【文徒】2016年(平成28)2月12日(第4巻27号・通巻714号)

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1)【記事】「雑誌」は「デジタル化」することで復活する
2)【記事】太洋社「自主廃業」余波 友朋堂と芳林堂
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.2.12.Shuppanjin

1)【記事】「雑誌」は「デジタル化」することで復活する

林智彦(朝日新聞社デジタル本部)の仮説。「出版」は「書籍化」することで復活する。
http://japan.cnet.com/sp/t_hayashi/35077597/3/
オレの仮説。「雑誌」は「デジタル化」することで復活する。しかし「業界は既成の市場しか見たくない」(都築響一)のである。「東洋経済」記者の中村陽子のインタビューに答えて都築は、次のように語っている。異議なし、だ。
「僕は米国の『ナショナルジオグラフィック』電子版を購読してるけど、メチャクチャよくできてる。年2000円程度で、スムーズに動画が入りどんどんリンクしていく。手元に保存したい人はその印刷版を買えばいいので、使い分けができる。今の日本のメディアはまず紙媒体があり、その補完としてWeb版がありますよね。でも逆だと思う。Web版のほうがボリュームに制限はなく、アップデートもできる」
都築は、こうも言っている。
「Webで大量に書いて、その要約版が雑誌というようにこれからなっていくと思いますね」
http://toyokeizai.net/articles/-/103263
ハースト婦人画報社のイブ・ブゴン代表取締役社長&CEOは「ソフトバンク ビジネス+IT」で次のように発言している。
「既存ビジネスの延長線上でデジタルを考えるのではなく、あくまでデジタルを中心に考えました。しかも、特定の人や部門だけが考えるのではなく、トップから現場までがデジタル中心に考えるようにマインドセットを変えました」
http://www.sbbit.jp/article/cont1/30720
「紙」を中心に考えている限り、「雑誌」のデジタル・シフトは成功しないのである。あくまで「デジタル」を中心に考えねばならないのだ。それができないのであれば老兵は去りゆくのみである。
アメリカの「WIRED」は、紙の雑誌として創刊され、Webメディアへと進化し、バナー広告を発明したことで知られているが、「ITmediaニュース」によれば、広告をブロックする読者の増加を受け、週額1ドルの有料版立ち上げるそうだ。広告ブロックブラウザのユーザーは、有料版に登録するか、WIRED.comホワイトリスト化しなければ、コンテンツへのアクセスを制限されるそうだ。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1602/09/news057.html
「広告なし」が有料、「広告あり」が無料という流れが強まるのかもしれない。
いずれにしても「雑誌」は紙よりもWebを舞台にした方が、ビジネスにおいても、表現においても、より「自由」を謳歌できるはずである。

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2)【記事】太洋社「自主廃業」余波 友朋堂と芳林堂

友朋堂吾妻店 (つくば市)の徳永直良が次のようにツイートしている。
「【友朋堂吾妻店閉店】改めてお知らせ。友朋堂吾妻店の店頭営業は本日2/11(木)が最終日になります。お客様方にはご迷惑をおかけいたします。桜店・梅園店に関しては現時点では未定です。詳細が分かりましたらツイートいたします。永らくのご愛顧ありがとうございました」
https://twitter.com/naox_toku/status/697567755931750401
「【友朋堂】お知らせ。友朋堂吾妻店は2/12(金)を持ちまして店頭営業を終了いたします。2/11(木)が最終の営業日となります。お客様方にはご迷惑おかけします。桜店・梅園店に関しては現時点では未定です。詳細がわかりましたらツイートいたします。永らくのご愛顧ありがとうございました」
https://twitter.com/naox_toku/status/697397635762642945
友朋堂の帳合は太洋社である。徳永は2月9日に「二十年以上書店員やってますが『業界として改革など』見たことないなー 」とツイートしていた。
https://twitter.com/naox_toku/status/696893284614959105
友朋堂吾妻店の「棚」は、しっかりしていたんだよなあ。これは夏葉社のツイートである。
「友朋堂書店さんの閉店を偶然知り、お店へ。太洋社廃業のあおりを受けて、突然の閉店とのこと。なぜ今まで来ていなかったのかと悔いる、素晴らしい品揃え。お客さん、いっぱいでした」
https://twitter.com/natsuhasha/status/697724201147314177
結局、徳永はツイッターで桜店・梅園店の閉店も告げることになる。
「【友朋堂桜店・梅園店】【閉店のお知らせ】友朋堂桜店・梅園店は明日2/12(金)までの営業となります。書籍の販売は2/12(金)が最終となります。一旦閉店後に文具等の在庫販売を予定しています。2/12(金)は桜・梅園両店とも終日文具を現在の店頭価格からの20%引きで販売いたします」
https://twitter.com/naox_toku/status/697733494579945472
常陽新聞ツイッターで次のような張り紙が掲出されたことを伝えている。
「日頃より当店をご利用いただきましてありがとうございます。さて今般取次の廃業に伴い営業を継続していくのが困難と相成り二月十一日(木)をもちまして閉店させていただくことになりました。まったく急なご報告で申し訳ございません。何とぞよろしくお願いします。長い間本当にありがとうございました」
https://twitter.com/joyoshimbun/status/697694265338523648
これは彩流社のツイート。
「【イベント中止のご連絡】 残念ながら諸般の事情によりまして、2・19(金)芳林堂書店高田馬場店での《石黒健治作品集『不思議の国』出版記念トークショー》の開催を中止することとになってしまったのですニャ」
https://twitter.com/sairyusha/status/697340521883291648
芳林堂もまた太洋社の帳合である。芳林堂のホームページには、こうある。
「毎度芳林堂書店をご利用いただきありがとうございます。
現在、諸般の事情により各店とも雑誌・書籍の新刊・既刊の入荷が止まっており、このため、店舗・ホームページでのご注文がお受けできない状態になっております。
中旬以降、順次復旧の見込みですが、受注可能になり次第お知らせいたします。
ご不便・ご迷惑をおかけしますが宜しくお願い申し上げます」
http://www.horindo.co.jp/

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3)【本日の一行情報】

◎宝島社の女性ファッション誌「sweet」は、中国のナンバーワン女性ファッション誌「瑞麗 服飾美容」(Rayli Fashion&Beauty)と提携し、「sweet」の編集コンテンツの一部を同誌に提供することになった。同誌は「Ray 中国版」として創刊された。(※「瑞麗 服飾美容」は繁体字での表示で、正しくは「麗」と「飾」は簡体字であるがjisコードにない外字のため本メールマガジンでは表示できない)
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000322.000005069.html

◎日販は、2月10日(水)より、KADOKAWAならびに全国約2,000店の取引書店の協力のもと、ライトノベル文庫の売り伸ばし企画「KADOKAWAラノベNEXT2016」を実施している。
http://www.nippan.co.jp/news/kadokawanext2016/

博報堂、大広、読売広告社1月度売上高。博報堂は前年比109.4%と高い伸び。インターネットが何と前年比166.1%!雑誌は前年比90.0%…。
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/ir/pdf/%E3%80%90%E5%8D%9A%E5%A0%B1%E5%A0%82DY%E3%80%912016%E5%B9%B41%E6%9C%88%E5%BA%A6%E6%9C%88%E6%AC%A1.pdf

NTTドコモによる月額400円で160以上の雑誌が読み放題となる「dマガジン」がパソコンにも対応するようになった。
http://japanese.engadget.com/2016/02/08/d-pc-160-400-31/

◎「トリス〈クラシック〉」CMは良いなあ。アンクルトリスが最高だね。
http://www.suntory.co.jp/whisky/torys/classic/cm/index.html

大丸松坂屋百貨店 大丸梅田店リクルートライフスタイルの旅行情報誌「関西・中国・四国じゃらん」は共同で、「じゃらんの公式キャラクターである“にゃらん”に関連した「大丸梅田店×じゃらん タイアップ企画」を開催する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000242.000011414.html
猫ブームなんだよなあ。光文社の「ねこ自身」は10万部目前だというし。
http://bookstand.webdoku.jp/news/2016/02/09/122000.html
マガジンハウスの「アンアン」2月10日発売号の特集は「冬のにゃんこLOVELOVE」。
http://top.tsite.jp/news/woman/o/27682806/?sc_int=tcore_news_recent
ブームに乗せられちゃったのかな、オレも。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=958504957536824&set=pcb.958505094203477&type=3&theater

◎片寄斗史子が「いきいき」を去り、KADOKAWAの「毎日が発見」編集長に2014年1月のことであったが、「毎日が発見」を去ることになった。片寄は1950年生まれ。中日新聞社や婦人生活社などを経て、1996年に創刊された「いきいき」の編集長をつとめた後、2014年から「毎日が発見」の編集長に就いた。新編集長にはマガジンブランド局 生活情報ブランド事業部 毎日が発見編集部課長の鷹取祐子が4月1日付で就任する。
https://www.facebook.com/yuko.takatori

◎メディアドゥは、日本の魅力を発信するため、政府と民間が協力し国際広報活動の一環として進めている「JAPAN LIBRARY」プロジェクトで英訳された国内作品の電子書籍について、楽天グループの米国OverDriveを通じ、海外の電子図書館へ販売を開始した。
http://www.mediado.jp/corporate/1298/

アサツー ディ・ケイは、2月9日より、2017年度採用施策「相棒採用」を正式に開始した。応募者が「この人と働いてみたい!」と感じる社員を探して、指名して、そのまま選考を受けることができるそうだ。
https://www.adk.jp/11218.html

◎「三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE」(三代目JSB)の岩田剛典が幻冬舎文庫の20周年記念フェアのキャラクターに起用された。
http://mantan-web.jp/2016/02/09/20160209dog00m200032000c.html

主婦の友社が刊行した、台湾在住のイラストレーターAmily Shen(アミリー・シェン)によるぬり絵本「不思議の国のぬり絵BOOK(原題『奇幻夢境』) が売れている。
http://corporate.shufunotomo.co.jp/newsrelease/9244/

小学館の「サライ」3月号の付録は手塚治虫の「新宝島」の1〜6話と「ジャングル大帝」の最終話が収録された84頁に及ぶ別冊だ。
http://mantan-web.jp/2016/02/10/20160209dog00m200029000c.html

◎さくらソフトは、「別冊少年マガジン」(講談社 )連載中であり、アニメ第2期の公開を控えている「アルスラーン戦記」(原作:田中芳樹 漫画:荒川弘)のスマホ向けゲームアプリを開発していることを「別冊少年マガジン」3月号とさくらソフトのコーポレートサイト、さくらソフトが運用している特設ティザーサイトで発表した。
http://www.sakurasoft.co.jp/
http://www.sakurasoft.co.jp/arslan/

小学館の「週刊少年サンデー」連載されている空詠大智の「競女!!!!!!!!」がTVアニメ化されることになった。このマンガ、当たるような気がする。
http://websunday.net/news/16021001.html

◎「週刊少年サンデー」史上、最長連載記録を更新し続ける「名探偵コナン」の缶入り紅茶 !紅茶専門店カレルチャペック紅茶店直営店、コナン物販催事など で、「カラートリックティー」と「蘭のレモンパイティー」の2種類 が発売される。「カラートリックティー」って色が変わるんだって!価格は1,404円(税込) 。
http://websunday.net/news/16021006.html

ライトノベル市場は2012年をピークにそれ以降、下降傾向にあるそうだ。「 ラノベ市場はなぜ衰退した? メディアミックス事情の変化」(「オリコンスタイル」)の次のような指摘は重要だ。
「…ラノベ原作アニメの増加は、ある問題を引き起こした。こうした得意とするジャンルの作品ばかりに偏ってしまい、キャラクターやストーリーなど、設定が似通ったものが量産されてしまったのだ。アニメファンからは“テンプレラノベアニメ”と揶揄される始末。もちろん、個々の作品を見ていくと丁寧に作られているものも多いのだが、こうした傾向は『ラノベアニメ=面白くない』という風潮さえ生み出してしまった」
http://www.oricon.co.jp/news/2066625/full/
悪貨が良貨を駆逐しなければ良いのだが。

◎「パズル&ドラゴンズ」と「週刊少年ジャンプ」連載の「BLEACH」がコラボすることになった。
http://www.animate.tv/news/details.php?id=1454919185

◎そりゃあそうだろ。「ゲス不倫」疑惑の宮崎謙介衆院議員の事務所の公式フェイスブック が大炎上。「週刊文春」、このところ完売続きじゃないの。
http://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2016/02/10/0008794152.shtml
https://www.facebook.com/miyazaki.kensuke/
https://www.facebook.com/kensuke.miyazaki

◎「ウラゲツブログ」が次のように書いている。
「太洋社が廃業するということは、版元にとっては仲間卸を頼める取次が消滅するということを意味しています。また、書店にとっては使い勝手の良い店売が神田村から消滅するということを意味します。まず前者の方から書くと、仲間卸というのは具体的に言えば、取次大手の取引口座を持っていない小零細版元が太洋社を通じて取次大手の帳合書店に商品を供給できるというシステムです」
「太洋社の廃業はあるいは零細版元や零細書店の一時的な機能停止、もしくは最悪の場合は道連れにする可能性を秘めており、予断を許しません。言い換えると、太洋社の消滅は大きなものと小さなものを結ぶ中間層の脱落や特定ジャンルの版元や売場への打撃を意味しています。埋めがたい業界内格差が生じることによって結果的に小さなものたちや特定のものたちの切り捨てが生じるリスクが一気に高まってきたと言えるのかもしれません」
http://urag.exblog.jp/22393251/
4月1日に発足する「大阪屋栗田 OaK出版流通」 がそうした役割を果たしてくれれば良いのだけれど…。

サイバーエージェントは、シード・プランニング デジタルインファクトと共同で、国内インフィード広告の市場動向調査 を実施した。これによれば2015年のインフィード広告市場は、対前年比2倍の768億円に到達し、 スマホ比率は全体の約93% に及び、Webプロモーション目的76%、アプリプロモーション目的24%の割合 。2020年の市場規模は2015年比300%超の2,478億円 を予測している。
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/press/detail/id=11607

◎大広は、グループ会社であるアドプラネット大広(シンガ ポール)を出資母体とし、PT Huraya Nusan Tara との間でインドネシアジャカルタ現地法人アドプラネット大広(インドネシア)を設立、2 月 15 日付で営業を開始する。
https://www.daiko.co.jp/dwp/wp-content/uploads/2016/02/20160210_release.pdf

博報堂 DY ホールディングスの戦略事業 組織「kyu」は、米国の世界的に高名なデザイン/イノベーション会社の「IDEO LP」(IDEO社)に対して出資を行い、30%の持分を取得した。IDEO 社は、米国シリコンバレーで創立され、現在、北米、アジア、ヨーロッパに 10 のオフィスを展開す る国際的なデザイン/イノベーション会社 だそうだ。博報堂 DY ホールディングスはこれまでにも「kyu」を通し、米国「SYPartners」社及び米国「Red Peak Group」社、米国「Digital Kitchen」社、カナダ「Sid Lee」社を傘下 に収めている。
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/pdf/HDYnews20160210.pdf

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4)【深夜の誌人語録】

仕事に受け身は禁物である。絶えず能動的に、主体的に、積極的に状況を引きずり回していくことが仕事である。