【文徒】2016年(平成28)3月15日(第4巻49号・通巻736号)

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1)【記事】なおも続く小説投稿サイト「カクヨム」の悪戦苦闘(岩本太郎)
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】なおも続く小説投稿サイト「カクヨム」の悪戦苦闘(岩本太郎)

小説投稿サイト「カクヨム」が、本立ち上げ早々、ラノベ小説家「ろくごまるに」による「カドカワ 富士見と独占契約したけど本が出ないハートフル物語」でミソをつけてしまったのはメルマガの3月3日号・4日号記事で既報のとおり。ネット上ではなおも先行きを危ぶむ声が上がっている。ちなみに「カクヨム」は「kadokawa」と「はてな」のコラボによるサイトだ。
はてな匿名ダイアリー」上に3月11日、《オッス、はてな村民のみんな! オラ、カクヨム投稿者! 面白い状況になってるから、そいつをみんなに伝えに来たぞ もう撃沈一歩手前なんじゃねえかって思うと、スッゲーワクワクすっぞ!》と威勢よく登場したブログ「カクヨム、半月経たずに撃沈一歩手前っぽくなってる件(もっとがんばれよ)」もその一つだ。
http://anond.hatelabo.jp/20160311120400
昨年12月に「カクヨム」の開設が発表されて以降の経緯を踏まえつつ、現状における問題点とすべき部分と、その改善要望を次のように述べている。
カクヨムの作品には、最高3つまでの★を投げて評価をすることが出来る。/これがなかなか良くて(俺評価)、★1でもgoodを表すため、作品をけなすためだけの評価がしづらくなっている。/で、この★もフォローと同じく、というかフォロー以上に、砂糖水の役割を果たした。激甘シロップだね!/最初は大量の作品が一気に現れたため、誰にも読んでもらえないPV0作家が続出した。/そこに颯爽と現れて弱小作家に★を投げる。100作品とか。これが★爆。(どこかで見たような光景だけど、どこかな?分からないや??????、?)/弱小作家は「俺のを読んでくれてありがとぉおお!」と感涙にむせびながら、/★をつけた作家の作品をお礼にじっくり読み返して、甘めの評価★を返してあげる(みんな、愛に飢えてたのさ…)》
《で、この「★爆作家」はフォロ爆と異なり、ランキングが開始しても対処されなかった。/一応、運営側は「読んでもいない★は評価外にします」という対処だけを取ったっぽい。》
《で、現状はどうなっているかと言うと、この★爆の大勝利になっていて、運営側もそれを認識しているっぽい。》
 https://kakuyomu.jp/info/entry/2016/03/10/130000
《しかし、まだ対応が遅れて8日のランキング開始から、ずっと放置されたまま。/作家側には不満がたまるのと同時に、★爆と誤解されないように、他の作品(特に下位)に★をつけるのを控える傾向が広まる。/結果として、下位作品の掘り出しが進まず、ランキングで発表された★爆を含む上位陣だけが見られることになる。》
《なお、作家がこの★爆かどうかは、大手掲示板の有志が作った「カクヨム検索」でだいたい把握できる。》
 http://tueee.net/kakuyomu/users.php
《現在、完全に疑心暗鬼が広がり、作家同士の動きが停滞している状況。/ほんのわずかな奇特な作家や、読み専門の方々ががんばってくれているぐらい。/結果、トップページに現れる上位5名が細々と注目を集め、そこに入れなかった人間は落ちこぼれていくだけ。
たとえば、ジャンル別ランキング8位の人間が得た1日のPVは20ちょい。もらった★は3点×2。》
《で、お願いがあるんだ、運営さん。/もし、この増田を見てくれることがあったら考えてくれ。/この状況で、考えられる一番最悪なのが何だと思う?/「カクヨムに期待して3カ月近く準備してきた作家たち」ってやつらが逃げることじゃねえの。/本当に期待して期待して、準備も重ねて、その結果がこれかよ。/タイトルを正確に言うわ。/「カクヨムでがんばっていこうと思っていた俺が半月経たずに撃沈一歩手前っぽくなっている件」だ。/もうこんな泥船、逃亡した方がマシじゃねえのか、ああクソ!》
 と書いたところ、おそらく「カクヨム」側も先日の「ろくごまるに」の一件以降、ウェブ上での反響には逐一目を光らせていた中で、このブログの内容にも即座に反応したのかもしれない。深夜になって上記のブログには「【追記】3/11深夜、迅速にカクヨム動く!! がんばっている!!」と題して以下のようなかなり長い追記が加えられた。
《昨日の深夜、ランキングに載っていた数名が突如消え去るという状況が発生。/公式的な発表はないものの、「読まずに★を投げていた作者」の作品が消えているらしい(俺観測範囲:twitter2chスレ)/と言っても、ランキングがごろっと変わるほどではない。
「★をくれたら★をやる」とかなんとか堂々と宣言していた人間もまだ残っている。(3/12現在)》
《そう簡単には消せないものだろう。/たとえば、★を投げまくった人間が、第1話だけ開いて「一部を読んで批評した」と言い張れば追及はしづらい。/そんな中でも動いたカクヨム側の姿勢を、むしろ俺は応援したい。/俺の作品はやっぱり今日も二十位前後を停滞していてもう浮上の目はない。/けれど、それでも明るい未来を信じたい。/だから、俺もまだがんばっていく。カクヨムもきっとがんばってくれる。》
という具合に当初の「半月経たずに撃沈一歩手前っぽくなってる」から一転、一気に「カクヨム応援団」としての姿勢を前面に打ち出すようになっている。
もっとも3月13日夜になってさらに加えられた「追記2」では
カクヨムは、上記以後、何も動きませんでした……。/動きませんでした……。/終了。》
で終わっているほか、コメント欄には
《内容のない愚痴を書いてないで「要望を送る」から運営に直接言え。》
《元増田の言うことには一定の理解を示したい。 ただし賞の傾向を考えても角川で純文をやりたいなんて考える人は多分少ない。 だからあのサイトに対しラノベ以外の人は反応しなかった...》
《始まって一週間で大量に読者が集まり活発かつ健全な交流が促進されないとおかしい、という想定のほうが甘い気がするが。》
などのコメントも大量に寄せられており、何ともにぎやかだ。まあ、「カクヨム」が今後どうなるにせよ、こうした批評空間(?)からこの先どのような文芸作品や批評が生まれてくるのか(あるいはこないのか)、期待はしないまでも注目されるところではある。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

電子書籍を現在利用している20歳〜59歳の男女442人を対象にMMD研究所が実施した「2016年電子書籍に関する利用実態調査」によると、電子書籍を最も利用するデバイスは男性の場合はタブレット(36.8%)、女性の場合はスマートフォン(42.8%)。利用している電子書籍ストア、アプリは男女ともに1〜3位が「Kindle楽天koboiBooks」の順だったが、4〜6位は男性が「Reader Store、honto、eBookJapan」、女性が「LINE マンガ、Renta!、Yahoo!ブックストア」という具合に分かれる結果となった。
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1534.html

ヘイトスピーチへのカウンター行動でも活躍した「noiehoie」こと菅野完が「HARBOR BUSINESS Online」で1年間に渡って日本会議の実態に迫ったシリーズ「草の根保守の蠢動」は読みごたえがある。実際、ネット民からも好評のようで「掲載サイトに分かりやすい一覧表示がなかったので」と、いつのまにか誰かがtogetterにまとめサイトを作っていた。菅野も「誰か知りませんが/これ、便利やんけw」と自らfacebookにて推奨。
http://hbol.jp/25122
http://togetter.com/li/948617
https://www.facebook.com/noiehoie/posts/503706546480718?pnref=story

◎東京・新宿歌舞伎町のトークライブ「ロフトプラスワン」は昨年で開店20周年。創設者の平野悠とプロデューサーの鈴木梅造が「LITERA」の取材に応え、左右両翼の活動家から政治家、AV監督&女優、元犯罪者、ヤクザなどが毎夜のように登壇し、乱闘事件などの店内でのトラブルも相次いだ20年間を振り返った。
http://lite-ra.com/2016/03/post-2036.html
http://lite-ra.com/i/2016/03/post-2039-entry.html

◎久々に政府与党を震撼させた(?)匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!」だが、国会でヤジを飛ばした平沢勝栄がテレビ番組に出演して釈明した際、「言葉が日本語として汚い」などと発言してさらに炎上。「はてな匿名ダイアリー」にはこれを受けて、「保育園落ちた日本死ね!」の文章を全て敬語化した「保育園落ちましたわ日本おくたばりあそばせ!!!」がアップされた。
http://anond.hatelabo.jp/touch/20160310225226

◎その「保育園落ちた日本死ね!」が大ブレイクした一方で、twitter上では「#保育士やめたの私だ」とのハッシュタグによる書き込みが急増。さらに、これを受けて《#図書館やめたの私 も必要ではないかと。正規雇用がどんどん減っていて、食べていけないぐらいの低賃金で働く現場の方はいらっしゃいます》ということで始まった「#図書館やめたの私だ」もたちまちtogetterにまとめが立つほどの大盛況となった。いまや「ブラック企業」ならぬ「ブラック公共施設」と化しつつある(?)図書館司書労働の過酷な実態が描かれている。
http://togetter.com/li/947161

東日本大震災後に関東から東北各地の被災地に全部で約30局が開局した災害FM(臨時災害放送局)の生き残りの一つ、宮城県の「女川さいがいFM」が3月末で閉局し、4月からは地元のTBC(東北放送)のラジオ番組「佐藤敏郎のonagawa now!〜大人のたまり場〜」(日曜23時〜)へと移行。引き続き被災地・女川の現状を伝える放送を行っていくという。
http://www.nikkansports.com/general/news/1614926.html?fb_action_ids=963380307049863&fb_action_types=og.likes&fb_source=other_multiline&action_object_map=%5B1335206126505523%5D&action_type_map=%5B%22og.likes%22%5D&action_ref_map=%5B%5D
災害FMは現在では東北全体で9局にまで減少しているが、この三月末に国が震災後の集中復興期間として設定した被災地自治体への緊急雇用創出事業の交付金(これが自治体が免許主体である災害FMの運営資金に充てられていた)が打ち切られることから、他局でも存廃が議論される状況になっている。かつて約30あった局の中にはコミュニティFMへと移行して放送中のところもあるが、過疎地ではスポンサー集めもままならぬために正式な放送局に経営転換を図るのが難しいケースのほうが多いようだ。
もっとも、使命である震災復興が未だままならぬ状況下で、なおも災害FMとして懸命に活動している局もある。原発被災地である福島県富岡町から避難したまま帰還できない被災者に向けて、富岡町郡山市内の臨時町役場から放送している「おだがいさまFM」はまさにそうしたケースだ。
http://www.gurutto-koriyama.com/detail/index_213.html
http://www.sankei.com/affairs/news/160310/afr1603100019-n1.html

東日本大震災が発生した2011年3月11日からの5日間、首相官邸の内部の動きや福島の人々が置かれた状況を、実話に基づいて制作した映画『太陽の蓋』が7月16日から渋谷のユーロスペースほか全国で順次公開。俳優たちが当時の菅内閣の政治家たちを実名で演じるそうで、菅直人役は三田村邦彦枝野幸男役は菅原大吉。また、主人公の新聞記者を、これが映画初主演となる北村有起哉が演じる。
http://netallica.yahoo.co.jp/news/20160310-26228139-cinraneta

東日本大震災からの復興を目指して、東北地方に世界のクリエイターを集めた「東北国際映画祭」を2017年春に開催すべく、この4月より運営委員会が立ち上がるという。発起人企業のVISIT東北はパソナの子会社で、インバウンド観光開発・プロモーション事業を展開。
http://dot.asahi.com/business/pressrelease/2016031100132.html

◎「東日本大震災から5年」は大々的に報じられる一方で、ともすれば忘れられがちなのが翌日の2011年3月12日に長野・新潟県境付近で発生した最大震度6強地震で大きな被害を受けた長野県栄村のその後だ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160313/k10010441531000.html
http://netallica.yahoo.co.jp/news/20160310-03529133-irorio
http://news.goo.ne.jp/topstories/nation/35/31322a5a7aa68a3d757ee43e8bca6503.html

◎2月の台湾南部地震で多くの死傷者が出た台南市のビル倒壊現場近くで、東日本大震災の被災者の心情を追ったドキュメンタリー映画の上映会が開催された。
http://mainichi.jp/articles/20160314/k00/00m/030/049000c

◎『阿賀に生きる」などの名作ドキュメンタリーを制作しつつも2007年に急逝した映画監督・佐藤真の思想と行動哲学に、里山社の清田麻衣子が自ら迫った著書『日常と不在を見つめて ドキュメンタリー映画作家佐藤真の哲学』が本日15日に発売される。24〜26日には駿河台のアテネ・フランセ文化センターで、ドキュメンタリー映像作家の石田優子らによる前記書の出版記念特集上映会も企画されている。
http://satoyamasha.com/?p=777
http://mainichi.jp/articles/20160310/dde/012/200/012000c

◎トルコでは約550万人のロマ系市民が暮らすが、同国では初めてとなるロマ系市民向けラジオ「Radyo Romano Vast」がこのほど開局した。
http://synodos.jp/article/16382

アメリカの新聞業界で「ネットニュースをデータ化して読者を取り戻す試み」ともいうべき実験が重ねられている状況を、元テレビ朝日記者の奥村信幸がレポート。
http://blogos.com/article/165991/

◎インターネット広告費が1兆1000億円台に達した「2015年 日本の広告費」をテキストに、電通総研メディアイノベーション統括責任者 の奥律哉と、放送メディアやジャーナリズムが専門の立教大学社会学部メディア社会学科准教授・砂川浩慶(元日本民間放送連盟)が『電通報』で対談。奥は《単純に成長率で伸ばしていくと、(テレビ広告費とネット広告費は)6年ぐらいで逆転するといわれています。
ただし、日本の広告費は07年には7兆円を超えていましたが、そこに戻るかというと、昨今の伸び率では難しい。海外ではネット広告費がテレビ広告費を超えた例もありますが、当然メディア同士の食い合いも起こりますし、日本ならではのテレビの強さというものもあり、予測するのは簡単ではありません》、砂川は《NHK放送文化研究所の「日本人とテレビ 2015」によれば、「1番目に欠かせないメディア」が20代と50代では真逆になっています。(略)要するに、テレビとインターネットに関して、今後30年でユーザーの意識が完全に入れ替わる》などと発言。
http://dentsu-ho.com/articles/3799

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

どこからでもやり直しがきくだろうと思っているうちに、取り返しのつかないことになる。