクール『Conde Nast College of Fashion & Design』を構えるなどウェブだけにとどまらない収益化を図ってきました」
http://media-outlines.hateblo.jp/entry/condenast-buys-pitchfolk
「Pitchfork」も、ウエブの世界だけにとどまらず、紙の雑誌「The Pitchfork Review」を創刊しているし、毎年シカゴとパリでは「Pitchfork Music Festival」を開催している。
http://jaykogami.com/2015/10/12168.html
デジタル、紙、リアルイベントの三拍子を揃えられるかどうかが問われているのだ。

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2)【記事】架神恭介が「ダンゲロス」シリーズを講談社から刊行しなかった理由

アダルトビデオ「広辞苑の女」を監督したり、筑摩書房から「仁義なきキリスト教史」を刊行したりと、「戦闘破壊学園ダンゲロス」(講談社)の架神恭介ラノベ作家にとどまらないマルチな活動を繰り広げているが、シリーズ最新作の「ダンゲロス1969」は、キンドルの独占販売となった。紙の書籍としては出版しないらしい。しかも、出版社からのリリースではなく、架神恭介自身によるセルフパブリッシングだ。「KAI-YOU.net」によれば「その壮大過ぎるストーリーのために出版社から書籍として刊行することができず、自費出版/流通での発売」となったそうである。
http://kai-you.net/article/21995
何しろアマゾンの内容紹介には次のようにある。
「舞台は一九六九年。 同級生の死をきっかけに学生運動へと参加する高校生ユキミ。「学園自治法」を目標に学生運動をリードするプロ魔連の議長ド正義克也。学生たちを一挙殲滅せんと動く警視庁魔人公安の恐るべき魔人刑事たち。怪しく危険な動きを見せる革マジの小竹とアーニー。三陣営の戦いは東京大学安田講堂攻城戦にてその頂点へと至る――!
空を飛び交う無数のうんこ! 安田講堂を死守すべく露出される女性器! そして、常にまるだしのちんこ! シリーズで最も過激な手加減抜きのエログロバイオレンス! 心温まる恋の物語――!!」
ただしセルフパブリッシングとなったのは、内容の激しさからではないようである。
http://t.co/d19vaaIx04
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B016LDGKU8/cagamiincage-22/ref=nosim/
架神自身が真相を次のように語っている。
「いや、それが内容じゃなくて、話が長過ぎるって言われてさ。二冊分くらいのボリュームなんだよね。それで、担当はオッケーしてくれたんだけど、上の方からNGが出ちゃった。最近は長い小説売れないらしくてさ。でも、今回は最初から長い話を書こうと思って書いてたから、長いからダメって言われても短くできないんだよね。30万文字ぐらい書いて7万文字ぐらい削ったんだけど、これ以上短くしたらクオリティ落ちるから、諦めてKindleにしたわけよ」
http://liginc.co.jp/189853
価格は1000円。オレの関心をちょっと誘うことは確かである。

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3)【本日の一行情報】

◎広告局、ビッグコミックスピリッツ編集部、児童・学習編集局 図鑑百科編集室といった各部署に所属する 3 名が、各部署での通常業務も抱えながらも編集局の縦割りの壁を越えて横断的プロジェクトに集結し立ち上げるという。そう聞くとワクワクするではないか。ターゲットは20代女性。これも嬉しい。しかし、紙だという。他に選択肢はなかったのだろうか。
小学館はカジュアルファッションマガジン「This」を11月13日に刊行する。A4 判 96 ページで、定価は本体 750 円+税。
紙からではなくスマホで始めるという選択肢もあったのではないだろうか。オンラインメディアとして立ち上げ、その反応を踏まえて紙で出版するという順番もあったはずである。
それとも20代女子に対していきなり紙でアプローチするという冒険を敢えて選択したと考えるべきなのだろうか。
http://www.shogakukan.co.jp/pr/this/

昭文社の無料コミュニティアプリ「ことりっぷ」は、ローカルメディアからの情報発信が可能となる「パートナーメディア制度」を開始した。地域に密着したローカルメディアとユーザーを「ことりっぷ」というブランドを介して繋ごうという試みである。
http://www.mapple.co.jp/mapple/news/2015/10/6052.html
競業関係にあればあるほど協業の可能性を探ることができるはずだ。実は中堅出版社こそ競業を協業に転嫁するダイナミズムが問われているのではあるまいか。

◎何故、ステマが後を絶たないのか。山本一郎が次のように指摘している。
ステマが日本で横行する理由は『ネットニュース配信でヤフーニュースが独占的な強さをいまなお持っていること』と『優良な記事を配信する新聞社・通信社のコンテンツの買い叩き』、そして適切な法制やガイドラインが充実しておらずやった者勝ちとなる悪しき市場慣習と環境にある」
http://www.nippon.com/ja/currents/d00199/

◎米誌「Esquire」が選ぶ「最もセクシーな女性」にエミリア・クラークが選ばれた。
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1552468.html

吉本ばななの「ふなふな船橋」が朝日新聞出版から刊行された。船橋で生まれ育ち、いまなお船橋で暮らす私からすれば、読まないわけにはいくまい。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12013629.html

文藝春秋ラクビーワールドカップを特集した「ナンバー」緊急増刊号を発売前に一万部増刷したそうである。
http://www.asahi.com/and_w/interest/entertainment/CORI2060719.html

レディー・ガガが出演する資生堂の新企業CM第2弾「Be yourself. / Dance with Japan」篇。これはgood。
http://www.shiseidogroup.jp/corporate-ad-2015/cm/?rt_pr=tr430

◎「LINE」は、モバイル送金・決済サービスにおいて、2016年上半期頃に予定している外貨両替・出金対応サービスの提供に向け、韓国の新韓銀行と業務提携を締結した。2016年上半期頃を目処に、日本のユーザーのLINE Payにチャージされている金額のウォンへの両替および韓国国内での出金対応を開始することになる。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1111

◎女性ファッション誌「DRESS 」を発行するギフトの親会社パスは、新東通信と共同してPATHマーケットを設立。出資比率はパスが63.6%、新東通信が36.4%で資本金が4700万円。12月に商品開発などを支援するクラウドファンディング「DRESS FUND」、来年1月にネットモール「DRESS MARKET」を立ち上げる。「DRESS」の読者組織「DRESS部活」と連携を図るようだ。
http://www.advertimes.com/20151014/article206665/

◎「フィナンシャル・タイムズ」の広告戦略について「DIGIDAY日本版」は次のように書いている。
「FTは2014年5月に、業界に浸透した指標「CPM(表示1000回あたりの単価)」とは異なる、ディスプレイ広告の表示時間をベースにした「CPH(Cost-Per-Hour)」の広告を販売することを発表した」
「この時間ベース方式の広告を販売したら、インプレッション広告のみでの販売に比べ、220万ドル(約2.7億円)の売上増になったという」
http://toyokeizai.net/articles/-/88134

◎「広告ブロック」について「世界出版エキスポ」でパネリストとして登場した、調査会社「ページフェア」のジョニー・ライアンに小林恭子がインタビューをしている。
「世界中で広告ブロックのサービスを使っている人は1億9800万人ほどになる。過去1年で広告ブロックの利用は世界中で前年比41%拡大している。
 国別では、米国では今年6月までの1年間で4500万人が利用し前年比48%増。英国では1200万人で何と82%増だ。ネット利用者の中の割合でみると、欧米で多い傾向にあるが、日本はまだ2%ほどと低い」
http://zuuonline.com/archives/85038

◎日本ではダイヤモンド社から刊行された「嫌われる勇気」韓国版が韓国を代表する書店「教保文庫」で35週連続1位となり、従来の記録を更新した。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2015/10/14/0200000000AJP20151014002600882.HTML

◎気色悪いったら、ありゃしない。受験生狙いなんだろうけれど。朝日新聞社iOSアプリ「聞かせて天声人語」をリリースした。何と女子高生の萌えキャラに語らせている。
http://www.asahi.com/shimbun/medialab/kikasete/
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20151014_725498.html

◎2020年東京五輪パラリンピック組織委員会の新マーケティング局長に電通スポーツ局の坂牧政彦が就任。
http://www.asahi.com/articles/ASHBG4F5CHBGUTQP00R.html

池上彰が新聞について次のように語っている。
「未来でいえば、部数はまだ減りますよ。減るけど、なくならないというのが私の持論。世界でも類のない宅配制度であれだけの部数があった。だけど、実は読んでなかった。いま、本当に読んでいる人の部数が出てきた。落ち込みはどこかで絶対に止まる。コアな部分で必要とされている。どこでとどまり、その時、何を伝えることができるのかが問われていますね」
http://www.asahi.com/articles/ASH9Y7X20H9YUTIL060.html
雑誌だって同じだ。

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4)【深夜の誌人語録】

失敗を潔く認められないから、君は失敗を繰り返してしまうのだ。