【文徒】2016年(平成28)4月19日(第4巻73号・通巻760号)

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1)【記事】私が「鈴木敏文」を嫌いな理由
2)【記事】朝日新聞の「押し紙」問題を公取に質したのは朝日新聞記者だった!
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.4.19.Shuppanjin

1)【記事】私が「鈴木敏文」を嫌いな理由

週刊ポスト」4月29日号がセブン&アイ・ホールディングス鈴木敏文会長を直撃取材している。これを読んでもそうなのだが、私はどうも鈴木敏文という経営者が好きになれない。
この記事によれば鈴木がセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長に退任を迫ったのは、セブン-イレブンの「一つ一つの小さい店舗をどんどん伸ばしていくためには、新しいことをどんどん提案していかないといけない」にもかかわらず、井阪社長には「そういう提案力は乏しかった」からだという理由のようなのだが、その程度の人物に7年間にもわたってセブン-イレブン・ジャパンの舵を取らせたのは、いったい誰であったのか。その人物が最大の「戦犯」だとすれば、それは鈴木敏文以外に考えられない。鈴木は、こうも発言している。
「…今回の件も、僕が息子を社長にしたがっているという報道が出た。息子を社長にしたいだとか、そんなこと全く考えない。息子だって社長になることは考えていないはず。誰かが社内で噂を流したのかもしれないが、息子本人もびっくりしている」
「息子だって社長になることは考えていないはず」と言っても、鈴木敏文は、それこそ井阪隆一を点検したように鈴木康弘の周辺をリサーチしたうえで発言しているのだろうか。何より鈴木敏文が息子の鈴木康弘を社長にしたいと全く考えていなかったにせよ、実績は何かと言えば「赤字」だけの鈴木康弘を他の社員に比べて厚遇して来たのは間違いあるまい。鈴木敏文の口吻を真似るのであれば、セブン・ネットショッピングにせよ、「全部売れない時代の中で、抜け出せば売れるんです。やればできる。売り上げが落ちることがおかしい」(『週刊現代』4月30日号)のである。鈴木敏文は、そう鈴木康弘を叱責したことがあるのだろうか。
そもそも私は自らを誠実だと称する鈴木敏文のような人間を頭から信じないことにしている。
http://www.news-postseven.com/archives/20160418_404241.html?PAGE=1#container
多くのメディアはおろか、鈴木敏文自身も自らをセブン-イレブンの創業者と言って憚らないが、私からすれば、それは街の風景を画一化した張本人に他ならないし、具体的にいえば雑誌で何とか生計を立てていた零細書店を破綻に追いつめていった張本人にほかならないのである。私などからすれば、それでいてトーハンの取締役に居坐る神経が信じ難いのである。
ちなみに昨年、「ブラック企業大賞」に選ばれたのはセブン-イレブン・ジャパンである。「週刊金曜日公式ブログ」は、こう書いている。
「同社は、フランチャイズ加盟店の権利である『見切り販売』を妨害していたことなどからノミネートされていた。『大賞』受賞の決め手となったのは、本部に一方的に有利なフランチャイズ契約をタテに加盟店を長年搾取し続けた構造の根深さに加えて、その『負の連鎖』が全国のアルバイト従業員にまでおよぶ影響の大きさだった」
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=5669
ブラック企業大賞」に選ばれたことに何の反省もなく、雲の上で権力闘争に明け暮れているのがセブン&アイ・ホールディングスなのである。

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2)【記事】朝日新聞の「押し紙」問題を公取に質したのは朝日新聞記者だった!

「小説 新聞社販売局」の著者である幸田泉が「現代ビジネス」で「発行部数を『水増し』してきた朝日新聞、激震! 業界『最大のタブー』についに公取のメスが入った」を発表したことは4月13日付文徒で報告した。朝日新聞社が、公正取引委員会から『注意』を受けていたことをスクープしたわけだが、「週刊ポスト」4月29日号に掲載された「朝日新聞またも危機!『押し紙問題』の不可解な裏事情」によれば、公正取引委員会・杉本和行委員長の記者会見で、朝日新聞に「押し紙」が横行していることを暴露したうえで、杉本委員長に「押し紙」についての見解を求めたのは、当の朝日新聞記者であったというのだ!
週刊ポスト」は、その記者について、こう書いている。
「質問したのは朝日新聞のO記者。ライブドア事件など数々の経済スクープを飛ばし、原発問題では東電を厳しく追及した敏腕記者として知られる」
こうした条件を満たす記者を朝日新聞に探すのであれば、「ヒルズ黙示録 検証・ライブドア」(朝日新聞社)や講談社ノンフィクション賞を獲得した「メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故」(講談社)で知られる大鹿靖明をおいてほかにはいまい。
実は大鹿が朝日新聞を告発したのは今回が初めてのことではないのかもしれない。大鹿は昨年1月に文春新書から出された「朝日新聞 日本型組織の崩壊」の主要執筆者のひとりに違いないという噂が朝日新聞社の社内外で飛び交ったのは記憶に新しいところだ。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166610150
大鹿は、かつて長谷川幸洋のインタビューに答えて次のように語ったことがある。
「・・・『自分の背中を支えるのは何か』と考えると、それは口はばったいけど、やはり大義とか正義とか『この不正は見逃せないぞ』という思いですね」
今回の質問も「この不正は見逃せないぞ」という「愛社無罪」の思いからなされたのかもしれない。朝日新聞社の渡辺雅隆社長が推し進めている「信頼回復と再生のための行動計画」によって、「記者の中には、朝日新聞の販売所を自発的に訪問し、一緒に顧客回りをする者も現れた」(「PRESIDENT 」4月18日号)というから、大鹿もそうした記者のひとりであったのかもしれない。そこで「押し紙」問題に直面し、大鹿の正義感に火がついたのかもしれない。
しかし、朝日新聞社というエリート集団の組織内部では自分がそれほど評価されていないことに対する怨嗟はなかったと大鹿には言い切れるのだろうか。
http://www.news-postseven.com/archives/20160418_404239.html

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3)【本日の一行情報】

◎メディアドゥは、OverDriveとともに、国内で展開する電子図書館事業「OverDrive Japan」の専用ウェブサイトを開設した。
http://overdrivejapan.jp/
http://www.mediado.jp/corporate/1333/

ガケ書房(現ホホホ座・京都市左京区)の店主 である山下賢二 が「ガケ書房の頃 」を夏葉社から上梓したのを記念してTitle(杉並区荻窪)店主の辻山良雄 とトークイベント「京都の本屋さん、東京の本屋さん」を5月9日に開催する。
http://www.title-books.com/event/1042

熊本市の長崎書店は4月15日午後14時時点で、役職員全員の無事の確認が取れたそうだ。
http://www.nagasakishoten.jp/e973309.html

大日本印刷は、スマホ、カーナビ、デジタルサイネージ等に向けた広告の配信管理を行うシステムを開発した。アマネク・テレマティクスデザインがコンテンツプロバイダーとして運営するi-dioによる日本初のモビリティ向け専用チャンネル「Amanekチャンネル」に採用され、4月中旬より運用を開始する。
http://www.dnp.co.jp/news/10122229_2482.html

◎市ヶ谷の大日本印刷に「大日本印刷偽装請負の責任をとれ」というシュプレヒコール響きわたったようである。「田中龍作ジャーナル」が取り上げている。
http://tanakaryusaku.jp/2016/04/00013418
http://www.mkimpo.com/diary/2016/dnp_demo_16-04-15.html
http://www.union-net.or.jp/mic/seimei/2016_01_26seimei.pdf

◎1980年代に紀伊國屋書店が使っていた採用にかかわるマル秘文書を「Business Journal」が紹介しているが、採用不可の女子として「弁が立つ。新聞部に属していたものはよく観察すべし 」「法律に興味をもつ。前職・専攻課目・関心事に注意 」をあげたり、要注意の女子として「革新政党支持。その理由を質問し、その答え方の口調に注意 」「父が大学教授 」ということをあげているのは、当時の社長であった松原治の満鉄から陸軍経理学校を首席 で卒業し、陸軍主計中尉 として敗戦を迎えるに至る「戦前」が反映されていると私は考えている。
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14724.html

電通は、大阪大学大学院医学系研究科および同医学部附属病院と、「研究・事業化連携の推進に関する協定書」を締結することになった。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2016047-0412.pdf

◎4月14日に発売された文藝春秋スポーツ誌「Number」第900号 は1994年生まれの 羽生世代のアスリートを特集しているが、前号の予告にはバドミントンの桃田賢斗 の名前もクレジットされていた。桃田の賭博問題が最初に報じられたのは4月7日だから、発売日の一週間前。「Number」は「ももいろクローバーZ」の百田夏菜子 の記事に差し替えたと「Sports Watch」は指摘し、次のように書いている。
「問題の発覚から、わずか1週間。この短い時間で特集テーマにそったサシカエ記事を用意し、しかも『本当はココでモモタの記事が載るはずだったのに』という言外のメッセージを発信するあたり、さすが『Number』といったところ。百田さんの写真撮影でバドミントンのラケットを持たせるといった、ピリリと効いたエスプリには感心するほかありません 」
http://news.livedoor.com/article/detail/11417773/
このところインタビューに出ずっぱりの「週刊文春」新谷学編集長も「Number」出身である。

◎宝島社の女性ファッション誌「Sweet 」5月号 は「FURLA マルチケース」が付録で 780円。買っちゃうよな。
http://news.livedoor.com/article/detail/11416527/

◎空前の猫ブームのなか吉本隆明「フランシス子へ」が講談社文庫の一冊として刊行された。フランシス子は吉本隆明の愛猫である。
http://kodanshabunko.com/francis-ko/
私は「マンチカン太郎」なんぞよりも、断固としてフランシス子を支持している。アイドルの猫なんかより普通の猫が一番なんだよ。

Kis-My-Ft2藤ヶ谷太輔と俳優の窪田正孝がW主演する映画 映画『MARS(マース)~ただ、君を愛してる~』は 1996年~2000年まで「別冊フレンド」(講談社)で連載され、コミックスは累計発行部数500万部を超える惣領冬実 の少女マンガ「MARS」が原作だ。
https://tokyopopline.com/archives/60090

◎「LINE」は熊本地震を受けて14日、「LINE公式アカウント」を通じてアプリから電話回線への通話を最大10分間、無料にすると発表した。
「LINEから固定電話・携帯電話にかけられる『LINE Out』機能で、日本国内の番号への発信を1通話最大10分まで無料化しました。家の電話やLINEでつながっていない方への安否確認にご活用ください」
https://twitter.com/LINEjp_official/status/720616623258730496
しかし、このサービスを安否確認に使ってはならなかったようだ。なぜなら、LINEの善意は「通信の常識」 を無視しまっているというのだ。本田雅一は「東洋経済オンライン」で次のように15日に指摘している。
「LINE通話はデータ通信帯域が確保されていれば、LINE社が設けているゲートウェイを通じて音声交換網へと接続される。すなわち、LINE Outを無料化して利用を促すということは、限りある資源である回線交換容量を消費することに他ならない。とりわけ、熊本県内の携帯電話回線へのLINE Outを使った発信は、輻輳(アクセスが集中することにより電話がつながりにくくなること)をさらに助長するため控えねばならない」
http://toyokeizai.net/articles/-/113928
むろん、LINEも途中で、このことには気が付いたようだ。「LINE公式アカウント」は14日のうちに次のようにツイートし直している。
「安否確認の連絡は、まず通信量の少ない災害伝言板やLINEトーク等をご利用ください。
先ほどご案内したLINE Outは回線に負荷が集中する恐れがあるため、緊急性が高い場合のみご利用いただくようご協力をお願いします」
https://twitter.com/LINEjp_official/status/720655437729673216
毎日新聞の取材に答えてLINEは「考慮が十分でなく、災害用掲示板の利用を優先するなど、注意点の説明も十分でなかった」ことを認めている。
http://mainichi.jp/articles/20160416/k00/00m/040/144000c

◎マガジンハウスは、アメリカのウォッチブランド「タイメックス」(TIMEX)の世界初となるヴィジュアルガイド「THE TIMEX JOURNAL」を4月22日に発売する。
http://www.fashionsnap.com/news/2016-04-16/timex/

◎月刊誌の「散歩の達人」(交通新聞社)が 創刊20周年になるという。武田憲人編集長が朝日新聞の取材に応じて、こう語っている。
「10年前、『散歩の達人』の存在意義を探し求めた時期に、写真家・藤原新也さんの言葉を思い出しました。『猫が多く居つく街は自由でいい街。猫はすきまがないと生きていけないから』。もしかすると、人も『すきま』がないと息苦しくて生きていけないんじゃないか。その『すきま』を見つけるのが使命なんじゃないか、って。それは今も意識しています 」
http://www.asahi.com/articles/ASJ4D5VJ0J4DUTIL048.html
雑誌も「すきま」が大切だと思う。最近の雑誌、「すきま」をなくしてはいないか。

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4)【深夜の誌人語録】

思い入れは愛情だが、思い込みは妄想である。